ワイドFMとも呼称される。中波放送の放送法に定められた放送対象地域において、FM放送用の周波数を用いる中波放送の補完的な放送である。
前史
FM放送をAM放送の難聴取解消に使用できるようにしたのは1990年に放送用周波数使用計画に中波放送の外国波による混信対策が加わってからのことである。
最初にFMの中継局を置いたのは富山県の北日本放送で、その後NHK沖縄放送局が西表島の祖納でラジオ第一放送の中継局を開局させた。その後も21世紀初頭にかけてラジオ沖縄、琉球放送もFM波を利用した中継局を開局させた。
この制度が出来るより以前から沖縄の旧・極東放送ではソ連・モスクワ放送の混信で放送がほぼ成り立たなくなることから中波での事業継続を断念、社名・コールサインも全く別のFM局、FM沖縄に転換している。また類似の理由(混信が酷い)からヨーロッパでは既に大多数のラジオ放送がFMに転換されており(AMは国外向け短波放送のみ)、さらにはデジタルだけに移行したノルウェーのような国もある。
概要
2013年、総務省「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」が中間とりまとめを発表。その中で、AMラジオ放送によるFM波の利用促進としてアナログテレビ放送終了で使われなくなったVHF帯域のうち90MHz-94.9MHzを新たにFM補完中継局として利用可能なようにした。
開設目的は都市型難聴取対策、外国波混信対策、地理的・地形的難聴対策、災害対策の4つと定められ、更にAM放送の親局を補完する「(親局の主たる)補完中継局」と「中継局」を補完する「その他の補完中継局」に分けられた。民放AMラジオ放送の親局に対応する「補完中継局」については放送対象地域ごとに1つの周波数が割り当てられ、中継局に対応する「その他の補完中継局」については目的ごとに使用周波数帯域が割り当てられている。
コールサインはAM放送とのサイマル放送(同時放送)を基本とするため、原則として割り当てられない。もちろん例外があり、試験的に別内容を放送した南海放送が試験の期間のみ中波局のサイン末尾に「-FM」と付けた免許を別途取得していた時期がある。
愛称
FM補完中継局はワイドFMが一般的な愛称として定められたが、各ラジオ局でも独自の愛称を制定している。