概要
建物の屋根葺きに使われる建材で、用途や材料、形状、製法などによって種類は多種多様。広い意味でのタイルに含まれる。
屋根に堅い瓦を施すことで雨を弾き、積雪にも耐え、耐火効果も持っている。
重量があるため屋根の重量が増し、建物の重量を支える礎石や基礎も頑丈にしないといけない。建物本体への固定には、主に釘や粘土を使う。
重いため落ちると危険だが、かつての瓦は強い地震の時は落ちるよう設計されていた。重量のある瓦が建物本体を押さえ、多少の地震や強風を受けても建物の揺れや変形を防ぐようになっている。さらに強い揺れが起こると、建物全体が変形しつつ応力を受け止め、瓦が落ちて建物を軽くし、それによって建物全体の崩壊を防ぐようになっていたのである。近年の瓦はしっかり釘を打って固定されるので、正しく施工されていればよほどの大地震でも落ちることはない。
一般的には土製や粘土製で、これを四角い板状や半円筒形(トンネル状)に整形して焼成したものが多い。他に金属製・セメント製・ガラス製・石製など。
屋根の大部分を占める広い面には四角いものが使われ、棟や角、縁には半円筒形の瓦が使われる。端の瓦には様々な装飾も施され、鬼瓦が有名。
日本における歴史
しかし古代には、大きな寺や宮殿などの大規模で公的な建築でしか用いられず、神社や天皇・貴族(武家を含む)・武士の邸宅では檜皮葺(ひわだぶき。ヒノキの樹皮を薄く削いだもの)や板葺きを使っていた。中世でも瓦はぼぼ寺院でしか使われなかったが、戦国時代の後期には武将の城にも多用されるようになった。
江戸時代には、それまでの本瓦(ほんがわら。湾曲した四角い瓦と半円筒形の瓦を交互に組み合わせて粘土で固定する。非常に重いため建物を頑丈に作らねばならず、瓦葺き自体の工費も高い)に加えて、桟瓦(さんがわら。「~」型の瓦を組み合わせて釘で固定する。比較的軽く、施工も楽)が生まれ、防火が求められる都市では一般の住宅にも瓦葺きが浸透した。しかし、「瓦葺き=高級」というイメージは根強く、農山村では住宅の瓦葺きは認められないのが基本であった。
明治時代になると、農山村でも瓦葺きが自由にできるようになり、工部省営繕課が桟瓦をさらに簡略化・軽量化した「引っ掛け桟瓦」を開発。瓦はますます普及し、日本家屋の特徴の一つにまでなった。ただし、瓦に水がしみて凍結すると割れる寒冷地の民家ではあまり普及せず、板葺きから早い時期にトタン葺きやスレート葺きに移行したケースが多い。洋館のために西洋風の洋瓦が使われるようになったのもこの頃から。
戦後は徐々に減少し、温暖地でもトタン葺きやスレート葺きなどが増えていったが、やはり瓦葺きが高級視される事は変わらず、特に近畿地方(関西)では他の地方より伝統重視傾向が強いためか一般住宅でも本瓦を葺く事がしばしばあったが、阪神淡路大震災で過大な重量と強い揺れで瓦が落下することが問題視されてから、桟瓦へ移行しているようである。
台風の多い沖縄にでは、瓦を漆喰で固定して飛散を防止する方法が採られ、独特の風情を醸し出している(本土でも姫路城天守のような吹きさらしの場所では、やはり瓦を漆喰で固定している)。
赤瓦も沖縄の特徴的な光景だが、古い時代は黒い瓦で、赤瓦をわざわざ黒く塗って黒瓦に見せかけたものも出土している。王国時代は当時の本土と同じく、首里と那覇以外では、一般住宅に瓦葺きは許されていなかった。