風死絞縄
ふしのこうじょう
ここから先、ネタバレ注意
原作の最終回では既に卍解を習得していることが本人の口から明かされたが、能力の詳細は不明のままだった。その後、霊王護神大戦から半年後を描いた小説『Can't_Fear_Your_Own_World』では檜佐木が主人公に抜擢され、彼が卍解に至るまでの詳細が描かれた。
先の大戦でリジェ・バロの万物貫通(The X-axis)に貫かれたが、その力があまりに鋭過ぎたために体組織の損傷が少なく九死に一生を得ることになった。その大戦の傷がまだ完全に癒えてない半年後の事、瀞霊廷通信の編集長として、大戦の回顧録作成のため取材に追われていた。
そんな折、護廷十三隊総隊長・京楽春水から四大貴族の一つ・綱彌代家の新当主就任を祝う号外作成の依頼が舞い込んでくる。件の新当主・綱彌代時灘は先代の九番隊隊長・東仙要の親友・歌匡の夫であり、彼女を斬り殺した当人だった。
様々な情報を掴むべく、浦原喜助への取材をするため現世に降り立った後、そこから彼を中心とした様々な戦いの火蓋が切られた。
千年血戦篇で卍解への習得を行ったのだが、実はこの段階では習得に至らず、単純に自身の戦闘能力アップだけで終わってしまったのだ。六車拳西と久南白の修行では半分殺す気で行ったのだが、追い込んで卍解に至る…という段階ではできなかった様子。その後の結果は上記通りの形にて終わってしまう事になる。
だが、その段階で拳西は一つ疑問に思った。何度も檜佐木は死ぬ思いを経験してきたが、最終的には無事であることを聞かされていた。死ぬほどの傷を負うことがあっても生還できたのは果たして「たまたま」なのか?
檜佐木によれば、「風死」の本体は黒い影や水たまり、竜巻のような姿で現れ、しばしば「命を差し出せ」「血を捧げろ」といった物騒な言葉を投げかけてくるというが…
「臆病者なりの…折り合いのつけ方って奴をな」
卍解 風死絞縄
産絹彦禰によって胴体を真っ二つに両断された瞬間、精神世界に強制的に呼び寄せられ、風死と会話。ここで、ついに風死の本質を理解し屈服に成功する。
始解が「命を刈り取る形を成し、魂を世界に循環させるもの」だとすれば、この卍解は「命の流れを止め、世界を停滞させる封印の鎖」である。
形状は始解とさほど変わりないが、鎖が大量に寄せ付けあい、漆黒の太陽と思わせる球体を形成する。その球体から鎖が伸びて檜佐木と対戦相手へと絡みつき、両者の霊圧を吸って蓄積をしていく。
この状態の時、如何なる場合でも逃げることは不可能のため、鎖を破壊しようにもすぐさま再生されてしまう。
繋がれた者は、何度首を切られようが、何度胴体を真っ二つに両断されようが、何度大穴を開けられようが、蓄積された霊圧を使ってその度に即座に傷を回復させられ、攻撃を受ける前の無傷の姿に戻る。
これは敵味方関係なく、能力にかかっている全ての者に効果があるため、檜佐木が敵を攻撃した場合であっても同様に、敵の傷が回復し、敵も攻撃を受ける前の無傷な姿に戻ってしまう。
ただし、この回復は両者の残存霊圧を均等に吸いあげていくので、負傷するたびに両者の霊圧が減っていき、やがて衰弱していくことになる。
これは信頼できる第三者がいて初めて成立する卍解であり、お互いに体を傷つけ合い敵が衰弱したところで卍解を解除し、味方にトドメを刺さしてもらうのが理想的な戦い方となる。
京楽曰く「縛道系の卍解の極地」。
また「二刀の鎌が本体ではなく、その鎌をつなぐ【鎖】こそが風死の本質」であると推測している。
風死は常々「命を差し出せ」と言っていたが、これは「死ね」と言っていたわけではなく「死ぬも生きるもひっくるめて命を自在に操れ」という意味だった。
命の循環を止め生と死の境目を無くした卍解は、死ぬことを恐れ、師である東仙を斬って以降は誰かを斬ることも恐れていた檜佐木にふさわしい能力であると言えるだろう。