「……俺は見たぞ、お前の正体を……黙ってるつもりはないからな」 (第44話)
※注意
このキャラクターは、その所業故にアンチが非常に多く、時折過剰なキャラヘイト表現や、「似たような人物」など本来の記事内容の趣旨からズレた書き込みが行われる事があり、それが原因となって編集合戦へと発展する事も多々あります。
原則中立性のある記事を保つ為、そして無益な編集合戦及び、演者への風評被害を防ぐ為にも、悪意を含んだ書き込みは極力控えるよう、お願い致します。
データ
概要
ウルトラシリーズにはウルトラマン第23話『故郷は地球』や、帰ってきたウルトラマン第33話『怪獣使いと少年』等、時として人間側の過失や人間の持つ醜さ等を表現し、批判している話が少なからず存在し『ウルトラマンA』、『ウルトラマン80』等の作品でも、人間が持つ負の感情=マイナスエネルギーがテーマとなったり、怪獣出現に大きな影響を与える話が存在する。
だが、その中でもこの蛭川光彦という男は、マイナスエネルギーを凝縮させた、地球人の悪しき一面の象徴ともいえるシリーズの中でもかなり特異な存在である。
劇中では終始人として最低な行動ばかりとっていたことで、主人公達(そして視聴者)の苛立ちを募らせた上、ウルトラシリーズにおいては珍しく最後の最後まで一切改心する描写はなく、挙句の果てに(一応、申し訳程度に断罪を示唆させる描写はあるものの)敵怪人・怪獣のような決定的な制裁は受けないままフェードアウトするという、非常に後味の悪すぎる退場の仕方をした。
この事実から、全国の視聴者……もとい子供達や往年のウルトラシリーズファンの諸兄方から、悉く怒りや反感を買い、中には『ウルトラシリーズ史上最低最悪な地球人』と評する意見も上がり、遂には演じた役者本人でさえもブログ上で「最低野郎」と罵倒し否定的な意見を出すなど(後述)、瞬く間にシリーズ随一のヘイトタンクとしてその悪名を刻むこととなった。
人物像
先述したとおり、陰湿、狡猾、自分本位、傲慢、強欲、不誠実、不作法、無慈悲、恩知らずなどと、人間のあらゆるマイナスエネルギーが凝り固まったかのような最低な性格の持ち主で、平時は飄々としながらも、どこか粘着さを感じさせる軽薄且つ陰険な薄ら笑いを崩さず、誰に対しても慇懃無礼な口調で話しかけるが、想定外な状況下に立たされるなどして冷静さを失うと、激情に任せた粗暴な口ぶりに豹変し、保身の為なら暴力や殺人さえも厭わないなど、本質は文字通りの鬼畜生。
そんな悪辣な人間性は仕事上でもフルに発揮されており、ゴシップやスキャンダルなどの他人の粗を探ったり、不幸にさせるような記事を常に追い求め、根も葉もない話から記事を捏造したり、相手の心境や事情を顧みない強引な突撃取材は勿論、他人の弱みにつけ込んで利用したり、果ては盗撮等の卑劣な手段を使うのも辞さない、典型的な悪徳記者。
だが、その一方でジャーナリストとしてのスキル自体は決して悪くはないと、正に『才能の無駄遣い』という言葉を悪い意味で体現している。
もっとも、人間性が壊滅的な奴に限って、仕事面では有能だったりするのは、この手のフィクションにおいてはある種のお約束だったりするが……。
何故か「GUYS」に対し、慢侮の念を含めた過剰なまでに拒絶的な見解を示しており、劇中では専ら彼らの評判や信頼を下落させる為の粗探しに余念が無い。
また、GUYSが地球防衛組織と言う立場上、下手に民間人に対して暴力等の強行手段を採れないのを逆手に取って、GUYSメンバーを真っ向から好き放題に挑発する等、自身が民間人(にして報道関係者)である立場を最大限に悪用する一面も。
更には長年に渡って、幾度も地球を怪獣や侵略者の脅威から守ってきてくれたウルトラマン達に対しても、その恩義を一切感じる様子はなく、『異星人である』だけで差別意識を抱いている。
その偏見ぶりは彼等を『宇宙人』と排他的な呼び方をするばかりか、面と向かって『化け物』と侮蔑する等、完全に怪獣や侵略者達と同列の存在に考えた挙げ句、「アイツら(=ウルトラマン)が居るから地球が怪獣や宇宙人に狙われるんだ!」(※1)と疫病神であるかの様に吐き捨てる始末。
このような人物像故に、出会った人物のほぼ全員から強い忌避感を抱かれ、特に彼の為に散々迷惑を被ったり、窮地に立たされる羽目になったGUYSメンバーからは「ハイエナ」「人間のクズ」と嫌悪され、遂にはウルトラシリーズ随一の陰険さを持つ異次元人ヤプールをもってして「下等な人間」と酷評せしめた程である(※2)。
※1……言うまでもないが、宇宙人や怪獣の侵略・破壊に関して(基本的に)ウルトラマン達は一切関係ないので、その発言は、見当違いも甚だしい言いがかりもいいところである。
※2……「下等な人間“達”」ではなく「下等な」「人間」扱いなので上位種を気取っているヤプールにとって、下等生物である人間の中でも蛭川が特に“気質・品性などのいずれもが下劣な人間”と認識・断定している事実になる。元々『A』の頃から幾度となく人間を見下す発言を繰り返してきたヤプールであったが、意外にも個人を指してその手の発言をした場面はほとんどなく、たびたび自分が利用してきた悪人達の醜い様を目の当たりにしても、大抵は「人間共」「人間達」等と種全体を指す形で見下していた。その事実からも、個人で「下等」呼ばわりされた蛭川は、ヤプールの観点から見ても人間の中でも『あまりに異質』と捉えられる程、並外れて醜悪な人間性であったと如実に示している。
来歴
登場以前
GUYS入隊前のイカルガ・ジョージのバッシング記事(更に後述する蛭川初登場時のジョージの言葉を推測するに、その記事も実際には虚構記事であったと思われる)を書いており、この頃から既にジョージは彼に嫌悪感を持っていた模様。
ちなみにジョージが主役となった第19話でも、彼を中傷する内容のゴシップ雑誌の記事が登場しているが、恐らくはこれも蛭川が書いたものと思われる。
初登場時
初登場の第28話ではGUYSのアマガイ・コノミの幼なじみで、傷害事件を起こして芸能界から干され気味になっていた俳優スザキ・ジュンと結託(実際は前述したスザキの事情を把握し、その弱みを突く形で半ば無理矢理協力させた)し、スザキの友人と偽ってコノミに接触する。
いち早くその正体に気付いたジョージを中心とした、GUYSメンバー達から詰問されるも、本人は開き直るような態度を見せただけでなく、スザキがコノミを騙していたと知り、激昂してスザキに詰め寄ったアイハラ・リュウや、スザキに殴りかかろうとしたウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライの様子をカメラで盗撮。
それを使ってバッシング記事を捏ち上げるのを企んで、逃亡した。だがその後、自分の過ちを悟ったスザキに、盗撮した写真のデータをGUYSに引き渡されてしまい、目論見は失敗に終わる。
再登場時
第43話で再び登場。街で海洋学者ジングウジ・アヤと遊びに来ていたミライを偶然発見し、第28話での一件を根に持っていたのか、前回の借りを返そうとするかの如く今度こそGUYSを貶める為のスキャンダルのネタを仕入れようと、彼に強引かつ厭味な取材を試みる。その時はアヤの毅然とした応対によって退けられたが、その後もしつこくミライやアヤに付きまとう。
しかし、その最中突然現れたメビウスキラーを前にして驚愕し、アヤを突き飛ばして真っ先に逃亡。
なんとかメビウスキラーが倒されると、体力を激しく消耗しアヤに介抱されていたミライのところへ戻り、更に厭味な言い回しでミライを詰問しようとした(勿論、前述の愚行についての謝罪も無し)。
だが、そこへ現れたヤプールによって、ミライやアヤと共に異次元に拉致されてしまう。
そこから続く第44話では、異次元に広がる荒廃した街を見て、絶望感から自分が今いる場所が『壊滅状態に陥った地球』であると誤解して発狂する。
それを宥めようとしたミライに対して、このクズはいきなり殴りかかる。
アヤ「何するの⁉︎」
「こいつのせいだ!GUYSがだらしねぇから地球は滅んだ!全部貴様の責任だ‼︎」
勝手な思い込みで絶望したクズは、上述の罵声を浴びせながら八つ当たり。それでも虫の治まらない彼はなんとミライを何度も足蹴にし、唾を吐きかけるなど一方的に甚振りだす始末。
アヤ「やめて!ミライ君はさっきの戦いでボロボロなの!」
「うるせぇ!訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」
さらに止めに入ったアヤを突き飛ばすなど暴挙の限りを尽くすが、人間に対する失望の念が芽生えたミライから睨まれると途端に怖気づき、自分が今しがた行った事を棚に上げた上で、自分の立場を盾に保身を図ろうとする。
「な、何だよオイ…GUYSが一般市民にに手ぇ上げる気か?」
ミライ「…僕は…あなたと争うつもりはありません」
「だったら何だよその目はァ!」
理不尽な暴力を受けてもヒルカワに手を上げることをしないミライに尚も詰め寄ろうとするが、間に入ったアヤに睨まれるやまた怖気付き、ミライがその場に崩れ落ちると介抱するアヤ共々「怪我人は足手纏いだ。俺は1人でも生き延びてやる」とクズ全開で見捨てて、無闇に出口を探して場を離れようとした事が仇となり、そこへ現れたヤプール人間態に捕らえられ、人質にされそうになる。
風船で首を絞められるなどヤプールから甚振られるが、傷ついた身体をおして立ち上がったミライの手で助けられるが、直後にヤプールから光線銃を差し出されながら、最早十八番ともいえる悪魔の如き唆しを仕掛けられる…
ヤプール「命が惜しいか?だったらチャンスをやろう。 この銃であの男を撃て! そうしたらお前の命だけは助けてやろう」
「ほ…ほんとですか?」
ヤプール「約束しよう。ハハハハハ!」
そして我が身可愛さからそれに呆気なく乗せられたヒルカワは、今しがた助けられた恩も忘れ、ヤプールから提供された光線銃を手に取ると、躊躇いなく、ミライを射殺しようとした。
極めつけは光線銃を撃たれたミライが、自分と傍らにいたアヤを守ろうと生身のまま発動させたシールド技「メビウスディフェンサークル」で、発射した光線を跳ね返し、持っていた光線銃を破壊したのを見て、彼がウルトラマン=宇宙人であると知った蛭川は…
「触るなぁ! 化け物ッ!」
恐怖に腰を抜かした情けない男は、震える声でミライを罵倒し、拒絶したのだ。
そんなあまりに理不尽で身勝手過ぎる蛭川の暴挙は、歴代ウルトラ戦士の中でも特に地球に対し、深い敬愛心を抱いていたミライをも激しく幻滅させる事態となり、上述したようにそれまで地球人に悪い感情を抱かなかった彼に、僅かながらも初めて嫌悪感・失望の念を抱かせた。
これらは全て、ヤプールが過去にエースとの戦いでも、度々利用してきた手であった人間のエゴを利用した、ウルトラマンを心理面から追い詰める作戦であり、ヤプールは端から蛭川にミライが殺せるとは期待しておらず、本当の狙いはミライに蛭川の醜悪な言動を見せつけ、地球人に対して失望させた上で仲間への引き込む事であった。
それでもミライは完全に屈さず、彼を受け入れ支えるのを選んだアヤを信じ、メビウスへ変身する。
その瞬間は、当然ヒルカワも目撃することになる。
「奴が…メビウス!」
先のメビウスキラーとの戦いで消耗し切ったメビウスがヤプールに甚振られる様に「何だよ!やられっぱなしじゃねえかよ!」と悪態をつき、メビウス/ミライを応援するアヤには「俺まで見つかるだろ!」と文句を言う。
直後、ヤプールに見つかり、破壊光線を受けると奇声を発しながら瓦礫の山に転倒する。
「ホワァッ‼︎ホワァァアアッホォウッ‼︎」
情けない男が隠れている間にメビウスはウルトラマンエースからも激励を受けてヤプールの誘いを退け、ヤプールを倒し、ヒルカワも現実世界へ戻ることになった。
この時もヒルカワは微塵の反省も悪びれる様子も見せず、ミライに向かって不吉な笑みを浮かべながら上記二段目のセリフにもある「黙ってるつもりはないからな」と口にし、意味深な言葉を残しつつ去っていった。
劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』において、ミライはハヤタ・シン/初代ウルトラマンから「我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない想いもある」と諭されていたが、ミライ/メビウスの純粋で健気な善意を幾度も目の当たりにしながらも、最後まで彼の頑張りはおろか、自分の愚かさや過ちさえも認めようとしなかった蛭川は、まさしくハヤタが口にした『届かない想い』の象徴であり、ミライにしてみれば、初めて自分の善意や優しさが尽く踏みにじられてしまうという衝撃的な出来事となった。
同時に地球人の誰しもが自分達ウルトラマンに対して友好的であるとは限らず、蛭川のようなウルトラマンに対し敵意同然の感情を抱く、悪しき地球人も居るとする、当たり前ながらも大きな教訓を学んだミライに対し、北斗星司/エースは地球人への敬愛心を失わない様に、かつて自分が地球を去る際に子供達に残した、あの名言を語り、激励するのだった。
「優しさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達 になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが**何百回裏切られようと**。それが私の……変わらぬ願いだ」
ちなみに、この一件から間髪入れることなく、ミライは次なる刺客の奸計に嵌って、地球人の醜さを更に痛感させられることとなってしまう…
本編終盤時
第44話終盤に残した言葉の通り、最終三部作の序章である第48話にて、蛭川は週刊誌に「GUYSに宇宙人が潜伏」の記事を公表。ミライの正体をマスコミに暴露すると、恩を仇で返す行動を平然とやってのける。
テッペイ「最低…」
ジョージ「ミライに助けてもらっておきながら!」
マリナ「人間のクズね」
更に自らワイドショーに出演し、番組司会者のキャスターからメビウスの正体を問われるや、
「GUYSクルー、ヒビノ・ミライです!……もちろんGUYSの連中もグルですよ 奴の正体を知りながらずっと隠してたんです!」
などとふんぞり返って得意満面で語り、ミライとGUYS双方を非難し世間に動揺を走らせ、GUYSやメビウスの信頼を失墜させようとする。
更に不運が重なり、この時の地球は侵略の為に迫りつつあったエンペラ星人から「メビウスを差し出せ」の要求を受けている最中であり、この公表は結果的にミライを地球追放の危機に立たせ、日本政府から身柄を拘束されそうになる事態となった。
その後、GUYS隊長にして総監のサコミズ・シンゴの口から正式にミライがメビウスである事が公言されると、完全にGUYSの首を取ったかの如く、勝ち誇ってほくそ笑んだ。
そんな中、サコミズはエンペラ星人の脅迫を前に屈しそうになる世界中の人々を鼓舞する為の演説を始めるが、その最中「我々、地球人の皆がウルトラマンへ声援を送るだけでも、彼らにとっては大きな助力になる(意訳)」と必死で訴えかけるサコミズの言葉に、蛭川は一笑に付しながら、頭から馬鹿にするかの如く、嘲笑いながら茶々を入れようとする。
「ハッ! 声援して勝てれば苦労しないぜ…!」
キャスター「静かに!」
だが、同席していたキャスターはサコミズの言葉に真剣に耳を傾けようとしており、邪魔しようとした蛭川を一喝して閉口させた。
キャスターの気迫に圧倒された蛭川は、生放送のテレビカメラの面前で思いっきり叱責されたこともあって、羞恥に顔を歪めながらそっぽを向いてしまう。
さらに、子供のような醜態を全国に生中継された結果、サコミズの演説に横槍を入れることもできなくなってしまう。
その後、このサコミズの演説によって勇気づけられた人類は、ミライの引き渡しを拒否する意向を示し、エンペラ星人を前に団結力を強化。そしてGUYSやウルトラマンへの信頼はより強固なものとなるいう、GUYS、ウルトラマンの社会的地位の失脚を狙っていた蛭川の思惑とは真逆な展開と進んでしまったばかりか、結果的に自身の暴露が、人類とウルトラマンの絆を絶対的なものへと昇華させるひとつのきっかけになってしまったという、蛭川にしてみれば、全てが皮肉極まる結末へと繋がってしまったのだった。
忽ち、世界中からGUYSやメビウスへの激励の声が飛び交い、ワイドショーも応援番組へと様変わる中、まさかの形勢逆転な形で自らの目論見が外れた事を悟った蛭川は、お得意だった厭味や、負け惜しみを嘯く余裕もなくなり、かといって今更考えを翻してウルトラマンやGUYSに応援の言葉を投げかけられるわけもなく、八方塞がりの状況に、一転して顔面蒼白になるほど動揺。
そして、活気に沸くスタジオの中、周囲から完全に存在を忘れ去られたかの如くガン無視された哀れな男は、一人呆然と立ち尽くすだけという無様な姿を晒すのだった…
その後、設定上では『第48話の一件でジャーナリストとしてのメンツが潰れ、世界規模で立場を失い社会的に失脚した』とされているが、その顛末は続編はおろか、超全集などにおいても語られる事はなかった。
しかし、メビウスやGUYSを記事だけでなくテレビ番組において顔出しで堂々とこき下ろしていた以上、エンペラ星人を倒し、地球最大の危機を救う英雄となったウルトラマン、そしてGUYSの名声や信頼が不動のものとなったその後の地球の時勢(実際、メビウスをはじめとするウルトラマン達の偉業は人類が宇宙へと進出する遙か未来にまでしっかり地球人の間で語り継がれていった)においては、あの戦いを経て急増したであろう彼らの支持者達から後ろ指を指されたり、後述する暴走した一部のファンのように過激な者達から吊し上げられる等の相応の報復が待っている事が示唆され、非常に肩身が狭い人生を強いられたであろうことは想像に難くない。
そもそも、初代マンからウルトラマン80までの歴代ウルトラ兄弟が地球に来訪し、その勇姿を目撃した人々が彼らの活躍を孫や子に語り継いでいる世界において、ウルトラマンを他の宇宙人と同様に扱った時点で蛭川の負けは決まっていたと言えよう。
余談
蛭川の最終登場回である第48、49話には『ウルトラマンネクサス』に平木詩織役として出演し、加藤とも共演していた五藤圭子女史がメビウスを応援する親子の母親役としてゲスト出演しており、ヒルカワを叱責する報道特番司会役には『ネクサス』の斎田リコの母親の斎田典子役の元井須美子女史がゲスト出演しているが、五藤女史とは直接の共演はしなかった。
蛭川は何故、それほどにウルトラマンや防衛隊を嫌っていたのか?
蛭川の様に直接ウルトラマン(の変身者)に対して悪態を吐いた例は初めてであったものの、事実としてウルトラマンをはじめとした善良な異星人に対しても、地球人が過剰に警戒したり拒絶的な態度を示す場面は、ウルトラシリーズ全体を見ても決して珍しい話ではない。
とはいえ、それらの人物達はいずれもその様な思想や言動に至る理由がきちんと描写されていた。
そんな中、蛭川はそういったバックヤードを伺わせる描写は劇中では一切描かれる事がなく、今日に至ってもファン(もといアンチ)の間では様々な憶測が交わされている。
可能性1:怪獣、宇宙人に纏わる事件の被害者説
ウルトラシリーズのこれまでの作品の中で、侵略宇宙人や怪獣の進撃・破壊活動ひいてはウルトラマンとの交戦の過程(巻き添え)で地球人の犠牲者が出たケースも少なくない点や、中には最初からウルトラマンとの交戦や抹殺目的に、地球に来訪した宇宙人もいたのもまた事実であり、そうなると蛭川のように「ウルトラマンが地球にいるせいで侵略者が襲来してきた」と認識する人達が現れても無理はないだろう。
あるいは、作中において蛭川の人生に纏わるバックヤード等は描写されなかったものの、実は彼自身もそうした怪獣災害の被害者の一人であり、身内や親しい人間を傷つけられたり、失ったりした過去を抱えていたのかもしれない。
実際、ウルトラマンサーガの主人公タイガ・ノゾムが、幼い頃、住んでいた町が怪獣の襲撃に遭った時、ウルトラマンに両親を救ってもらえなかったという過去から、恨みこそないもののウルトラマンの存在に否定的な考え方を持っていた例もあるように、『怪獣災害で心身傷つけられた者が抱える心にあるものの根深さ』が描かえる機会はシリーズでも意外に結構多い。
何より、『メビウス』本編でも、メビウスは第1話で周囲の被害を顧みずに戦った結果、リュウにそのことを怒られる事態になったし、劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』ではアヤの弟 タカトがメビウスとケルビムの戦いに巻き込まれたのをきっかけに傷心し、心を閉ざしてしまっていた事を知ったミライが苦悩し、ハヤタ達から助言される場面があった。いずれの事例も、メビウスはその後の活躍によって名誉挽回しているものの、他にもウルトラマンヒカリがハンターナイトツルギとしてボガールを倒すために周囲の犠牲を一切気にせず行動していた時期もあり、その結果ツルギがヒカリになってからも、しばらくは一般市民の間ではヒカリ(ひいては青いウルトラマン)に対する不信感が拭えずにいた事もあり、なおさらそのようなことになってもおかしくない。実際には不明だが、仮に蛭川が第1話でのメビウスとディノゾールとの戦い、またはツルギとボガールとの攻防の最中に(直接的に限らず、親しい人物や私財などに)なんらかの被害を被っていた場合、ウルトラマンの存在を嫌うには十分な動機を与えたと言える。
可能性2:『ウルトラマン』という謎多き存在に対する恐怖心、猜疑心説
「ウルトラマン自体、地球人からすれば不明な点が多く、得体のしれない存在に思われていたが故に、蛭川が『化け物』と吐き捨てたのではないか」という声もある。
突然宇宙から飛来し、なぜか人類を守ってくれている、一般的な地球人側から見たらありがたい存在だが、一方で人類を守る理由も含め、ウルトラマンは謎が多すぎる得体の知れない存在でもある。そんな謎だらけの存在であるウルトラマンが、蛭川にとっては怪獣や宇宙人以上に恐ろしい存在に見えていたのかもしれない。メビウスの外伝作品であるアンデレスホリゾントにおいても、宇宙人に対する敵愾心が強い主人公ハルザキ・カナタが、ウルトラマンに対して「どんな理由で地球を守っているのか怪しいものだ…」と懐疑的に見ていた。
また、『ウルトラマンクロニクルZヒーローズオデッセイ』第5話で、ウルトラマンゼロが「俺達ウルトラマンは、力を見せびらかすために地球に来たわけじゃない!守りに来たんだぜ!?」と断言しているが、そもそもの話…というか前提として、「地球人を守りに来た」という事情をウルトラマン側が地球人に明かす事自体が滅多にない(ウルトラマンギンガでのタロウや、ウルトラマンジードでのゼロぐらい)。
それどころか、そもそも(メビウスやセブンの様に直接地球人に擬態した者達を除く)ウルトラマンが変身者以外の地球人と会話を交わしたという例もほとんどなく(一応コスモスやエックスがいるが)、あったとしてもゼットやデッカーのように言葉が通じない、なんて笑えないことも起きているため、要らぬ疑念や不安を与えてしまっている事例や、そういった些細な行き違い等を発端に「異星人」であるウルトラマンに対して否定的、懐疑的だったり、そんな不確定な彼らに依存してしまっている地球側の不甲斐なさや危機感の低さを憂いだり、懸念する声を挙げる人間が少なくないのも事実である。
実際、メビウスの本編でも最終盤に登場したシキ査察官が「ウルトラマンといえども宇宙人」と断じ、『未知なる存在』であるミライの正体を知りながら仲間として戦っていたGUYSの危機管理体制を批判している他、メビウス以外のウルトラシリーズ各作品を見ても、ウルトラマンダイナに登場したゴンドウ・キハチが「正体もわからぬ巨人に人間の未来を任していいのか?断じてそんなはずはない!」と述べ、ウルトラマンギンガSに登場した神山政紀も「ウルトラマンだって宇宙人だ。いつ人類の敵に回ってもおかしくはない」、ウルトラマンZに登場したユウキ・マイも「所詮彼らは宇宙人…いつまでも我々の味方をしてくれる保証はありません」と、各々『素性の知れない宇宙人』であるウルトラマンに地球防衛や怪獣撃退のイニシアチブを委ねてしまっている状況を快く思わない発言をしており、更に彼らはそれぞれ、その発言の後にウルトラマンに頼らぬ過激な戦力を推進しようとして、最終的にそれが裏目となって地球や人類ばかりか、ウルトラマンさえも窮地に招いてしまうこととなった事から、ウルトラシリーズのファンの一部からは蛭川と同列に扱われることも珍しくないが、実際のところ、その後の行動はともかく、それらの発言自体は「自分達『地球人』自身が、地球の『平和』を守ること」という真っ当な正義感や防衛組織という地球を守る立場としての矜持の裏返しからであり、ゾフィーやゼロ、ゼットをはじめとするウルトラマン達からも一定の肯定を得ている。
そして残念ながら、『メビウス』の頃は設定されていなかったとはいえ、後の作品でウルトラマンベリアル、そして後述するウルトラマントレギアというように悪の道に走った光の国出身の正真正銘のウルトラマンが存在することが判明した。ベリアルに関しては地球とは無関係とはいえ『メビウス』本編からはるか昔の時点で既に悪事を起こした経歴があり、「ウルトラマン」という存在の全ての者が無条件に人間の味方とも善人とも限らない、むしろ個人単位で見れば地球を滅ぼそうとする悪人もいることがはっきりとしたと言える。ありえない話だが、もしM78ワールドの地球にベリアルやトレギアが飛来して悪事を行った場合、地球におけるウルトラマンの安全神話は完全に崩壊していたことは疑いの余地もない。
むしろウルトラマンをあっさり味方だと信じて、会遇して間もない内から共に戦う程に信頼を置いていた数々(主に昭和ウルトラシリーズ)の防衛チームに対し「少々不用心だったのでは?」と指摘する声もある(勿論、それらの防衛チームもウルトラマン側に疑わしき行動があった場合は地球人としてこれに毅然と対処するという意志を示している。現に科学特捜隊のムラマツキャップも「例えウルトラマンでも、この地球上で暴力を振るう者とは戦わなければならん」と語っている)。それもあってか、新世代以降のウルトラシリーズの防衛チームはウルトラマンとの初会遇から最低1、2回は各々ウルトラマンに対し、本当に自分達や地球人の味方であるのか見定めるべく様子見する姿勢がキチンと描写されている。
可能性3:ウルトラマン、もとい『正義』に対する失望説
ウルトラシリーズでは、帰ってきたウルトラマン第32話『怪獣使いと少年』でメイツ星人をリンチした挙げ句に殺した市民達や、メビウス第45話『デスレムのたくらみ』で登場したメビウスやGUYSをバッシングした市民達、そして当記事に巻末に記載されている面々…っといった『守る価値があるのか?』と疑いたくなる程に浅ましかったり、愚かしい醜態を晒す一般人達がよく出てきている。
蛭川もまたジャーナリストという立場上、元々は報道に対する真っ当な信念を掲げていたが、過去にそういった人間や、不条理そのものな人間社会の醜さを目の当たりにしたり、自らもその腐敗した現実に打ちのめされたりする中で、そんな人物すらも『地球人』と一括りにして守ろうとするウルトラマンを見たことで、「本来守るに値しない筈の人間さえも無条件で守ろうとするウルトラマンは、所詮地球人とは善悪の価値観が違う異端の存在=『化け物』でしかない」といったある種の『失望』ともとれる感情を抱き、最終的にウルトラマンや防衛チームはもちろん、自分以外の全てを信じられなくなった…というエピソードを抱えていたのかもしれない。
似たような事例として、尊敬していた人物の闇堕ちをきっかけに「光の国の住人も図体が大きいだけで、 自身が嘗て危惧した地球人と変わらない未熟なメンタルの持ち主である」という結論に至り、そんな未熟者が正義を名乗り力を振るう現状に恐怖を覚え半狂乱となり光の国を脱走したウルトラマントレギアの存在があるが、何の因果か、そのトレギアは来訪した先の地球において、ウルトラマンでありながら幾多の怪獣をけしかけたり、幾人もの宇宙人を唆して地球侵略を焚きつける等、それまで『言いがかり』や『こじつけ』程度にしか思われていなかった蛭川の偏見を実現してしまったばかりか、宇宙人に対して強い敵愾心を抱いていた地球人を唆して宇宙人に対して理不尽な暴力に走らせるなど、蛭川を誑かした時のヤプールのような立ち回りさえ行っていた。
これらの仮説はあくまでもファンの間で流される憶測であり、真実は不明だが、何にしてもそういった蛭川にまつわるバックヤードを少しでも劇中で明らかにしておけば、ここまで蛇蝎の如く嫌われるヘイトタンクとして語り継がれる事はなかったのかもしれない…
役柄に対する反響
ヒルカワが明確な制裁を受けないまま退場した理由については、下記のような説が考えられている。
- 単純に割り当てる尺が無かった為、割愛した。
- 『この後、彼がどのような目に遭うかは各視聴者の想像に任せる』の意図だった。
- 『ウルトラマンメビウス』という作品がテレビドラマ=マスメディア上で発表する作品である以上、悪人であってもマスコミ関係者を酷い目に遭わせるわけにはいかなかった(ただし、マスコミが別のタイプのマスコミを批判するのは、珍しくはないが)。
しかし、いずれにしてもこの『犯した悪行に不相応な曖昧な退場』という描写が、唯でさえ蛭川への義憤に憤っていた視聴者を逆撫でしてしまい、最終的に履きどころのない視聴者の怒りは、稀代の憎まれ者であるヒルカワを演じたリアル世界の役者に向けられ、その後、ネット上を中心に怨嗟の声が生じてしまうという最悪の結果を招くこととなってしまった。
演者に対する尋常ならざる風評被害
予め断言しておくが、役柄の劇中での所業を理由とした、そのリアル演者に対するヘイトの喧伝など筋違いもいいところで、人倫にもとる恥ずべき行為である。
ヒルカワを演じた加藤厚成氏は、「メビウス」放映終了後に自身のブログでヒルカワを話題に挙げ「役者として演じる上ではインパクトのあった人物だった」としながらも、一連の悪行には演じながらもやはり相当な不快感を抱いていた様子で、その人物像について「男はおろか人間としても風上におけない最低野郎!」と記事冒頭で吐き捨て、「結局自分じゃ何もできない小物。弱い奴ほど見苦しい」「人の弱さ、醜さが詰まっている」 と痛烈に批判しており、「今まで演じた人物の中で一番嫌いなキャラクター」としている。
そして「メビウス」放送後は番組をリアルタイムで視聴していた甥から激しく嫌われてしまい、「ネクサス」のソフビをプレゼントするが「それ孤門じゃん‼︎」と拒絶され、機嫌を直してもらうのに苦労したというエピソードや、他の親族や子持ちの友人達からも「人としてどうなの?」「信じられない」「ムカついた」「お前最低だな」等と口々に罵倒された旨も明かしている。
とはいえこれは気心の知れた知り合いとのエピソードであり、知人・友人達に至ってはおそらくは加藤氏の演技への評価・感想がてらに発した半ば冗談の一貫と思われ、特に外野がそれ以上どうこう言うべきものではない。
加藤氏は度々『ネクサス』のダークザギ/石堀光彦や『大怪獣バトルNEO』のペダン星人ダイル等の思い出話を語っているが、ダークザギのように明確な制裁を受けず、ダイルのように改心もしなかったヒルカワに関してはその作中での所業や、それによりファンから憎悪を向けられ徹底的に嫌われたこと(後述)もあってか、このブログで批判した一件以降話題にしていない。
だが、ヒルカワがここまでヘイトを向けられるようになったのはそれ程までに加藤氏の演技が卓越していた証にほかならず、視聴者ばかりか、素の自分を知っている身内や友人にさえもそのように強烈な感情を抱かせたとしたら、その卓越した演技力の賜物としか言いようがなく、俳優としては非常に名誉あることである。
実際、当時から加藤氏の迫真の怪演を純粋に高く評価する声も多くあり、後年に仮面ライダーシリーズの『仮面ライダーゼロワン』に天津一京の役でゲスト出演した際に、公式ホームページで『光の国からやってきた珠玉のヴィラン』と称されるなど、加藤氏を語る上でその手腕を評価するきっかけの一つとなった。
しかし、ヒルカワという役柄の視聴者からの嫌われ方は尋常ではなかった。
その劇中の所業(特にミライに八つ当たりで散々痛めつけた上に殺害しようとし、挙げ句「化け物」呼ばわりした第44話の暴挙)に加え、女性キャスターに叱責され赤っ恥をかく以外に明確な制裁が描かれなかったことから「何でヒルカワに制裁がないんだ」「見てて不快だったから相応の報いを下してほしかった」「因縁のあるジョージやリュウにぶん殴られるはくらいしてほしかった」と、制裁の描写がなかったことへの不満は根強かった。
さらに、エンペラ星人を打倒した後、ミライがGUYSに留まらずにそのまま地球を去り、その後も一部の例外(『アーマードダークネス』の時など、いずれも直接地球には降り立っていない)を除いて、二度と地球に戻る事がなかった理由について、一部の視聴者からは「第48話でコイツ(蛭川)が正体を暴露した事によって、”ヒビノ・ミライ”として地球に留まる事ができなくなってしまったからだ」だと考察する声もあり、それが事実であるとすれば、ヒルカワ自身の一番の狙いであった『GUYS、ウルトラマンの社会的名誉失墜』こそ失敗に終わったものの、考えようによってはウルトラマンメビウスを地球から永久追放するのには成功したと捉える事もできる為、事実上の『勝ち逃げ』であると受け取った視聴者も少なからずいた事も拍車をかける一因になった。
以上のようなことから、一部の過激なファンを中心に「本物のクズ」「このキチガイ野郎!」「死ね!」「気持ち悪い顔しやがって」「地獄に堕ちろ」「覚悟しとけよ」「絶対許さないからな」「街で会ったらぶっ殺してやる!」 等、一悪役に対するものとして常軌を逸した過度なヘイトへと発展してしまった。
ただ、ここまでであればあくまで劇中キャラに対する意見であり、言葉を選ぶべきではあるとはいえ誰がどう感じて何を言おうがギリギリ自由ではある。
問題は、そこから越えてはならない一線を踏み外し、役柄と役者を混同し、その後役者が別作品に出演する度に蛭川のイメージをしつこく持ち込んでは執拗に叩き続けようとする粘着質なファンの存在である。
上述の通り加藤氏は『ネクサス』においても物語の黒幕を演じていた経緯や、『大怪獣バトルNEO』でも主人公の命を何度も狙う敵(※)を演じていたこともあって、「加藤は出演する度にウルトラマンや防衛チームを苦しめている」と履き違えたり、劇中におけるヒルカワのウルトラマンに対する偏見のように「ウルトラマンに災いをもたらすウルトラシリーズの諸悪の根源」と無理やりこじつけようとする者が続出。
つまり、ごく一部のファンが加藤氏の人物像をヒルカワと同一視するようになってしまい、ヒルカワに対する憎悪と殺意を加藤氏に向けるようになってしまったのである。
その結果、加藤氏に対して「ウルトラマンの疫病神」と不名誉な仇名をつけて忌み嫌う者、ヤプールからの罵倒とフルネームをかけて「下等厚成」呼ばわりする者、「加藤はこういう役しかできない」「人間のクズ役職人」「下衆なキャラに定評がある」「悪役専門俳優」などの心無いレッテルを貼る者などが現れてしまった。さらには加藤氏が『ネクサス』や『大怪獣バトルNEO』の思い出話を語ることにすら拒絶反応を示し、「ウルトラマンを散々苦しめたくせにウルトラマンを語るな」と否定的な意見を言う者、『ゼロワン』出演時の紹介に「疫病神の分際でウルトラシリーズ代表を気取るな」と筋違いな批判する者まで現れる始末であった。
(※) …『大怪獣バトルNEO』におけるペダン星人ダイルは当初は一切改心しない完全な敵として登場予定だったが加藤氏がファンから憎しみを向けられている事情を知ったスタッフの配慮によって、設定を変更した裏話がある。
加藤氏もファンから否定的な意見を受けて相当ショックを受けており、「少しでもいい役をやれたら」とダイル役に意欲を見せていた。
だが、スタッフの配慮もむなしく、「また主人公を苦しめにきたのか」「どの面下げて出てきやがった」と初期から不快感を露わにする視聴者が続出し、話が進むにつれて過激な怨嗟派による加藤氏への当てつけ同然の批判・ヘイトは更にエスカレートし、ダイルが非業の最期を遂げる形で退場した際には「コイツのやったことは偽善」「感動を演出したのかもしれないけど演者が加藤だから、逆にスカッとした」と否定的なコメントが相次いだばかりか、ヒルカワの悪行とそれ相応の報いを受けなかった為にメビウス視聴以降憤懣を抱え続けていた視聴者からはダイルをヒルカワに置き換えて「やっとヒルカワが死んだ」「さっさと地獄に堕ちろカス」と無理矢理に溜飲を下げようとされた上、それでも気が済まない者は「ミライを痛めつけた仕返し」「あの時(44話)の天罰」「ざまあみろヒルカワ!」「もっと苦しめ!」等のダイルの死を喜ぶ揶揄・嘲笑コメントを、まるで憂さ晴らしや八つ当たりのように、当時加藤氏が運営していたブログや番組公式ホームページの感想板などに多数送りつける者が現れた。中には、加藤氏が風評被害に遭ったことを「当然の報い」「自業自得」「お前がしたことに比べたらマシだろ」「ファン全員お前のこと嫌いだよバーカ」とこれまたヒルカワと同一視して喜んだり罵倒する者までいた。
さらに、某動画サイトには、『メビウス』や他のシリーズの主役ウルトラマンが必殺技を放つ場面とヒルカワがヤプールの攻撃に腰を抜かす場面を繋ぎ合わせてウルトラ戦士がヒルカワを攻撃し、それをGUYSのクルー達が喜びながら眺めている、あるいはウルトラシリーズと関係のない作品の悪役にヒルカワもとい加藤氏の顔を合成し、主人公に完膚無きまでに叩きのめされるという悪趣味な短編動画が多数制作、公開される事態となった。
44話、他作品への影響
ミライに対する暴行、殺害未遂、暴言…とヒルカワの暴挙がこれでもかと描写された44話に関して、「子供がトラウマになり、以来二度と見れなくなった」「冒頭は飛ばしてメビウスとヤプールの対決から見てる」等、ヒルカワのインパクトは幼いファンを中心によくない影響を与えてしまっており、さらにこの44話がウルトラマンエースの客演に加えて北斗星司と南夕子の再会というファンにとってたまらない回だったこともあり、「せっかくのエースの客演が台無しになった」「アイツ(ヒルカワ)のせいで感動が半減した」と往年のファンからも不満の声が上がり、これについても加藤氏に責任を転嫁し「加藤のせいだ!」「責任取れ!」と理不尽な暴言を浴びせる者がいた。
加藤氏が過去に演じたダークザキや石堀に関しても、「嫌いになった」「映るだけで気分が悪い」「石堀の笑顔がキモい」とヒルカワと同一視する者が現れ始め、上述のダイルと同じくヒルカワに見立て、「超全集の石堀のページ塗りつぶした」「ダークザギのソフビ切り刻んで捨てた」と、溜まりに溜まった鬱憤をモノに八つ当たりする形で晴らす者もいた。
『メビウス』放映から数年の月日を経て加藤氏が他作品に出演しても「ヒルカワ」呼ばわりされ、例を挙げると刑事ドラマ「相棒」に殺人の濡れ衣を着せられ逮捕される作家の役でゲスト出演した際は「ヒルカワが逮捕された」「死刑になれ」とズレた感想が寄せられ、前述した天津一京の毒親と評される役柄にも「やっぱり加藤が演じるのは人間のクズ」と嘲笑コメントが寄せられた。
また、2022年公開の映画「シン・ウルトラマン」について、主演の 斎藤工氏と所属事務所が同じ(※1)で過去にドラマで共演している(※)こと、同系列作品の「シン・ゴジラ」に加藤氏が出演していた(※)ことを受けて、「まさかシン・ウルトラマンに出てないよな?」「もし斎藤工を苦しめたら許さない」「加藤が出るなら見ない」との声が一部のファンから上がり、出演する情報が出ていないにもかかわらず、同作のキャッチコピーとかけて「またウルトラマンを苦しめに来たのか、ヒルカワ」という皮肉を飛ばす者もいた(※)。
※1…現在は退所。
※2…ドラマ「医師たちの恋愛事情」。加藤氏は斎藤氏が演じる主人公の恋人の元カノ役で、周囲の人に暴力を振るうDV男という設定。
※3…「シン・ゴジラ」では、出演シーンは短いもののゴジラへの熱核兵器使用を目論む米国に憤る官僚と、ヒルカワとは真逆の善良な役を演じている。
ちなみに、この加藤氏が演じた人物を石堀/ダークザギと重ね合わせて「ゴジラを呼び寄せたのはコイツ」「全部コイツのせい」との最早見境のないこじつけコメントも見られた。
現在では
現在でもヒルカワはX(旧Twitter)やYoutubeで「ウルトラシリーズ/特撮のクソすぎる悪役」「大嫌いなキャラクター」として必ず名前が挙がるキャラで、同時に「加藤厚成=ヒルカワ」の負のイメージも根強く残っており、過激なコメントやヘイトコメントが完全には根絶されていないのが現状である。
また、マイナスイメージが抜けきれない視聴者やファンからは「役と俳優は別人と理解しているが、中の人も大嫌いになってしまった」「石堀やヒルカワのイメージが強すぎて、今後仲間で出てこられても味方と思えないし、ダイルのような役でも感動はできない」「加藤にはウルトラシリーズには2度と出演しないでほしい(※)」と、加藤氏本人を拒絶する意見も出ている。
※…この意見に関しては、加藤氏を拒む者の他に「ヒルカワと同一視されて激しく罵倒される加藤氏を見たくない」という者も含まれる。
反対意見
これまでに挙げてきたヒルカワ・加藤氏に対する過激な意見に対し、
「ヒルカワのやった事は許せないが、仮にも”ウルトラマンと地球人の絆が深まるきっかけを作った功労者”の一人であるのは確か」「改めて見ると役者ってすごいなと思う」
とその役回り、演者の演技を真っ当に評する声や、
「ヒルカワが制裁を受けなかったからといって、演者を代わりに叩くのは流石に違う」「役は嫌いだけど演じた人が誹謗中傷に遭っているのを知って複雑な心境になった」
と、ファンの暴走を嘆く声も当然挙がり続けている。
また、上述した『大怪獣バトルNEO』でのダイル退場に際しても決して批判一色ではなく、中には「演者に対する印象が変わった」「ダイルはカッコ良くて、いい役だった」
等と好意的な感想も少なからず寄せられていた。
また、2024年現在でも加藤氏のように、特撮をはじめとするテレビドラマの劇中で強いヘイトを買う役を演じた俳優・女優が後に別の作品に出演した際に、視聴者からかつて演じた役のイメージをしつこく重ねられて理不尽に叩かれたり、別作品で悲惨な目に遭うのを望んだりする事案は一部のネット民の間で『ヒルカワ症候群』と命名されている。
最後に
これを読んだ人は言うまでもなく理解できるだろうが、非人道的な悪行を重ねたのは、脚本家が創作した架空のキャラクター『ヒルカワ・ミツヒコ』であり、その悪行や悪態はあくまで監督の指導に基づく「演技」に過ぎず、演じた実在の俳優『加藤厚成』は単に最高のパフォーマンスで仕事をしただけに過ぎず、微塵の非もない。
加藤氏は不祥事をおかしたわけでもなく、演技の品質に対する真っ当な批判もあまり聞かれない。
劇中におけるヒルカワの言動がリアルで迫真の演技でキャラに不快感を抱き、稼いだヘイトに相応の『制裁』が描写されなかったことに納得がいかないという理由で演者を攻撃してその憂さを晴らそうとする行動は、劇中においてミライとGUYSに対し理不尽な憎悪を向けたヒルカワの所業と本質的に何ら変わり無い愚行であり、とどのつまりは批判の対象のはずのヒルカワと同じ下衆に成り下げてしまっている。否、むしろ一応は記者として真正面から堂々とGUYS、ウルトラマン批判を行っていたヒルカワよりも、名前も顔も晒す事なく、インターネットという大きな壁に守られた安全な場所から一方的に好き勝手に叩いている者たちの方がよほど悪質である。
実際にトラブルでも起こさない限り、どんなに醜い役でも演じた者に罪はないという当たり前のことを、忘れてはいけない(※)。
(それでも脚本家が何を思ってこういうキャラクターを創造し、監督が何を考えてあそこまでの演技を役者に指導したのかという疑問点は残るが…)
(※)…2022年に戦隊ヒーローに出演経験があり、加藤氏と同じく「相棒」を始めとするドラマや映画でクズ役で出演していた映画監督の榊英雄の性加害が明るみになって周囲の評価が180度変わった際に、「クズだからクズ役が多かった」と演じた人物と本人の人物像を重ね合わせた批判が集まり、それに便乗して「加藤も何かやらかして堂々と叩けるようになってほしい」というあまりにも人道に外れた声までも上がり、流石にこれについては「当てつけにも程がある」等と苦言を呈する意見も少なくなかった。
それは逆に人気や評価の高い人物を演じていても同じであり、イメージが固まったことでそれに近い役柄でのオファーしか来なくなった、もしくはそのような時期が一時期あったという役者も数多く存在する。イメージが固まってしまって仕事に悪い影響が出れば、その役が善人だろうが悪人だろうがに問わず演じていた俳優を苦しめかねないのだ。
実際にそうした視聴者サイドによる一方的な役者のイメージ固定(即ち理想の押し付け)が原因で役者の世界に居場所を失い、去ってしまう者も少なからず存在する。
その一例が、今作の主人公 ヒビノ・ミライ/メビウスを演じた五十嵐隼士氏である。
五十嵐氏は2021年にアイハラ・リュウ役の仁科克基氏のYoutubeにおいて対談した際、後年芸能界を引退した理由のひとつとして「メビウスや『ROOKIES』といった代表作で演じたキャラで素の自身のイメージも固定され、自分の演じる役が好きなだけで俳優”五十嵐隼士”として見てもらえない事が多かった」ことが一因であったと明かした。もちろん、他にも様々な事情があるために、これだけが引退の理由というわけではないのだが。
当該動画を見た視聴ユーザーからは五十嵐氏の苦悩を理解し、「自分たちの振る舞いが引退に追い込んでしまった、見れないのは残念だけど、そういう態度が生んだ当然の結果」「自分たちは五十嵐さんをミライとしか見ていなかった」(Twitterなどでも)等、同情する意見、これまでの自分たちの考えや態度を疑い後悔、反省する意見が少なからず寄せられた反面、「ファンの期待を背負う覚悟が欲しかった」「長寿シリーズに参加したならそれぐらいの責任が必要、考えが甘い」など氏の葛藤や苦悩を考慮せずにいつまでもメビウスに依存し続ける自身の幼稚で身勝手な理想を押し付けようとする、極端に言ってしまえば加害者である側が被害者ヅラをしたコメント、急ではなくても復帰を望む声が全体の半分以上を占めるほどであった。当然ながら覚悟がないのも考えが甘いのもそのファンたち自身でありブーメラン発言でしかない。それらのファンは悪意なく純粋な気持ちでそう言った声を発信しているのだろうが、その態度や身勝手な感想が引退の一因になったと自覚できていない、何より悪意がない以上、ある意味では蛭川の例以上にタチが悪く対処しづらいともいえる。
勿論、五十嵐氏はメビウスに出演したこと自体には強い誇りを持っており、現在もメビウスを演じたことについて、こうした動画やSNSで話すことや、イベントに出演することに抵抗はないと断言している。
このように主役として人気を得ていた五十嵐氏でさえも、加藤氏とはまた違う意味で『演者イメージの固定』による弊害に苦悩していた事実が明らかになり、(特に子供向けの)人気番組の出演者の多くが抱える『イメージの固定化』という問題が如何に難しい課題であるかが改めて認識されることとなった(ちなみに五十嵐氏のカミングアウトに先立ち、ウルトラシリーズの公式小説作品において、偶然にもこのケースによく似た事例が描写されていた)。
このことから、良くも悪くも多くのものを残した『ウルトラマンメビウス』だが、その大きな一つとして、ウルトラシリーズにも役の善悪問わず役と役者の区別がつかない視聴者が多く存在しているという問題を浮き彫りにした作品ということができる。
上述の事情を踏まえ、くれぐれも一時の感情に任せて悪役とその演者とを混合し、尊厳を傷付けるような、ネタ・冗談の範囲を逸脱する程の過激な暴言・悪口雑言は勿論のこと、善悪問わず特定の番組で演じたキャラクターのイメージを一方的に固定し、執拗に演者に対してその人物のイメージを押し付けるような真似も、慎むべきである事実を今一度頭に置いて欲しい。
結局、加藤氏に蛭川の悪名をこじつけて的外れな批判をするファンも、五十嵐氏にミライを重ねて執拗に再演を求めるファンも、表し方が異なるだけで「キャラクターと役者を混同し、その区別がつけられない」という根本的な性質は何も変わらないということは肝に銘じておこう。役者もある程度の覚悟やメンタルの強さは必要なのかもしれないが、それでも我々と同じ一人の人間である事を決して忘れずに、ファンは甘えるようなこともイメージを押し付ける事もせず、節度と敬意を弁えて接することを心がけなければならない 。
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長谷川圭一:このキャラクターの発案者である脚本家。
ペンは剣よりも強し:コイツの厄介さを象徴している様な格言である。
ヤプール:自身を利用してきた相手だが、先述したとおり、そのあまりの性根の悪さには流石のヤプールでさえも下等種と見下している人間の中でも、特に下等な奴と見下していた。ちなみにヤプールもまた、メビウスを地球から追い出す遠因になったヒルカワ同様に、エースとの戦いで本命の作戦こそ失敗すれども、それと引き換えにエースの正体を暴露させ、結果的に彼を地球から追放する事に成功している。
石堀光彦、ペダン星人ダイル:ウルトラシリーズにおいて加藤氏が演じたキャラクター。ヒルカワの名前の「光彦」は石堀のフルネームを意識したものという説がある。
久里虫太郎:同じく抱え持った負の心を付け入られる形でヤプールの走狗となった地球人。ヤプールが異次元で蛭川と接触した際に扮した人間態は彼の姿を模したものである。
高倉司令官、西条武官:いずれも『ウルトラシリーズにおける最低な地球人』を挙げる際に蛭川と共に名前がよく上がる人物達。
アトウ博士:蛭川同様に特定の存在に対するヘイト意識が強く、『恩知らず』の悪名で名高いウルトラシリーズの登場人物であるが、蛭川と違って、その様な人間性が形成されたバックヤードが僅かながら劇中で触れられている。
今里光:『令和のヒルカワ』の異名を持つウルトラシリーズの最低な一般人。こちらは(事故とはいえ)人を実際に死なせている為、「ヒルカワよりも悪質」と評す声も少なくない。奇しくも彼が登場した作品の主役ウルトラマンはメビウスの弟弟子である。なお、コイツもまた自身の悪行を反省する事はなかったが、ヒルカワと異なり自身の警護に就いていた人物にぶん殴られて制裁を受けており、その後社会的に立場を失ったであろう描写がなされている。
アイカワ・リュウジ:自己中心的な上に見下している相手に対して慇懃無礼かつ粘着質な言動で詰る人間性が蛭川を彷彿させたウルトラシリーズの一般人だが、これでも蛭川に比べたらまだ可愛いものである。なお、コイツもヒルカワと異なり最終的に自分のそれまでの言動や素行のツケが回ってくる形で上司からの評判が失墜するという制裁を受けていた。