数千万円~時には数十億円単位の資金を必要とする映画やアニメなどの映像作品、あるいは演劇やミュージカル等の舞台作品製作や興行に際し、複数の企業等が金を出し合い、出資比率に応じて利益の分配を行う仕組み。いわゆるリスク回避の方法の一つ。
この種のエンターテイメント作品製作には当然のことだが、大量の資金を必要とする。個人や団体、企業単独( またはグループ会社 )で資金をポンッと出して製作しその作品が大ヒットすれば、利益をほとんど独占できるが、もしその作品が失敗した場合、借金を背負う( 例えばさだまさし氏は映画により借金を背負い、返済に30年かかった )ことになり、それが返済不能になると最悪の場合団体等が倒産したり、吸収合併される事態にもなる。
そのような事態を防いで万が一の痛みを減らすのが、この製作委員会方式なのだ。
仕組み
まずは作品の主導権を握る「大口のスポンサー団体」が複数の企業に対し「利益が出たら儲けを山分けするから金出してくれない?」と出資を依頼し、製作資金を調達。作品が流通経路に乗り、販売で儲けが出るとその利益を出資比率に応じて分配する。
スポンサーから見れば一つの作品に対する負担が小さく、複数の作品に出資できるため万が一出資した作品のほとんどが失敗しても、ヒット作品に出資できていれば損失を小さくできるメリットがある。
近年の( キー局・TOKYO MXおよびBSデジタル放送における )深夜アニメの増加はこの製作委員会方式によるところが大きい。
主に出資するのは以下の団体が主となる。
- テレビ局(放送事業者)
- 制作プロダクション( アニメの場合制作会社など )
- 広告代理店
- 出版社
- レコード会社
- ゲームメーカー
- 玩具・フィギュアメーカー
- ファンド等の投機関
- 特に作品の作成に特化した団体であり、クラウドファンディングなどもこれに含まれる
アニメのエンディングのスタッフクレジットを見ているとテレビ東京、TBS、フジテレビ、毎日放送( MBS )、朝日放送( ABC )などが名前を連ねていることが多い。
特に今まで放送局が製作にあまり関与してこなかったUHFアニメではBS11やBSフジも積極的な姿勢をとっており、MBSやABCなどのプロデューサーも製作委員会に参加したりすることもある。
作品の規模にもよるが、一般個人での出資は困難となっている。それについては後述する。
出資
製作委員会は法律上『任意組合』として扱われ『組合員』である出資スポンサーは無限責任を負う。無限責任とはもしその作品が作成できなかった、あるいは興行的に失敗し、赤字となった場合にその赤字の補填のためにスポンサーに対しさらなる出資を求める。要するに出資した金以上の責任を背負わされることになる。
そのため、作品にかかわらない一般人や銀行などの金融機関などが参加しにくく、出資元がなかなか広げられないという問題が発生した。
そのため、最近では失敗しても出資金額以上の責任を問われない有限責任方式が採られる『特別目的会社』や『有限責任事業組合』を利用して出資や作品作成等のための会社や団体を設立する例もある。
この場合であれば出資スポンサーは有限責任が保障され、損失補填のための追加出資を求められないので個人投資家や金融機関でも参加しやすく、出資者の多様化なども期待できる。
問題点
この形式をとることにより作品の本数が爆発的に増大したが、弊害も発生している。
責任の所在が不明瞭となるため、作品がおかしな方向に向かった場合軌道修正ができない場合がある、複数の出資者が絡むことにより没個性作品が増加、逆に赤字になりやすい先鋭的な作品に挑むことが激減したとされる。
またアニメの場合、作品の増加により優秀なアニメーターの確保が難しくなっており、また労働基準法に違反する行為( 低賃金で長時間労働 )が横行してしまい、業界から離れたり、人が集まらず、最悪の場合作成が中止されたり、放送が中断されたりすることも。
ちなみに、これらを恐れたのか庵野秀明が製作したヱヴァンゲリヲン新劇場版やシン・ゴジラは製作委員会方式を行っていない。
名称
基本的に「プロジェクト○○」や「○○制作委員会」のようなシンプルな名前が付けられるが、作品によってはその作品にちなんだ、個性的な名称をつけることがある(アニメ『ゆゆ式』の『ゆゆ式情報処理部』や『けいおん!』の『桜高軽音部』、『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』の『流川市ふるさと振興課』など)。