ネズミ取り必勝法
ねずみとりひっしょうほう
「トムとジェリー」の短編映画の話の一つであり、1944年11月23日に公開された。
本を使ってジェリーを攻略しようとするトムと、それでもなお一枚上手なジェリーの攻防を面白おかしく描いた作品。後述するがアカデミー賞短編アニメ賞を受賞した経験があり、多くのファンでも人気が高く、知名度がかなり高い話になっている。
ある日、トムに小包が届いた。小包に入っていたのは「HOW TO CATCH A MOUSE (ネズミの取り方)」と書かれている本だった。この本にはネズミの捕まえ方を記載していた本であり、それを手に入れたトムは早速本を読み始める。
- ネズミの居場所
「ネズミの居場所」を読んでいたトム。その最中、トムは本を読んでいたジェリーを発見して捕まえようとするが失敗し、ジェリーによって本で顔に挟まれてしまった。
ジェリーの巣穴の近くに着いたトムは、早速本に書かれている取り方を実践することになる。
- 簡単なネズミ捕りを使う
チーズを乗せたネズミ捕りを使ってジェリーをおびき出すことに成功したのだが、ジェリーはネズミ捕りを作動させずにチーズを頂いてしまう。驚愕したトムはネズミ捕りを指で触れたが…。
「アァアァアーッホホホーッ!!」
- ワイヤーを使った罠
家の外にある木とピンをロープで結んで、輪っかを作った後、チーズを置いたトム。ジェリーがチーズを食べている間にロープを引っ張って捕まえようとしていた。
しかし、ジェリーによってチーズとミルクを入れ替えられ、まんまとミルクに釣られたトムは、ジェリーによってロープを引っ張られて捕まえられてしまった。
- 好奇心の強いネズミは捕まえやすい
「ディーヤハハハハハwwwオーホッホッハッハッハww」
本を読みながらわざと上記のような感じで大声で笑っているトム。そのことで気になったジェリーが近付くと、「お前には見せない」という感じでそっぽを向く。それを繰り返している内にジェリーは本の上に乗っかった。それを見たトムは本でジェリーを挟むことに成功する。
…はずが、ジェリーは無事であり、何かを覗き込んでいる様子だった。トムが気になっているのを見たジェリーは、見せてあげるあげようとするフリをし、隙を突いて目玉を殴った。
- 追い詰められたネズミは抵抗しない
前述の展開(ジェリーが隙を突いてトムの目玉を殴る場面)の後、ジェリーはトムに追いかけられ、壁際に追い詰められてしまう。
最終的にトムはジェリーを追い詰めようとするが、まさに窮鼠猫を噛むを体現したかのような感じで逆転されてしまったのか、壁際からジェリーに反撃されたトムが姿を見せる(メイン画像がその場面である)。
この時のトムが発言した台詞については後述する。
- 科学的に攻める
聴診器を使ってジェリーを発見して捕まえたトムだったが、ジェリーは咀嚼音(しかもチーズを食べたとは思えない轟音が聞こえていた)や大声でトムに反撃する。
その後、猟銃を持って反撃しようとするトム。トムは巣穴に銃を入れたのだが、どういうわけなのかひん曲がった銃身が壁を突き抜け、トムの頭の位置にいるのを気付かず、銃をぶっ放してしまうのだった。
なお、この場面以降、トムは剥げ隠しをしなければならなくなる。
- その後も
- トラバサミをジェリーの巣穴に入れたトムだが、もう一つの巣穴からジェリーが姿を現し、先程仕掛けたトラバサミをトムの尻の前に置いた。それを知らなかったトムは引き上げようとしたため、トラバサミが尻に挟まってしまい、その痛さのあまりに飛び上がり、顔が天井に突き刺さってしまった。
- 巣穴から飛び出すジェリーをハンマーで叩こうとするもジェリーに回避されてしまい、額縁の後ろの穴から出てきたジェリーにハンマーを奪われて叩きのめされる。
- プレゼントでおびき寄せる
大きなプレゼントボックスに扮することでジェリーを騙そうとするトム。
しかし、そのプレゼントボックスを怪しんだジェリーは、中にトムがいるのに、なんと箱を数本の針で刺した挙句、のこぎりで真っ二つに切断してしまった。中身を確認して流石にことの重大さに気付いてしまったジェリーは、急いで医者に助けを求めるのだった。
「家に医者は、いますか?」
なお、酷い目に遭わされたトムだったが、自分で応急処置をしたということもあるのか、なんと生存していた。
- ネズミは女の子に弱い
雌ネズミのおもちゃ(このおもちゃの台詞については後述)を使ってジェリーを誘い出したトム。お店の立て看板も併用してジェリーを食べようとすることにした。ところが、ジェリーはレディーファーストの気持ちもあったのか、雌ネズミを先にお店へ入らせた。この結果、トムは間違えて飲み込んでしまう。その後、トムがしゃっくりをする度にその台詞を発するようになってしまい、さらに歯も欠けてしまった。
- 最終手段
何度も作戦が失敗することもあってに来たトムは本をビリビリに破り捨てる。
そして、最終手段として、ジェリーの巣の周辺に多数の爆弾を仕掛けた。ダイナマイトをジェリーの巣穴に入れて導火線に火をつけようとするトムだったが、湿気っているのか、なかなか点火しない。そこでトムは息を吹きかけようとするが、その瞬間に大爆発した。
- ラストシーン
多数の爆弾が大爆発したため、家は殆ど吹き飛ばされてしまった。しかし、ジェリーはなんと奇跡的に無傷で無事だった。
その後、前述の剥げ隠しがゆっくりと落ちているのを見た後、雌ネズミのおもちゃの声が聞こえたジェリーが空を見上げると…。
「HOW TO CATCH A MOUSE」
この話の「HOW TO CATCH A MOUSE」は様々な章が用意されており、本編では以下の章が存在していた。
章 | タイトル |
---|---|
第1章 | ネズミの居場所 |
第2章 | 簡単なネズミ捕りを使う |
第3章 | ワイヤーを使った罠 |
第4章 | 好奇心の強いネズミは捕まえやすい |
第5章 | 追い詰められたネズミは抵抗しない |
第7章 | 科学的に攻める |
第9章 | プレゼントでおびき寄せる |
第12章 | ネズミは女の子に弱い |
なお、何故か第6章、第8章、第10章、第11章は作中では出てこない。
「Don't You believe it!」
前述の「追い詰められたネズミは抵抗しない」でジェリーに反撃された後のトムの発言である(メイン画像がその場面である)。直訳すると「信じるなよ!」である。
この台詞は、実はスタッフ・出演者の声ではなく、俳優のハリー・E・ラングが出演したラジオ番組「Don't You believe it!」のジングルを流用している。
なお、1953年に公開された「恐怖の白ネズミ」でも、ラストシーンで白ネズミの大爆発に巻き込まれたトムがこの台詞を発言している。
また、この台詞の吹き替えはTBS版、ヘラルド・ポニー版、そしてワーナー版の翻訳でそれぞれ異なっている。
- TBS版:「ふえぇ、うまくいかないもんですねー」
- ヘラルド・ポニー版:「話が全然違うよ…」
- ワーナー版:「こんなの嘘だ!」
なお、いつもは叫び声や悲鳴をあげる程度にしか喋らないトムが珍しく台詞を言っている場面である(それ以前の「淋しがりや」や「素敵なおさがり」などでもトムが台詞を言っている場面が存在していた)。
ちなみに、ジェリーが壁際に追い詰められてしまう話は、これ以外にも「ナポリよいとこ」や「とむとじぇりーごっこ」第13話「スクールデイズ」でも見られたのだが、この話とは違い、壁際に追い詰められたジェリーがトムに攻撃されてしまう展開になっていた(前者はフライパンで追い詰められ、後者は壁際でトムに捕まりそうになっていた)。
「Come up and see me sometime.」
前述の「ネズミは女の子に弱い」で雌ネズミのおもちゃが言っていた台詞。この台詞の翻訳もTBS版とワーナー版で異なり、
- TBS版:「あたしとデートしましょうよ」
- ワーナー版:「いつか私に会いに来て」
になっている。
ちなみに、この台詞を「Google翻訳」で翻訳すると、「いつか私に会いに来てね」と表示される。このようなことから、ワーナー版の台詞が雌ネズミのおもちゃの台詞を直訳しているように思える。
なお、雌ネズミのおもちゃの声を演じたのは女優・歌手のサラ・バーナー氏である。ちなみにサラ・バーナー氏は「素敵なおさがり」でもジェリーの声を担当したことがある。また、ワーナー版の声優はチマ氏が担当している。
ナレーターにツッコミをするトム
TBS版での翻訳限定だが、トムが本を手に入れて読んでいる最中に、ナレーターが「こんな本を頼りにするなんて、ダメになったね」とトムに咎めている場面があるのだが、それに対してトムが「うるせぇな!」と逆ギレをする場面がある。
なお、このやり取りはTBS版限定であり、ヘラルド・ポニー版やワーナー版では聞くことが不可能。
昇天するトム
この話のラストでトムが昇天したということから、本来なら一般的なギャグ補正では済まないレベルの致命傷を受けても死なずに直ぐ復活するのトムが、実際に死亡した様な描写が見られた話でもある。但し、その次の話となる「トムのガールフレンド」では復活している(そもそも「ネズミ取り必勝法」と「トムのガールフレンド」は話の内容が全く異なるという理由もあるのだが)。
アカデミー賞短編アニメ賞受賞作品
1944年に開催された第17回アカデミー賞では、この話が短編アニメ賞を受賞することになった。
なお、前年に開催された第16回アカデミー賞でも、トムとジェリーの話である「勝利は我に」が短編アニメ賞を受賞することになったため、これによって、ディズニーのシリー・シンフォニー以来となる、2年連続でのアカデミー賞短編アニメ賞を受賞するという奇跡が起きた。