存在自体がネタバレのため、『ゼノブレイド1、2』クリア済みの方のみ閲覧をお勧めします。
「我々の世界は一つだけではない。多くの世界が、お互いの存在を知覚せぬまま重なり合って併存している」
CV:浅沼晋太郎
概要
ゼノブレイドの主人公であるシュルクに瓜二つな姿、同じ声の青年。
地球が存在するいわゆる「現実世界」の人間で、研究者(おそらくは物理学者)であり創世に関わる重大な研究を行っていた。『2』の第10話冒頭で『1』と同じ相転移実験実行のシーンが描かれるが『1』よりも状況が拡大解釈されており、実験を強行したのは当時起こっていた激しい生存競争で地球・宇宙を焼き尽くす人間達の姿を嘆き、マルチバースジョイント「「ゲート」」の力を使ってその現状を打破できると信じて同僚のガラテアの制止も聞かず人類が神に近付く為として、業と好奇心が渦巻く中で相転移実験を強行。
そして『1』と『2』の世界は彼が相転移実験を行って新しく生まれた世界(詳細はこちら)。と荒廃してしまった元の世界の成れの果て、という両作の舞台が一種のパラレルワールドであることが明かされた。
「私は禁断のとびらを開いた。それで世界が変わると信じて――」
その後、相転移実験によってクラウスは左半身を異次元に飛ばされ、右半身しかなく左半身が闇に包まれたような異形の姿となった(ゼノブレイド2での設定)。
この異次元に飛んだ左半身というのがザンザのことであり、ザンザが「自分が元はクラウスという地球人から分かれ出た分身」とは認識していない一方で、クラウスは自分が2つの次元に分裂していることを知覚している。
相転移実験によって地球に残っていた人々や生命体の殆ど、そしてトリニティ・プロセッサーの1基「ウーシア」が「ゲート」を通って別の平行世界に飛ばされてしまったことで、地球はまさしく死の世界となってしまった。クラウスの苦悩に満ちた余生はここより始まる。
新たな世界の創世主となった巨神ザンザと違い、右半身のクラウスは何ら超常の力は持っていない(攻撃をバリアで無効化したり、悪夢を見せているが彼自身の力なのかは不明)。「扉(ゲート)」に接触した影響か肉体こそ不死身だが、世界の再生は久遠の歳月と科学者としての知見を駆使して行ったものであり、想像を絶する苦労故かその姿は痩せ老いた修行者めいたものになっている。
崩壊した世界の再生から「アルスト」の誕生
身体と魂が引き裂かれてなお一人生き残った彼は、これを『神からの罰』として受け入れ、贖罪するべく新たな世界再生計画を始動する。手始めに雲海という「物質再生能力」を持った分子を撒いて地上の建造物を分解・再構成し、続けてコアクリスタルを雲海に撒いた。雲海とコアクリスタルが結合することで新たな生命核を生み出し、それはやがて巨神獣となり、そこから知的生命体が生まれ進化を重ねていった。これがアルストの人間たちである。
こうして生命の復興には成功した。
だが「また自分のような人間が生まれて過ちを繰り返すのではないか」と疑念を持っていたクラウスは、元は人の脳細胞として作られ全生命情報を宿す「コアクリスタル」と、残っていた2基のトリニティ・プロセッサー「プネウマ(ホムラ・ヒカリ)」「ロゴス(メツ)」を用いた『命の記憶の循環』システムを構築した。
仕組みは下記の通り。
- 1. コアクリスタルがドライバーと同調し、亜種生命体「ブレイド」として誕生する。
- 2. 同調して生まれたブレイドが接触した人間の情報や感情、記憶などを「プネウマ」「ロゴス」に送信していく
- 3. それを基に造った新たな進化コードを送り返す(ブレイドがコアに戻ると記憶を失う理由)
- 4. 進化コードが蓄積されると、ブレイドの時点では未分化な部分が発達していき遺伝子構造が巨神獣に近づいていき、最終的に巨神獣へとなる(『黄金の国イーラ』のスタニフの解明)
- 5. 巨神獣は世界そのものとなり、新たな生命達を創出していく
- 6. 巨神獣はその胎内で全く新しいコアクリスタルを生成する。ここから1へ戻る
こうして『2』の舞台である「アルスト」が誕生したのである。
「己のために世界がある」と言わんばかりに独善的思考が強いザンザとは対照的に、クラウスは「世界のため」を思っており、自らのせいで世界を破壊してしまったことへの罪悪感を何千年・何万年というスケールで背負い続けたためかどこか自罰的な所がある(実際に自身の消滅を願っていた)。
もとよりクラウスは「扉」の影響なのか軌道衛星ステーションから出られない身の上でもあった。そのためかアルストの住人達もクラウスのことは「神」と崇めつつも一切交流出来ず、様々な憶測や誤解を生む切掛にもなってしまった。
「そうなる運命」
「そうにしかならない運命」
「私の罪は永久に償うことができない」
当初はかつての過ちを繰り返さぬよう、アルストの生命には自分たちとは異なる精神構造を持つ種族になることを期待してたようだが、どれだけ時間が経っても人間の本質が結局愚かだった自分達と何も変わらないことに諦観と失望を抱き、もはや世界がどうなろうとどうしようもないとアルストをほとんど放置している状態であった(この時のクラウスは老人の姿となっており声も嗄れてぼそぼそと話すようになっている)。
実際、人間を導くために「命の記憶の循環」の要素の一つとして用意したブレイドも、人の感情に触れて進化を続けていくと武器を持つようになり争いに特化するようになってしまっている。
これらの事情から強い諦観と罪悪感を抱くようになり、現在は自らの消滅を望むようになっている。そのため500年前にマルベーニが単身で世界樹を登りロゴスとプネウマを持ち去った時も、そのロゴスが実体化して世界を滅亡の危機にさらした時も放置していた。皮肉にもホムラとヒカリが自身の消滅を願っていたのと同じように、造物主もまた同じ感情に囚われていたのだった。
しかし、本来ならありえないはずの命の共有(最初の古代船のとき)や再同調(プネウマ覚醒時)を成したレックスとプネウマのことを知り考えが変わり始める。そして二人と直接会話したことで再び未来に希望を見出し、ロゴスによる世界の破壊を阻止しようとする彼らを送り出した。
その際「向こう側の私(=ザンザ)が潰える時が近い」という発言をしており、『1』と『2』の物語は奇しくもほぼ同時進行で進んでいた事が窺える。
ザンザが予期していなかったシュルクへの敗北を未来視できている上、シュルクがザンザに言ったセリフが聞こえていることから、かなりザンザ側の状況も把握できていると思われる。
そしてレックス達が決着をつけるとほぼ同時に向こうの半身も滅ぼされ、自分も消滅する間際にレックスらを次代を担う者達と認めて、「最後の手向け」として、星を覆っていた雲海を取り払い地表全体をアルスト人に開放した。
クラウスとザンザ、そしてマルベーニ
罪滅ぼしから世界の再生を純粋に願い期待したクラウスと、傲慢な考えにより世界は永遠に神である己によって支配されるべきという考えを持つザンザ。
この2人はかなり対照的に描かれており、クラウスによればそれもまた己の心の中の一面であり、人間は誰しもがそういった表と裏を抱えているという。パーティメンバーの心の裏を見せる幻影(悪夢)はそのことを伝えるためとされている。
また、相転移実験の際は世界へ失望した業と、新たなる世界への旅立ちを期待しての好奇心が入り混じって決行したものであるが、クラウスの半身分裂の際に「人の業」と呼べる一面はザンザとして切り離され構築されたものと考えられる。
というのも、クラウスはレックス達にマルベーニの過去を思いつつ「人という存在の孤独さ」をかつての自分の業と重ねて語っており、そのマルベーニの業は「自分の消滅に耐えられる者など存在はしない」というもので、それはザンザの抱く恐れとまるで同じだからだ。
余談
『ゼノブレイドシリーズ』に登場するモナドに漢字(つまり地球の文字だが、作中では未知の文字とされている)が浮かぶのは、モナドを扱う武器を持つ「トリニティ・プロセッサー」がかつて地球でアオイドスという学術機関によって作られた合議制人工知性群であるため。
もっとも、巨神=ザンザが地球人クラウスの記憶を持っている描写はないが、モナドに浮かんだ「神」の漢字を見て何の意味か悟っているため、地球でかつて得ていた知識などは記憶を失ったとはいえある程度引き継がれているようである。
劇中ではシン関連のイベントが終わった直後に顔が映されるシーンが何度か出ており、イーラ側の関係者であるかのようにミスリードされていた。
関連タグ
ゼノギアス:クラウスのオマージュ元である「波動存在」が登場する。
天帝カイン:ゼノギアスからのオマージュ元。「かつては非道を働いたが改心し人のために行動する」「美形だったが長い歳月のため見る影もない」「主人公に希望を見出し監視していた」「もう一人の自分の手によって最期を迎える」など共通点がある。
サラ(クロノトリガー):波動存在のオマージュキャラ(クロノクロスでの設定)。また「自身の消滅を望む」という部分はクラウスと共通している。
ネタバレ注意
ゼノブレイド3
ゼノブレイド3及びそのDLC「新たなる未来」にて、下記のことが明かされた。
- アルストの「命の記憶の循環」システムに大きな変化が発生している。
『3』EDや『新たなる未来』含むメインキャラクタービジュアル等から、ブレイドが生殖機能を所持しているような描写がある。
元々『2』本編時点でブレイドと人間が添い遂げることはあっても、その間で子を授かるような描写はなく、前例すら1件として描写されていなかった。
しかし、『2』EDでクラウスが「最後の手向け」としてアルストにシステムの改変を加えるような描写があり、その一つとして世界樹(第一タワー・ラダマンティス)周辺を回遊していた巨神獣はルートを外れ、一つの大地となっていった。
雲海の消滅、巨神獣の大地化の時点で、アルストの「命の記憶の循環」システムには既に改変がされていることはほぼ明らかで、これと同時にブレイドにも同様に循環関係が変更され、生殖機能が解禁されたのではないかと推察される。
そうなると、「命の記憶の循環」システムを管理していたトリニティ・プロセッサーの役割も大きく変化するものと思われるが、その殆どが『3』『新たなる未来』が終わり資料集「アイオニオン・モーメント」が発売された後の現在でも全く明らかになっていない。
後続のシリーズで明らかになるのだろうか。
- アルヴィース(ウーシア)は欠けた機能の代用としてクラウスとザンザを用いていた
合議制人工知性群「トリニティ・プロセッサー」は3基が揃って機能するものであるが、巨神界に飛ばされたウーシア(アルヴィース)は2基を失っていた。
しかし、アルストで後悔の念を抱き続けるクラウス、巨神界で世界を支配しようとするザンザの2人を欠けた2基の代用として用いていたため、アオイドスで形成された「裁定者」として正しく機能できていた。
アルヴィースが巨神界の管理者としてモナドや未来視(ビジョン)の概念を設定していた影響から、ザンザはそれらを使えていたものであるが、ザンザと(一方的に)連動関係にあるクラウスにもその影響が及んでいたと考えられる。クラウスが自分の消滅の時期を予測できていたのもそれによるためだろう。
しかし、クラウスとザンザの消滅によってウーシアは裁定者として正常に機能しなくなり、『新たなる未来』の出来事が起こる。
- ゼノシリーズとの繋がり
クラウスのいた元々の世界をアルファがマシュー達に仮想現実映像として見せるシーンがあるのだが、そこで流れるラジオ放送で全てのゼノシリーズを繋ぎ合わせる情報が流されていた。まず、ラジオのロゴマークがゼノサーガにでてくるヴェクター・インダストリー社のものであったり、ディミトリ・ユーリエフの名が出てきている。また、「地球種汎移民計画」はゼノブレイドクロス、そこで使われる「フィラデルフィア級の宇宙船」は、ゼノギアスに出てくる設定である。
つまり、この設定を考慮すると、ゼノギアス、ゼノサーガ、ゼノブレイドはシリーズ全てが繋がりを持つことになる。ただし、これらのことは一種のファンサービスであることも否定できない。ことの是非は今後のゼノシリーズの動向を見れば、明らかになるだろう。
これらの情報を鑑みると、プロフェッサー・クラウスはゼノシリーズにおける最古の時代に生まれた人物と言えるだろう。