概要
『ハリー・ポッター』シリーズに登場する主人公、ハリー・ポッターの名付け親であるシリウス・ブラック三世の出身である純血の魔法一族、ブラック家の家系図に登場する魔法使い。
シリウス三世の直系の高祖父であり、ホグワーツ魔法魔術学校の校長を務めた人物として知られている。
生涯
幼少期
フィニアス・ナイジェラス・ブラックは、1847年に純血の魔法使いシグナス・ブラック一世と、純血の魔女エラ・マックスのもとで生まれた。
二つ上の兄にシリウス・ブラック一世、妹にエラドーラとイオーラがいた。
しかしフィニアス・ナイジェラスが3、4歳の時に父親でありブラック家当主であったシグナス・ブラック一世が22歳の若さで亡くなってしまう。
加えて父の跡を継ぐ筈だった兄のシリウス一世が8歳で夭折してしまう。
父親の死因は不明だが、兄のシリウス一世の死因は時代背景から1846年から1860年のインド起源のコレラ流行の可能性がある。
通常魔法族は非魔法族のマグルよりも強い生命力を有し、マグルと同じ病気にかかってもマグルと同じ病気は治ってしまうとファン交流サイトにて原作者がコメントしているが、魔法族の子供は7歳頃に魔法の力が現れ始め、不安定な時期であることからその時期にシリウス一世はコレラ感染した可能性がある。
父の弟、叔父のアークタルス一世がフィニアス・ナイジェラスが成人となる17歳になるまでブラック家を管理していた可能性があるが、フィニアス・ナイジェラスは6歳でブラック家を背負う立場となった。
殆どの純血至上主義の魔法族の家庭がそうであったように、フィニアス・ナイジェラスは魔法族の純血性を尊び、マグル及びマグル生まれの魔法使い・魔女に差別感を抱いて育った。
上述の兄の死の原因がマグルの間で流行した病であった場合、その憎しみは凄まじいものであったとも考えられる。
結婚、妹たち、子供たち
1858年、11歳となったフィニアス・ナイジェラスはホグワーツ魔法魔術学校に入学し、組み分け帽子によってスリザリン寮へと組み分けられた。
1865年、18歳でホグワーツを卒業し、その後、聖28一族のフリント家出身の純血の魔女アーシュラと結婚した。
一方で、末の妹のイオーラ・ブラックが魔法力のないマグルのボブ・ヒッチェンズと結婚してしまった。
一族から半純血の魔法族を生み出す行為をした妹は家系図から排除されるが、それが兄であったフィニアス・ナイジェラス自身によるものの可能性が高い。
家系図から抹消されてしまったため、妹とその血族の消息は不明となっている。
もう一人の妹のエラドーラ・ブラック、イオーラと双子の可能性がある彼女はこの一件がショックだったためか、1931年に81歳で死ぬまで生涯結婚することはなく子供を残さなかった。
屋敷しもべ妖精が年老いてお茶の盆を運べなくなったら首を刎ねて壁に飾るというブラック家の伝統を作り上げた彼女はブラック家らしい女性として尊敬を集めたのか、彼女の名前の一部であるella(エラ)、dora(ドーラ)の名前がブラック家の娘たちの名前に一部流用されている。
1877年、30歳の時に長男が生まれて以降、四男一女に恵まれる。
長男には夭折した兄のシリウス一世に肖りシリウス二世。
続いて生まれた次男には自身の名前を与え、フィニアス二世。
1884年に生まれた三男は幼少期に後見人となったであろう叔父のアークタルス一世に肖り、アークタルス二世。
1889年に生まれた四男は若くして亡くなった父のシグナス一世に肖って、シグナス二世。
生まれてきた息子たちには自信を含め身内と同じ名前を与えている一方で、1886年に生まれた長女のベルヴィナはケルト版のヴァルプルギスの夜、ベルテンに派生した名前を名付ける。
ホグワーツの校長
時期は不明だが、フィニアス・ナイジェラスはブルータス・スクリムジョール(クィディッチ今昔ではスクリムガー表記)の後任として母校、ホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任した。
このことから、フィニアス・ナイジェラスはホグワーツ卒業後に教員採用試験を受けて教授となり、スクリムジョールの死去ないし引退に伴い校長に選出されたと思われる。
ミネルバ・マクゴナガルの例にもある通り、副校長を務めて、校長不在時に代理を務めた後に正式に校長に就任したとも考えられる。
仮に死ぬまでの間、ホグワーツの校長を務めたとしたら、彼の在位期間中にはアルバス・ダンブルドア(1881年生まれ、1892年入学)、ニュート・スキャマンダー(1897年生まれ、1908年入学)や自身の子供たち、孫たちが在籍していた可能性がある。
しかし、校長としては若者に対する忍耐力はないに等しい卑劣で皮肉な人物だったため人望が無く、世代を隔てた玄孫のシリウス三世からは「ホグワーツの歴代の校長の中で、一番人望がなかった」と評されていただけにその人望は酷かったと思われる。
それでも校長を務められていたのは彼が良くも悪くも仕事が出来る有能な魔法使いであったためであろう。
ホグワーツの教授および校長を務める一方で、フィニアス・ナイジェラスの家族の間でのトラブルが見られた。
恐らく彼の人生最大の汚点となったのは自分と同じ名前を与えた次男、フィニアス・ブラックがマグルの権利を支援する主張と唱えたことであろう。
フィニアス・ブラックは家系図から抹消され、イオーラ・ヒッチェンズ(旧姓ブラック)同様にその後の消息は一切不明となった。
肖像画として
フィニアス・ナイジェラスの肖像画は生前に長い間過ごしたホグワーツ魔法魔術学校とブラック家の持ち家、グリモールド・プレイス12番地の二か所で作成され飾られている。
魔法世界における肖像画は喋ったり、同じエリアにある絵画や肖像画の中へと移動することが可能であり、フィニアス・ナイジェラスたちホグワーツの歴代校長の肖像画は生前の特徴を反映した行動をし、他人と会話でき、知恵を教授や過去の経験を語ることができる。
グリモールド・プレイス12番地は玄孫のシリウス三世によって不死鳥の騎士団の本部として提供されたため、ホグワーツのアルバス・ダンブルドアたちと本部に待機しているメンバーとの連絡を取るために協力した。
ハリー・ポッターがハーマイオニー・グレンジャー、ロン・ウィーズリーたちとヴォルデモートを倒すために分霊箱を捜している間、グリモールド・プレイス12番地に一時滞在した際、フィニアス・ナイジェラスの肖像画があるため、ダンブルドアを殺して校長になったセブルス・スネイプに居場所を伝えることになりかねないとハーマイオニー・グレンジャーの持っていた検知不可能拡大呪文をかけたビーズバックに肖像画は押し込まれた。
その後、三人がホグワーツなどの情報を得るためにフィニアス・ナイジェラスが目隠しをした状態でに三日おきに会話することになった。
三人にとってはあまり良い会話相手ではなかったものの、ホグワーツの状況を知る事ができた。
さらに、ハーマイオニー・グレンジャーがビーズバックを開けた状態で今いる場所について話していたため、その日の夜にセブルス・スネイプが正体を知られずにグリフィンドールの剣を三人に渡すきっかけにもなっていた。
肖像画のフィニアス・ナイジェラスはおそらく、1998年に起きたホグワーツの戦いを観戦していた。
セブルス・スネイプの死んだ後、ハリー・ポッターが校長室に行ったとき、そこには肖像画の中にも誰も居なかったことからわかる。
ヴォルデモートの敗北した後、ハリーたち三人が校長室に行ったとき、非常に満足した様子のフィニアス・ナイジェラスは自分と同じスリザリン出身の校長がこの戦いに貢献したのだという話を肖像画の全ての校長がいる中で話していた。
子孫
フィニアス・ナイジェラスは1925年に78歳で亡くなった。
絶縁した次男を含めれば子供は五人(四男一女)。
死亡時に孫は少なくとも13人、曾孫が二人(ルクレティア・ブラックとヴァルブルガ・ブラック)いた。
しかし、直系の子孫はシリウス三世の死亡によって絶えてしまい、ブラックの名を持つ子孫はいなくなってしまった。
ハリー・ポッターと同学年のロン・ウィーズリー及びその兄妹たちはフィニアス・ナイジェラスの玄孫、ドラコ・マルフォイは来孫に相当し、ハリーとハーマイオニーはウィーズリー家との婚姻によりその系譜に加わり、フィニアス・ナイジェラスは傍系とはいえ史上最悪の魔法使いを倒した英雄たちの血を引く子孫を有することとなった。
詳細はブラック家を参照
子女 | 孫 |
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シリウス二世
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フィニアス二世
| 不明 |
アークタルス二世
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ベルヴィナ
| ハーバート・バークとの子供
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シグナス二世
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名前
フィニアス/Phineas
名前のフィニアスは聖書由来の名前だがヘブライ語の名前Pinhasは『蛇の口』を意味する説がある他、派生したエジプトの名前Pa-Nehasyには『ヌビア人』または『黒い人』という意味がある。
またブラック家の命名の伝統から、ギリシャ神話のピーネウスに由来するとも考えられる。
ピーネウスは神話の中で複数人登場するが、盲目の予言者が有名。
エウロペが大伸ゼウスにさらわれたとき、ピーネウスは他の兄弟たちとともに捜索に出され、父親からはエウロペが見つかるまで帰ってくるなと言い渡された。
ピーネウスは黒海とマルマラ海を分けるテュニア半島に向かい、そのままこの地に住み着き、クレオパトラ(クレオパトラ七世ではない)と結婚した。
予言の力を持つピーネウスは、人間の未来を予言したため、又はプリクソスの子供たちにコルキスからギリシアへの航海の方法を教えたために神々に罰せられ、盲目にされた。
その後、神々はこの地にハルピュイアを遣わし、ピーネウスの食事が用意されると、ハルピュイアたちが空から飛び降りてきて奪い去り、わずかに残った部分も臭気に満ちて食べることができなかった。
アルゴナウタイのカライスとゼーテースがハルピュイアたちを追い払ったので、ピーネウスはイアソンたちに航海の路を示し、シュムプレーガデスの岩について忠告した。
又は盲目になった理由には別のパターンが存在し、後妻のイーダイアーがクレオパトラの息子たちに犯されたと偽って訴え、その虚言を信じて二人の息子を盲目にしたために、ピーネウスは舅のボレアースとアルゴナウタイによって盲目にされたとされる。
ナイジェラス/Nigellus
ミドルネームのナイジェラスはラテン語で『黒』を意味し、ブラック家を意味するのと同時に、ラテン語で『白』を意味する名前を持つアルバス・ダンブルドアとの対比となっている。
またフィニアス・ナイジェラスはペスケンニウス・ニゲル(シリア軍団)、ダンブルドアはクロディウス・アルビヌス(ブリタニア軍団)とローマ皇帝を僭称した三人の帝国軍軍団長の名前がモチーフとなっており、最終的に皇帝となったセプティミウス・セウェルス(アフリカ軍団)はセブルス・スネイプがモチーフとなっている。