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  1. ハイ・ダイナミック・レンジ - 電気信号などにおいて、機器やデジタルファイルが一度に扱える信号の最大量と最小量の差(ダイナミックレンジ)が広いことを指す概念。主に映像と音声の信号で扱われる。 映像であれば明るさの差、音声であれば音量の差が該当する。 対義語としてロー・ダイナミック・レンジ(LDH)がある。 重要なのは、大きな信号と小さな信号を同時に扱えることである。ディスプレイであれば、いくら明るくなっても暗い領域がつられて明るくなるようではHDRとは言えない。
  2. 人間開発報告書 - 国際連合開発計画が1990年から毎年発行している報告書。この中で人間開発指数、ジェンダー開発指数、ジェンダー・エンパワーメント指数、人間貧困指数などが発表される。

ここでは1.のHDRについて、特に映像関係について解説する。


HDR合成編集

写真加工技術の一つ。露出を変えた同じ構図の写真を複数撮影し、これらをコンピューターで合成することで、写真の中の白飛びや黒潰れを解消し人が目で見た景色に近い写真を再現する技術。

低価格のデジタルカメラはカメラセンサーのダイナミックレンジが狭く、明るい場所と暗い場所を同時に撮影することが出来ない。しかし、画像ファイルのダイナミックレンジは余裕があるため、露出を変えた複数画像を連結させることで疑似的にダイナミックレンジを広くしている。


Pixivタグで「HDR」が使われているイラストはほとんどがこの「HDR合成」風な画像である。


HDRレンダリング編集

3DCGの画像の明るさを計算する段階において、ディスプレイの明るさのダイナミックレンジを超えたダイナミックレンジで内部計算すること。

2015年ごろに後述のHDR映像規格が出るまでは「HDR」という言葉はもっぱらHDRレンダリングを指していた。


現実世界の明るさを模倣できるため、よりリアルなグラフィックを出力できる。大量のデータ転送を必要とするため2000年代から使われ始めた技術。

ディスプレイに画像を送る段階になると、ディスプレイの明るさダイナミックレンジに合わせるためにトーンマッピングという作業を行う。

このトーンマッピング作業に少し手を加えると後述の「HDR映像規格」に簡単に対応できたりする。


2010年代以降の3DCG、特にゲームにおいては一般的になった技術であり、2005年に発売された「Half-Life2」というゲームの技術デモとしてHDRレンダリングは大々的に宣伝されていた。



Pixivタグで「HDR」では一部この「HDRレンダリング」に関連したイラストがある。


ハイ・ダイナミック・レンジ・イメージ (HDRI)編集

画像の諧調を精度良く扱うファイル形式、もしくはそのファイル形式で保存された画像のこと。

前述のHDRレンダリングなどで生成された画像をトーンマッピングせずに保存した画像であり、HDRレンダリング時の画像素材として使用する。

元々は建築業界が照明環境のシミュレーションのために生み出した技術。


最近では後述のHDR映像規格をキャプチャした画像の保存形式として選ばれることがある。

新しい写真表現として選ばれることもあり、写真データからHDRIを作って個人サイトで公開している例もある。


PixivではまだHDRI形式の画像ファイルは投稿できないが、GoogleChromeなど主要なブラウザは対応しており、HDR映像規格に対応した環境なら強い明るさなどを体験できる。


種類

  • OpenEXR
  • JPEG XR
  • AVIF
  • HEIF

HDR映像規格(HDR10、HLG、DolbyVision)編集

2015年頃から使われ始めた『より現実に近い映像を再現するための新しい映像信号規格』である。

ハードウェアのディスプレイと映像信号の両方のダイナミックレンジを拡大させて、より美麗な映像を表示する。

2020年代でHDRといったらもっぱらこれを指す。


2010年代以前のブラウン管液晶ディスプレイは強い光を作り出すことが難しく、現実世界を映した写真や映像を映す際に、本来なら明るく光る部分を白色で塗りつぶすなどして「ここは明るいんだ」と思わせることで疑似的に表現していた。


しかし、技術の進歩により液晶ディスプレイなどで真っ暗に近い部分と、強烈に明るい部分を同時に表現することが可能になったため、これに対応した映像信号としてHDR規格が作られた。


非HDRであることを示すために対義語として「SDR」という言葉がある。


HDR映像をHDR対応のディスプレイで観賞すると、日差しなどの明るい部分が強烈に発光することで明るく表現され、現実の風景を肉眼で見ている感覚に近づくのである。

HDR映像では「コピー用紙のように光っていない白色」と「電灯や太陽など光っている白色」を区別して表現することができる。


なお、HDR対応ディスプレイはいまだ発展途上であり、現在は「どれだけ明るい光を出せるか」で各社がしのぎを削っている状況にある。


制作編集

HDR映像を作るには、「扱える信号の強弱範囲が広い」つまり明るい場所も暗い場所も同時に捉えて記録できるカメラと、記録した信号をHDR映像規格として保存できる編集環境が必要である。


HDR静止画も存在し、スチルカメラで撮影したRAW画像をPhotoshopでHDR画像として現像したり、KritaではHDRイラストを制作することができる。

保存する際は前述のHDRI形式を使用する。


利用編集

HDR映像は2015年ごろに定められた超高精細度テレビ(UHDTV)の規格で規定されており、日本の4K8Kテレビ放送や、映画館やUltra_HD_Blu-rayなどで利用されている。インターネットではyoutubeでHDR動画を利用できる。


近年ではゲームでの利用も盛んで、PS5などはHDR対応ゲームが揃っている。

前述のとおり現代の3DCGゲームはHDRレンダリングにより内部でHDR信号を取り扱っているので、HDR映像との親和性は高い。


技術的な詳細編集

明るさの扱い方編集

HDR映像は現実世界の内「ハイライト」や「発光」など画面の一部を明るく見せることを想定しており、画面全体が明るく光るわけでは無い。

拡散反射(ハイライト以外の領域)の部分はSDR映像とほぼ同一の見た目を想定している。

しかし映像編集者によっては拡散反射領域も明るくして見栄えを上げることもある。(HDR映像は暗い?も参照)

HDRは暗い?編集

上記の通り、「拡散反射領域の明るさはSDRと同じ」とされている。しかし、ここで言うSDRの明るさとは、映画館など暗い環境での視聴を前提とした基準であり、多くの人々が映像を見るリビングや自室といった明るい環境は考慮されていない。


さらに、現在HDRで広く使われている規格では、明るさが絶対的に固定(見栄えの統一のためにこのようになっている)されているため、拡散反射領域は映画館での視聴に適した明るさに固定されてしまう。これにより、大多数の人はHDR映像の大部分を占める拡散反射領域を暗く感じ、「HDR映像は暗い」という結論に至るのである。


HDRディスプレイの性能編集

HDRに必要とされる強力な発光能力はコストが高いため、現在では明るさの低いHDRディスプレイも多く流通している。

しかし、HDRは映像信号がディスプレイの明るさを直接指定するため、映像が要求する明るさをディスプレイが満たしていない場合、その部分は表現不能となり、「白飛び」や「黒つぶれ」が発生することになる。


HDR映像にはこれを避ける仕組みが備わっている。映画などの映像作品では「メタデータ」と呼ばれる映像の明るさに関する情報が埋め込まれており、映像プレイヤーはこれをディスプレイに送信する。

メタデータを受け取ったディスプレイは、自身の性能とメタデータを照らしあわせる。そして自身の性能を超えた映像と認識すると適切に表示できるように映像を加工。これを画面に表示することで白飛びを抑制している。


この一連の操作を「トーンマッピング」と呼ぶ。


しかし、このトーンマッピング、ディスプレイの性能やメーカーの意向によって動作がまちまちで、「映像作成者の意図したとおりの映像を表現できない」という問題が浮き彫りになっている。

そこで最近は、トーンマッピングを映像再生機器(BDプレイヤー、ゲーム機、パソコン...)側が行うことで、トーンマッピングの動作を統一化しようという動きがある。

例としてPS5XboxなどのHDR対応ゲーム機はメタデータそのものを送信せず、ゲームのソフトウェ上でトーンマッピングを行ってしまう。この場合、ディスプレイの明るさ性能はユーザーが何らかの形で入力することになる。


HDR規格の種類編集

HDR映像は規格が複数存在し、それぞれ特徴がある

  • HDR10
    • 一番ポピュラーな規格 映画、ゲーム、インターネットでよく使われる。「静的メタデータ」を採用し、映像一本に対し固定のメタデータを使用する。 映像信号に対して画面の明るさは絶対的であり、見栄えは統一されるが前述のとおり映像が暗い。
  • HLG
    • テレビ向けHDR規格 日本の4K8K放送とインターネットで使われている。シンプルなのでカメラでの撮影でも採用例が多い。 こちらは画面の明るさは相対的であり、見栄えの不一致の代わりに明るい部屋に合わせて設定を変えることができる。
  • HDR10+ & Dolby Vision
    • HDR10をベースに「動的メタデータ」を追加した規格。映像のシーンごとにメタデータを切り替えることでトーンマッピングを最適化し、性能の低いディスプレイでの表示能力を改善している。ほぼ映画専用。

関連タグ編集

レポート Photoshop iPhone

HDMI テレビ デジタル放送

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