バジリスク
ばじりすく
幻獣・バジリスクの概要
名称はギリシア語で「王侯」を意味する語basileusに由来し、名前の意味も「蛇の王」である。
全ての蛇の上に君臨する王であり、ペルセウスのメデューサ退治の折、その血飛沫から生まれたと言われている。外見はただの蛇だが、頭に冠を思わせる模様がある。全身のあらゆる箇所に毒を持ち、その視線すら人を殺す(もしくは石化させる)程の力を持つ。その通り道にも人畜を死に至らしめる毒が含まれる、喉を潤したせせらぎは何世紀にも渡って毒の水が満ち溢れ草一本育たない、移動する音を聞いただけで他の蛇が逃げてゆく。バジリスクを槍で殺した者はその毒が槍から伝わって死ぬ、地を這っているだけで空を飛ぶ鳥をも殺す、等と言われ、その毒の力が恐れられていた。
ただ、吸血鬼ほどではないが、バジリスクも弱点がかなり多く知られている幻獣である。
主な弱点として、
・鏡を見ると自分の視線が反射して自分を殺し(あるいは石化し)てしまう。
・雄鶏の鳴き声を聞くと一目散に逃げ出す、もしくは身もだえして死んでしまう。
・イタチにはバジリスクのあらゆる毒が効かず、それどころかイタチの体臭はバジリスクにとって最大の毒である。
等がある。これらはバジリスク対策として、砂漠を渡る旅人達の常識であったらしい。
近年の児童文学やゲームでは、足が複数ある毒トカゲタイプのバジリスクや、蛇体だが全長が10mを優に越す怪獣のようなバジリスクも見受けられる。
毒トカゲタイプの場合、足の数は普通に四本であったり、六本、もしくは八本となることもあるようだ。かつて日本ではこのトカゲタイプが一般的だったが、映画「ハリー・ポッター」の第二作「秘密の部屋」の影響か大蛇としてのバジリスクの方が一般的となった。
その他の特色あるバジリスクとしては、「ソード・ワールド2.0」のバジリスクがある。蛮族(人類に敵対的な人型種族)の一員であり、普段は人型をしているが、巨大なトカゲ型の姿も取れる(ただし知性が落ちるため、こちらの姿になるのを嫌っている)。
フィクションでの扱い
ハリー・ポッターシリーズでのバジリスク
第二作「秘密の部屋」での部屋におけるキー存在として登場。日記に封印された「トム・リドル(=若い頃のヴォルデモート卿)」によって操られて暗躍。
「ハリー・ポッター」の世界観における「バジリスク」の主な特徴は次の通り。
・雄鶏の卵をヒキガエルが孵すことによって生まれる。
・万物を殺すとも言われるほど強烈な腐食性の毒を持つが、それ以上に恐ろしいのは直視した相手を殺すその視線である。
・数百年から数千年の寿命を持ち、高い知能を持つこともある。
劇中では学校の配管を伝って移動し、生徒たちを襲った。ただ、どの被害者もバジリスクの姿を直接見たわけではなく鏡やレンズなどを透して見たため石化しただけで済み、最終的には薬で回復している。
バジリスクの毒は本当に強烈であり、そのことが第七巻「死の秘宝」においては重要な役割を持つことになる。
ダンジョン飯のバジリスク
「尾蛇類」と呼ばれるモンスター。
蛇の尾を持つ巨大な鶏。蛇の牙のみならず鶏の蹴爪にも毒を持つ。二つの脳に対し体は一つであり、二方向から同時に攻められると混乱してしまうのが弱点。
蛇と鶏を生きたまま分断した所、鶏はすぐ死んで蛇が生き延びたという実験結果から「蛇が本体で鶏は尾」というのが定説となっている。
また、卵も楕円形で殻が柔らかく卵白が無いなど蛇の卵の特徴を持つ。
主人公一行によって身はローストチキンならぬローストバジリスクとベーコン、卵はオムレツの材料として料理された。
女神転生のバジリスク
ファミコンの『女神転生』から出演している古参悪魔。『女神転生』では”魔獣”でナーガの色違いの下半身が蛇の獣人、『女神転生Ⅱ』では”怪獣”、『真・女神転生』では”邪龍”でコカトライスの色違いの鶏型。『デビルサマナー』で警戒色のトカゲという独自の姿になった。
ドラゴンクエストのバジリスク
表記は「バシリスク」。初出は『ドラゴンクエスト2』で、毒攻撃が得意なキングコブラ(DQ)の上位種として登場。余談であるが「メイジキメラ」は、「あくましんかん」が「バシリスク」と「ごくらくちょう」を合成して造りだしたと「モンスター物語」で語られた。
ファイナルファンタジーのバジリスク
1作目で天野喜孝によって大きなグルグル目玉の多脚トカゲとしてデザインされ、続編『ファイナルファンタジー2』ではカメレオンのような姿に描かれた。以降のシリーズのものはこれらのデザインのアレンジである。
ダークソウルのバジリスク
シリーズを通して登場するザコモンスター。通称:呪いトカゲ。ただし姿や鳴き声はトカゲというよりカエルに似ている。頭部に巨大な眼球のような器官を持っているがこれはダミーであり、本当の眼はその下にある鼻腔のような穴である。武器は口から吐き出す呪いガス。ゲーム中では閉所に集団で現れ、飛び跳ねながら呪いガスを辺りにまき散らして攻撃してくる事が多い。プレイヤーが滞留したガスの中に留まると呪いゲージが蓄積、やがて呪死と呼ばれる状態に陥り、石化(即死)する。
特に初代ダークソウルでの活躍が悪名高く、比較的序盤のステージ『最下層』で落とし穴に落ちると、バジリスクの巣窟と化した下水道の最深部へ落下してしまう。多くの初見プレイヤーがそこで袋小路に追い詰められ、ワケも分からぬままガスを浴びせられ呪死していった。また、本作では呪死するとHPが半減(アップデート前は更に呪死すると4分の1まで半減)する仕様だった為、呪死の癒し手がいるというNPCの発言を真に受けて高難度ステージ『小ロンド遺跡』へ向かい、そのまま詰んだという者も多い。
ダークソウル2では眼球状器官を持たない亜種が現れるほか、巨大化した個体が出現する。巨大バジリスクはガスだけではなく尻尾や腕でも攻撃してくるほか、PS3版では『虚ろの影の森』に配置された巨大バジリスクに近づくと周囲の地面が崩落。装備を溶かす強酸と数体のバジリスクが配置された洞窟へ叩き落とされる罠があった。ただ、2以降は呪死のペナルティが軽減された為、相対的に危険度は下がっている。
※擬人化は二次創作
近縁種、及び別称
コカトリス
上記のとおりバジリスクは雄鶏の鳴き声が弱点なのだが、どうやらその伝承が伝わる際に「バジリスク」という幻獣の性質と「雄鶏」というなじみ深いキーワードが混同されて「コカトリス」という別の幻獣となったらしい。
そのためコカトリスを「バジリコック」と別の呼び方でよぶこともある。
「バジリコック」としてのコカトリスは、伝承的には「バジリスクの同類だ」とか「バジリスクとは雌雄の関係にある(雄雌どちらかは不明)」等と言われている。
また、バジリコックは雄鶏が産んだ卵から生まれると言われているため、「雄鶏と言う弱点を克服したバジリスクの進化系だ」という説も存在する。
ただ、コカトリスが一般にニワトリの姿をしているのは「コカ」という発音からの連想である、と言う説も存在するため確実に「コカトリス=バジリコック」とは言い難いかもしれない。
ゲイズハウンド
Gaze houndとは本来は猟犬の分類であり、嗅覚より視覚で獲物を捉えるものを指す(サイトハウンドとも言う。犬種としてはアフガン、グレーハウンド、ボルゾイ、サルーキ等)。
が、ウィザードリィ#1に麻痺攻撃の能力を持つモンスターとしてゲイズハウンドが登場。FC版において末弥純により八本脚のトカゲとしてデザインされ(それ以前のプラットフォームではカピバラと同デザイン)、事実上バジリスクに相当する存在として扱われるようになる。
#4ではLv3召喚モンスターとして登場。クラシック版・アレンジ版共に優先順位の高い有能な戦力。
#5では同じデザインでめでたく(?)バジリスクとして登場。能力も石化攻撃にパワーアップ。
寺田克也がデザインを担当したBUSINのゲイズハウンドは、顔つきは犬に近いものの脚は六本、体形や体色も犬とはかけ離れており、それでいてバジリスクにも似ていないまったく新種の魔法生物となっている。
余談だが、BUSINの登場人物・爆炎のヴァーゴはお供のゲイズハウンドにゴロとタマという名をつけている。
現実のバジリスク
中南米に生息する有鱗目イグアナ科のトカゲ。→バシリスク
鶏のようなトサカを持っているためこの名前が付けられたが無毒である。
たまにテレビの動物番組などで(短距離ではあるが)水上を走るトカゲとして紹介される。
関連イラスト
漫画作品「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」
山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』を原作として作られた、せがわまさきの漫画作品。2003年から『ヤングマガジンアッパーズ』(講談社)で連載された。
なおpixivで「バジリスク」タグはほとんどがこの漫画である。
バジリスクタイムの元ネタの原作のこの漫画。
詳細はバジリスク〜甲賀忍法帖〜へ。
2018年1月から『桜花忍法帖』がテレビアニメとして放送。こちらは甲賀忍法帖から10年後の世界を舞台としている。
キャストは畠中祐、水瀬いのりほか。主題歌は甲賀忍法帖と同様にオープニングテーマは陰陽座、エンディングテーマは水樹奈々が担当する。