声-大友龍三郎(東映版)、岸祐二(DM)、落合弘治(5D's)
『遊☆戯☆王』における牛尾
『遊☆戯☆王』第1話に登場した童実野高校の風紀委員。
生徒の中でも群を抜いて立派な体格と鋭い目つきが特徴。
校内では「鬼風紀の牛尾」として恐れられており、その威圧感は教師すら臆してまともに口出しできないほど。
表向きには武闘派風紀委員で通っており、「学校の規律を全て仕切っている」と言っても過言ではない程の存在。
しかしそれはあくまで表の顔に過ぎず、恐ろしい裏の顔を持つ。
校内でいじめられている生徒を見つけると、加害者をボコボコにしては「ボディーガード料」と称して高額の金を請求するという強請を常習的に行っていた。
作中では遊戯をからかっていた城之内と本田に目をつけ、2人まとめてボコボコにした挙げ句、その料金として遊戯に20万円を要求した。
正義の味方のフリをして弱者から強請を働くという卑劣さもさることながら、ケンカ自慢の城之内と本田を2対1で一方的に痛めつけるという規格外の腕力の持つ点も非常にタチが悪い漢である。
その後、遊戯が千年パズルを完成させ闇遊戯が目覚めると、最初の「闇のゲーム」のターゲットとなる。
ターゲット第1号として挑んだゲームは札束と牛尾の私物ナイフを使った「マネーアンドナイフ」
ルールは非常に単純で、自分の片手の甲に乗せた分厚い札束にナイフを力いっぱい突き刺し、刺さった金を取り分にできるというもの。数順はルールを守りゲームに参加していたが、欲に目が眩んだ牛尾はナイフによるダイレクトアタックを敢行し反則負け。
ゲーム開始前の宣言通り、罰ゲーム「GREED─欲望の幻像─」を受ける事になる。
翌朝、葉っぱやゴミを金と思い込んで騒いでいる所を翌朝他の生徒に発見される事となった。
余談だが公式ファンブックではその後のエピソードが掲載されており、この一件で完全に威厳を失い「金なんてもう見るのも嫌だ」と反省したようである。バトルシティ編の回想シーンにも1コマだけ登場している。
原作では自身の腕力を頼りに単独で悪事を働いていたが、アニメ版(東映版)では同じく体格の良い風紀委員の男子生徒たちを引き連れたリーダー格という扱いになっている他、口調も一部丁寧になっている。
美化委員の本田からも、形は違えど学内の規律を正す為に活動する生徒として尊敬されていた。
土曜18時という放送時間の影響からか、闇遊戯と行った闇のゲームの内容も変更されている。
塔の先端にある避雷針にロープを引っ掛け、両端にぶら下がった2人が中央に配置されているトランプをめくり、その歩数ぶん登る(登りきった時相手は転落する)というもの。
単純なルールだが、闇遊戯の圧倒的な引きの強さの前に徐々に追い詰められた牛尾はルールを破り塔を自力で登ってこちらでもダイレクトアタックを敢行したが、闇遊戯の罰ゲームにより塔の下にある水路へと叩き落され、飛び出してきた化け物に襲われるという幻覚を見せられた。
その後「お母ちゃん‥怖いよ‥」などと呟きながら蹲っている姿を他の生徒に発見されており、原作と同じく威厳を失う事となった。
なお初代遊戯王の時点では単に「牛尾」とだけ呼ばれており、下の名前の哲は明かされていなかった。
5D'sにおける牛尾
セキュリティの警察官。セキュリティ隊員用の白バイタイプのDホイールに搭乗する。乱暴で粗野な面があり犯罪者に対して過剰な権力を振りかざす事もある。また正義感が人一倍強く執念深い性格であり、敵にすると厄介だが味方となると頼もしい人物である。
旧作では1話限りのキャラクターであったのだが、5D'sでは準レギュラーのキャラクターとなっている。
第一話から登場し、窃盗容疑で手配中のラリー・ドーソンの逮捕を妨害した不動遊星と対決し敗れる。それ以来、遊星を捕まえる事に情熱を燃やし執拗に追跡するようになる。二回目のデュエルでデュエル後の事故により左頬に怪我が出来るとその執念は一層膨らむ事となった。
その後、フォーチュンカップの開催に伴いレクス・ゴドウィンが遊星に本格的に干渉し始めた事から、一介の警察官に過ぎない牛尾は手が出せなくなり苛立ちを募らせていた。
ダークシグナーとの戦いにおいて、セキュリティに憧れる少年や彼を保護しているマーサとの出会いにより、サテライト住民に対する認識を改め、遊星達の良き理解者となった。
遊星も当初はサテライト住民や弱いカードを「クズ」と呼び見下す牛尾の事をデュエリストとして認めていなかったが、遊星とルドガー・ゴドウィン(に操られたラリー)のデュエルの際、身を挺して前述の少年を救出したことから彼の事を仲間として認めるようになる。
使用するデッキは警察用語や用具をモチーフにした「ポリスモンスター」デッキで切り札は「ゴヨウ・ガーディアン」。ほか、上司(声:松本忍)から与えられた特殊追跡部隊デュエルチェイサーズ用の「特殊追跡デッキ」、ダークシグナー時には昆虫族のワームを軸とした「デッキ破壊デッキ」を使用しているがいずれも1話限りである。途中経過が省略されていないデュエルで勝利したことはないが、遊星などを相手に対等に渡り合っていることからそれなりの実力者と言える。
なお、こちらでも遊星に負けそうになった際、バイクでダイレクトアタックしている。
カメオ出演・ファンからの人気
元々は原作『遊☆戯☆王』第1話で闇遊戯にやっつけられる悪役という役どころでしかないのだが、原作がカードゲームによるデュエルを主題にするようになっていき、更にデュエリスト達が度々デュエルと明らかに関係ないリアルファイトを繰り広げる度に城之内と本田をボコボコにした腕力とナイフによるダイレクトアタックを行う度胸から資質があるとネタにされるキャラであった。
アニメ第一作(東映版)のみに登場し、DM編(テレ東版)はDEATH-T編から始まる都合で登場しておらず、「遊戯と城之内の友情の始まり」であるため回想シーンとしてのみ登場。ただし、DMでは闇遊戯とどのようなゲームを行ったのかは描かれていないため不明。だがそれでもDEATH-T編以前のキャラが悉く登場しない中で回想シーンのみとは言えど声付きで登場しているのはまだ優遇されている方である。
続く『遊戯王GX』では物語終盤で画面に映り込む童実野町住民の名簿にローマ字表記で「牛尾哲」の名前があるというカメオ出演要素があり、フルネームが判明している(余談だが同様のシーンでは野坂ミホその他東映版には登場したがDMでは登場しなかった原作出身のキャラの名前もいくつか確認できるため、一種のファンサービスとなっている)。
『遊戯王5D's』では上記のようにガッツリ本筋に関わる準レギュラーキャラとしてまさかの再登場を果たして視聴者を驚かせている。この際にセキュリティ関係者は本来禁止・制限級の非常に強力な「ポリスモンスター」を無制限に使用できると述べており、特に主力モンスターとして使用した「ゴヨウ・ガーディアン」はお手軽な条件から攻撃力2800+コントロール奪取効果を持つというチート級のモンスターである事が視聴者の間でも話題になった。当然OCG化されるとしても弱体化されるかと思いきや、
攻撃力はそのまま2800でOCG化された為に当然デュエリスト達はこぞってこのカードを採用。
「5D's」放送開始と同時に開始したOCG第6期で導入されたシンクロモンスターの強さを語る際に必ず名前が上がるようなカードとなり、OCGにおいては牛尾さんの存在感はメインキャラ並であった。
寧ろあまりに強すぎたために「ゴヨウ・ガーディアン」は一時期禁止カードにまでなってしまい、後に「チューナーが地属性チューナーに限定される」というエラッタを受けて復帰。時代の流れもあるがその高い攻撃力や強い効果はそのままでの復帰であるためエラッタを受けたカードの中ではかなり優遇されている方である。
続く『遊戯王ZEXAL』では「5D's」ほど派手には登場していないが、実は九十九遊馬がアストラル世界に赴いた際に登場するアストラル世界住人の中に牛尾っぽい外見のモブキャラが存在している。
『遊戯王ARC-V』では榊遊矢が「遊勝塾」塾長・柊修造とデュエルするシーンにおいて、遊矢の父親である榊遊勝に言及された際にセキュリティ姿の牛尾っぽいシルエットが登場している。
以上のように悪役として登場した「初代」から「ARC-V」までの間、なんやかんやでカメオ出演し続けた(しかもうち1度は準レギュ昇格あり)という破格の待遇を受けているキャラクターである。
矛盾点?
「5D's」放送前のジャンプ紙面における特集で「初代」の牛尾=「5D's」の牛尾と同一人物とされており、それ以後の公式監修コンテンツでもそのように扱われる事が多い。
しかし、実はこの扱いには結構大きな矛盾点があり、しばしばファンの間で議論される。というのは、時系列上「初代」→「GX」→「5D's」となっているのに対し
- 「初代」~「GX」の間:数年~10年程度の時間経過
- すでにデュエルアカデミアに旧校舎や姉妹校が各地にあることから。
- 一方、童実野町や双六じいさんはあまり変わりがない描写である。
- 「初代」~「5D's」の間:「初代」から数十年後
- 劇中でそう説明されている他、童実野町から発展したネオドミノシティは大きく様変わりしている。
- また、不動遊星の誕生と世界が様変わりするきっかけとなったゼロリバースの発生が同じ17年前と説明されており、「GX」の後に更に17年以上が経過している事になる。
と、年代に大きく開きがあるのである。
以上の情報を踏まえて考えると、「初代」から「5D's」の間ではどう少なく見積もっても
20年~30年以上は経過している事になってしまう。
「初代」で高校生だった牛尾さんと「5D's」の牛尾さんが同一人物だとすると実年齢は最低でも40代~50代となるが、劇中ではどう見てもそのようには見えない。
要するに牛尾さんを中心に時間軸の歪みが発生してしまうのである。
この点について、「デュエルアカデミアは初代の最中に開校していたとすれば辻褄が合う」という説や「初代の間から童実野町の中心部等は急速に発展している最中だった」等、様々な説が存在しているが公式には謎のままである。
ゲーム関連
- 『DUEL TERMINAL』のスピードデュエルモードで対戦可能キャラとして登場している。書籍に付属していた「ゴヨウ・ガーディアン」を本作でスキャンすると召喚時にアニメと同じ「御用」の文字が浮かび上がる特別演出があるなどやたら優遇されている。
- 『遊戯王TAG FORCE』シリーズでは4から最終作となった6まで登場している。原作で「セキュリティは禁止・制限を無視してポリスカードを使える」という発言通り、既に制限カード化されていたにもかかわらずセキュリティ系のキャラはエクストラデッキに「ゴヨウ・ガーディアン」を1~3枚投入しているという仕様があった。6の時代には既に禁止カード化されているが、相変わらず牛尾さんのエクストラデッキに入っている。公権恐るべし。
- 2018年10月の末頃、『遊戯王デュエルリンクス』にて彼のイベントが開催、使用可能キャラクターとして実装されている。前述に挙げた矛盾点では、遊戯王時代と5D's時代の彼がそれぞれ別人の可能性を指摘されているが、使用できる台詞の中に、原作遊戯王第1話で彼が闇遊戯の罰ゲームを受けた時の「あら~!金、金だらけだーーー!!」などがあるため、公式としてはやはり同一人物扱いとなっているようだ。使われている台詞のこともあり、色んな意味で…ネタに困らない人である。