「オイちょっと待て。メイン画像間違ってないか?」とお思いの方もいらっしゃるかと思うが、
そんなツッコミをあえて無視して概要に入らせていただく。
概要
アイテム番号:SCP-4974
オブジェクトクラス:Safe
SCP財団が管理するSCPオブジェクトの一つ。通称「ねずみSCP」。
あの人気キャラクター、「ピカチュウ」そのものの姿をした不思議な生き物。実際、報告書の最初の一文には「メディアミックス作品「ポケットモンスター」のキャラクター、ピカチュウと審美的に同一の異常生物」と明記されており、画像の添付こそ無いがその姿は疑いようもない。しかも周囲に強力な電場を発生させるという、オリジナルのピカチュウを彷彿させる能力を持ち、実験や身体検査の目的で接近する場合は感電を防止するための絶縁性の防具を全身に装備する事が義務付けられている。
見た目も能力もピカチュウそのものだが、その体組織的は海綿状の黄色い物質だけで構成されており、その内側には筋肉も骨格も存在せず、血液すらも通っていない。行動も機械的且つ限定的で、「ピカチュウ」と聞こえる鳴き声を発しながら飛び跳ねたり、首を傾げたり、円を描くように走り回ったりをランダムに繰り返している。先述の電場の発生もそんなランダム行動の一環。外的な刺激には特に反応を示さず、知性や感情などもまるで感じさせない。最早「生き物」として認められるのかどうかも怪しく、「非常に精巧な造りのピカチュウを模した玩具」と言われた方がしっくり来そうである。
生物なのか玩具なのかも判断に困るこのSCP、実は製作者がほぼ特定されている。
製作者の名前は「ポール・テランス」。ニューメキシコ州に住んでいた木工士である。しかしすでに彼は死亡しており、直接話を聞けているわけではない。SCP-4974は彼の死後、彼の自宅にて発見されたのである。
彼の自宅の地下室からは、300個を超える「ポケットモンスター ピカチュウ」のコピーソフトの他、実験・開発用と思われる怪しげな品々やSCP-4974の失敗作とみられる奇形のオブジェクトが発見された。彼は近代錬金術に興味があったらしく、結果的にこのようなピカチュウの模造品を作り出す事に成功してしまったらしい。
それでは何の目的でこのような歪な存在を生み出したのか。それは発見当時の彼の自宅の様子からある程度察する事ができる。
彼の家には焼け焦げ、破裂した風船が散乱していた。その風船には「ハッピーバースデー」と書かれていた。
子供部屋には、彼の8歳の息子「アダム・テランス」の亡骸があった。死因は強力な電撃の暴露による心停止。
そしてリビングには、拳銃で自らの頭を撃ち抜き、息を引き取ったポール・テランス氏本人の遺体。
そう、彼は息子の誕生日プレゼントとして「ピカチュウ」を用意したのだ。世界的にも人気のキャラクターが目の前で動いている事実に、彼の息子はどれほど感動した事だろう。きっと「その瞬間」までは微笑ましい光景が広がっていたはずだ。
しかしその日、彼の最愛の息子は自分の与えたプレゼントによって命を奪われてしまった。彼の錬金術はピカチュウの「能力」までも高いレベルで再現してしまっていた上、それを制御する術は授けていなかった。そして取り返しの付かない悲劇を起こしてしまったのだ。ポール氏の心境とその後の行動は察するに余りある。
確かにピカチュウは可愛らしい姿をしている。世界的にも有名で人気の高いキャラクターだ。しかし、少なくとも当時のゲーム本編のピカチュウの本質はただのマスコットではない。時に10まんボルトもの超高電圧を武器に戦う"モンスター"である、電気の危険性は電圧(V)よりも電流(A)、電気抵抗(Ω)とは言われるがここまで電圧が高いとむしろ意識して低アンペアにしない限り負傷は免れない(スタンガンなどは100万Vにも及ぶものがある)し、まして10歳にも満たない子供に浴びせればショック死してもおかしくはないだろう
ポール氏のバースデーサプライズはそんな存在を現出し、何の制御も施さずに子供に与えてしまった。結果だけ見れば計画段階から致命的な失敗だったのかもしれない。勿論、ポール氏はただ息子が喜ぶ光景が見たかっただけだったのだろうし、ましてやこのような結果など微塵も望んでいなかっただろうが。
余談
実はメディア作品のキャラクターが関わるSCPオブジェクトは他にもいくつかあり、ポケモンに至ってはこのオブジェクトが2体目である。