いろいろな化学物質を不純物なしに合成できるもとになるので、大変重宝がられている。
概要
古代のプランクトンが、地面や海水の圧力を受け、何億年もかけて液化したものというのが有力な説。そのため、古代に浅い海であった地域で多く発見される。
ただし1870年台以降のロシアなど東側諸国と、1940年のイギリスのBP社は部内での主要見解は無機起源である。前者は「鉄のカーテン」に遮られ、後者は戦略上意図的に伏せられた。
オイルショックののち、オーストリア出身のアメリカの天文物理学者、トーマス・ゴールドにより1979年頃無機起源説が西側諸国の世間一般にも再提示されたが、まだ全体を塗り替えるに至っていない。
現在ではアラビア半島周辺やベネズエラ、北海、メキシコ湾、ギニア湾岸などで多く採掘されている。石油の存在には地域的な偏りがあるので、過去多くの戦争や政治問題を招いてきた。
採掘された状態のものを原油といい、これを精製して各種の石油製品とする。
利用
分留することで燃料や舗装材として利用するほか、他の有機物への合成など多岐にわたる。
・分留によって作られる石油製品
・石油から作られる有機物
各種のプラスチック、合成繊維、塗料、溶剤、接着剤、潤滑油など
石油と日本
日本は石油の大量消費国であるが、その大半を海外からの輸入に頼っている。太平洋戦争開戦の理由のひとつにもなった。
北海道、新潟県、秋田県、山形県に零細ながらも油田が存在し、産出量は年間約86万kl。自給率は0.02%。ただしこれだけ出れば国民が飢えないですむ国もある。
なおバブル期以降人件費の高騰のため中東産に勝てず1990年代には約25万klほどにまで落ち込んでいたが、採掘条件の良い油田の枯渇、投機による石油取引価格の乱高下と冷戦終結後の中東情勢の不安定さから再び増加に転じた。
東シナ海の日本EEZ内には石油もかなり埋蔵されているのではないかと言われている(深海底のため採掘は大変な高コストになるが、現状よりさらに石油価格が高騰すれば採算が合うようになる可能性がある)。
また、石油から多種のガス系物質や固形樹脂を生産できるのとは逆方向に、炭素や炭化水素を触媒反応を利用して液体の石油類に加工する技術(C1化学、CTL・GTL)もある(ただし本質が燃焼作用のため、元の3割ほどは失われる)。
メタンや石炭が産生されれば作れるので、シェールガスやメタンハイドレート、メタン菌などによるメタン合成やバイオコークスが着目されるゆえんである。
環境とのかかわり
不純物を含んだ石油をそのまま燃やすと、毒性の強い窒素酸化物(NOx)や粒子状浮遊物質(SPM)が大量に発生して大気汚染の原因になる。また、換気が不十分なところで燃焼させることも有害物質発生の原因になる。環境基準で、適切に精製した石油製品を販売するよう定められている。
また、脱税の目的で混ぜ物をした石油製品(不正軽油など)の使用は、大気汚染の元凶にもなるので、絶対にしてはいけない。
あまり意識されないが、石油を燃やすと大量の水(燃やした石油の量に匹敵する)が発生する。そのため、石油ストーブを使っている部屋は、石炭ストーブや薪ストーブの部屋よりも湿度が保たれやすい(ただし、FFストーブは燃焼後の空気を排出してしまうので、石炭ストーブや薪ストーブと同様に乾燥問題が発生する)。
原油価格の暴落
ところが、2014年7月から原油価格が下がり始め、価格の下落に歯止めがかからなくなっている。最初はアメリカとサウジアラビアの政治的な要因で下がっていたが、中国やブラジルなど新興国の景気減速なども影響して減産しても原油が上がらなくなっている。
2015年度ではOPEC加盟国の多くは減産を推進しているが、原油しか輸出できる資源がないサウジアラビアは、減産すると自国が破綻しかねないので反対している。
他に原油価格が下がっている要因としてアメリカとカナダがシェールガスの大量生産を行っていること、アメリカを除く先進諸国での省エネの取り組みが効果を上げていることが挙げられる。