「私はお前たちのように、金に楽しみを感じられんのでね。破壊と殺戮ほど、高級な趣味はない!」
※この記事にはネタバレが含まれています。閲覧には十分注意して下さい。
概要
囚人No.なし 圧縮冷凍年数:不明
ドン・ドルネロ率いるロンダーズファミリーの幹部で、金属でできた黄金の龍が二足歩行してマントを羽織っているかのような容貌のサイボーグであり、ギョロリと光る真ん丸な目が印象的。 左手は3本指のマジックハンドになっている。
戦闘の際は主に左手を変形させたマシンガンと、口からの光線を使用する。
外見こそ完全なロボットだが、人間と同様に自分の意思で思考し行動しており、喜怒哀楽の表現も非常に豊か。 話し方も、低くて押し出すような物言いのドルネロとは対照的に、甲高い声で饒舌によく喋る。性格も冷静沈着で、基本的には丁寧語の落ち着いた物腰で接するが、感情が高ぶると顔が展開し、不気味な顔立ちとなる。
機械技術に明るく、ゼニットなど組織が必要とするメカニックを制作したりもしている。
ただし、ドルネロやリラと違って、金銭よりも破壊と殺戮を好む残忍な気質を秘めており、時に凶悪犯であるヘルズゲート囚人の解放や純粋な破壊兵器の開発など組織の方針とは合わない行動に出ることもあり、その度にドルネロから窘められていた。
劇中での活躍
剥がれ落ちて行く理性の仮面
西暦3000年、ドルネロ&リラと共に時間保護局のロンダー刑務所を乗っ取り、20世紀にやって来る。
ドルネロやリラのように金儲けに関心を示さず、破壊や殺戮に喜びを覚えるという危険な嗜好の持ち主であり、解凍する囚人も暗殺者やテロリストなど、一際危険な連中ばかり。
Case File.16で解き放った美食放火魔ビンセントも、罪状だけ見れば「食い逃げ犯」と一見小物だが、実際は犯行現場の店に放火して回ると言う相当な凶悪犯である。
ドルネロも当初からそれには気付いてはいたものの、何故かきつく咎める事はせず口頭注意だけに留めていた。
尚、前述の様にドルネロとリラとは目的が異なっているが、仲間意識が無いわけではなく、一緒に食事を楽しむ光景も見られる。
序盤では普段の振る舞いはまだ落ち着いており、囚人に対しても散発的に破壊や殺人をけしかけるだけだったが、Case File.18では彼らにとっては使い道の無さそうな新エネルギー源・λ2000を第三総合研究所より強奪。
続くCase File.19では、λ2000をより効率良く変換させたζ3を使用した、ロンダーズとしては初の巨大破壊ロボット・破壊兵器ノヴァを製作し、今まで例のない大規模破壊を行うなど、ギエンの行動は次第に不可解さを増していく……。
以下、作中におけるネタバレ
【秘められた過去、歴史の分岐】
「でも、3から上はちょっと苦手なんだ…すぐ覚えるけどね」
ギエンは元はごく普通の人間だった。
元々は30世紀のダウンタウン一角で孤独に暮らす、シャボン玉好きで純真なヒューマノイドのホームレス青年(地球人かどうかは不明)だったのだ。或る日、当時の敵対勢力であるクーロンズ・ファミリーに追われていたドルネロを住処に匿ったことで彼と交流を結ぶが、それが発覚したことで自身も襲われ、ドルネロを庇って解放されるまで口を割らなかったために瀕死の重傷を負わされてしまう。2度も命を救われたドルネロは満身創痍で住処に戻ったギエンを闇医者の下に運び、そこで治療も兼ねたサイボーグ手術を施させたことで今の姿となった。
機械化以前は年齢の割に子供っぽい性格をしており、しかもあまり学校に行ってなかったようで頭が悪く、数字も3より上はろくに数えられない程だったが、施術の際に電子頭脳を大量に搭載したことで優れた知能を得た。しかし、電子頭脳の影響なのかその代償として人間だった頃の人格が破壊され、今のような悪党へと変貌。そうしてドルネロと共にファミリーとして犯罪を繰り返すにつれ、やがて異常なまでの殺人・破壊嗜好を膨らませていく(自身に蓄積していた周囲への反抗心が、電子頭脳によって爆発したという見方も出来る) 。
「すべては私の思うままになる!私より賢い者がいるか?そうだろ、ドルネロ?……ヒャハハハハハ…!!」
ギエンを手術した闇医者もそれは予測しており、あらかじめ電子頭脳の解除キーを渡してはいたものの、ドルネロはできるだけそれを使いたくなかったらしい。ギエンが勝手に破壊を繰り返していてもきつく咎めなかったのもここに端を発していた。
だが、そんなドルネロの親心とは裏腹に、ギエンの破壊衝動は更なる加速を見せ、先の破壊兵器ノヴァの開発を皮切りに度々ヘルズゲート囚人を解凍しての破壊活動を行う等、次第にドルネロの意に反した行動が増えて来た。そしてエンボスを解凍しての大規模なバイオテロに及んだ事を機に、とうとう堪忍袋の緒が切れたドルネロに解除キーを挿入されて機械化以前の人格に戻され軟禁されるが、リュウヤの暗躍でキーを破壊されて活動を再開。
「破壊への第一歩」としてλ2000の強奪を目的に、解凍した殺人犯ハーバルと大量のゼニットを率いて浅見グループの第三総合研究所を襲撃、そこでドルネロが密かに情報を流して再度作らせた解除キーを持ったタイムレンジャーと交戦する。ドルネロしか存在を知らないはずのキーをタイムレンジャーが持っていた事を受け、ドルネロがとうとう自分を見限ったことを悟りながら交戦、互角の戦いの末追い詰められたがまたもリュウヤの干渉で難を逃れたことで「自分の破壊行為が歴史に定められたものである」と確信。絶対的な後ろ盾に満足しつつ撤退していった。
ミュートエネルギー炉確保に失敗したことで、当初の予定通りλ2000を動力源とした破壊ロボットであるメカ・クライシスを開発、無差別破壊をさせるが、その前に遂に刺し違えてでも彼を止める決心をしたドルネロが出現。
一度は追い詰められるも、弱々しく命乞いをするギエンを見てトドメを刺せないドルネロを返り討ちにし、遂に殺害する。
そして最後の仕上げとして、「自らの手で破壊を楽しむ」べく有人操縦型のネオ・クライシスを開発して街で破壊の限りを尽くし、迎撃に出たブイレックスとの激突で、空間さえも歪ませて周囲を崩壊させていく。
実はギエンとブイレックスには同じく「超高密度のλ2000」が動力として使われていた。このエネルギー体には時空を歪める性質があり、両者の激突で時空のバランスが崩れた結果起こったのが、「21世紀の大消滅」と言う惨劇であった。
ブイレックスを至近距離からの放電で沈黙させ、止める者の無くなったギエンとネオ・クライシス。
「歴史に定められた破壊だ!今日、私は神になる!」
機体冷却の為の休養を挟んで訪れた2001年2月4日、狂気の極みに達した金色の罪人は、遂に地上を完全に廃墟とすべく動き出した。
【心を失くした罪人の末路】
「破壊、破壊!ヒャハハハハ!!……ドルネロ、僕ヲ見てヨ!何処ニイるのォ~!?」
破壊衝動で電子頭脳が限界を迎えたのかそれとも破壊への快楽に酔いしれているのか、ネオ・クライシスを駆り暴れ狂う中で完全に理性を失ったギエン。最早彼は自らの手で唯一の友を手にかけた事はおろか、今まで何度も戦ってきたはずのタイムレンジャーの事さえ分からなくなってしまうほどに錯乱してしまっていた。
「何なンダ!?オ前たチ誰だ!!ボクノ邪魔ヲスルナァァ~~~ッ!!」
街を闊歩し、目の前の全てのものを叩き潰そうと、再度立ち塞がったブイレックスやタイムロボを相手に大立ち回りを演じる。
だがタイムロボが時間を稼ぐ間に、滝沢直人からDVディフェンダーを受け継いだ浅見竜也がブイレックスのλ-2000をΖ-3に変換。そしてΖ-3のエネルギーによるマックスバーニングがギエンに直撃し、彼のλ-2000も消滅。こうしてネオ・クライシスは破壊され、同時にギエンのλ-2000も無害な微粒子にまで分解された為、大消滅は防がれた。
「……ドるneロ…どコイっchぁッたノ…?ぼク…おカねかzoエられルyoうになっタよ……iチ…ニィ…」
「ア゛ッ!!!」
周囲に建物やネオ・クライシスの残骸が散らばる中、致命傷を負ったギエンは上記のうわごとを言い切る前に、顔面が崩れ落ち遂に沈黙。
誰に気付かれることも看取られる事も無く、ひっそりと消滅して逝った。
はからずも『狂気と悲劇のサイボーグ』として皮肉な運命を辿った彼だったが、息絶える直前に最後の最後でかつての純粋な心を取り戻したのがせめての救いだったのか。
唯一の理解者がいなくなった今、おそらくそれを知る者は未来永劫もう何処にもいないだろう…。
余談
劇中を見れば分かる通り、或る意味ではタイムレンジャーに登場したどの囚人よりも恐ろしい犯罪者で、同時にスーパー戦隊の歴史の中でも屈指の悲劇の悪役でもあったギエン。その出生の秘密が開かされる以前に発行された図鑑などではサイボーグでは無く、「機械生命体」と紹介されていた。
造り手が闇医者だったということもあってか、動力に使用しているエネルギーは既に旧式(λ-2000は30世紀ではもうほとんど使われていない)、更にいつか暴走する危険性のある電子頭脳の過搭載といった問題点も多く、総合的にはかなり欠陥だらけのサイボーグだったりする。
『百化繚乱[下之巻]』にて、デザイナーである原田吉朗氏曰く、「『常に改造を繰り返す完璧主義者となっており、徐々に改造していく偏執狂』という事で全身が金色になっていく予定だったが、敢えてそうしなかった」らしい。
人間時代を演じたのは、不思議コメディーシリーズに渋谷ケンジとして出演した天間信紘氏(戦隊シリーズでも過去に『高速戦隊ターボレンジャー』で日野俊介の亡き弟・俊二を演じている)。改造直後のギエンの声も担当している。
関連タグ(ネタバレ注意)
未来戦隊タイムレンジャー ロンダーズファミリー サイボーグ 哀しき悪役
リコモ星人ケバキーア:中の人繋がりで言動や容姿、性格が似ている。
アルジャーノンに花束を:モチーフかもしれない小説。知能は低いが純粋な心の青年が、手術で得た天才的頭脳と引き換えに心を歪ませて孤立し、最後には元の知能に戻るという部分が共通している。
魏延:モチーフに入っているかもしれない武将。恩人であるボスを最終的に裏切ってしまうのは、名前の音に引っ張られたのだろうか…。
ブラック補佐:悪の組織のボスの側近ポジだったが、ボスを裏切って惨殺し、切り札のロボットに乗り込んで主人公に闘いを挑んで最終的に敗死した悪役繋がり。
ドクター・アシュラ(毒島嵐):ギエンと同様、数もまともに数えられなかったのが改造されて天才の頭脳を手に入れた戦隊敵幹部。ギエンと大きく違うのは改造で人格が変わってしまったわけでなく、元から悪の道を突っ走っていた。
Dr.ヒネラー:悪の組織のボスの側近ポジの元人間の哀しき悪役繋がり。ボスを裏切って惨殺し、切り札のロボットに乗り込んで主人公の前にラスボスとして立ちはだかったという共通点がある。
デストラ・マッジョ:ギャングのボスの側近ポジ繋がり。こちらはボスへの忠誠心が強く、最後まで組織のために行動する等、人物像も顛末も対照的。
ケフカ・パラッツォ:『FF6』のラスボスで、同じく元は普通の人間だったが人工的に魔導士を生み出す手術によって強大な力を得るのと引き換えに人格が破綻。言動も幼稚且つ狂気染みて次第に破壊衝動に傾倒。やがては世界を崩壊へと導く等、ギエンと共通点が多い。
天才怪獣ノーマン:こちらも出自などが似ている
不破諫:組織の本懐よりも自身の目的を最優先とする、本人の望まぬ手術によって、人生が滅茶苦茶にされた特撮キャラ繋がり。但し、ギエンはドン・ドルネロが「瀕死のギエンを救いたい」と言う善意から、不破はある人物の身勝手な目的の手駒にすると言う悪意から、ギエンは上記の通り死亡するが、不破は存命していると、細部は全く異なっている。
スーパー戦隊ラスボスリンク
大魔女グランディーヌ←ギエン/ネオ・クライシス→究極オルグ_センキ