次元大介
じげんだいすけ
「裏切らねえ女がいたら、是非お目にかかりてぇぜ!」
演じた人物
概要
ルパン三世と多くの仕事を共にしてきた相棒的な人物で、射撃の名手。名前の由来は、原作者のモンキー・パンチが「次元」という言葉をとても好んでいたためで、「大介」という名は作者の知人にもいて、キャラ考案時の何気ない感覚で付けたとのこと。
相棒とは言っても、常にルパンと一緒にいるわけではなく、各々のシノギや事情を最優先して別行動をとる場合もある。特に不二子に乗せられて簡単に危ない橋を渡ろうとするルパンの元を「(今回の仕事)俺は降りる」と去ろうとする事はお約束。
基本的にクールでシニカルな言動を崩さない性格だが、一方で男の夢も捨てきれないロマンチストな人物でもあり、節々で感情豊かかつお茶目な一面を見せる事も多い。
基本的にやせ形で猫背。
愛煙家で、タバコを口に咥えているシーンが多い。愛飲の銘柄はマールボロ、若しくはペルメル(ポールモール)。
好きな酒はバーボンやスコッチ。好きな食べ物はベーコンと豆の炒め物。好きな俳優はハンフリー・ボガードとマリリン・モンロー(劇場版『ルパンVS複製人間』より)。
名前からも分かる通り日本人だが、その過去は作品によってまちまちで、ルパンとの出会いも原作では日本国内で幼馴染、アニメでは外国にて敵同士だったりと異なっている。
その腕前を活かしボディガードや殺し屋、傭兵などを転々としてきた事だけは共通しており、仕事をかつて共にしていた相手や戦った敵など、その時代の因縁が現在になって彼に巡ってくる話も少なくない。
ルパン・五ェ門・銭形とは違い、家系としてはかなり平凡な生い立ちらしい。子供の頃に縁日の射的で悔しい思いをした事が語られたシーンもある。
容貌
顎髭を生やし、主に紺系のダークスーツとボルサリーノ製のソフト帽を常に着用している(色とりどりの上着を着こなすルパンとは対照的)。
殆どの作品では一貫して帽子を深くかぶって目元を隠しており、コミカルなシーンでのみ目を見せるケースが多い(例外的に、クライマックスで帽子の脱げた状態で敵と決着をつけるシーンなどもある)。
ネクタイの色はスーツの色とあわせた黒っぽい色であることが多いが、ときおり白っぽいネクタイを身に着けていることもある。
準長髪のスタイルが基本だが、前髪に関しては作品によって、オールバックのことも、前髪を垂らして目を隠していたりすることもある。
モンキー・パンチ曰く、「長髪のルパンに髭を生やして帽子を被せた」だけのデザインらしく、顔立ちはルパンとそれほど変わらないようだ。
能力
次元大介という人物の最大の特徴として、「早撃ち0.3秒のプロフェッショナル」と称される拳銃の名手であることが挙げられる。一般の基準から見るとルパンも十分に拳銃の名手ではあるのだが、そのルパンも早撃ちにかけては次元には敵わないと自ら認めている。
愛銃は「S&W M19コンバットマグナム」(357マグナム 4インチモデル)。
裏社会を共に生き抜いてきた銃で、目を瞑っていても一から組み立てられるほどに使い込んでいる為、専門家に修理してもらう事態が無い限りは自分で修理や点検をしている。
本人の強いこだわりやジャムの危険性がないことなどから、リボルバーを好んでおり、ホルスターは使わず、シャツとズボンの間(腰の後ろ側)に挟んでいる。
拳銃のみならず銃火器全般に精通しており、やむを得ない事情がある場合はマグナム以外の拳銃を使う事もある。『カリオストロの城』ではシモノフ対戦車ライフルを用いて敵と戦っていたほか、スナイパーライフルでの狙撃を行うエピソードも多い。
『DEAD OR ALIVE』では、終盤での超兵器に対処するため、H&KのHK69グレネードランチャーを使用している。
銃の技術だけでなく、銃弾で負傷した人物の足から弾丸を摘出するなどの技術も身についている。
また、あらゆる銃器の構造や特性を熟知しているため、ある話では相手が放った銃弾を正確に撃ち抜いて軌道をそらすという神業や、長距離狙撃を寸分たがわず同じ一点に当て続け最新鋭の防弾ガラスを貫通する腕前、(相手が全員三下という前提であったが)四方八方からの銃弾を丸腰の状態で全て躱し、そのまま同士討ちによって全滅させるという、人間離れした芸当を披露した。
戦闘能力は主に射撃面に集中しており、特別格闘の心得があるわけではない。
しかしルパンと共に多くの死線や修羅場を潜ってきた過程で、半端なチンピラ連中などでは相手にならないレベルの強さや、ルパンに匹敵する変装技術を自然と身につけている。
「ルパンVSコナン」では、ある国でいい加減ながらも実践的な軍事指導を行い、軍の強さを三倍にまで引き上げてもいる。
その他
歯が弱い体質らしく度々虫歯に悩まされているほか、ストレスからよく歯痛を起こす。
女性(特に不二子)も基本的にあまり信用しておらず、理由は「いつも裏切るから」とのこと。嘘をつくところを含めて、女をそれこそ丸ごと愛するルパンとは対照的に、一途でロマンチストな面が強いため、不二子のような悪女には全く向いていない(アニメ第2シリーズでは「女性恐怖症の気がある」との設定もある)。傭兵・ボディガード時代に好意を持っていた女性を戦いで失ったトラウマも関係しているようだ。
だが劇中では女性とのロマンスも度々描かれる事があり(モニカ、シスター・アンジェリカ、キャサリン・モロ、カレン・クォリスキーなど)、実は密かにルパンより自分の方がもてると思っている。ただし女運はお世辞にも良いとは言えない。
原作
第10話「ルパン殺し」で次元大介にて化けたルパンとして存在が仄めかされ、第11話「健在ルパン帝国」にて正式に登場した。この回で妹の存在や次元がルパン二世の部下でルパン三世と幼馴染であったことが明かされ、第71話「ルパン嵐」では兄(別のコミカライズ版では単に兄貴分の男性)がいると発言している。
現在では想像し難いが、原作初期やアニメ第一シーズンでのルパンとは「仲間」というより「親分・子分」に近い主従関係で、金の為に人質を見捨てようと提案したり不二子に捕まって替え玉を送り込まれるといったドジを踏むなど、銃の腕前は確かなものの小悪党的な滑稽な役回りが多く、ルパンからの扱いも散々であった。
『峰不二子という女』では、ルパンとはライバルだったり協力したりという微妙な距離感になっている。
『ルパン8世』
22世紀の未来を描く『ルパン8世』に登場。
ルパン三世の五代後の子孫ルパン8世の相棒であり、同姓同名である『三世』版次元大介の子孫。
服装を含めた容姿は『三世』の次元とほぼ同一だが、咥えているのはタバコではなく棒付きキャンディである。
これはルパン8世と言う作品自体が日仏合作企画であったため、子供向け番組における喫煙描写をNGとするフランスの放送コードに則った変更である。
活躍するのが未来という事もあってか使う銃もリボルバーではなく光線銃で、仕事によっては宇宙服も着用する。
なおコミカライズ版では『三世』時代の次元も実は生きており、ルパン三世や(十三代目の)五ェ門らと共に実に250年もの間冷凍冬眠しているという事になっている。
余談
設定等について
「帽子の鍔で視線を調整し銃の照準を合わせている」とする巷説が存在するが、この設定はTV第2シリーズ「次元と帽子と拳銃と」のみのもの。トリビアの泉などの番組で何度も取り上げられてこちらだけが有名になってしまっているが、実際には「荒野に散ったコンバットマグナム」「吸血鬼になったルパン」など、他のエピソードでは普通に帽子無しでも正確に射撃している。
普段かぶっている帽子だけでなく、ごく稀に就寝時にナイトキャップをかぶっているというレアな姿を披露することもあった。
モデルとなった人物は、小林清志が専任で吹き替えを務めていた(「荒野の七人」出演時の)ジェームズ・コバーンである。
声優について
小林はごく一部を除いてPART1から担当していた。レギュラー声優が全員変更となった際も、代わりがいないとして栗田貫一と並んで残留したが、特に小林は自身で新声優のオーディションを受け直したという。
次元大介は小林自身の集大成であり、最初こそ苦労したが長い間演じるうちに自分が次元へと寄っていき、一体化するような感覚すらあったという。
首から上が無事な限りは演じ続けるという意気込みを常に表明し、私生活では杖を付かないと歩けない程に身体が衰え、キャラクターの役はほとんど降板してもなお、小林は次元を演じ続けた。
しかし2021年、毎週長時間のアフレコに臨むのは年齢的に落ちた体力の問題から困難となり、「限界」と判断してついに勇退を決意した。この時に「自分にとって『ルパン』という作品は命をかけてきた『ライフワーク』である」と前置きし「出来る事なら90歳までやっていたかったが無理だった。(映像とのギャップがあるかもしれないが)歳をとればそれなりの深みが出てくるはずだ」と発言した。
一方で一部の視聴者から「次元は歳をとった、(台詞が)聞きづらい」と評された事に対しては「周囲がそう思うのは当然だ」とした上で「わたしゃ、齢88歳であるぞ。俺なりに努力した結果だ」と反論し、降板により「そういった批判を受けないで済むからほっとする」とも語った。
後任の大塚に対しては、かつての共演者だった大塚周夫(アニメ版初代五ェ門)との縁故あるエピソードを披露した後、次元を「単なる悪党とは異なる、江戸の粋…ある種の『江戸っ子』らしさがあり、雰囲気はJAZZにも似ている」と喩えた上で「これは難しいぞ」とエールを贈った。
Part6からの演者となる大塚明夫だが、実は「ルパン」とは全く縁もゆかりも無い訳でもなく、散発ながらTVスペシャルのゲストキャラとして何度が出演していた事もあった。そもそも明夫の父親である大塚周夫はパイロットフィルム(TV版)における銭形役、Part1における五エ門役である。明夫はかつて小林に「なぜ親父は五ェ門を辞めたんでしょう?」と尋ねたことがあり、小林も答えに窮したという。勇退表明の文中では「さぞ先輩も無念だったにちがいない」と述懐していた。
明夫は今回のオファーについて「身が引き締まりました。清志さんの想い、たしかに掴んで離さないよう精進します」とコメントし、小林が50年をかけて「生命を吹き込んだ」次元大介を「もはや『清志さんそのもの』である」と捉えており「次元大介から『清志さんじゃない声』が聞こえてきたらイヤです。もしかしたら誰よりも。だからこそ、そんな自分さえも納得させ得る次元大介を演じたい」と意気込みを表明し、小林から受け取ったバトンを繋いていく事を誓った。
大塚はオファーを受けた時「当然嫌だったし本音を言えば交代自体も納得しかねる。だが自分が固辞しても誰かがやることになるため、別人にやられて寂しい気持ちになるくらいなら自分が叩かれた方が良い」と逆に快諾したという。小林に一言挨拶したいと思っていたが機会がなく、直接押しかけるのも迷惑だろうと渋っているうちに収録が始まったという。
しかしPART6でのキャスト交代時、公式に出されたコメントを見て「90歳までやっていたかったということは、喜んで役を譲ったわけではない。そのうえでヒントをくれた(次元は江戸っ子でJAZZ)と受け取り、ありがたくて涙が出た」「霧が晴れたような、地獄のなかに蜘蛛の糸が垂れてきたような救いを感じた」と語っている。ちなみにPART6の1クール目はこれらのコメントがくる前に収録が済んでおり、自身の次元を聞いて「これは違うな」と何度も苦しんだという。
また、自分のルパンを確立して長い時を経て評価を得た栗田貫一と違い、大塚は「新しい自分の次元を作ろうとは思っていない。それは自分自身が許せない」と語り、小林清志の演じる次元をいかに踏襲するかを意識するつもりとしている。そして栗田に比べれば自分は甘い環境にいるとすら語っている。
小林の勇退により主要キャストはこれで完全に入れ替わったのである。