https://www.youtube.com/watch?v=iYjBCpEmf7w
概要
VADSとは、アメリカ合衆国で開発された対空機関砲である。F-15戦闘機などが搭載する航空機関砲として知られるM61バルカンをベースとした6連砲身の20mm機関砲と、射撃用のレーダーや弾道計算機を半自動で作動させる一連のシステムからなり、低空で侵入してくる敵機の迎撃を目的に開発された。
毎分1,000~3,000発という驚異的な発射速度は原型のM61由来だが、M61と違って6本ある砲身が正面から見るとやや楕円になるように配置されており(M61では真円状に配置)、発射された砲弾を意図的に散らばらせ、敵機の進路上に弾幕を展開して侵入阻止・爆撃阻止を行うことが考慮されている。
開発国のアメリカをはじめ、日本や韓国などの西側諸国でも広く運用された。
主なバリエーションとしては牽引式対空砲型のM167が主流だが、派生型としてM113装甲兵員輸送車に乗せて対空自走砲化したM163対空自走砲がある。また、一部の国では旧ソ連製のBTR-152に搭載した事例もある。
日本での運用
日本でも航空自衛隊が基地防空用として1979年に導入したが、2021年に運用を終了したため、現在は廃止されている。
日本では複数の派生型が運用され、牽引式M167を原型として導入したVADS-Iに赤外線TVカメラを追加したVADS-I改、退役したF-104J戦闘機のM61を再利用したVADS-II、その簡素版のVADS-Ⅱ省力型があった。
これらのうちVADS-Ⅱと同省力型は事実上のリサイクル品であり、そのため射撃管制装置も持たなかったものの、M61は日本国内でもJM61としてライセンス生産されていることもあり、国産化可能な対空機関砲でもあった。
逸話
VADS、実は射手用操作パネルの切替スイッチに『GROUND』、つまり水平射による対地射撃モードがある。対空用の20mm機関砲弾を毎分3,000発で水平射撃すれば、生身の敵兵であれば一瞬でミンチにしてしまうだろう。
これを活用したかは不明だが、某空自基地では陸自との警備訓練で毎回やられていた基地警備隊が業を煮やし、侵入者役の陸自部隊にVADSで20mm弾による水平射撃を敢行。もちろん訓練なので実際には撃たないが、レンジャー隊員を含む普通科部隊に壊滅判定を与えたという逸話がある。空自側にとっては心強い味方となったのだろうが、その後VADSは訓練出禁になったとかなんとか(空自側の教育にならないとの理由らしい)。
ちなみにこの話、どうも複数の基地で同じような話があったらしく……
- とあるレーダーサイトでは空自側の軽装甲機動車を奪取した陸自が正面突破を図ろうとした所(この時点で既に話がおかしいが)、正門にVADSが据えられていて「あんなのあるなんて聞いてねぇぞ」と正面攻撃を取りやめる。なお普通に迂回された。
- 千歳基地ではとりあえず指向させするだけで全滅判定を与えられるので無類の強さを誇った。格納庫の陰に隠れても命中判定にされた。
- 全滅判定喰らった陸自側が「ノーカン!ノーカン!」とブーイングの嵐だった。
- VADSで全滅判定を喰らわされた陸自部隊が、翌年からVADSを最優先で狙って撃破したり、対抗のために対戦車誘導弾持ってきた。
- 奈良基地の基地警備隊に警備について聞いたら「VADSで薙ぎ払うからモーマンタイ」とか言われた。
- とある基地でも空自幕僚がVADSの水平射撃を提案したら現場隊員にしこたま怒られて却下された(仮に実戦でやったら周辺市街地への流れ弾甚大になるのは自明のため)。
……などなど、様々な話がある(参照:𝕏️(旧Twitter)での「VADS 基地警備」検索結果)
なお、VADSは基地警備隊ではなく基地防空隊の装備だが、どうやって基地警備に持ち出されたかは不明。いずれにせよ空自はVADSを退役させたため、もはや昔話であろう。
関連動画
https://www.youtube.com/watch?v=2roWU4fUYfA
https://www.youtube.com/watch?v=ORMXG825Mns