「それは誤解だな。確かに彦禰は道具だが、私は『人』を道具などとは思っていない」
「自らの意志で物を考え、叫び、喚き、勝手に絶望する、実に滑稽な見世物だと思っているよ」
CV:津田健次郎
概要
本作のオリジナルキャラではあるが、『BLEACH』本編のストーリーに物凄く深く関わった超重要人物。
かつては護廷十三隊に所属する死神であり、現在は離隊。京楽春水と浮竹十四郎とは霊術院時代の同期の関係である。
東仙要の親友・歌匡の夫で、彼女を殺害した張本人であり、東仙闇堕ちの原因とも言える人物。(これが原因で東仙は藍染惣右介の部下になった)
銀城空吾の仲間を斬るように指示したのも彼の一族であり、そこから更に彼が銀城を死神殺人事件の犯人に仕立て上げるなど銀城闇堕ちの原因も作っている。これが原因とされる死神代行消失篇は銀城がラスボスだが、時灘が黒幕といってもほぼ間違いない。
綱彌代家の当主とその周辺人物が次々と暗殺される中、その暗殺者を全て返り討ちにした功績によって、末席から一気に当主の座へと上りつめた。
人物
他人を蹂躙する行為を至福とし、その為には手間隙を惜しまず危険を冒すのも厭わない、極めて享楽的且つ極悪非道の性格をしている。
前述した当主暗殺の事件においても、かつての同期である京楽は暗に時灘の自作自演による策謀の可能性を示唆した上で「彼は、そういう事を平気でやる男だよ」と述べ、普段滅多に人を悪く言わない京楽の言葉に檜佐木修兵、伊勢七緒、六車拳西を驚かせた。
他にも京楽から「彼は『できない』と見せかけておいて、土壇場で『実はできた』と相手を絶望させるのが好きな男」とまで評されており、実際に戦闘スタイルにおいてもそれを組み込んだ形を行おうとしている様子が窺える。
その極悪度は、シュリーカーと同等かそれを上回る。
ある意味、「他人の不幸でメシがうまい」の極致を行く男と酷評でき、その最たる行動が煽りである。
初登場の過去回想シーンにおいて、盲目の東仙を利用した「上げて落とす」言葉で煽り、彼を怒りと絶望の縁に叩き落としたのを初めとし、登場するシーンの大半において名も無い暗殺者のモブから、初対面の破面であるハリベルにまで煽りを欠かさない。
作中では、鬼道で隠れていた七緒に対し、彼女の母親の処刑事実を持ち出して目の前の京楽を乏しめる形で間接的に煽ったり、勤めて感情を殺して冷徹に接する砕蜂に対しても「いっそ私が夜一を妻として迎え入れれば、身内として真に尊敬してくれるのかな?」などと煽って、彼女がキレる寸前までいった。
無論だが、作中人物には煽りの効かない人物もそれなりに存在する。
かつて四番隊副隊長を務めた山田清之介に対して、卯ノ花烈を引き合いに出して煽ったものの特に堪えず、時灘も「人の心がない奴をからかってもつまらんな」として拍子抜けした。
また、浦原喜助に至っては「言葉選びのセンスも零点です」と断じられてしまった。
しかし単に口だけの男ではなく、壮大かつ入念な計画を持って準備しており、その目的の大きな理由が「自らが楽しむため」であったりと、とにかく自分の欲を満たすためならば手段を選ばぬ外道であり、また、隊長格や破面、滅却師の混成部隊相手に単騎で相手取る戦闘力を持ち合わせており、能力無しの状態でも砕蜂をして「斬術は想像以上に堂に入ったものである」と評している。
斬魄刀
- 九天鏡谷(くてんきょうこく)
解号は【奉れ】(たてまつれ)。
伊勢家の八鏡剣と同じく、綱彌代家に代々伝わる斬魄刀。
時灘自身の斬魄刀も存在するが、追放処分になった時に没収されている。
解放した際には形状変化は見られないが、見えない鏡のような結界を展開し、鬼道を含む相手の技・術を跳ね返す能力を持つ。
ただし、京楽の見立てでは「四大貴族が代々守り続けている斬魄刀にしては能力が妙だ」と思っており、「それだけの能力ではないだろう」とも推測している。
時灘の実力は藍染に遠く及ばず、霊圧自体も朽木白哉や夜一と同格だが、それでも隊長格が総出で戦わないといけないほどの強さはあり、時灘戦に参加してる敵の中で時灘以上に強く、かつ鏡花水月にかかっていないキャラは銀城、更木剣八の2人しかいないなど、通常の隊長格よりも遥かに強い(味方陣営も産絹彦禰と道羽根アウラの2人のみ)。
以下、ネタバレ注意
「己の愉楽に命を賭けぬ人生に何の意味がある?」
真の能力
- 艶羅鏡典(えんらきょうてん)
上記の九天鏡谷は本来の能力を隠すための偽名だった。
わざと花天狂骨と似た名前にすることで京楽に親近感を持たせ、その上で「同じ名前の斬魄刀があると思っていたのか」と煽ることが目的であった模様。
解号は【四海啜りて天涯纏い、万象等しく写し削らん】(しかいすすりて てんがいまとい ばんしょうひとしく うつしけずらん)。
花天狂骨に似た「7&7、9&7」のリズムとなっている解号。
解放すると刀身が眩く光り輝いた後、刃が消失する。
その能力は他者の斬魄刀の能力を自由自在に模倣(コピー)する能力。
始解までが模倣できる限界のようだが、一度艶羅鏡典を解放すれば、後は模倣する斬魄刀の解号を詠唱することなく、好き放題に使用可能。
作中では多数の斬魄刀の能力を模倣して見せた。
一見、チート斬魄刀に聞こえるが、よくも悪くも霊圧次第であり、本物の使い手より時灘の霊圧のほうが高ければ本物より強くなるが、逆に低ければショボくなるという弱点にも強みにもなる特徴がある。(例えば瓠丸は傷口を一瞬で回復させられるチート斬魄刀になるが、流刃若火は山じいの足元にも及ばなくなるなど。なお、生まれが特殊な斬月も再現しきれず、脆くなっていた。)
また、この能力を使用する度に魂魄(命)が削られていき、二度と元に戻らないという重大なデメリットも存在し、正にハイリスク・ハイリターンな能力と言える。
過去
- 少年時代
五大貴族・綱彌代家の分家末席として生まれた少年の時灘は「楔である霊王が存在する以前の世界は如何なる世界だったのか?」と問い、叱責され、彼は無理矢理納得したフリを続けながら、虚飾に塗れた栄華に浸る自分達の一族を心の中で見下しながら時を過ごした。
- 真実を知る
綱彌代家の秘蔵中の秘とされる書庫の最奥にて、世界の成り立ちと綱彌代家……もとい五大貴族の罪の全てを知り、己の想像通りにこの世界は腐っていて、自分達は想像以上に救いようがない事を確認した時灘は、世界に感謝して笑う。
「世界が悪辣であるならば、自分も悪辣であるべき」とする自らの悪意が正当であると証明された事実に、喜びを覚えたのだ。
何かのきっかけや悲劇を経て悪になった訳ではなく、純然たる己の意志で他人を虐げ驕奢を恣にした時灘は、真実を知って自らの悪が指向性を変えるに至った。
- 歌匡との出会い
綱彌代本家の命令で「とある『素養』を持つ流魂街の女性を、実験のために妻にする」ように時灘へ命令が下る。
本家からの指示云々より以上に、自身が「無力な女性が幸福の絶頂から奈落の底に落ちる瞬間を見たい」がために、その指示に従い、偶然を装って女性───歌匡に接近。偽りの優しさと自分の身分を武器として結婚まで漕ぎ着ける。
そして祝言を挙げた次の日の夜に、時灘は全てを明かした。
『お前のことなど愛してはいない。ただお前は、綱彌代家の実験体として選ばれただけだ』
『今から結婚を破棄すれば、お前だけではなく出身である流魂街の人間達も難癖をつけて処罰されるだろう。お前がよく話していた要という親友もただでは済むまい』
「一体どれほど滑稽な絶望の表情を浮かべるのか?」と期待していた時灘は、あっさりと裏切られる事態となった。
「貴方はまだ、星を見た事がないだけよ」
歌匡は衝撃を受けるわけでもなく、失望するわけでもなく、ただ小さな子供を諭すように返した……純朴な慈愛に満ちた声で。
歌匡は全てを悟っており、彼女は「知った上で時灘と結婚したのだ」と告げた。
時灘にはどうしても許せなかった。
まるで自分よりも遥か高みにいる場所にある者から、何かを与えられる立場へと貶められたような錯覚を覚えたからだ。
- 真央霊術院時代
自分が他者に侵蝕される焦りにも襲われたが、本家からの指示で婚姻してる身である以上、殺害も離縁もできないでいた。
当時の時灘は京楽曰く「目立たない奴で、影みたいに過ごしていた」らしいが、そんな彼にも浮竹は普通に声をかけて、友達として接していた。
そして、ある日。表向きは親友として時灘や歌匡と繋がっていたとある平民上がりの死神が、偶然綱彌代家の計画を知ってしまう。
その死神は深夜に時灘を呼び出し、真意を問い質す。
時灘はあっさりと真実を告げた……「自分が歌匡を欠けらも愛していない」事実をも含めて。
親友だと思っていた男がただの外道だと気づいた男が、どのような顔をするのかを見たいがために。
期待通りに男は絶望したような顔をした後、『友として貴様を斬る』と宣った。
実力の伯仲する両者の決闘へと事が及び、いつどちらが倒れてもおかしくない状況でそれは起こった。
夫を探していた歌匡がその場に現れ、斬り合いを止めるべく両者の間に割って入ったのだ。
その瞬間、時灘は間に入った歌匡の体をそのまま相手の方へ突き飛ばし、迷わずに歌匡の体ごと敵の死神を斬り捨てた。
時灘は「今度こそ偽善的な考えに傾倒していた妻に絶望を与えられた」と興奮し、笑みを浮かべるが……
「ごめんなさい……」
「私は……貴方の雲を払ってあげられなかった……」
「お前は……最期まで、最期まで私を見下し憐れむのか!」
「……私は星を見た事がないだけだと?」
「私の雲を払えなかっただと?」
「馬鹿を言うな、馬鹿なことを言うな歌匡!」
「私は最初から雲の上に立っている! いや、私こそが雲だ!」
「間違っていたのは君だ!」
- その後
それからすぐに本家の人間に呼び出された時灘だが、こう弁明した。
「流魂街出身の貧民の夫である事が耐えられなかっただけです」
身内から罪人を出したくない綱彌代家の後押しもあり、「妻が友人と不貞を働いている場面を見て、逆上した友人が妻を斬り殺したため、やむなく返り討ちにした」との証言になった。
綱彌代家の人間がそう答えれば、裁判すら開かれない可能性が高かったが、発言力の高い上級貴族の次男であった京楽が確固たる証拠を突きつけた為、裁判沙汰にはなったものの、減刑されて蛆虫の巣へ送られる刑が決定されただけであった。
京楽は「斬っておかなかった時点で手遅れ」とまで断言していたが、浮竹は改心する時をずっと信じていたと。
そして歌匡の親友であり、犯人が死刑にならない実態を憤っていた東仙に対し、時灘は初め自分がその犯人であるのを隠して近づき、東仙に復讐を止めるように諭してみせる。
その後に自らの正体を明かしてみせ、
「いやあ、君が復讐を望まないでいてくれてよかったよ」
「妻の事を想うならば、私の事を許し、憎しみを忘れ、我ら死神に護られた安寧の中で日々を生きるべきじゃあないのかな?」
と悪辣に煽ってみせた(そしてこの一件が、東仙がとある死神と行動を共にする切っ掛けとなった)。
最後
檜佐木修兵や平子真子たちの連携によって満身創痍となり、斬魄刀ごと斬り落とされた右腕はお狂に隠され、無防備になったところを銀城の月牙天衝で止めを刺される。
その後、藍染がかつて使用した空間転移術(禁術)を使い逃亡、核兵器並の砲撃を放つ装置や金色疋殺地蔵に匹敵する毒素をばら蒔く霊子砲を装備した城砦兵装を発動とさせようとするが、浦原によって阻止される。そこで今度は浮遊システムを解除し、それまで浮遊していた空中楼閣を落下させ始末しようとする(本来は転界結柱でこれを空座町の上空に転移させ、空座町に落下させる予定だったらしい)が、アウラの尽力により落下速度が低下し、失敗。
アウラの始末を彦禰に命じた後、小型転界結柱で綱彌代家に逃亡するが、そこには何故か涅マユリがいた。マユリが「時灘の研究の末路を見届けにきた」事、「鍵をかけ直さなかった」事を皮肉気に時灘に謝罪した直後、何者かに背中を刺される。それは暗殺者の少女であった。
時灘は自分がかつて起こした『綱彌代家殺人事件』の罪を暗殺者の一家になすりつけて始末しており、彼女はその一家の者だった。皮肉にも熟練者とは程遠い素人同然の暗殺者の少女から、家族の仇討ち目的で止めを刺される形になったのである。
そして激昂した暗殺者の少女に時灘は何度も刺されるのだが、瀕死の状態となっても少女に対する憤慨や懺悔は一切見せず、自分のこれまでの行いを微塵も後悔せず、改心もしないまま死ぬ事実に歓喜し、自分を罰せられなかった京楽、東仙、檜佐木、銀城、アウラを血反吐を吐きながら嘲笑った。
更には自分を信じようとした浮竹を嘲笑い、そして最期に「どう……だ……歌匡……私は……星を……」と呟いて事切れた。
その壮絶な死に様は、時灘を刺した暗殺者の少女でさえ恐怖で固まるほどのものであった。
マユリは時灘への興味が失せたとばかりに部屋を後にし、暗殺者の少女も怯えたまま部屋から立ち去り、後には時灘の無残な死体だけが残った。
四大貴族の筆頭としてはあまりに無様であり、しかし最後まで己の魂を貫いた死に様であった。
上記の通りの作中屈指の極悪人だが、地獄に落ちたかは不明。
関連イラスト
下記のイラストは「もし崩玉藍染や霊王バッハと同格になったらというif」を想像したファンアートである(作者のコメントを和訳すると分かる)
関連タグ
サイコパス だいたいこいつのせい 人間のクズ/人外のクズ 外道 卑劣漢 愉快犯
折原臨也:成田良悟氏の作品デュラララの主要人物にして黒幕的存在。容姿や作中の行動が似通っており、時灘は『BLEACH版折原臨也』とでも言える存在である。但し臨也は歪んではいるものの人間を愛しており唯一の友人からは「心が脆すぎて人間の暗部を直視できないから開き直って全て受け入れる事にした。」(意訳)と評されており、時灘とは180°違う人間性を持ち合わせている。