終幕のデザイアグランプリ
しゅうまくのでざいあぐらんぷり
お悔やみ申し上げます、今日からあなたは仮面ライダーです。
『仮面ライダーギーツ』の最終盤において、スエルが2023年で行われていたゲームを何としても終わらせようと強行した最後のデザイアグランプリ。
破壊の女神(通称:黒ツムリ)を使って街の人々に強引にデザイアドライバーとIDコアを配布し、スエルによるゲーム開始宣言と共に強制的に仮面ライダーに変身させ、幸福度を奪うためのライダーバトルを強要するという無茶苦茶なものである。
変身させられた人々は変身が完了した時点で戦うことを余儀なくされるが、一応戦いを拒否することは可能。
ただしその場合、または敗北や心が折れたなどの理由で戦えなくなった場合、ゲームマスターに殺される運命にある。
これは、スエルが変身している仮面ライダーリガドΩの全身に配置されたオーディエンスアイを通じて、オーディエンスの中でも他人の不幸や絶望を見たがっているVIPが観戦している(運営本部にリガドΩが常駐し、中継画面に向かうことでオーディエンスに様子を見せている)ためで、「幸福を奪い合って不幸になる」様を見せてくれないライダーは容赦なく「退場」させているのである。
戦いの時間は一応決まっており、夕方から翌朝にかけてはインターバルとなり変身は出来ない。
ここまで見ればわかるだろうが、これは運営による現代人の殺戮ショーとその鑑賞に過ぎず、勝ち残ったところで報酬など用意されずどのみち殺される未来しかないという、デザイアグランプリとは言い難い単なるスラッシャーショーに成り下がってしまっている。
しかも妨害されると参加者の爆破が出来ずにゲームの進行が滞るというのにゲームマスターには仮面ライダーに変身して自衛するといった対策がない、という具合に粗が目立っており、欲望の湧きようもない仕様なども含めてこれまでのどのゲームよりもお粗末な出来となっている。
ただ、この粗雑かつ悪趣味なゲームにオーディエンス全員が賛同している訳ではなく、望み楽しんでいるのは一部のVIPのみであり、真っ当なデザイアグランプリを望む者も相当数存在している。
運営内部にもこのやり方に反発する者がいるようで、ギロリは「いつからデザイアグランプリは一部のVIPのみを楽しませるコンテンツになったのだ!」と憤慨していた。
当初の在り方からどんどん懸け離れた挙句、ターゲットとなるユーザー層をも大きく狭めるこのやり方は、ユーザー離れを起こし衰退するコンテンツにありがちな動きであり、デザイアグランプリに先がないことを暗示しているともとれるがそれもその筈、スエルはオーディエンスを楽しませる気など元からなく、終幕のデザイアグランプリはリガドΩの性能維持の為の応急処置兼ギーツをおびき寄せる為の餌でしかなかった。
要は、ギーツを始末する為の道具の一つに過ぎなかったのである。
しかしその過程で殆どのオーディエンスを切り捨てたせいで、オーディエンスの数が強さに直結するリガドΩはふとした事で動作不良を起こす程度にギリギリの状態となり、世紀末ゲームが潰された上に戦力となるプレミアム会員もいなくなり、取り返したかった創世の力は完全に浮世英寿の物となってしまった。
しかも狭めた客層のニーズにすら応えられない状況が続いてるせいで、このまま時間をかければ一部のVIPも飽きて離れてしまう可能性まであった。
このようにスエルは落ち着いた口ぶりの裏で、実は崖っぷちまで追い込まれていたのである。
それこそ、茶番で時間を稼いでいる隙にリガドΩのリバースによる初見殺しに嵌め、ギーツを消して強引に全てを終わらせるという方法しか残らない程度には。
しかしここまでやってもなお「創世の神」の前には悪あがきでしかなく、最後の法則改変によりデザグラ運営が全て消え去りその影響もキャンセルされたことで、このお粗末なデスゲームは完全に幕を下ろしたのだった。
デザイアロワイヤル:こちらも仮面ライダー同士が戦うゲームという点では同じだが、ゲーム内容はデザイアロワイヤルより悪化している。なお、本編内でデザイアロワイヤルを計画したのもスエルである。
仮面ライダークロニクル:仮面ライダーエグゼイドにおいて作られたプレイヤー参加型のデスゲーム。こちらは一応「参加しない」という選択ができる。
戦わなければ生き残れない!:仮面ライダー龍騎のキャッチフレーズ。この状況を無理矢理押し付けているのが終幕のデザイアグランプリである。ただしどちらも実情としては戦ったところで生き残れないというのが正しいが……。
オワコン:終幕のデザイアグランプリ開幕までの遍歴はまさにオワコンへと向かう流れである。