概要
当初この拳銃は民間用の護身用拳銃として設計されていたが、日本陸軍が将校用の私物拳銃として人気を博した。
当時の軍は、将校の軍服や私的装備品は自弁する規則であった。このため、日本陸軍では、個人の銃としてブローニングM1910やコルトM1903、あるいはモーゼルM1910など、30種類以上の拳銃が使用されていたいといわれる。これらは整備方法も、使用する弾薬も異なるため、これを統一しようという機運が生まれたことから、軍が開発に関わることとなった。
また、戦争の機運が高まるにつれて、敵対する欧米製の銃が手に入りにくくなる可能性が高くなったので、これも国産品を推進する動機となった。
こうして開発された本銃は、当時制式拳銃として採用されていた十四年式拳銃よりも小型かつ安価な拳銃であり、国内需要にマッチしたことから、軍用に製造され、準制式拳銃として採用された。
採用年の1934年が皇紀2594年だったため、九四式拳銃という制式名になった。
評価等
以前に採用されていた十四年式拳銃は設計不良によるジャム、不発、スプリング・撃針破損が多発したとされるものの、この拳銃にはそのようなことはなく、利用者である陸軍にとってはメンテナンスも比較的容易で無事故でよく作動したと悪い評価ではなかったといわれている。
また、価格も十四年式拳銃の2/3、輸入品であった小型の拳銃と同等か少し高い程度であったとされる。
この銃はハンマー内蔵のスライド作動式ショートリコイル方式という、通常この種の兵器に見られる外国製品のコピーした形跡があまり見られず、日本独特の技術が見られる。
もともと、日本では拳銃製造にそこまで力が入れられておらず、ノウハウがあまり無かったため、本銃には日本の技術陣が試行錯誤した形跡が強く残っている。
欠点
自動式けん銃としては外見の通りバランスが悪いこと、この銃に使用される銃弾である8mm南部弾の威力不足、ロックがかからない個体が存在することなどがあげられる。
そして、スライド動作式けん銃であるにもかかわらず遊筒自動停止機能がない、通常の自動拳銃には考えられないことにシアの一部が外部に露出していたため、ここに力が加わるとトリガーを引かなくとも弾丸が発射されてしまうという非常に危険な拳銃でもあった。
そのためこの銃を鹵獲および接収して試験に当たった連合軍側の技術者からはわずかな力で暴発する「自殺拳銃」と言われた。
しかし、試作拳銃ではこの部分にはカバーが存在すること、十四年式拳銃もスライドストップ機能がないこと、さらに日本陸軍は拳銃の携帯時は薬室から銃弾を抜き、弾倉も装填しないという取り扱い規則があり、それにより暴発はなかったといわれるため、この仕様は軍用銃として利用されることを意図したものではないかとも一部ではいわれている模様。
基本データ
全長 | 187mm |
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銃身長 | 95mm |
重量 | 720g |
口径 | 8mm |
装弾数 | 6+1発 |