概要
レンジャー隊員とは、主に軍隊や自衛隊における兵科や職種等を表す用語。基本的には「レンジャー」と呼称されるが、ピクシブ百科事典では「レンジャー」が曖昧さ回避記事となっているため、個別解説のため本記事では「レンジャー隊員」のタイトルとする。
軍隊におけるレンジャーは、主に敵の撹乱や偵察を行う特技兵の名称として用いられる。現代においてはレンジャー隊員を育成するための教育課程を設けている軍隊もある。
「レンジャー」と呼称される優秀な部隊や隊員はアメリカ合衆国、フィリピン、マレーシア、タイ王国、イギリス、アイルランド、イタリア、ポルトガル、北マケドニア、ウクライナ、スウェーデン、日本の軍事組織などに存在する。かつては南ベトナムなどにも存在した。
アメリカ陸軍
アメリカ陸軍では「レンジャースクール」という教育コースを卒業し、レンジャー資格を所得した兵士がこの名称で呼ばれる。
レンジャースクールでは約60日間(約9週間)に渡り、選抜・山岳訓練・小規模部隊戦術の3課程のもとで兵士にリーダーシップを教育する。多様な悪条件環境で肉体的・精神的に困難な極限状況を際限なく与え、それを克服しながら部隊のリーダーとなり得るエリート幹部を育成させるものとなっている。
レンジャースクールを卒業した米陸軍人の一部は、準特殊部隊かつ即応部隊の第75レンジャー連隊に集中配属される。ただし卒業者全員が75連隊配属となる訳ではなく、むしろ全体としては75連隊に配属されないレンジャー隊員の方が多い。さらにレンジャースクールに入校していない者でも75連隊の配属となることもある。
陸軍の教育コースだが、参加者の門戸は陸軍以外にも開いており、海軍、空軍、海兵隊、宇宙軍、沿岸警備隊、さらには他国軍人の参加も可能となっている。ネイビーシールズやフォース・リーコンなどの特殊部隊隊員がレンジャースクールに入校することもよくあるのだと言う。
- 現役米陸軍幹部によるレンジャースクールの体験談動画(日本語)
https://www.youtube.com/watch?v=_0UUAvQgpV0
日本
日本では陸上自衛隊のそれが一番有名と思われる。陸自ではレンジャー課程(部隊集合教育)を修了し、レンジャー徽章を有する者がレンジャー隊員と呼ばれる。レンジャー課程では過酷な訓練を9週間に渡って受けることになり、その過酷さは修了者が全自衛官から一目置かれる存在になると言われるほど。
レンジャー課程では隊員が各種任務への適応に必要な能力、知識、技能等を習得し、さらに山地や水路での実習といった様々な訓練を行うことで、真に戦える隊員を育成するための強靭な体力と精神力を養う。
この訓練での逸話としては「生きたヘビを調理して食べる」という話が有名だろう。また課程期間中の隊員は「バディ」と呼ばれる相方を組んで必ず二人一組で活動することになる(必ずというのは外出時も含む)。さらに期間中、教官には「レンジャー!」としか答えてはならず、教官には絶対服従し、教官の許可が無ければ反論は一切許されない。その過酷さ故、課程修了者の人数は陸自全体の約8%しか居ないという。
これだけでなく、さらに複数の特殊なレンジャー課程が存在する。例えば、
- 富士学校での幹部自衛官向けとなる幹部レンジャー
- 第1空挺団の空挺レンジャー
- 冬季戦技教育隊の冬季レンジャー
- 第13普通科連隊の山岳レンジャー(※非公式)
- 第1師団各普通科連隊のアーバンレンジャー(市街地レンジャー ※非公式)
これらの課程は陸自だけでなく、空自の救難員や海自隊員が受ける場合もある。しかし、現状では女性自衛官はレンジャー課程に参加する事は出来ない。
米陸軍第75レンジャー連隊と同様、自衛隊でもレンジャー隊員だけを集めた部隊を編成している。その最たる例は水陸機動団各水陸機動連隊のレンジャー小隊で、同小隊の隊員には特殊部隊隊員向けの給与手当まで適応される。第1空挺団や対馬警備隊などもレンジャー隊員の比率が高いほか、冷戦時代には、有事に全国のレンジャー隊員を集め、ゲリラ戦部隊「101遊撃隊」を臨時で結成するらしい……という噂もあった。
軍事・防衛関連ではないが、警視庁機動隊でも陸自第1空挺団や第13普通科連隊の協力のもとレンジャー訓練を行っており、テロなどでの銃器対策が目的の「銃器レンジャー」と山岳救助が目的の「山岳レンジャー」の二つが存在する。ただし自衛隊のような長距離・長期間の野戦活動は行わないため、訓練内容を絞って2週間程度に訓練期間を短縮している。
また、横浜市消防局レスキュー隊は、創設に陸自レンジャーが関わったため「横浜レンジャー」と呼ばれている。ここからさらに選抜して編成された横浜市消防局特別高度救助部隊は「スーパーレンジャー」と呼ばれる。
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レンジャー:曖昧さ回避記事