曖昧さ回避
- 仏教における天部の女神。本項目で解説する。
- 『はっぴぃセブン』の登場キャラクター→黒闇天(はっぴぃセブン)
- 『ELSWORD』(エルソード)の登場人物アラ・ハーンが選択できる上位職の一つ。
概要
吉祥天の姉である女神で、妹が幸運を司るのに対し、彼女は不運を司る。サンスクリット語では「カーララートリー」という。
「ラートリー」には「闇」のほか「夜」の意味があり、漢訳仏典では黒夜天、黒夜神、黒闇、黒闇天女、黒闇神、黒闇女と表記される。
音を移し替えた「迦攞囉底哩(かららていり)」という呼び方もある。
インド神話(ヒンドゥー教)において「幸運の女神(ラクシュミー、吉祥天)の姉妹である不幸の女神」のポジションにあるのはアラクシュミーであり、「カーララートリー」はドゥルガーの九つの相「ナヴァ・ドゥルガー」の一つとなっている。
吉祥天と常に行動を共にする女神であり、大乗仏教版『涅槃経』ではその事に言及したエピソードが語られる。
ある家に美しい女性が来て吉祥天と名乗り、自身を財宝をもたらす存在と語ると家人は彼女を客人として受け入れた。次にみすぼらしい服装の女性が来て黒闇天と名乗り、自分が来るとその家の財産は全てなくなると語った。
すると家人は彼女を拒絶した。すると吉祥天がやって来て先ほどの黒闇天が自分の姉であるといい、どちらかが去ればもう一方も去ると伝えた。家人は姉妹両方を追い出すことにした。
ふたりが次に訪れた家の人は二人とも客人として受け入れたという。
密教経典『大日経』の注釈書『大日経疏』によると、彼女は閻魔(ヤマ)に侍る后だという。閻魔(焔摩)には他に「閻摩后」「死后」という二人の妻がいる。
「閻魔后」は焔摩天の眷属である「(焔摩)七母天」のメンバー(焔摩妃)でもあり、焔摩天の傍らのほうには黒闇天と死后だけが描かれるパターンもある。
図像表現
胎蔵曼荼羅では焔摩天の傍らに座す。天人形で左手に人の頭あるいは顔のついた「人頭杖(檀拏幢)」を持つ。醜い容姿であるともされるが、少なくともこの曼荼羅での表現は一般的な天女のような容貌である。
『地蔵十王経』によると、閻魔の国の城壁の門には立ち入る者の行状をあまさず見抜く「檀拏幢」と、黒闇天女と太山府君の幢があるという。
これらは後に統合され、「黒闇天女と太山府君の頭の乗った柱」の形状をした檀拏幢として、閻魔王の裁判の場に置かれる装置として描写されることになった。
信仰
吉祥天と表裏一体の関係にある姉妹神だが、吉祥天と共に祀られるケースを見つけるのは困難である。吉祥天は(漢訳仏典を用いる伝統では夫とされる)毘沙門天や彼とのあいだにもうけた子の一人である善膩師童子(ぜんにしどうじ)と共に祀られる事が多い。
例外的に単尊として祀られた例は存在しており、東京都文京区の小石川牛天神(北野神社)の末社「太田神社」では、明治時代の神仏分離令以前には黒闇天が祀られていた。
伝承においては「貧乏神から福の神に転じた女神」として登場する。なお、太田神社の現在の祭神はアメノウズメとその夫のサルタヒコとなっている。