概要
前当主であるアーサー・ヘルシングに続き、現当主であるインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの2代に渡って仕える執事。
アーカードやアレクサンド・アンデルセンなど超常的な能力を有する人外が重要人物の過半数を占める作中にあって、後に吸血鬼化するまでは純然たる人類最強の存在。
人物
物腰は極めて穏やかにして万事に通じ、時にはジョークを披露する道化を演じながら「老いすら楽しむのが紳士(ジョンブル)の嗜み」とする表の顔と、かつてヘルシング家に牙を剥く輩を容赦無く抹殺していた裏の顔を併せ持つ。
いつ、どこで、どのようにしてアーサーと出会ったのか、英国本土出身者であるのか、そもそもウォルターが何者であるのかを示す14歳(1944年9月時点)以前の来歴は一切語られていないが、50年以上の歳月をヘルシング家と共に歩み、当主の身に降り掛かる災禍を払い続けてきた事実から忠誠心は極めて高く、幼くして独り身となったインテグラにとっては全幅の信頼を寄せる主従関係以上の存在となっている。
あまりに特殊な家柄であるために戦闘能力を持たない人間を極力置かないヘルシング家において、家長に供する紅茶の準備に始まって身辺整理、外出時の車の運転、護衛、情報収集、果てはアーカード専用の13mm拳銃『ジャッカル』やセラス・ヴィクトリア専用の30mm携行砲『ハルコンネン』『ハルコンネンII』など特殊兵器一切の調達に至るまでたった1人で片付ける敏腕極まりない執事であり、ヘルシング家率いる『王立国教騎士団』(ヘルシング機関)に所属する一般兵士への対応から見ても事実上の家令に等しい立場にある。
変遷
少年期(14歳)
イギリス本土を脅かす『ミディアン』(闇の世界に跋扈する人外の総称)、特に吸血鬼の殲滅任務を以って代々の家名とするものの、酒と女に目が無い上に無責任にして豪快な振る舞いでヒュー・アイランズやシェルビー・M・ペンウッドの頭痛の種となっていた若き日のアーサーの手綱を取り切った唯一の人物だが、その一方でいざ出撃命令を受けて執事の任を離れると本来の慇懃無礼、素行不良の本性を露わにし、狂気を帯びた破滅的嗜好を剥き出しにして確実に、且つ徹底的に対象の誅殺を楽しむ事から「死神」の異名を持つ。
第二次世界大戦末期の1944年9月にアーサーの特命を受けてアーカードと共に出撃し、ポーランド首都ワルシャワの一角にある館で少佐率いるナチス第三帝国武装親衛隊大隊『ヴェアヴォルフ』と交戦する。雑魚を容易く蹴散らして大尉との一騎討ちに臨んだものの、圧倒的な力量差から一転して窮地に陥り、あわや死が目前に迫ったその時に顕現したアーカードの気まぐれで救われ、交戦終了後にグールの兵器転用研究所でもあった館を2人で研究成果もろとも完全に破壊する。
本来の高年期の姿を「老ウォルター」とする区別からその対極にある「若ウォルター」の通称、または「少年ウォルター=ショタウォルター=ショルター」の略称を持つ。
青年・壮年・中年期(15歳~64歳)
声優:浪川大輔
アーカードが再びヘルシング家地下深層に封印されて以降は執事の任に重きを置きつつ、ヘルシング家に仇成す存在の監視、抹殺を請け負う「ゴミ処理係」を兼任するようになる。この頃には少年期の粗暴な振る舞いは徐々に鳴りを潜め、逆に英国紳士としての落ち着きを醸し始める。
アーサーが没した直後、次期当主の座を狙う実弟リチャード・ヘルシングが凶行に至る確信をアイランズの指摘から即座に見抜き、リチャードによるインテグラ襲撃に際して封鎖されていた地下深層に続く道を逃走経路の要点となるよう巧みに画策し、インテグラとアーカードの邂逅を実現させる。以後、その画策に導いた本心を己の奥底に隠し続け、ヘルシング家の雑務全般を取り仕切る執事の任に専念し、機関長として経験の浅いインテグラを補佐する。
後に、自らの意志でミレニアムに降った際にドクの施術を受けて20代、あるいは30代と思われる全盛期の姿に戻り、己の全てを代償として少佐率いる『ラストバタリオン』の一兵に加わる。少年期以上の戦闘能力と鋼線術を駆使して満身創痍のアーカードを追い詰めるが、土壇場の奇策によって千載一遇の機会を逸した上、未完成の人工吸血鬼製造理論(アーカード曰く「ろくでもない外法」)から来る過大な負担によって肉体組織の劣化を迎え、さらには由美江を惨殺された恨みから狂気に支配されたハインケルが放った銃弾が致命傷となり、独り逃亡を図らんとするドクを道連れにアーカード打倒の未成就に悔いを残しつつ人生の幕を引く。
黒を基調とした登場時の衣装から「黒ウォルター」の通称、または少年期と高年期の間に位置する事から「中間ウォルター=ミドルエイジウォルター=ミドルター」の略称を持つ。
高年期(65歳~69歳)
声優:清川元夢
バレンタイン兄弟によるヘルシング機関本部襲撃事件を契機に、長らく封印していた鋼線術を用いてインテグラを襲う災難を退けるようになるが、ミレニアムによる第二次ゼーレヴェ作戦で阿鼻叫喚の地獄と化したロンドンで大尉と対峙し、インテグラを逃がす格好で遠ざけるとその足で少佐の待つ飛行船『デクス・ウキス・マキーネ』へ向かい、理論の不完全性を承知の上で己の全てと引き換えにドクの施術を受けて全盛期の姿に戻った人工吸血鬼と化し、遂にアーカードとの対決のために半世紀以上に渡って着々と準備を進めてきた満願成就の一時を迎える。
自身を「ロートル」(老頭児=年寄り)と自嘲し、ヤン・バレンタインを牽制した際には「やはり昔のようにはいかないものだ」と鋼線術の衰えに愚痴をこぼしたものの、何十発と放たれた機関銃の一斉放射に対して一瞬のうちに弾道を見極める眼力、それに臆せず正面から向かって簡単に掻い潜る身軽さなどは70歳目前の老人とは到底思えず、寧ろ人間離れした身体能力を披露するため、人工吸血鬼となって取り戻した全盛期の戦闘力がいかに高いかを示す布石となっている。
一般的にウォルター・C・ドルネーズはこの高年期の姿を指し、少年期や全盛期の姿と区別するために「老ウォルター」の通称を持つが、前述の2つに倣って「老年ウォルター=オールドウォルター=オールター」の略称があるかは定かではない。
5年の謎
ウォルターの実年齢については69歳が正しいとされているが、実はよく考えるとこれには大きな謎が存在する。
そもそも、ウォルターが69歳だとする論拠は話の大筋である55年前、即ち1944年9月から数えての事であり、単純に計算しても「69-55=14」で導かれる14歳時点からの年齢となる。しかし、漫画版第9巻およびOVA版第9話でウォルターがアーカードとの激戦を繰り広げた末に迎えた敗北の際、不完全な上に短期間で仕上げた施術の副作用から肉体組織が耐え切れずに少年の姿となったウォルターに対し、少女の姿で顕現したアーカードの口からは「60年振りだな。」「姿形など私にとっては何の意味も無い。60年前にも言ったはずだ。」「お前は餓鬼だ。60年前から何一つ変わっていない痩せっぽちの餓鬼だ。」と発せられており、「お互いにこの姿で再会するのは1944年9月以来60年振りだ」と発言するに等しい内容となっているのである。
仮に、この発言を1944年に当てはめて考えると5年の加算からウォルターの年齢が69歳ではなく74歳となるが、69歳を明示する資料が存在する以上は真ではない。これとは逆に、アーカードが示した60年前が1944年から5年を遡った1939年と考えた場合、少年と少女の姿で邂逅を果たしたのはウォルターが9歳の時となるが、前述のようにワルシャワ出撃以前の情報は皆無であるためにこれもまた真には至らない。作品中の時間経過から見たとしても、少佐がヘルシング機関とバチカン第13課『イスカリオテ』双方に宣戦布告してから第二次ゼーレヴェ作戦が終結するまでに5年の歳月が流れたなどとは考えられようはずもない。
では、この5年のズレは何かと言うと、単に作者であるヒラコーが「(連載当時の年数から考えて)1944年って今から60年前だよな」と筆を進めてしまったからであり、これがミレニアムによる宣戦布告の際には1944年の事を「55年前」と口にしていたアーカードが第二次ゼーレヴェ作戦終盤で「60年前」と宣言した真相、同時にウォルターの実年齢は当初の55年前から数えた69歳が正しいという結果に導く証明である。
このように、5年のズレに気付いた者は幾らか存在しており、特に海外情報サイトではウォルターの年齢を74歳、あるいは75歳と明示している「表記揺れ」ならぬ「年齢揺れ」を引き起こす事態に発展している。
関連イラスト
- 少年期
「夜中に集まって隠れて、何をシコシコやってんのさぁ?フン族の兵隊ども。」
「家人の危急をお救いするは、執事たる者のお仕め故。これより、アンタらを地獄に送る。」
「はぁ…、チクショー。勝ちたかったなぁ、アイツに…。」
- 全盛期
「所詮、この世は修羅の巷の一夜の夢。俺はこの夜明けの刹那、終に死神となった!」
「納得したはずだ!納得して反逆したはずだ!納得してこのザマになったはずだ!!」
「早く、コイツの、心臓を…。心臓を…、心臓を…!!」
- 高年期
「あの小僧に、我々の授業料がいかに高額か教育してやりましょう。」
「小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」
「御然らばです、お嬢様。」