高松琴平電気鉄道が2019年に走らせた京急カラーラッピング電車。
概要
高松琴平電気鉄道、通称ことでんは主な運用車両を中古譲渡車両でまかなっている。
特に京浜急行電鉄からの譲渡は戦後すぐの大東急時代から行われており、同じ標準軌の運用会社である事から頻繁な譲渡供給が行われてきた。
そうやって供給された車両群のひとつに1080形があった。実はこの電車、元は京浜急行電鉄1000形(初代B)の譲渡列車。最初期のことでん入線は1988年からだが、車両本体の製造は1958年である。
本来ならば四半世紀程度もすれば廃車にしてもおかしくない譲渡車両。しかし、ことでんは譲渡車両の超長期運用に定評のある会社であった。この1080形(旧京急1000形)も2020年代の現在においても元気に活躍している。
そんな、ことでんなので鉄道ファンからはよく注目される。そして運命の2018年。
とある鉄道ファンがぽつりと言った。
「ことでんの1080形って京急の初代1000形だから製造から60年経ってね?」
「そうだな。60歳かぁ。還暦だな!」
「人間の還暦だったら赤い服とか着るよな」
「赤って京急のカラーじゃね?」
はたして、そんな会話があったかなかったか。
とにもかくにも、ここにひとつのプロジェクトが誕生する。
「還暦を迎えた1080形に、生まれたばっかりの頃の1000形の雄姿を」
そして有志のクラウドファンディングが立ち上げられた。
これが還暦の赤い電車プロジェクトである。
プロジェクトは2018年9月に始まり、12月に終了。
目標額を上回る160万円を叩き出し無事に成功を収めた。
そして、ことでん全面協力のもと、1080形モハ1081+1082は1000形の姿を取り戻し、専用ヘッドマークもつけられて2019年から2021年まで琴平線の線路を走ったのだった。
余談
実は1080形は2018年の4月にも京急カラーでラッピングされていた。
これは京急による上京者に向けた京急空港線20周年記念のための広告ラッピングで、この時のカラーリングは京急2100形のものが用いられている。
全国規模の巨弾広告企画だったので、ことでんのみならず広島電鉄や大阪モノレール、ゆいレールなど、いくつかの地方私鉄でも同様のキャンペーンが行われた。もっとも、ことでんでの広告ラッピング電車では京急から当時の営業部長が来て出発セレモニーが行われている。
ただし、このラッピングにおいては「きちんと模している」とは言い難く、側面は当時の京急空港線のキャッチコピー「都心へビュン。京急」の文字とキャンペーンのCMキャラクターを務めたくりぃむしちゅーの姿があしらわれていた。(キャッチコピーだけなら前面の貫通扉部分にもあしらわれていた)
香川県内の鉄道ファン・ことでんファンからは「広告は仕方ないにしても、せっかくの旧1000形なのに」という落胆の声が多く出されたが、広告主である京急側はこの落胆に対して「この広告でアピールしたいのは今の京急であり今の電車であり、そこに立脚する未来への推進なので、過去を懐かしむような要素は広告の意図が逆転してしまいメッセージをブレさせる」とアナウンスした。
この事が「還暦の赤い電車」プロジェクトの発生に影響したかどうかは定かではないが、無関係と言いきる事もできない。
この「還暦の赤い電車」プロジェクトの成功により、コロナ禍においてことでんを支援する意味も込めて2020年から1200形(旧・京急700形2代目)を京急カラーとする情熱の赤い電車プロジェクトが、2021年からは長尾線を走る1300形(旧・京急1000形F)を京急カラーとする追憶の赤い電車プロジェクトが発動し、無事に成功を収めている。
なんとトミーテックから鉄道模型が出された。「還暦の赤い電車」が2020年9月に発売し「追憶の赤い電車」も2022年12月に発売予定となっている。
一方「情熱の赤い電車」も1200形の琴平線通常塗装版を出していたグリーンマックスから2022年12月に発売予定となっている。
くるりの楽曲「赤い電車」は元々は京急をモチーフとした楽曲だが「追憶の赤い電車Ver.」という、このプロジェクトがモチーフとなったバージョンがある。(「コトコトことでん」のカップリング曲)
外部リンク
※クラウドファンディングサイトは全て「Ready for」を利用。
おまけリンク
- 京急カラー「ウソ電」、なぜ全国に増殖したか(東洋経済ONLINE):京急空港線20周年ラッピングに関するWeb記事