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金上鋭の編集履歴

2023/03/01 08:12:43 版

編集者:小籠包吉弍号

編集内容:ちょっと編集。

「こういう瞬間がたまらないのだ!痛めつけた相手が苦しめば苦しむほど、楽しみは大きい!」

「私は相手の出方で仏にも鬼にもなる男だ。おまえの弱みはすでにいろいろ調べてある。おまえがこうして私に逆らったからには、その弱みをついて地獄に落としてやる」

「ほう、韓国人か? くわばら、くわばら。 また“謝罪しろ”だなどと言い出されたらたまらんからな。まったく、身のほど知らずの連中だっ!」

概要

主人公の山岡士郎をはじめ、何かと人間性に問題点が多い登場人物が大半を占める事で有名な本作でも、屈指の外道なヒール役としてその名を知られている。

初登場して以降、事あるごとに士郎や彼の属する東西新聞社を潰さんと暗躍や裏工作、直接対決などを仕掛けてくる。

これまで士郎は、父 海原雄山の実力は認めつつも基本的に不倶戴天の敵としか見ておらず、個別エピソードの中で共闘的な関係となる様子が少々みられる程度であった。

しかし金上の登場によって士郎は(心ならずも)雄山の力を度々借り、雄山も士郎の助け舟を受けるという、それまで長きに渡って敵対関係であった親子を『共同戦線』という新しい展開へと歩ませる物語の大きなターニングポイントとなった。

なお、アニメ版は27巻までの内容しかやっていないため、未登場である(金上が登場したのは50~63巻である)。

人物像

あくどいやり方で視聴率を稼ぐ事から、作中の報道業界の中でもかなり悪名高い報道機関として有名な『極亜(きょくあ)テレビ』の若社長。

親の力でのし上がったとも言われるが、親以上のやり手とされている。

その社会的地位に加え、雄山からもある程度は認められる程の記憶力・味覚・料理の腕前を持った士郎同様の才能の持ち主だが、問題はその性格である。

簡潔に上げると…

  • 常に底しれぬ野心や強欲さを抱え、あらゆる事において何でも自分の思い通りにならないと気が済まない。
  • TPOが著しく欠けており、どんな時や場所であっても、自分勝手に振る舞い、それによってその場の空気が完全に白けてしまっても意にも介さない。
    • 挙げ句に、公衆の面前で、敵対されたわけでもない相手に人種差別的な発言を平然と宣う(上述3段目のセリフは彼の韓国人に対する偏見を象徴した代表的なセリフである)。
  • 自分が勝つためには不正行為や犯罪さえも辞さず、あまつさえ公正さを求められるマスメディアを商売にしているにもかかわらず、率先してスキャンダル捏造偏向報道を働こうとする始末。
  • 自分の失敗や不徳を決して認めたり、反省する事なく、それを他人のせいにする。
    • 敵と見なした相手に対して、自分に不利益が生じようが徹底的に付け狙い続ける程に執念深い。
  • 「自分が痛めつけた相手が苦しみ、悶える姿を見るのが楽しみ」と公言する程のサディスト(上述1段目のセリフはその趣味趣向を象徴したセリフである)。

という様に、経営者としても人間としてもまともに褒められそうな点がひとつもなく、士郎から「毒蛇のような男」、雄山から「救いようがないまでに下等」と評される人間のクズである。

その為、士郎、雄山以外の他の登場人物達からも「邪悪そのもの」「ド腐れ」「けだもの野郎」「心が腐ってる」「クズ」等とそれぞれ最低な評価を下されている。

やり手経営者ではあることから最初は一定の敬意を持った者もいるが、そうした好意的感情を最後まで持ち続けた人物は作中見当たらない。

当然ながら極亜テレビの社内においても、完全に独断専行恐怖政治を敷いており、人望は皆無に近い。

…どころか、下記の顛末では社員どころか多くの他会社が、一斉に彼個人を排除しようと一致団結した事からも、如何にそこまで嫌われる行為を振り撒いてきたのか想像に難くない。

それまで『美味しんぼ』において、雄山を筆頭に士郎と対立してきた料理人や美食家、料理評論者達は多かったものの、いずれも性格に難はあれども食に関しては正々堂々としており、最低でも不正に手を出してまで勝利に固執したり、敗北して尚もしつこく食い下がり続けてくる様な偏狭な人間は皆無だった中、これほどまでに勝利主義且つ恨みがましく、何度打ち負かされても負けを認めずにしつこく暗躍を続ける異常なまでの執着心を持った敵役は初めての事であり、これまで敵対した相手とは違う厄介さで山岡夫妻や東西新聞社、『究極』、『至高』両メニューの関係者達を大いに手こずらせる事となる。

劇中の活躍

東西新聞社、山岡士郎との因縁の始まり

50巻「黒いマスコミ王」にて初登場。

この1年前に父親から極亜テレビ社長の座を継ぎ、その悪辣な経営手腕で視聴率を荒稼ぎするなどして、既に財界だけでなく、雄山の耳にもその名が届く程に悪名高い存在となっていた。

事業拡大の一環で東西新聞社に目をつけ、主な株主であった大原社主の叔父(高齢でボケの症状が出始めていた)から騙し取る形で大原家の持ち株を強奪した他、その他の株主達を脅迫する形で最終的に東西新聞社の株30%を入手し、筆頭株主の座を無理矢理手に入れると、早速その特権を行使して大原社主ら経営陣を一掃して、社を牛耳ろうとした。

ところが、その第一段階として初めて社を訪れた際に、偶々居合わせた二日酔い状態の士郎と遭遇。半ば自らふっかけた事で起こった事故で士郎から顔に盛大にゲロをぶっかけられた上に、大原社主富井副部長をはじめとした他の社員たちに大爆笑され、憤慨しながら退散する羽目になる。

その日の夜、山岡夫妻ひいきの料亭『岡星』にて、再び山岡と遭遇。馴染みの店という事で気が緩んでいた為に粗悪品のじゅんさいが混じった胡麻豆腐を絶賛する山岡夫妻に、その問題点を指摘し、見抜けなかった夫妻が『究極のメニュー』を担当している事に嘲笑(この一件は後に、金上が『究極のメニュー』を糾弾する為の格好の材料として利用される事となってしまう)。

後日、山岡と雄山の関係も把握している事を明かすと同時に、自らも雄山に激しい憎しみを抱いている事を打ち明け、同じ雄山を恨む者同士、彼を陥れる為の共闘を持ちかけようとした。

海原雄山との因縁

金上が雄山を憎むようになったきっかけは、初登場時の数ヶ月前の事であった。

雄山も贔屓にしている能楽家 朝斗氏の還暦祝いの宴席で初対面したが、対面早々に雄山を「料亭のおやじ」呼ばわりするという挑発的発言から入る。

更に空気を読まずに朝斗氏に対して能楽の宣伝についての話を持ち出し、朝斗氏がそれを謙虚に応対すると、「そういう心がけでは能楽に未来はない」と貶し、あろうことか朝斗氏に向かって堂々と能楽を「退屈なもの」と失礼極まりない事を言った上、「若い客を取り入れる為にミュージカル要素を取り入れるべき」等と能楽の良さをまるで理解していない提案をし、そのあまりに無礼且つ軽薄な振る舞いに朝斗氏をも思わず閉口させてしまう。

見かねて窘めてきた雄山を「裸の王様」呼ばわりし、彼だけでなく美食倶楽部や至高のメニューをも散々侮辱した挙げ句(一応、金上や極亜テレビを批判する雄山の言動も容赦がなかったので、売り言葉に買い言葉ともいえるが)、宴席に出された料理(落とし鱧、鱧造り、鱧の照り焼き)をきっかけに、雄山に料理対決を挑んだ。

そこで見せた料理(鱧の真蒸、鱧の八幡巻き、鱧と松茸の椀物)の手腕は宴席の客だけでなく雄山も「これほど料理人を見事に使える者はめったにいない」とお墨付きを出す程のものだったが、それに対して、雄山は最初に店側が用意した料理と同じ献立を出してきた。

当然、それに対し金上は「私は本気でやってるのに、そっちは冗談で済ませるつもりか!?」「私に負けるのが怖くてわざとふざけたのだな!」と憤慨したが、対する雄山はこの料理こそ「これ以上にないという鱧料理」であると断言してみせた(雄山は他の料理人の優れた料理を至高のメニューとして扱うことも少なくない)。

この日店側が用意していた鱧は、朝斗氏の還暦祝いの為に店側が特別に取り寄せた瀬戸内海産の最高級の鱧であると気づいていた雄山は『料理人にとって一番大事な事は“素材の良さを重視する”事』であるし、それが滅多に出回らない貴重な品であれば尚更であると説く雄山は、店側の考えた献立は鱧に過剰に手を加えず、鱧の良さを最大限に引き出した完璧な選択だと称賛する。

対して、金上の考えた献立は、豪勢さや見栄えを重視するあまりに鱧に手を加え過ぎてしまい、鱧自体の良さを台無しにしまっており、どこで獲れた鱧を使っても同じだと批判。

「元々非常に良い素材であったのにその味を損なわせてしまうという一番基礎といえる部分を見落としたところを見ると、やはり唯の素人だな」と切り捨てられ、更に他の客も金上の料理以上に店の料理に感動している状況となる。

敗北が確定し屈辱に苛まれる金上だったが、雄山はトドメと言わんばかりに「私の事を味のわからない裸の王様と言ってくれたが、お前は味以前にもっと大事な事がわかってない」と金上の人間として決定的な弱点を見抜いた事を告げた。

具体的な内容はその場で言われなかったが、金上はその一件を『恥をかかされた』と恨むようになったのだった…

なお、その人間的な弱点とは、

・料理にやたらと手を加えてしまう

       

単純な料理では雄山に勝てる自信がなかったから=大口とは裏腹に実は内面で自信がない

・鱧と松茸は昔から最高の取り合わせとされている

       

椀物は昔からの最高の取り合わせに従っただけ=権威に弱く一旦権威とされるとすぐに言いなりになる

といったものであり、金上は後に東西新聞の乗っ取りにこうした弱点を晒されるという屈辱的な形で失敗することになる。

東西新聞、士郎、雄山親子との攻防

そうした事情が明らかになる中で、改めて雄山への仕返しの為に士郎に共闘を持ちかける金上。士郎は当初受け入れを考えたが、その動機は雄山への憎しみではなく一応の信頼を利用して金上の懐に入り込む算段であった。更に金上のあまりに醜悪な人間性を見た士郎はその気すらもなくし、堂々と宣戦布告。

ゆう子を介して雄山から上述の『弱点』を聞きつけた士郎に一計図られる形で東西新聞社買収を阻止される事となった。

それが決定打となって金上は雄山に加え、東西新聞社(特に士郎)に対しても激しい敵意を寄せ、雄山共々その社会的生命を潰そうと画策。

様々な手を駆使して、狡猾な攻撃を行い、山岡夫妻、そして東西新聞社や『究極』『至高』双方のメニューに関わる人間を次々に陥れようとするも、前述したとおり、(主にゆう子の仲立ちあって)共闘した士郎・雄山の親子二人の力によって、それらの策略は悉く潰されていった。

同時に自らが働いた不正行為(東西新聞社での『究極のメニュー』を特集した番組で不利になる編集や、山岡夫妻と対決する番組で使われる料理のすり替えや材料の虚言、解答の不正入手)によって自分や極亜テレビの首を締めていく事となる。

またちょい役としても何度か登場し、差別的言動や困窮に陥った者を金で抱き込む行為でその醜悪な人間性を見せていた。

それでも尚も、金上は懲りる事なく、士郎と雄山に対する私怨もとい逆恨みをますます増長させていく…

最後の攻勢

そして、63巻「東西新聞の危機」にて、アメリカから来日した世界有数のメディア王 トレパー・コドラムが、来日直後の記者会見とその後の歓迎会の席で士郎と些細な諍いを起こしたのをきっかけに東西新聞社に目をつけたのを好機と踏み、コドラムに接近、東西新聞社買収に助力するのと引き換えに、雄山を陥れる策謀に協力させることを取り付ける。

自らが保有していた東西新聞社の持ち株をすべてコドラムに譲るという商売度外視の徹底攻撃を仕掛けた結果、東西新聞社はコドラムの会社に買収されそうになる未曾有の大ピンチに陥り、そのきっかけを引き起こしたとして、士郎も解雇処分(ゆう子も妻として連帯責任を負う形で自主退職)に追いやられてしまった。

だが、これを利用して雄山も陥れようと、極亜テレビの番組でコドラムに『雄山が中国・台湾陶器の模造品を自分の作品として売った』と批判させ、アメリカで裁判を起こさせるように誘導しようとした事が裏目となり、遂に愛想を尽かし、金上と戦うと覚悟を決めた極亜テレビの社員たちが離反を開始。

問題の番組で使用された陶器作品と箱、番組を記録したビデオテープを雄山に引き渡され、さらには雄山が自分の造った工芸作品を全て台帳に記録していた事が決め手となって、全ては箱の中身をすり替えただけの捏造であった事が明らかとなり、士郎から

「コドラムが訴えなければならないのは海原雄山ではなく、お前だ!」

と糾弾される。

これまでの不正行為に加え、『社長自らが捏造を謀る』という前代未聞の問題事案を起こした以上、極亜テレビはこのままでは放送免許を政府に取り消されかねないという存続に関わる事態に陥り、さらに反撃に乗り出した東西新聞社をはじめとする日本中の報道機関・出版社が包囲網を結成し、極亜テレビ社員までも金上追放に立ち上がる。

「俺にはコドラム氏という強い味方がいる」とふてぶてしくも言うが、雄山に

「なるほど。おまえはもう終わりだ。他人の力を頼るようになってはな」

とかつてその因縁の発端となった騒動の時と同じ様な口ぶりで言い放たれ、捨て台詞を吐いて退散するハメになる。

末路

これだけの窮地に立たされて尚も金上は虚勢を張り続け、コドラムは気にせずに協力してくれると高を括っていたが、当のコドラムは

  • 『金上に騙された被害者』どころか『金上の口車に乗せられ、利用された共犯』と各メディアから袋叩きに合う。
  • 共犯の罪に問われるのも時間の問題。
  • 雄山を犯罪者呼ばわりして『国際世論を動員して社会的に抹殺してやる』と発言してしまい、上述の裁判の件もあり、訴える筈の雄山に名誉毀損と誣告罪で自分が訴えられる。
  • 告訴されれば敗北は確実(証拠は揃っており、コドラムの部下たちも勝ち目はないと判断していた)で、世界的に信用を失う。

と金上以上に窮地に追い込まれていた。

半ば騙された形とはいえ、犯罪者の汚名を着せられる事となってしまったコドラムから問い詰められるが、当の金上は冷や汗を浮かべながらも「こんなの、デタラメですよ」と強がりながら弁解し、最早買収どころではないのは明らかな状況にもかかわらず、「そんな事はどうでもいいじゃないですか」と有耶無耶にして、東西新聞社への乗り込みを強行しようとする。

どこまでも現実の見えていない言動に、コドラムの怒りは頂点に達し、自分と金上を非難する新聞を金上に投げつけ、

「東西新聞社に乗り込んでみろ、海原雄山の件で攻め立てられる。乗っ取るどころか糾弾されて酷い目に遭うだろう!」と金上を罵倒。

元々コドラムは東西新聞社にとって敵対的な人物ではあったが、一方で世界的に信用を重視される立場であるほか、反目されていた娘にも彼なりの愛情を持っている人物でもあり、金や復讐のために悪辣陰険な不正行為も辞さない金上とは人間のタイプが違っていたのである。

怒りが爆発したコドラムに狼狽する金上にコドラムは畳み掛けるように

「きさまのツラは二度と見たくない!きさまとは縁切りだ!」と絶縁を言い渡し、叩き出すよう部下達に命じる。

金上は必死に縋るも退室させられ、そのまま二度と作中に姿を見せなかった。(最終章開始から僅か3ページの出来事であった……)

総括

こうして金上は、

  • 恐怖で押さえつけていた筈の社員達に反旗を翻される。
  • 甘く見ていた同業者を全て敵に回す。
  • 数々の不正行為で日本政府はおろか、東西新聞社買収を有利にするためにコドラムはアメリカ政府を動かそうとしたため、アメリカ政府にも目を付けられてしまう。
  • 自分よりも遥かに力のあるコドラムを悪事に巻き込んで絶縁される。

と完全に孤立無援となってしまう形で物語から退場していったのだった。

皮肉にもそれは、前述の雄山から指摘された事が、そのまま現実になったような顛末だった。

その後の金上と極亜テレビがどうなったかは劇中では明かされていないが、コドラムは士郎の仲介(告訴しない代わりに金上と手を切らせようとしたが、直前に絶縁したためにそのまま雄山と話し合わせた)で雄山に陳謝して和解。

金上から譲渡されていた東西新聞社の株をすべて東西新聞社と友好的な関係にある二都銀行(二木まり子の実家)に譲渡する事で買収を取り下げた。

極亜テレビの社員も金上に愛想をつかして追放に立ち上がっており、それ以降金上が全く登場していないことからしても、権力を失った可能性が極めて高い。

また、捏造報道を繰り返したことで放送法の観点からも大きな問題として取り上げられており、社会的に追放されたり、場合によっては後ろに手が回った可能性すら考えられる。

そして、士郎の解雇処分も無しとなった(コドラムは和解の宴会中に大原社主に士郎の解雇を撤回してもらう様に頼もうとしたが、大原社主はいつもの様に「クビにしたつもりはない」とすっとぼけて誤魔化した)為に山岡夫妻も無事に東西新聞社に復職でき、全ては丸く収まる事になった。

余談

原作者の雁屋哲曰く元々、金上は『士郎と雄山が協力して打倒する事で和解へ至らせる為の強敵』という立ち位置で登場させたキャラであり、山岡夫妻結婚後の山岡夫妻と作者・作画者対談(47巻収録)で大々的に登場予告されていた。

しかし、途中で方針が変更になったのか、劇中では士郎、雄山に共闘戦線こそ張らせたものの、料理人・美食家としての手腕よりも、策略家としての狡猾さや金の力で親子を追い込もうとするタイプの敵となっていった。

だが、料理人としては前記した通り雄山に論破されている上、美食家としても初登場時に山岡とゆう子の失態を一度やり込めたシーンだけが唯一の白星であった(その白星も「馴染みの店であった事で気を緩めていた(つまり全力を出していない状態だった)が故に見せた山岡夫妻の失態の揚げ足を取った」というのが実情であり、正面から料理・味覚対決を挑んで勝ったというわけではない)。

決して凡人ではない味覚の持ち主でこそあるものの、食材クイズで山岡や雄山が見抜いた食材について、金上のみが外すという失態も演じており、雄山や山岡と比べれば格下と言わざるを得なかった。

また、まともな財界人からは登場時から警戒されており、さらに東西新聞社乗っ取りを図った醜悪なやり口が財界に知れ渡ったことで、週刊タイムの団一郎をはじめ、更に敵は増える一方。一時的に他人を抱き込むことはできても最後は軒並みその醜悪な人間性に愛想をつかされる始末で、増え続ける一方の敵をどうにかするだけの力は全くなかった。

難敵』でこそあるが決して『強敵』という程の力量があったとはいえず、結局は2人の引き立て役程度にしかならなかったのが実情である。

更には、編集部の意向で親子の和解も歩み寄りと思われるシーンこそ見られ、少しだけ進展したものの、完全な和解は先送りされる事となり、その結果、最後は士郎達に倒されるというよりは、半ば自滅同然に物語から退場していった、ある意味不運なキャラでもある。

なお、金上のキャラクターを発案した当時の担当編集者は、キャラクターを上手く活かしきれなかった責任を負わされ、担当を外されたという。

なお、彼に極亜テレビを禅定した父親 金上金作は名前のみの登場で、本編中には一切その姿を見せる事はなかったが、作中人物の会話によれば「でっち上げ、卑しいネタ、暴露記事ばかりの汚らわしい内容の新聞や雑誌で得た資金を元手に極亜テレビを乗っ取る形で買収した」「政財界でもまともな人間であれば金上親子とは付き合いたがらない」との事で、息子の鋭に劣らぬ俗悪な人物である事が窺い知れる。

その為、読者の間では士郎に対する雄山のポジションのラスボスとして期待されていたのだが……

作中の金上の行動は殆どが肯定されていないものの、尾沢はるの娘・季子のように視聴率一位をあげた手腕を好意的に評価する声もあった(ただし、金上はこの賞賛をあげた彼女を捏造報道のためのコマに利用し、むざむざ離反させている)。

また、金上の提案が「無礼者」の一言で退けられ、その人間性の問題の一端を表すきっかけともなった「若者の感覚に拠った能」というものは後年、56世梅若六郎らによる「スーパー能」(舞台照明等の現代機器の多用や現代語での上演を行い能への取っ付き難さの解消を目指した)によって半ば実現されている。

作中でも「伝統のみに寄り添うのではなく、時には批判も加え改善を目指すべきだ」という描写に基づいた料理は多く、ある意味美味しんぼの世界観にも沿えたのではないかとも考えられる(一方で、質素な伝統こそが本流で、派手さに裏打ちされた権威は否定する方向性が強いことから、権威は重視するが伝統を否定する金上は真逆、という逆方向の解釈も取れるが)。

このように理由はどうあれ目の付け所自体は理に適っていたり、革新的な一面もあったかもしれないが、場合によっては『先見の明』として評価される可能性もあったアイディアを『能楽を理解しない無礼者の戯言』へと帰塵させてしまったのは、やはり能楽師の重鎮に対して堂々と能を「退屈なもの」と全否定するかのような前触れで話し始めるという能に対する敬意に欠けた物言いや、その能楽師の重鎮の還暦祝いという(特に能に関する)話題には慎重に選ぶべき席上であるという事を弁えずに提案を持ち出してしまった判断ミスに加え、あの場では“来賓”という第三者的な立場にあった雄山に対して不必要な挑発で無意味な喧嘩を始めたことで、周囲から提案そのものに抵抗感を持たせたこと自体にあると言え、世間知らずかつ怖い物知らずの若者経営者によくある考えの至らなさや軽率さを露呈していると言える。

その点では士郎にも通じる所があるのは、意図的だろうか?

後述するが、極亜テレビのモデルとなったとされるフジテレビは、後年とある人物によって本当に乗っ取り騒動に巻き込まれているが、この人物の勢いは金上の上述部分に似ている部分がある。実際にこんな経営者がいたらああいう人間に収束していくのかもしれない。

なお、極亜テレビにおける士郎との味覚勝負ではカンニング行為出す料理のすり替えを行っており、士郎からは(金上がカンニング用紙の取り違えで間違えた問題に対して)「本当に自分の味覚で勝負していたら見破れたかもしれないのに」と言われている。なお、この際もわざわざ大衆の前で思わずカンニングを暴露してしまう不手際を起こしている。

初期こそ「見方を変えれば有能」という一面もあった。しかし、士郎たちとの戦いの中で本来の自身の才覚を十分に発揮せず、安易な手段(捏造、カンニング、詐欺etc)に手を染め、犯罪に問われる可能性のある所まで堕したことからも、正しく雄山が最初期に指摘した「自信が無いので誤魔化しを重ねる」という弱点で自滅していった悪役と言えよう。

この点、ボンボン2世として甘やかされたであろうこと、確かに能力自体は優秀だったために自惚れが過ぎてしまった可能性も考えられる。その点では、挫折や出奔により当初より厳しい環境に身を置かざるを得なかった士郎とは対照的な人物である。

なお、最終局面でのコドラムと共謀した乗っ取り工作は実際には外資規制(外国人等議決権割合が20%を越えると法律違反であり、金上がコドラムに譲渡した株式の比率は東西新聞社全体の30%に相当する)により不可能である。

上述の父親・金作が登場しなかった点は、13巻「激闘鯨合戦」にて登場した反捕鯨団体の「会長」が登場しなかった点(作中来日してやり込められたのは副会長である)と絡めて、未だ見ぬ真のラスボスであると現在に至るまでネタにされている。

関連項目

美味しんぼ マスゴミ 人間のクズ 吐き気を催す邪悪 卑劣漢 小悪党 偏向報道 かませ ブラック上司

フジテレビ…金上が社長を務めた極亜テレビのモデル。ただし原作者の偏見も多少なりともあると言われる。また、金上が初登場した当時(1990年代前半)、お家騒動が勃発していた(フジテレビではグループをまとめ上げた事実上の創業家(鹿内家)にて後継者の早世やその義弟の経営手法に反旗を翻した社員側によるクーデターが発生した、正確には極亜テレビのような外部からの乗っ取りではない)。なお、皮肉にも後年上述した人物により本当に乗っ取られかけた

他作品での同類とされるキャラクター

梓川雪乃叡山枝津也……同じく料理系漫画で、確かな実力があるにもかかわらず、自分の勝利や利益の為ならば、不正行為さえも辞さない料理人達。

アルバート・マーベリックデラックスファイター天津垓…いずれも確固たる社会的地位を持ちながらも、人間性に重大な問題点を抱えた社長達。マーベリックに至っては金上と同じマスメディアの経営者である。ただし、天津だけは最終的に改心した。

田村項介蛭川光彦黒井崇男リベラデデデ陛下エスカルゴン…同じく偏向報道やスキャンダルをでっち上げるなどして、主人公の社会的信用を失わせようとした悪役達。ただし、田村だけは物語終盤で改心した。

ヘルマン・コロレードトレヴァー・マロニー江頭哲文…登場時点で一定の社会的地位があったにもかかわらず、逆恨みをきっかけに野心を暴走させ、主人公達を嵌める為の暗躍を繰り返したが、最後はそれが結果的に自分の首を絞める形となって失脚するという、金上と似たような経緯で破滅に至った悪役(憎まれ役)ただし、江頭のみは続編で再度社会的地位を高めた上で再登場している。

ジャコウコウケツムルタ・アズラエルロード・ジブリール…こちらは、自分勝手な性格と逆恨みから、社会的破滅はもちろん、己の死まで招いてしまった悪役たち。

斑鳩丈一郎戸村薫…前者はやり手の経営者だが、人としては最悪で乗っ取り先の経営者の娘に進路の費用を盾に自分が乗っ取りたい企業の跡取りを誘惑するハニートラップを命令、しかもその進路を本人に『道楽』呼ばわりするという他人の心情に対する配慮というものがない自己中心的ぶり。学生であるために両親立ち会いの元で命令したのも事情説明のつもりだろうが、娘がハニートラップを命令されるという親達の心情を考慮していないので、やはりTPOとしては最低。後者は自己中心的なのもさることながら、図体と腕力に横柄な態度とは裏腹に自分が何も無いのを誤魔化し、更に下を見つけてねじ伏せたかと思えば、その相手が地位を手に入れることになったことを認めず、何かにつけて『妾の息子』しか持ち出さない低能ぶりが共通。

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親記事

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