概要
広義で精密狙撃を行う為に開発されたもの。
旧来は小銃の中から特に精度の良い個体を選出して狙撃銃としていたが、現在では基本的に狙撃専用の銃火器として開発される事が多い。
主に狙撃銃として専用に開発されたものと、既存の銃を改造したものの二種類があり、狙撃専用のものを「スナイパーライフル」、既存の銃を改造し1km弱までの狙撃に対応したものを「マークスマンライフル」と大まかに区別する。
左がマークスマンライフルのイメージ。右はスナイパーライフルのイメージ。
多く長距離で精密な射撃を前提とする場合はボルトアクションと呼ばれる方式を用いるが、精度と引き換えに一発一発手動で排莢し薬室に弾丸を送り込まねばならないので連射がきかない。(今はマガジンを用いて一度に数発装填されるのが主流だが、多いものでクリップを用いて数発、クリップが使えず一発一発直接銃に装填しなければならないものもあった。)
対して、マークスマンライフルはセミオートで発射可能なものが多く制圧力も高いが、発射時に固定されない部品が増えたり動作のために銃身に穴があけられていたりする為にボルトアクションと比較して精度に難がある。
最近では市街戦に向かないボルトアクションライフルから狙撃専用のセミオートマチックライフルを求める動きもある。
結局どれが狙撃銃なのか
実は「狙撃」という運用目的を持つ銃に対して与えられる名称であるので、「このような銃は狙撃銃ではない」といった明確な判断基準は無く、軍事だけでなくスポーツの世界にまで視野を広げれば「狙撃用拳銃」と呼べるものまで存在する。
日本では散弾銃を使っての要人殺害さえも「狙撃」とされるのが良い例であろう。
精度が高ければ元々の用途が狙撃向きでなくとも狙撃銃として使用している事もあり、ドイツ連邦軍のG8軽機関銃のように単発射撃可能な軽機関銃をマークスマンライフルとして使用しているところもある。この場合はセミオート射撃だけでなく機関銃としてフルオート射撃をする事も可能で、幅広い状況に対応することが出来る。
また、フォークランド紛争におけるアルゼンチン軍、ベトナム戦争でのカルロス・ハスコック軍曹、朝鮮戦争における米軍のようにブローニングM2重機関銃にテレスコピックサイト(スコープ)を装着し、単発射撃にて長射程狙撃銃として運用した例もある。
そもそもマークスマンライフルとスナイパーライフルの違いにしても、問題になるのは本来、射程と精度であり、極端な話ならM16のようなアサルトライフルでさえその道の職人が頑張ればスナイパーライフル(=精密狙撃銃)にできる。
もちろん「理論的には」であり、そのような場合割かれる労力がハンパ無いため、世のスナイパーたちはおとなしくボルトアクションライフルを用いるのである。
競技であればともかく、あらゆる環境に対応しなければならない狙撃銃をアサルトライフルベースで作成するには動作不良対策や整備の問題など、様々な問題が多いのである。
当然、しかるべき改造を施し、弾薬に見合った射程と状況で使用すれば十二分に使えることから5.56mmの狙撃用M16もアメリカ軍は採用している。
程度の良いものをマークスマンライフルとして使うのではなく、U.S.ARMYとU.S.NAVYの特殊部隊はM4カービンの性能向上プロジェクトであるSOPMODプロジェクトの一環としてMK12 SPRライフル(Special Purpose Receiver、もしくはSpecial Purpose Rifle)を作り、SPR用に開発されたMk262弾薬を組み合わせることで600mまでの中近距離用の軽量狙撃銃としている。
海兵隊ではM16A4をベースとしたSAM-Rを使用しており、M249の後継であるM27IARもマークスマンライフルとして使用している。
(5.56mmNATO弾は風の影響を受けやすく、狙撃には適さないとも言われているが、よほどの悪条件で無ければ実際には7.62mmNATO弾と大差は無く、600m程度までであれば同等であるという結果が出ている)
SPR(Mod0もしくはMod1)は既存のM4もしくはM16のロアレシーバーを使用するアッパーレシーバーキットとなっており、海軍では初期のものは退役により有り余ったM16A1のロアレシーバーと新規開発したアッパーレシーバーとを組み合わせている。(もちろんトリガーユニット等は狙撃ライフルとして見合った性能に改修されている)
実際に運用することでSPRの性能に不満が出た事や狙撃ライフルでありながらCQBにも使えるものを求めているという事からSEALsでは更なる発展型としてM4カービンをベースとしたRECCE RIFLE(SEAL Recon Rifle)を開発、後にNSWC(海軍打撃作戦センター)が参加、NSWC主導により完成している。
そのため、U.S.NAVY SEALsでは一人のスナイパーに対し5.56mmのMK12(またはRECCE RIFLE)、7.62mmのSR-25とレミントンM700、12.7mmのマクミランTAC-50と計4艇の狙撃銃が配備されている。
実戦における対人長距離狙撃の記録
現在の世界最長狙撃記録はアフガニスタンでの.338 Lapua Magnumを使用するL115A3でのイギリス陸軍王室騎兵隊所属のクレイグ・ハリソン軍曹による8,120フィート(約2,474m)
過去の記録はアフガニスタンでの.50BMGを使用するマクミランTAC-50でのロブ・ファーロング兵長による7,972フィート(約2,429m)、ベトナムでの.50BMGを使用するブローニングM2でのアメリカ連邦軍海兵隊所属のカルロス・ハスコック軍曹による2,500ヤード(約2,286m)となっている。
オーストラリアの特殊部隊(オーストラリア連隊第4大隊コマンドー所属の曹長とも言われているが、部隊名及び狙撃手の名前といった詳細は不明)によるアフガニスタンででの50BMGを使用するBarret M82A1での2,815m、イラクにてカナダ統合軍のJTF-2(統合タスクフォース2)所属のスナイパーがマクミランTAC-50での3,450mといった上回る記録も出ているが、兵士の詳細が不明なため、公式(といってもギネスのような記録を認める公的機関はないが)の記録とはなっておらず、記録の更新とはなっていない。
射撃場など、戦場以外での狙撃ではそれ以上の距離の記録も出ている。
サブカルチャーに於ける狙撃銃
基本的にはエースや高いスキルを持った人物が使用することが多い。
また、スナイパーは天候やそれに準じた気温、気圧、湿度などあらゆる環境に置ける情報を理解し、適切な調節を行うために創作物においては天性の才能を持った人物として描かれることが多い。
加えて、スナイパーはじっと待つというイメージが強いのか、あの伝説のスナイパーの身長が低いからか、狙撃手が女性であったり細身であったりする例も見られる。
が、実際は狙撃銃自体が重く、同時に狙撃用以外の火器も所持しているため装備がかさみ、任によっては激しい移動を余儀なくされるため実際のスナイパーはかなりガタイが良い。
(筋肉質=頭悪い撃ちまくりタイプ というステレオタイプな図式があるのも一因である)
また、索敵や狙撃に必要な情報収集を行うスポッター(観測手)の存在が比較的マイナーなことから孤独と思われやすいので、単独で行動するイメージで固められた人物というのも多い。
コンピューターゲームにおいては威力の高い銃として登場し、高倍率スコープを搭載していることもありオンライン、オフラインを問わず人気がある。
が、オンライン対戦ではその高威力や高倍率スコープを搭載していることにより、有利な地形に引きこもりチームに貢献しない(いわゆる芋砂やキャンパー)、熟練したプレイヤーが使うとゲームバランスを崩すといったことも多く、大小問わずスナイパープレイヤーは嫌われる傾向にある。
同時にルール違反ということもない為開発側では対策がとりにくく、親しいプレイヤー同士やクランでプレイするなどプレイヤー側で対策をとらざるを得ない状況になっている。
トイガンとしても同様に人気はあるものの、サバイバルゲームでは近年の威力規制により銃の種類により威力の上限に差をつけることでの射程の有利さを与えることが難しくなったこと、基本単発のため連射が可能な銃に対し不利、着弾が単発では気づかれなかったり無視されたりする等の理由により利点から使う人の少ないロマン武器となっている。
しかし近年のトイガンは精度が圧倒的に良く、高性能の光学機器が比較的安く入手できることから、有効射程まで近づき、決定的な場所(肌がむき出しの部分など)に打ち込む緊迫感が「タマラナイ」とのことから一定数のスナイパーゲーマーがいるそうな。
どちらでも前線で動き回りながら銃撃を行なう狙撃…?と言いたくなる様なプレイヤーも存在している。
イラストにおいては基本的に大きな銃が多い為か、ギャップの妙を狙って女性キャラクターに所持させていることも多い。
関連タグ
人物
シモ・ヘイヘ(実在したフィンランド軍の狙撃手)
ヴァイス・グランセニック(魔法少女リリカルなのはStrikerS)
スナイパー(ワールドトリガー)