鈴鹿サーキットとは三重県鈴鹿市にあるサーキットを核としたレジャー施設である。
概要
2輪および4輪のレースが行われる全長およそ5.8kmの国際レーシングコースと、カートやジムカーナ、走行会などに使用される南コース、遊園地やプール等のレジャー施設、交通教育センターなどを有する。
国際レーシングコース
1962年、本田技研工業(ホンダ)の出資のもと日本国内の常設サーキットとしては2番目に完成した国際格式のコースである。(国内初の常設サーキットは多摩川スピードウェイ)
全長5807m(※)の起伏に富んだ、立体交差を含む8の字型のレイアウトである。
これは、元々テストコースとして使用する事を考慮し、車両に左右均等な負荷がかかるよう意識した為とされる。
- (※)2輪走行時はシケインが追加されるため5821m。
東西で分けて2つのコースとすることも可能で、規模の小さなレースや走行会では東半分、或いは西半分で使用される。
S字コーナーやバンク角の殆ど無いコーナー(ライダーやドライバーからはバンク角が逆に付いているように見える為「逆バンク」と呼ばれている)などの高い操縦技術が要求されるセクションと、スプーンコーナーからバックストレートを経て高速コーナー(130R)をクリアしシケインに至るまでの高速セクションの2つの顔を持ち、選手や観客からも人気が高い。
一方で、雨が多く天気が不安定になりがちな三重県の山の麓という立地からレース中に豪雨に見舞われる事がある。
甚だしい例では「ホームストレートでは晴れているのにバックストレートでは土砂降り」という現象が起きることもあり、選手やメカニック泣かせな一面もある。
また、紀伊半島(と伊勢湾)は台風の通り道として有名で、決勝レース中に襲来する台風や豪雨によって様々なドラマが産まれている。
2023年まではおおむね10月頃に日本グランプリが開催されていたが、上記のような悪天候を避ける目的もあってか、2024年からは春に開催する日程に変更された。
富士スピードウェイと違って開業時からコースレイアウトの大幅な変更は行われていないが、レーシングマシンの高性能化に対応して安全対策が強化されている。
一方でMotoGPは、2003年の日本グランプリにおいて死亡事故が発生したため、これ以後は開催されていない(代替地はこれもホンダ系のツインリンクもてぎ)。
周辺の施設
- 本田技研工業鈴鹿製作所:もともと2輪と4輪の両方を手掛ける工場だったが、現在では4輪の生産のみ行っている。
- 鈴鹿サーキット稲生駅:伊勢鉄道の駅。大規模イベントの際には優等列車が臨時停車する。鈴鹿サーキット最寄り駅で、国際レーシングコースを走行するマシンの爆音が聞こえる程度には近いのだが、メインゲートまで30分ほど掛かる。これでも国内のサーキットでは近い方である。
- 鈴鹿ツインサーキット:通称ツイン。鈴鹿市内のバイクショップが運営母体で鈴鹿サーキットと関係は無い。全長1750m、2輪と4輪の両方に対応したミニサーキットより大きくフル規格のサーキットより手軽なサーキット。
- モーターランド鈴鹿:全長1000mのミニサーキット。鈴鹿サーキットともツインサーキットとも関係は無い。若くお金がない地元のマニアの間で「鈴鹿で走行会」と言えばだいたいツインサーキットかモーターランド鈴鹿の事を指す。
評価
ドライバーからの評価はずば抜けて高く
「こういうところを走るためにF1マシンはあるんだ」
「ここで一番速い奴が真の男だ」
「ここは神が作ったんじゃないだろうか」
「どれだけ腕を上げてもここを走ると改善点が見えてくる。ほんの少しのミスで大ロスになるし、少しでもタイミングを逃せばあっという間にコースアウトする、それでもそれをストレスに感じない」と絶賛されている。
セルジオ・ペレスは「たとえウエットでも、ここが世界最高のサーキットである事は間違いない」と評するなどウェットコースであってもその評価は不動であるなど抜群の安定性を持ち、歴代ワールドチャンピオン達からも
「ここは神が住むサーキットだ」(アイルトン・セナ)
「レイアウトもファンも他と比較出来ないほど素晴らしい」(ミハエル・シューマッハ)
「鈴鹿を正確に走れるか否かでドライバーの真価がわかる」(ルイス・ハミルトン)
「真のドライバーズサーキットでチャンピオンになれた事を誇りに思う」(マックス・フェルスタッペン)
と格別の評価を得ている。
特に2022年に引退したセバスチャン・ベッテル(2010~2013年F1ワールドチャンピオン)は、最後となるグランプリ予選最終アタック後に無線で「アリガトウゴザイマス、スズカ!」と日本語で感謝を述べ。当日夜に開催されたトークショーでは
「アナタト、ハナレテ、サビシクナリマス。イママデ、オウエン、アリガトゴザイマス。マタ、アイマショウ!!」と日本のファンへのメッセージを述べ、決勝レース後には
「ここで走れなくなるのはとても寂しいけど素晴らしい週末になった。最高のサーキットと応援してくれた最高のファンのみんなに『ありがとう』と伝えたい。」
と、鈴鹿ラストランを締めくくった。
また、引退後も「鈴鹿だけ走らせてくれるF1チームがあるなら、そことの契約を真剣に考えるよ」とコメントしており、日本のファンから「鈴鹿大好きおじさん」の異名を頂戴した。
鈴鹿に集う日本人ファンの評判も高く、応援グッズのこだわりや、ドライバーのみならずピットスタッフや監督まで応援する姿勢に定評がある。ドライバーからも
「(韓国グランプリ終了後のインタビューで)鈴鹿最高!!(フェルナンド・アロンソ)」
「他の国に行くと『応援に来てやったんだから何かくれよ』とタカられることがあるけど、日本のファンは逆に心のこもったプレゼントをくれるんだ!(カルロス・サインツJr)」
「F1マシンのミニチュアが乗った帽子をかぶって応援してくれたファンがいたけど、そのミニチュアのDRSが動いてるんだ! あれはどうやって作ったんだろうね。あんなのは日本でしか見られないよ!(エステバン・オコン)」
など絶賛されている。2023年の日本グランプリでは、強面で男気のある性格で知られ、「親分」の異名を取ったハースのギュンター・シュタイナー監督に求婚する応援メッセージが女性ファンによって掲げられる珍事が巻き起こった。
ちなみにシュタイナー代表も国際映像を通じて求婚を認知しており、プラカードを見て微笑んでいただけに留まらず、トークショーで触れられた際には
「とても嬉しいです、まずは連絡先から交換しましょう」
と、ユーモア溢れる回答を笑顔でしていた。
その他
- 建設構想時は田んぼを整地した平たい土地に作る予定だったのだが、ホンダの社長・本田宗一郎が「米を粗末にするな!」と厳命したことで現在の立地となった(※)。
- 高速道路が整備されるよりも先に、自動車の高速走行に耐えうる本格的な舗装が施されたため、日本道路公団が鈴鹿サーキットに路面の調査にやってきた。つまり、鈴鹿サーキットは日本の高速道路の父のような存在と言える。
- ゴジラvsメカゴジラで、ゴジラが襲撃する場面がある。
- 東映製作の特撮ドラマ『仮面ライダー剣』の第23、24話にて本サーキットがメイン舞台として登場。当時、8時間耐久レースに仮面ライダーチームとして所属していた山口辰也も特別出演した。
※現在のグランドスタンドより北東へ1〜2kmほど離れた場所を予定していたようだ。公開されている初期構想案の地図を見る限り、現在の鈴鹿サーキット稲生駅付近から、浄土池ぐらいまでの土地を使う予定であったと推測される。当然現在のレイアウトとは全く違う。立体交差もなかった。浄土池をぐるりと周回するような中高速セクションと、稲生町西交差点付近のスプーンコーナーに似た形のコーナーを2本のストレートと低速コーナーで繋ぐようなレイアウトであった。ピットとパドックは稲生高校付近のホームストレートに設置する予定だったと思われる。