概要
1979年10月20日から2022年12月29日までテレビ朝日系列で断続的に放送されていた刑事ドラマシリーズ。
1979年の放送開始時から2015年度までは「土曜ワイド劇場」、2016年度から2017年度前半期までは「土曜プライム・土曜ワイド劇場」、2017年度後半からは「ミステリースペシャル」、2018年度以降は「日曜プライム」枠内で放送された。
TBS系列で放送された「西村京太郎サスペンス」と双璧を成す十津川警部シリーズの実写化作品であり、シリーズの歴史の長さもあって十津川警部と言えば本シリーズの主演である三橋達也か高橋英樹を上げる声が多い。
ストーリー
日本各地で発生する殺人事件。警視庁捜査一課の警部・十津川省三が挑むのは複雑に組まれた鉄道のダイヤグラムに潜むトリック、そして複雑に絡み合う人間関係のドラマ。
捜査が行き詰ったとき、十津川警部は相棒の警部補・亀井定雄に呼び掛ける。
「カメさん、我々も乗ってみようじゃないか」
制作会社とキャスティングの変遷
朝日放送&大映版
1979年10月20日放送「寝台特急殺人事件」から1982年4月17日放送「北帰行殺人事件」まで。全3回。
主演の十津川警部役に三橋達也、相棒の亀井警部補役に綿引洪が起用された。
第3作「北帰行殺人事件」では十津川の元部下で探偵業を営んでいる橋本豊が登場。沖雅也が演じた。
テレビ朝日&東映版
1981年10月17日放送「終着駅〈ターミナル〉殺人事件 上野-青森 ミステリー特急ゆうづる」から2022年12月29日放送「十津川警部のレクイエム“安息を” 大井川鐡道、湖上駅で2度殺された妻」まで。全73回。
甲斐正人が作曲したメインテーマは本シリーズから使用されている。
主要人物の配役で3期に分けられることもある。
三橋&愛川時代
「終着駅〈ターミナル〉殺人事件」から1999年9月25日放送「秋田新幹線「こまち」殺人事件 東京-角館 3時間22分の複合殺意!」までは十津川警部を三橋達也、亀井警部補を愛川欽也が演じた。
1981年当時三橋は58歳、愛川は47歳と原作の両名の設定年齢と大幅に開きがあり(十津川は40歳前後、亀井は45歳)、三橋はとても原作の十津川のように動き回れる歳ではなかった。
そこで原作とは逆転し亀井が各地を飛び回り、十津川が本庁から亀井達をフォローする形になっている。
この関係上原作では亀井が濡れ衣を着せられ拘置所に入れられてしまう「特急おおぞら殺人事件」では濡れ衣を着せられるのは後述の西本に変更されている。
また三橋のいかつい外見では元ヨット部という設定に無理があるとして元ラグビー部という設定に変更されている。
十津川班の若手刑事の代表格である西本明は第2作「再婚旅行殺人事件 出雲で死んだ女」までは友金敏雄が演じたが、第5作「東北新幹線殺人事件 東京-仙台-盛岡 “やまびこ27号”死体を乗せて東日本縦断!!七夕まつりの女」からは森本レオに交代。シリーズのレギュラーとして定着した。
事件のトリックを十津川が、犯人の心理を亀井が解き明かす展開が多く、事件解決後に警視庁内でふたりが事件を総括するというのが定番の流れだった。
1984年頃から三橋の健康問題が浮上するようになり、第5作「東北新幹線殺人事件」では天知茂が、第28作「特急ゆふいんの森殺人事件 東京-熊本-鹿児島 九州を迷走する愛憎の罠」では高島忠夫が十津川警部を演じている。
そして三橋の体調悪化に伴い第33作「秋田新幹線「こまち」殺人事件」を最後に降板となった。
高橋&愛川時代
2000年9月30日放送の第34作「津軽陸中殺人ルート 東北新幹線-成田空港 十津川警部、必死の大捜査網」からは十津川警部役が高橋英樹に交代。すっかりベテランの域に達した愛川欽也と合わせて原作の設定に近い雰囲気になった。
すでに愛川は裏番組である『出没!アド街ック天国』の司会を務めていたが、特に放送枠の変更は行われず裏被りが平然と行われていた。
三橋時代は愛川が担当していたナレーション(語り)は一部のエピソードを除いて高橋に交代している。
主役交代に伴い各地を飛び回る十津川、本庁から後方支援する亀井という原作に近い構図になった一方、国鉄民営化に伴い題材となっていた長距離列車が相次いで廃止、さらに後発の「西村京太郎サスペンス」とイメージが被るようになってしまい次第に苦戦するようになっていった。
特に中期ぐらいからスタートした過去作品リメイクでは顕著で、第42作「北帰行殺人事件」では原作で主題となった特急「ゆうづる」がすでに廃止されているため「カシオペア」に変更されるなど大幅な変更も見られる。
三橋時代を踏襲してラストシーンは必ず十津川と亀井が事件を振り返る場面になっていた。
高橋&高田時代
2012年11月3日放送「山形新幹線つばさ129号の女 謎の駅に2分停車の盲点…黒いロープとサクランボの殺意!!」からは愛川の体調悪化に伴い亀井警部補役が高田純次に交代。この体制はシリーズ最終作となった「十津川警部のレクイエム “安息を”」まで続いた。
作風は高橋&愛川時代とさほど変化はないが、ラストシーンが必ずしも十津川と亀井が事件を振り返る場面ではなくなった。
第68作「山形・陸羽西線に消えた女 復讐殺人?3つの現場に残されたスケッチ画の謎…」を最後に西本刑事役の森本レオも降板。西本は以後登場しなくなり、柿沼浩輔(演:葛山信吾)が実質的な後釜となった。
第70作「十津川警部VS鉄道捜査官・花村乃里子 山形鉄道フラワー長井線、雪の密室に現れた路線図にない駅の謎」は同じく西村京太郎原作で「土曜ワイド劇場」で放送されていた「鉄道捜査官」とのコラボレーション企画として花村乃里子(演:沢口靖子)ら「鉄道捜査官」の主要人物がゲスト出演している。
原作で主題となることが多かったブルートレインが軒並み廃止されていることもあって、新幹線を舞台にしたり事件が起こった地方自体が異なるなど大幅な改変が行われたエピソードも多かった。
一例としては最終作である「十津川警部のレクイエム“安息を”」は大井川鐡道を舞台にしているが、原作の舞台は十和田湖と猪苗代湖である。
とはいえ国鉄からJRに至るまでの鉄道の歴史を物語る長期シリーズとし多くのファンに愛され、特に鉄道ファンやミステリーファンにとっては欠かせない作品となっている。