概要
漫画『鬼滅の刃』の最終話、第205話のサブタイトル。
そして、この話をもって炭治郎達の物語が完結することになる。
タイトルになっている幾星霜とは「苦労を経た上での長い年月」という意味を指す言葉であり、話の舞台が大正時代から現代に移っている。
また、週刊誌掲載時は登場キャラクターと大正時代のキャラクターの関係性等明言されていなかったが、単行本にて大半に説明がなされた。
※前日譚にあたる第204話「鬼のいない世界」のページも参照。
ストーリー
…時は、鬼の王と人間達の死闘から百余年後の未来、すなわち現代。
これは現代の東京の何気ない日常を描いた話。
「いい加減起きなよ」
「学校遅刻するよ」
「俺28回同じこと言ってるんだけど」
「起きなよ 炭彦」
竈門カナタは、学校に行くために寝坊助な弟の炭彦を起こしていた。
しかし炭彦は起きない。
同じ頃、我妻善照はテスト前にも関わらず、自宅の物置で曽祖父が書いた自伝を読み耽っていた。そんな弟に、姉の燈子は、蹴りを入れる。
登校途中、善照は姉にこう言った。
「姉ちゃんは輪廻転生って信じるかよ」
「俺は信じるよ」
「絶対みんな転生して幸せに生きてるんだ」
「平和のために鬼と戦って命を落とした人たちは」
しかし、当の姉は聞いておらず、体操日本代表の宇髄天満のニュースに夢中なのであった。
そして、善照は宇髄の活躍に興味を持たず、「青い彼岸花」のニュースに載っていた美人…嘴平青葉の方に興味を持っていた。
青葉は、青い彼岸花が「一年で2〜3日、昼間だけ咲く花」であることを研究していたが、うっかりミスで全部枯らしてしまって各方面から非難轟々になっているという。
善照はそんなニュースを読んで同情していたが、彼が男だと知ると手のひらを反すのであった。
横断歩道のところには仲睦まじそうな親子と、ベビーカーに乗った霞柄のブランケットの双子がおり、「ウヘヘ、女の子かなあ?」などと感想を漏らしては姉に気持ち悪がられ、鶺鴒女学院の女子生徒を見て「すごいいい匂いするぅぅ」などと鼻の穴を膨らませるなど、善照はどこまでも女好きである。
そうこうしているうちに、二人はカナタと合流する。傍を二人組の小学生が通り過ぎてゆく。
やけに巨体の幼稚園の先生に善照が内心でツッコミを入れる横で、学校が午前だけで終わるため、帰りに定食屋に寄るか相談するカナタと燈子。善照が先日、定食屋の奥さんの胸ばかり凝視していたのが原因で旦那から包丁を投げられたため、カナタは行きたがらなかったが。
兄達が学校へ向かっている頃、ようやく炭彦は目を覚ました。
皆勤賞がどうしても欲しい彼は、マンション高層階の自宅の窓からひらりと飛び降り、華麗なパルクールを駆使して学校へと急ぐ。
近道しようとして将棋を指す老人達の家の庭を通って、怒鳴られる。家のテレビには「日本最高齢記録を更新した産屋敷さん」が映っていた。
鋼鐵塚整備の横を過ぎたところでぶつかりそうになった女の子達に、「ランニングマンだ!」と変なあだ名をつけられていると知って赤面する。炭彦はすっかり町内では有名人であった。悪い意味で。
信号待ちしていたパトカーのボンネットの上を、側転で飛び越してゆく炭彦。しかし、パトカーの怖い警察官達に「絶対アイツだな、七件通報きてる高校生は…」と、完全に目を付けられてしまった。
それにも気付かず、ガシャポンの話題に花を咲かせる三人の小学生とすれ違いつつ、炭彦は走り続ける。
通学途中の後藤という少年は、きれいな女性の画像を見ていた。
その様子を見た友人の竹内は、後藤の彼女と勘違いをしてやきもちを焼くが、善照が突然横から割って入って「謎多き男、山本愈史郎の『珠世』という作品」であることを解説、呆気にとられる二人を尻目にドヤ顔で去って行く。
一方、炭彦の後ろから友達の桃寿郎が追いついてきた。いつも寝坊の炭彦と違い、稽古に熱を入れ過ぎたために珍しく遅刻しそうだという。
二人は談笑しながら走るが、後ろからは先程のパトカーが炭彦を追ってきていた。警官は半ギレになりながら制止を命じるも、おしゃべりに夢中の二人は全然止まらない。
そうする内に、学校が目の前に迫っていた。
「危険登校常習者」の炭彦が来たと気付いた教師は、意地悪く門扉を閉めてしまうが、炭彦と桃寿郎は軽々とジャンプしてゴールイン。「ギリギリセーフだったねぇ」「うむ!」など呑気に笑い合う二人を呆然と見送る教師は、結局炭彦に振り切られたパトカーの警官達に事情聴取される羽目になるのであった。
騒がしくも、平和な一日がまた始まる。
ただ一人、「青い彼岸花」の失態により研究所を馘になりそうな嘴平青葉は、「山奥に独りで暮らしたいなあ…」などと涙ぐんで呟いていたが。
その頃の竈門家では、炭彦が起こした問題行動のことで電話がかかってくる。
電話越しに謝罪をする母の横には…
かつて激戦を潜り抜けた剣士、竈門炭治郎の耳飾りと日輪刀。
…そして「皆で笑い合っている鬼殺隊」の写真。
すなわち、皆が平和に暮らす何気ない日常を…何気ない未来を守った彼らの誇らしい姿が飾られているのであった。
…こうして、『日本一慈しい鬼退治』は幕を閉じたのである。
登場人物
※『ストーリー』の項目で話の流れ上、紹介することが難しく端折った人物もこちらで紹介しています。
※既に個別記事が作成されている人物については、該当ページも併せて参照。
高校生。16歳。
竈門兄弟のしっかり者の方。
燈子と付き合っているらしい描写がある。
高校生。15歳。
竈門兄弟の寝坊助な方。身体能力がかなり高く、毎朝パルクールを駆使して無茶な通学路を往く。
そのため女子小学生からは「ランニングマン」、先生からは「危険登校常習者」だのとあだ名されており、警察に7件も通報されてしまっている問題児である。
高校生。17歳。
燈子の弟。作中では燈子に「お父さんそっくり」と言われている事から、彼の父親も同様の性格をしていると思われる。
今どきの女子高校生。18歳。
善照の姉であり、しっかり者の少女。ミーハーな部分もある。
カナタと付き合っているらしい描写がある。
学者。青い彼岸花の研究をしている。上記の研究で犯したミスから明日の生活がかかっており、馘になったら山で暮らそうか考えていた。
※イラスト左側の人物
体操日本代表選手。20歳。
記者の首を締めたり中指を立てたり、素行はあまりよろしくない模様。
- 双子の赤ちゃん
横断歩道を渡る女性のベビーカーに搭乗。
- 鶺鴒女学院の生徒
※イラスト下側の二人組
善照達の横を歩いていた二人の女子学生。1コマだけ登場な上、名前は両名とも不明。
- 大柄な保育士
同じく1コマのみ登場。保育園の子供を注意している。
ピンク色のエプロンが似合わないことを、善照に内心で突っ込まれている。
- 定食屋の夫婦
蛇の置物があるメガ盛りの店。
善照は、かつて奥さんの胸ばかり見て、厨房から旦那さんに包丁を投げられたことがある…らしい。
- 将棋を指している老人二人組
炭彦が登校のために庭に侵入してくることを毎朝怒鳴っている模様。なおもう一人の老人は、当然だろうが天狗の面をしていない。
元鬼殺隊98代目当主。
現在は日本で最高齢の老人としてニュースに取り上げられていた。
- 鋼鐵塚整備
炭彦の通学ルートにて看板のみ登場。
- 女子小学生3人組
炭彦を「ランニングマン」と呼んでいる。
- パトカーに乗った警察官
炭彦の危険登校を取り締まろうとする二人組の警察官。どちらも強面な上に、先輩警察官の方は口も悪い。
炭彦の通学シーンで登場。
レアキャラのキーホルダーを当てており、一緒に登校している女子小学生にあげている。
- 義一と一緒にいる小学生二人組
義一と3人で仲の良い描写がある。
- 後藤
善照達と同じ学校に通っている男子高校生。登校中に「珠世」の画像を見ていた。
「珠世」という名前の美しい女性だけを描き続ける謎多き画家。
恐らく彼と同一人物と思われる。
炭彦の同級生。
彼にそっくりな容姿と熱血加減。
- 校門にいる教師
とある鬼殺隊士によく似た教師。炭彦達の危険登校を阻止しようとするが失敗する。
余談
- この回は今までの話の未来にあたるエピソードであり、炭治郎達が「遺したもの」にまつわる話。そのため、厳密には炭治郎達自身の物語の最終回は第204話だと解釈も出来る。
- 善照の台詞にて輪廻転生について軽く触れられていることから、登場人物達は子孫組と転生組に分かれる可能性、全員が転生の可能性、はたまた大正の彼らとは関係の無い人物という可能性がある。ただし、いずれも原作では明言されなかったため読者の想像の範囲を出ない。善照は善逸伝の著者を祖先と発言しているが、決定的な描写は無いためこちらも明らかではない。
- 上述したように子孫、転生した者、もしくは容姿の似ている関係の無いキャラクター達が健在なのは確認されたものの、大正のキャラクターたちのその後は不明。
- この回では鬼及び、鬼の死後の描写にて地獄についていった人達は愈史郎を除けば一人も描かれておらず、鬼がいなくなり平和になったことが確認できる。(地獄の存在する世界観であることと、地獄の刑期が一兆年以上が最短であることを考えると未だに地獄で罪を償っているものと思われる。刑が終わる頃には地球などの惑星が消滅するため人類が滅んでいる可能性が高い)
関連イラスト
※作品投稿者へのお願い
この回は激しいネタバレを含むため、関連イラストには必ず本タグの使用をお願い致します。
特に単行本派やアニメ派の方々は、ネタバレを踏まない様お気をつけ下さい。