概要
特型警備車とは、日本の警察の警備部が運用する警察装甲車。主に4WDのトラックをベースに防弾装甲を取り付けている。
創設期の機動隊はGHQから供与されたフォードCMPシリーズ(通称クォード・ガントラクター)や旧陸軍の九五式軽戦車や九七式中戦車を改造した放水車・装甲車を運用していた。
しかし1960年代にはこれらの車両が老朽化してきたこと、1950年代後半から導入されたバス改造の警備車が東大安田講堂事件で金庫を投げ落とされて損傷するなどの事態から、より強固な警備車両が求められることとなり開発された。
種類
F型
警察庁警備部からの要望を受け三菱重工業で試作された特型警備車。
ボンネットトラックをベースにし、キャブ上に旋回銃塔が設けられていた。
しかし直線的な外観から暴徒によじ登られる危険があるとして1台が試作されたのみだったとされる。
長らく警視庁機動隊第8隊に配備され、あさま山荘事件にも出動したが、東京都の排ガス規制に引っかかったことから廃車となった。
F-2型
特型シリーズの中では珍しくの海外製の特型警備車
米国バウアー社製のパウエル防弾車を輸入したもの。
ダッジ製のトラックがベースで放水銃とガス銃を搭載している。
後述のF-3型とともにあさま山荘事件に出動し活躍した。
F-3型
ある一定の世代以上の方が「特型警備車」または「機動隊の装甲車」と聞いて連想する、いかにも装甲車たらんとしたグレーの厳つい車体の特型警備車はこれ。
三菱W80型トラックのシャシーに防弾鋼板製の車体を載せたもの。ベースがボンネットトラックだったためボンネットの突き出た造形になった。
1970年頃に12両が製造され、警視庁、千葉県警察、愛知県警察、大阪府警察の機動隊に配備された。
特に警視庁に配備された車両はあさま山荘事件で活躍し、現在でも機動隊の装甲車の代名詞となっている。
しかしベースとなるW80型トラックは二輪駆動だったこと、車体底部への潜り込み防止のためシャコタンになっていたことが山道での走破性能に問題があるとされ、F-7型の開発につながった。
警視庁の車両は東京都の排ガス規制に伴い移籍され、最後に残った車両は栃木県警察に所属していた。この車両はあさま山荘事件に出動した車両であり、退役時まで当時の弾痕が残されていた。
退役後もこの弾痕が残るドア部分が保存されている。
全長:7.36 m
全幅:2.49 m
全高:2.2 m
重量:11.16トン
乗員数:14名
装甲:鋼板・防弾ガラス
主武装:放水砲(口径18~22mm)
副武装:銃眼8個
F-7型
機動力を重視した改良型。ベースを四輪駆動のトラックにしたことで走破性を向上、さらに水深1m程度ならば渡渉も可能である。
モノコック構造の車体で床下にも防弾鋼板を採用している。
リアエンジンにしたことで軍用の装甲車と同じような形態になり、開発時には自衛隊の演習場で走行テストを行ったとされる。
三菱銀行人質事件などに出動した。
ただし悪路走破性を重視した設計だったため搭載量が少なく、生産数も多くなかったとされる。
『機動警察パトレイバー』の第25話に本車に似た外観の装甲車が登場している。
ジープ型
ジープ型の車両。正式名称は不明。
大阪府警の車両は前述F-7型とともに三菱銀行人質事件に出動した。
PV-1/PV-2型
メイン画像の車両。従来型の特型警備車が老朽化してきたこと、排ガス規制の強化に伴い適合できない面が増えてきたことから更新が図られることとなった。
まずは三菱ふそう・ザ・グレートをベースにしたPV-1型が開発されたが、大きすぎたため警視庁および大阪府警察に少数が配備されるにとどまった。
その後キャンターをベースにしたPV-2型が開発された。製造は自衛隊の装甲車両と同じ三菱重工業。
従来型の旋回砲塔に代わって防弾板を備えた旋回銃座を設置している。
最大8名が搭乗可能。
キャンターのモデルチェンジに合わせてマイナーチェンジが図られており、7代目から側面に扉が設けられている。
近年のドラマで機動隊が登場する際にはPV-2型に似た形態の車両が登場することも多いが、市販のトラックを改造しているため実車より車高がやや高くなっている。