概要
日本海軍が太平洋戦争中に行った駆逐艦による輸送を前線部隊が揶揄して呼んだ。「鼠」は夜になると盛んに動き出す様から。
大発などを利用した輸送は「蟻輸送」、潜水艦による輸送は「モグラ輸送」と呼ばれた。
アメリカ側は東京急行(Tokyo Express)と呼んだ。
背景
1942年8月7日、アメリカ海兵隊がガダルカナル島(ソロモン諸島)に上陸し、日本海軍が建設中の飛行場を占拠する。
日本側は早期奪還のため部隊を駆逐艦に乗せてガダルカナル島へ送り込み、これが鼠輸送の魁となった。
あくまでも一時しのぎの作戦であったが、ヘンダーソン飛行場完成によってアメリカ軍が制空権を握り、鈍足な輸送船は次々と空襲で沈んだため、駆逐艦による夜間の物資・部隊輸送作戦が常態化した。
作戦の実態と結果
普通の貨物船が排水量と同量の物資を輸送できるのに対し、戦闘艦である駆逐艦では15トンから20トンほどしか輸送できなかった。
さらに、物資を揚陸するためには大発などの舟艇が必要だが、駆逐艦には載せられないためドラム缶に防水処置を行って海上投棄しそれを補給先の部隊の大発で回収するといった方法がとられた。
これでは必要な物量が運び込めるわけもなくソロモン諸島、ニューギニア島などの戦線では餓死・戦病死が主な死因となった。
ガダルカナル島撤退作戦やキスカ島撤退作戦(両方とも正式名称は「ケ号作戦」)は成功を収めたため、「鼠輸送」とは呼ばれなかった。