概要
てんとう虫コミックス36巻に掲載されている作品。親孝行と環境破壊をテーマにしている。
あらすじ
ある晩。晩酌にウイスキーを開けているのび助は、残り少ない瓶の中身をみて「毎晩これをチビチビ飲むのが楽しみだったのに、さびしくなるなあ…」とぼやく。
居合わせたのび太が「そんなに好きならまた買えばいい」と言うと、このお酒は社長から貰った高級品で、平凡な会社員の自分がおいそれと買える値段ではないという。
可哀想に思ったのび太は何とか出来ないかとドラえもんに相談しにいくと、なんてことないと言われて大喜びで「好きなだけお酒が飲める」と報告に向かう。のび助は夢みたいな話だと半信半疑だか、そうなったら嬉しいと素直に喜ぶ。
さらにどうすればいいのかドラえもんに聞くと、少し時間がかかると前置きしてから「サイラン液」を取り出し、「これを飲ませるとタマゴを産み、稚魚がかえったら川に放す。すると稚魚は海へ降りてそこで大きく育ってもとの川へ…」と説明していく。
これに最初は不思議がりながらも黙って聞いていくと、どんどん『酒』とはかけ離れて言っていることに気がつき……
「もしかしてドラえもんが言ってるのは…」
「もちろん『鮭』だよ」
なんとドラえもんは飲みものの『おさけ』とお魚の『サケ』を勘違いしていたのだった。
とはいえ今さらパパに「酒を鮭と間違えた」とは言えず、なんとかならないかと悩み始める二人。
そこで考えた末ドラえもんはのび助からその酒を借りてくるようのび太に言うと、酒の中にサイラン液を垂らす。もちろんこれだけで酒がタマゴを産むはずはないが、ここでドラえもんはもうひとつの薬を取り出す。その薬の名は「コジツケール」。これで何をするかというと…
「なんとかこじつけよう。どっちも『サケ』だから」
要するに同音異義語を利用した強引なこじつけによる繁殖作戦を立てたのである。
その直後酒に異変が起こり、ドラえもんはのび太に洗面器を持ってこさせる。言われた通り水を張った洗面器を持ってくると、酒ビンの口から小さな球体が洗面器の中に放たれる。なんと本当に酒がタマゴを産んだのだ。瞬く間にタマゴは孵化し、沢山の酒瓶の稚魚が泳ぎだす。二人はそのまま洗面器を抱えて「タケコプター」で近くの川へ飛んでいき稚魚を放流する。
ドラえもんによると3日ほどかかるらしく、その日を楽しみに待つことに…
そして3日後。
いつもの4人で下校していたのび太は「今日、酒が川に帰ってくるから取りに行こう」と言ってしずかを誘う。それを聞いたジャイアンとスネ夫は案の定馬鹿にするが、のび太は動じずに「ドラえもんが来ると言った!」と反論。そこで全員でドラえもんに確かめに行くと「本当だよ。みんなも釣りにいこうよ」と笑顔でのび太の言い分を肯定し、おつまみのピーナッツをエサに向かう。
ところが、いざ釣り糸を垂らしてみてもいつまで待っても小魚一匹釣れず、ジャイアンとスネ夫はドラえもんの言葉を疑いだす。のび太としずかにも不安げに問い質されたドラえもんが川に飛び込んでみると、川底には酒も鮭もおらず、ごみが沈んでいるだけだった。それを見たドラえもんが戸惑いながらもみんなにそのことを告げると、のび太以外は騙されたと怒って帰ってしまう。
帰宅後、酒を増やすなんて初めから無理だと思っていたと言いだしたのび太と喧嘩になり、一人別れたドラえもんは居間でテレビを見ていたパパに謝りに行く。
するとのび助は怒るどころか「残念だなぁ……」と口では言いつつも穏やかな表情で笑っていた。
もともとのび助自身本気にはしていなかったらしく、酒を増やすと言われたことすらとっくに忘れていたのだった。
その様子を見ていっそう申し訳なさを感じたドラえもんは肩を落としながら居間を出ようとするが、その時テレビで『東京湾で酒ビンのような形をした魚が、発見されました』というニュースが流れる。
そう。成長した酒がもうすぐそこまで来ていたのだ。
大急ぎで2階へ行き、先ほど喧嘩したことも忘れてのび太にこのニュースを話すドラえもん。しかし、ここでふたりはある疑問を感じる。それは鮭と同じく産まれた川に戻って来る本能を持つはずの酒が、何故あの川にいないのかということ。するとのび太が「川が汚れているせいで、酒たちが帰って来れないのかもしれない…」と思いつく。
それを聞いて納得したドラえもんはのび太と一緒に川に戻り「ウォータークリーンシップ」で水辺や底を綺麗に掃除していく。しばらくすると川下が波立ち、酒の大群がこちらへ泳いでくる。
川が綺麗になったので、とうとう帰って来ることが出来たのだ。
そして、しずかたちが見上げる中、酒ビンがぎっしりと詰まった大きなビニール袋を手にタケコプターでのび助が待つ自宅へ向かい、笑顔で読者に呼びかけるドラえもんとのび太。
みんな 川をきれいにしようね!サケの住める綺麗な川に!
アニメ版1984年11月30日放送分
・サブタイトルはサイラン液でサケをもどそうに変更
・ドラえもんが酒と鮭を勘違いした際にのび太のイメージ内でグレてしまったのび助がギャング姿で描写され、原作では未登場だった野比玉子もこのシーンで登場している
・稚魚を放流した翌日、のび太が鮭の一生を描いた本を読むシーンが描かれる
・鮭ではなく、酒だったことに怒ったジャイアンとスネ夫がのび太をボコボコにする
・のび太もドラえもんと共にパパに謝罪しに行く
・大量の酒をのび助に渡すシーンが描かれる
・原作のラストシーンはカットされ、代わりに酒が帰ってきたことを喜ぶドラえもんとのび太がラストシーンで再び使われることになった
・「十戒石版」や「あの頃に戻りたい!」と共に文化庁から表彰を受け、後に1988年大晦日特番でも紹介される
アニメ版2012年11月23日放送分
・サブタイトルはパパとのび太と酒の泳ぐ川に変更され、勤労感謝の日エピソードとして放送
・のび助は仕事で帰りが遅くなっていることや会社で家族の写真に励まされながらの仕事シーンも描かれる
・1984年版同様に玉子も登場
・原作ではのび助の飲酒シーンから始まったが本作ではドラえもんとのび太が就寝に入る直前から開始
・のび助の飲酒は仕事から帰宅してきた直後のものとなっている
・1984年版同様にジャイアンとスネ夫がのび太をボコボコにする
・ドラえもんとのび太のケンカは続いたままであったが夕食時に玉子が「パパは今日も遅くなりそうね」と呟いたことでケンカを止め、パパが帰宅した際に一緒に謝罪に行く
・川掃除の場面ではあまりの汚さに途中でウォータークリーンシップが故障してしまった為、ドラえもんとのび太が手作業で川を綺麗にする
・1984年版同様に原作の幕引きは再現されなかったものの幕引きでの「鮭の住める綺麗な川にしよう」という発言はあり、幕引きに関してはのび助がウイスキー瓶を抱えて、嬉しそうに眠っているものとなった
アニメ版2023年10月28日放送分
・これまでのアニメ版とは異なり、基本的には原作に忠実に描かれたがのび太が酔っぱらうシーンのカットや大量の酒を持って帰る最中のドラえもんとのび太を見上げる際のしずかたちに台詞があるといった変更点も見られる