この先、 『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』第48話の重大なネタバレを記事内容に含みます。
概要
『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』第48話(第二期23話)「約束」の出来事。
火星の鉄華団本部をギャラルホルンに包囲される中、マクギリスがガンダムバエルで作った隙を突き、オルガはクーデリアとアトラを伴い何とか脱出、アドモス商会へ辿り着く。
そこで蒔苗東護ノ介との連絡がつき、さらにはタービンズ残党を仕切るアジーからの伝言も聞き、ようやく窮地を打破する足掛かりが見えたその時……
ノブリス・ゴルドンの刺客が独断でオルガ達を襲撃。同行していたライドを庇って無数の凶弾を受けたオルガは、三日月から預かっていた拳銃で刺客の一人に一矢報い、ひたすらに前に進みつつ、自らの血の海の中に倒れ息絶える、という最期を遂げた。
「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!
だからよ、止まるんじゃねぇぞ…。」
なお、ノブリスはその後報復を受けたが、それはまた別の話である。
余談
この『鉄血のオルフェンズ』という作品は、サブキャラクターはおろか、主要なキャラクターでも、脈絡なくバタバタと死んでいく物語である。
特に、中盤~最終回にかけては、敵・味方サイドの主要キャラクターが立て続けに死んでいく展開を見せており、過去のガンダムシリーズでも扱われた「鬱エンド」路線の展開である事は、当時の視聴者の間でも間違いないといわれていた。
主人公の相棒であるオルガが死んでしまう可能性も0ではなく、序盤からハラハラする展開が多かっただけに、視聴者もある程度は心の準備ができていたといえよう。味方サイドの兄貴分キャラだけに、視聴者は華々しい最期を“期待”していた事は言うまでも無い。
――しかし蓋を開けてみれば、終盤の展開はその期待のはるか遥か斜め上に行く内容であった。
序盤から終盤にかけて、何事も勢いや熱量で正面から突破してきた鉄華団であったが……ついに敵対組織であるギャラルホルンの大部隊窮地に追い込まれ、全滅の危機に瀕してしまう。
全滅を避けるためにオルガが選んだ方法は、「鉄華団員全員分の個人情報を改竄して、指名手配を外し、戦闘を政治的に回避すると同時に追手の追跡を逃れる」という、鉄華団らしくない姑息的な方法であった。
しかも、わざわざ相手が指定してきた場所(アドモス商会本部)に、団長であるオルガ自身が直接出向かなければならないという、どう考えても罠の匂いのする指示内容から、多くの視聴者はこの時点でオルガに訪れる死、又は不幸な出来事を察していた。
結局のところ、騙し討ちには遭うのだが……
視聴者が期待した「商談が決裂し、抵抗の末に華々しく戦死する」という展開でも、「仲間達を逃がすために敵の特攻をかける」という展開でもなく、「直線にあれだけ盛り上げた手続きとやらが何事もなく済み、帰りに玄関口でたまたま敵対組織の手下(無名のモブキャラ達)に遭遇し、とっさに仲間の一人を中途半端に庇ったためにバカスカ撃たれ、お返しに銃を一発当てるがそのまま逃げられ、非常事態にもかかわらずなんか長々と喋り、そのままあっけなく死亡する」というある意味衝撃的な展開であり、これが案の定賛否両論となった。
音楽とセリフで感動的なシーンを繕ってはいるものの、問題の上記シーンを冷静に見直してみると色々と突っ込みどころ満載であり、感情移入していようがいまいが違和感を覚える仕上がりであった。以下は主要な突っ込みどころ。
- 直前にライドが「なんか静かですね」と発し、(不自然なまでに)盛大な不幸フラグを立てている。
- オルガがアドモス商会本から出てくるシーンで、事前に指名手配されていると念を押されていたにも拘らず変装や仮装の類を一切せず、普段通りの派手な衣装と素顔で出てきた。
- 敵との遭遇は十分考えられる場所なのだが、外で待機しているオルガの 護衛がチャド一人しかいなかった。
- しかも、十分に警戒できていなかったのか、ヒットマンの接近に全く気付かず、何の役にも立たないままに撃たれて寝ている。
- すぐ近くに遮蔽物となりうる建物があるのだが、逃げも隠れもせず、わざわざその場で背を向けてライドを庇い、全身に銃弾を受けている。作中のオルガの高い身体能力であれば仲間を担いだまま十分逃げ込めたであろうに……
- 銃に撃たれる音が、「ポスっ!ポスっ!」と情けないくらい軽い音であり、大してダメージを受けているように見えない。
- 「彼が尊敬する名瀬・タービンと同じく、“家族”を守る姿勢を優先した」と受け取れなくもないが、オルガとライドの間にそこまで仲のいい関係描写が無い。
- 医療技術が進んだ世界なのに、大量出血しているオルガを誰も治療せず、救援を呼びもせず、ただ集まって皆で泣くだけ。誰も応急処置しようとさえしなかった。
- 「オルガの身体から流れ出た血が前へ前へと流れ続ける演出」で彼の遺言(先述)を補強しておきながら、暗殺事件後に生き残った団員達は、オルガの復讐としてテロ活動を始めたり、仕事に追われて今までと同じ暮らしを続け、何も変えられていなかったりと、遺言に従い前へ進み続けている者がいない。
- 他の主要キャラクターの死亡シーンに比べると、あまりにも違和感が多く、軽いシーンなので、「実はまだ生きている……という伏線では?」との声もあったが、後日談で本当に死んでいた。
なお、後のインタビューでオルガの死亡シーンは他にも案があったと判明するが、それすら「仲間にジュースを奢ろうと、単独で自販機に寄った帰りに撃たれる」というもの。自動販売機を出してしまうと時代設定がややこしくなるという理由でボツになったらしいが、それ以前の問題だとは思わなかったのか…?
そして、とてつもなく不謹慎な話だが、彼が絶命する瞬間の体勢が映画『サタデーナイトフィーバー』のパッケージにおける主人公のポーズに似ていたため、純粋に悲しめないどころか、むしろそれがオチに見えて失笑してしまった人が少数いたとの事。特に、終盤の展開(オルガの行動を含む)が腑に落ちないと感じていた人ほど顕著だった。
オルガの死亡シーン(ライドが「なんか静かですね」とフラグを立ててから、オルガが例のポーズで息絶えるまでの場面)だけを抜き取られると中途半端なギャグにしか見えないという事が発覚して以来、これをネタにしたイラストなどが投下されている。
詳しくは親記事「止まるんじゃねぇぞ…」にて。
関連タグ
止まるんじゃねぇぞ…:オルガ最期の言葉。当ピクシブ百科事典では、主に本件のミーム扱いについて解説する。