概要
日天に付き従い、常にその前を疾行する俊足の持ち主。
焼けず、濡れず、傷付かず、目立たず、すばやく仏敵を発見して切り込んでいくという。
中国ではモーリーチーティエン(Molizhitian)、韓国ではマリジチョン(Marijicheon)、ベトナムではマーロイチーティエン(Ma Lợi Chi Thiên)、チベットではオセルチェンマ(Ozer Chenma)と呼ぶ。
マリーチ(「光線」の意)という梵名を持つが、インド神話に彼女に対応する神は存在しない。同名の神はいるが、こちらは男神で、マルト神群(嵐の神々)の一柱。
ブラフマーの息子で、リシ(聖仙)やプラジャーパティ(創造神)の一人、という顔を持つ。名前が同じ別神といったところか。
現在では、インド神話に登場する“暁の女神「ウシャス」”が、摩利支天の原型として有力視されている。
姿
猪に乗り、様々な武器を持つ女神。
蓮に腰掛け、その蓮が猪の背に乗っているものが多い。
大抵、顔は一つ、腕は二本(一面二臂)の姿で表されるが、
三面かつ六本腕、八本腕(三面六臂/三面八臂)の姿も存在する。
多くは片手に剣を握っている。男性の姿の像も作られている。
信仰
その勇ましい姿から、毘沙門天と並んで武芸守護・戦勝祈願、
また主に付き従って功を立てる姿から“武士の守護者”の天部として信仰される。
また准胝観音と同一視されることもある。
著名な信仰者に楠木正成、毛利元就、山本勘助、前田利家がいる。
真言は――
オン アニチ マリシエイ ソワカ