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「わが念力にかけても」


概要編集

漫画家モンキー・パンチ原作の「ルパン三世」のアニメも含めた初の映画化及び実写化作品として、1974年に公開された作品である(時系列としては1st2ndのちょうど間に当たる)。


製作時期が古いことなどの理由から、ファンの間でも知名度が低いが、元々アニメのイメージが強かった『ルパン三世』に実写化の可能性を提示し、その後の小栗旬主演の映画(2作目)や、スピンオフ作品であるドラマ『銭形警部』などの作品や、2nd以降のアニメ版のノウハウへと繋がるなど本作の意義は大きく、今日に至るルパンシリーズの飛躍の糧となった。


本作は上映されてから20年近くに渡ってソフト化が行われておらず、長らく「幻の作品」扱いだったが、東宝よりアニメ劇場版の限定LD-BOXの特典扱いで初ソフト化。後に単独でDVD化され、ようやく日の目を見ることになった。


正式なタイトルは『ルパン三世 念力珍作戦』。 タイトルの「念力珍作戦」とは当時流行っていたユリ・ゲラー超能力ブームにちなんだもの。脚本がほぼ出来上がったタイミングで急遽上層部からねじ込まれたタイトルだったため、坪島監督もセリフを差し替えて無理やり超能力にこじつけたと語っている。


製作は、東宝国際放映との提携合作。

脚本・長野洋/音楽・佐藤勝/監督・坪島孝と、当時の一級の面々により製作された。


同時上映は現在では封印作品の『ノストラダムスの大予言』。こちらには奇しくもアニメ版の銭形警部役である納谷悟朗がニュースキャスター役で出演している。


作風編集

1stが打ち切りの憂き目にあったことからか制作側もどこかルパン像を模索しているような節が見受けられ、主演の目黒氏も「坪島監督とも話し合った結果、原作の通りに作るのはまず無理との判断になったので、原作を意識せず好きなように作ってみようということになった」と後年に語っており、その結果、原作のハードボイルドなイメージともアニメの義賊なイメージとも異なるどこか昭和感が漂うギャグコメディ映画となったのが本作である。


当然、本来のルパン像からかけ離れていることから否定的に見るファンも少なくないが、原作やアニメシリーズ以上に自由なルパンやギャグテイストな作風を好むファンも一定数おり、見た人の間でも賛否両論の怪作として扱われることが多い。


あまりにも作風が異なるせいかWikipediaには一時期わざわざ「小栗旬主演の実写版ルパン映画はこの映画のリメイク版では無い」という注意書きまでなされていた。


ただ、設定に関しては意外にも原作に忠実で初期設定のルパン帝国の設定や原作特有の表現である♂と♀による濡れ場シーンも再現している。また、幼少期のルパンが登場する数少ない作品の一つである。


石川五ェ門、またはそれに類する人物は一切登場していない。刀使いだけに出番を切られたと思いきや、1st時点での五ェ門は当初敵として登場し幾度か対決した後に仲間に入るという複雑な経緯をたどっており、斬鉄剣自体の設定も今以上に定まっていなかったなどやや立場が不安定だったという点も考えられる。

あらすじ編集

怪盗ルパンの血を引くフランス仕込みの泥棒貴族ルパン三世。ある日、護送中の峰不二子に一目惚れ刑務所から救出するものの、不二子はルパンを置いて逃走、銭形警部、大岡刑事、遠山刑事らに追いかけられる破目になってしまう。さらに、かつてルパン帝国を裏切ったマカ・ローニ一家が現れ...???


主な登場人物編集

ルパン一味編集

ルパン三世

(演:目黒祐樹)/(演:新井昌和)※幼少期

ルパン三世 念力珍作戦

ご存知アルセーヌ・ルパンの孫で自由と女を愛するルパン帝国の生き残り。本作では白を基調としたスーツに黒のスカーフのスタイルで身を包む。愛車?(作中冒頭で盗んで乗り回している)はフェアレディZ。愛銃はワルサーPPK(ワルサーP38消音器の付いたゴールドモデル)。


ルパン帝国が滅ぼされたからか幼少期は孤児院で育ったが、当時からいたずらの天才で3歳にして葉巻を吸ったり、5歳で修道女のパンツを盗み、10歳で教会の窓ガラスをパチンコの弾で割り、最終的に15歳で教会の金庫の金を盗んで施設から脱走した。以後、決まった住処を持たず、ある時は一流ホテル、マンション、土管などをねぐらにして生活する自由気ままなその日暮らしを送る。また、金や物に固執することはせずに、どこかスリルを求めるために盗みをする節がある。

さらに、足の速さを利用して戦闘シーンでは敵に発砲される前に背後に回り込んで殴りつけるなど一種の時間停止に近いことを行なっている。


次元大介

(演:田中邦衛)

ルパン帝国もう一人の生き残りでルパンを守る事とルパン帝国再興に情熱を燃やす男。本作ではブラウンを基調としたスーツに身を包む。なお帽子で目は隠れていない(どちらかというと前川清演じる丸高太の方が現在の次元のイメージに近い)。至る所に銃をかくし持つ早撃ち0.3秒の実力者。現在のような対等な相棒の関係性というよりも親分子分の関係性で、ルパンのことを「お坊っちゃま」と呼ぶなどルパンの世話焼きの印象が強い。作中ではヘリやボートを操縦するなど意外なスキルを発揮している。また、「また血を流してしまった」といった現在の五ェ門のような決め台詞を使う(五ェ門の決め台詞の初出は『ルパンVS複製人間』で本作より後)。


峰不二子

(演:江崎英子)

謎の女囚人。本編ではルパンが峰不二子に一目惚れしたところから物語が始まる。助けたルパンに対して裏切りも辞さない魔性の女だが…。


警察編集

銭形警部

(演:伊東四朗)

江戸時代の有名な岡っ引きである銭形平次の子孫。ルパン捜索係に任命されるが本作でも部下共々ルパンに振り回される。


大岡刑事、遠山刑事

(演:人見明)(演:江幡高志)

銭形警部の部下。その名の通り、大岡は大岡越前こと大岡忠相の子孫で、遠山は遠山の金さんこと遠山景元の子孫だが、完全に先祖と子孫の上下関係が逆転している(岡っ引きは本来奉行からみて末端の部下に当たる)。


警視総監

(演:藤村有弘)

銭形にルパン捜索係を任命した。


婦人警官

(演:塩沢とき)

銭形と共にミニパトで追跡していたが、追跡途中で銭形が興奮してしまい…?


マカ・ローニ一家編集

かつてルパン二世が作り上げたルパン帝国を裏切り壊滅に追い込んだ一族(原作のキングにあたる)。ルパン三世の生存を知ったことから殺し屋を次々送り込む。


大ボス

(CV:大平透)

本編では幹部会議のビデオメッセージのみ登場。一回の登場シーンだけでボスが素顔を見せずに猫を撫でているところのみ写しているところや「なおこのビデオテープは爆発する」といった二大スパイ作品のパロディを行なった。


原九郎兵衛、大口実六、田舎鳥吾作、大下駄久六

(演:山本麟一)(演:田中淳一)(演:うえずみのる)(演:福山象三)

いずれも暗黒街のボスで幹部会議のシーンにて登場。


殺し屋丸高太

(演:前川清)

マカ・ローニ一家に雇われた殺し屋。前述した通り現在の次元に近い姿をしている。ルパンと一騎打ちを行なった。


殺し屋火縄一郎、殺し屋一発必中

(演:大泉滉)(演:鈴木和夫

マカ・ローニ一家に雇われた殺し屋。共にタッグを組んでおり、ベットにいたルパンを狙撃しようとする。


孤児院に現れた殺し屋

(演:天本英世)

マカ・ローニ一家に雇われた殺し屋。次元と戦う。


ドラゴンシスターズ

(演:ポピーズ)

マカ・ローニ一家に雇われた女殺し屋集団。登場シーンで挿入歌を歌った。だが、そのメンバーの1人が「とんでもない事」をしたためにビビッて敵前逃亡しルパンも命拾いの代償としてプライドを傷つけられた…。お察しください…。


その他編集

オカマ

(演:小島三児)

序盤に登場。峰不二子に見惚れたルパンにのオカマを掘られてしまった


浮浪者

(演:常田富士男)

邪魔だったという理由でルパンから家具一式を貰うが、もらった家具の中にはルパン帝国最後の隠し金の預かり証が隠されていた。


浅間山子

(演:夏樹レナ)

ルパンが自分のアジトに連れ込んだ女。しかし、ルパンが不二子の話ばかりするので「わたし浅間山子よ!」と嫉妬していた。名前の元ネタはおそらく浅間山だが、前述のセリフの直後に本当に浅間山のカットインに入る。


謎の女

(演:安西マリア)

夜の港でルパンに遭遇、財布を狙ってスリを行うが…。


モッキンパット師

(演:E・H・エリック

ルパンのいた孤児院の院長。次元に幼少期のルパンについて話した。


テーマ曲編集

「恋のチャンス」 唄 - ポピーズ 作詞 - 橋本淳 作曲 - 筒美京平


余談編集

  • 本作を撮った坪島監督は、古澤憲吾監督と共に「東宝クレージー映画」専門の職人監督だった。ウェットな喜劇が得意で、谷啓氏に目を付けたことから彼の個性を活かした秀作を連発した。また「クレージー作戦シリーズ」において古澤監督が特撮も多用した突撃演出的な犯罪アクション喜劇が強かったのに対し、坪島監督はスローモーな技法を活かし長尺の海外ロケ喜劇で手腕を発揮した。それでもアクション映画にも強い監督で、蟻地獄作戦』・『国際秘密警察 火薬の樽』・『クレージーの怪盗ジバコ』と本作の系譜的な作品を残した。それゆえに、大岡役の人見明氏の起用も必然と言えた(彼は東宝クレージー映画の常連俳優)。

■坪島監督の上記の3作品は、本作ともども東宝よりDVD化された。興味のある方は、視聴される事をお勧めする。

  • 音楽の佐藤氏は、黒澤明監督作に限らず岡本喜八監督作や東宝特撮路線でも活躍していた。音楽の世界観も礎を築いた暗みと陽気さを兼ね備えた山下毅雄氏や山下氏の線を引き継ぎつつ勇壮さを出した大野雄二氏の曲と異なり、岡本監督作や特撮ものに通じた怪しい重厚さと軽妙さを兼ね備えた作風で独自のルパン・サウンドを披露した。
  • 五ェ門のいない4人のルパン一家で、役者の知名度的に不利に見える不二子役の江崎英子氏。実は、彼女は只者ではなかった。江崎氏は『大江戸捜査網』(三船プロ期)において、隠密同心・不知火お吉役でレギュラーで活躍。本作の公開時と並行で出演しており、DVDマガジンにも本作の件が取り上げられた。また本作で謎の女役で出た安西マリア氏も隠密同心・はやぶさお銀役で出ており、図らずも2人の女隠密同心が共演したことになった。
  • クレジットに赤塚不二夫中山千夏の名前があるが、単に名義を貸しただけで製作には携わっていない。
  • 浮浪者役として『まんが日本昔ばなし』の語り手として知られる常田富士男氏が参加している。
  • 美術館の警備員役で多くの東宝怪獣のスーツアクターを務めた広瀬正一氏が出演している。
  • パトロールの警官役で『秘密戦隊ゴレンジャー』など多くの特撮テレビドラマに出演した畠山麦氏が出演している。
  • 当初は山田康雄氏らアニメ版の声優陣によるアフレコも構想されたが、出演陣の反発を受けて断念した。話を聞いた山田氏も「そりゃそうですよ。俳優がセリフしゃべらないで口をパクパクやってたんじゃクサりますよ」と出演陣に同情を示している。
  • のちに伊東四朗氏は『とんねるずのみなさんのおかげです』の『ルパン三世(ルパンしゃんせい)』にて同じく銭形警部を担当した。
  • 大ボスをつとめた大平透氏は、アニメ版『ルパン三世』のゲスト役で数多く参加している。また、婦人警官役をつとめた塩沢とき氏ものちに『バビロンの黄金伝説』にてロゼッタを演じた。

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ルパン三世 モンキー・パンチ 昭和

実写化 ルパン帝国

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