概要
近代以降に成立した概念で、発祥は「ざます」の記事にもある通り、東京・山の手地区とされる。
このあたり一帯は当時の新興住宅地にあたり、会社務め(サラリーマン)で稼ぎを得て、戸建て住宅に核家族で暮らすような、現代に通じる生活スタイルを確立した家庭が多く集まってきていた。
また、「文京区(ただし区自体の成立は戦後のことである)」という地名に代表されるように、学校や文化施設が優先的に整備され、環境の良さを売りにした地域でもあった。
そうした環境は、「モガ」や「職業婦人」とはまた異なるタイプの女性を台頭させた。進歩的な考えを持ちながらも、自分自身は昔ながらの良妻賢母を志向する、ある種の矛盾を抱えた存在である。
彼女達は夫に十分な稼ぎがあるため、専業主婦に納まることができた。さりとて家業があるわけでもないので「家を守る」という意識も薄く、地縁や血縁から来るしがらみからも自由だった。そういうわけで、空いた時間で存分に文化的活動を行うことができた。
しかしながら、守るべきものが何も無いということは、いざという時に何からも守られないということの裏返しでもある。彼女達の成功や幸福は、ひとえに夫や子供の立身出世にかかっているのであり、それを阻むと見做したものには当人以上に敏感であった。
すなわち、「夫を堕落させる」「子供の教育に悪い」「文化的でない」「環境を乱す」存在を攻撃し、排除しようとするクレーマーの出現である。
彼女達は時に突発的に、時に徒党を組んで、様々なものを糾弾し改善を迫った。そしていつしか特有の口調をもじってこう呼ばれるようになったのである。
「ザマスおばさんが出たぞ!」と。
フィクションに登場する場合、慇懃無礼な小物界の大物として描かれることが多い。
さながら『一休さん』に出てくる「殿様」のように、無理難題を吹っ掛けては主人公の機転でやり込められる、という流れがお約束である。
分が悪くなると文化的態度をかなぐり捨てて逆ギレしたりヒステリーを起こすこともままあるが、所詮は郊外の主婦なので大事に至る可能性は低い。ある意味、哀れなピエロとも言える。
pixivでは
編集時点でタグ登録の全てがスルメ・デ・ラ・ロチャ氏のオリジナル漫画「エロ母と暴力息子」の登場キャラクターを指したものとなっており、半ば固有名詞のように扱われている。
時流の変化を踏まえてかフェミニストとしての側面が強調されており、作品によっては独身であったり子供がいなかったりもする。
なお、氏の作品では心象風景的に暴力シーンも頻繁に描かれるが、腐っても女性ということなのか「ザマスおばさん」を物理的に痛い目に遭わせるといった展開はほとんど見られない。
それ故に一際リアリティのある後味の悪さを醸し出しているとも言えるが…
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