天津一京
あまついっけい
「垓、100点に満足するな。1000点を目指せる男になれ…」
演:加藤厚成
天津垓の父。
詳しい職業などは劇中では明かされていないが、劇中で英字新聞を読んでいた事や、高級マンションで羽振りの良い生活を送っていた事から、ZAIAのような国際的な大企業の幹部クラス以上の社員、または外交官などの世界を股にかけるような要職であった可能性が高く、いずれにしても相当なエリートにして上級国民であった事は確かである。
小学生時代の垓がテストで100点を取っても上述の台詞を冷淡に言い放つ過剰なまでに完璧主義な性格の持ち主。
上述の台詞は一見すると「現状に満足せずに、常に高みを目指して頑張れ」と激励しているかのようにも聞こえる台詞だが、実際のところ100点満点のテストで1000点を取るだなんて無茶苦茶な理屈にして無理難題も同然であり、一京としては、「どんなテストでも常に100点を取り続けて、(合計して)1000点になるように努力しろ」という意味で言ったのかもしれないが、その真意については一京自身はそれ以上は何も語らなかった為、真相は定かでない。
ともあれ、たとえ比喩や鼓吹のつもりだったとしても、聞き手にしてみれば無茶苦茶な言い分であることに変わりはなく、当時の垓も子供心に少なからず理不尽さを感じていた…
上述の考え故に僅かなミスも許さないまでに融通が利かなく、1点でもミスして99点を取ろうものなら、「こんな点数を出して恥ずかしくないのか!」と、テスト用紙を握り潰して叱りつけるという、普通の子供であれば20点以下ぐらいを取った時に言いそうな台詞を投げかけ、可愛がっていた犬型AIロボのさうざーに対して「(100点がとれないのも)こんなものにうつつを抜かしているからだ…!」と息子の数少ない心の拠り所さえも完全に否定するなど、少なくとも息子や他者から見れば微塵の温かみも感じさせない超厳格な英才教育を施していた。
やがて垓は父親から認められない鬱屈を拗らせた結果、さうざーを自ら封印してしまい、「僕だけの力で1000点取ってみせる」という歪んだ上昇志向に取り憑かれていくことになる。
その結果、成長した垓は、その経験がよっぽどトラウマになったのか、1000という数字に対して異様な執心を向け、皮肉にも一京さえも凌ぐ程の融通の利かない完璧主義と、その為ならばどんな手段をも厭わない独善主義を掲げるワンマン経営者に成り果ててしまった…
名前の由来は数字の桁である「京」。垓の前の桁。一京すなわち一垓の1万分の1である。
自分をも超える存在になってほしいという思いで「垓」と名付けたのだろうか。
演者である加藤氏は、過去にウルトラシリーズにおいて石堀光彦、蛭川光彦、ペダン星人ダイルといったそれぞれ強烈な印象を残した悪役達を演じた事が有名で、特に石堀は一京とは毛色が異なるが、役回りがよく似ていた。
ちなみに意外にも、東映特撮は今作が初出演であり、仮面ライダーWEBでも某光の国から珠玉のヴィランが満を持してライダー作品にご出演くださいましたとネタにされていた。
上述のとおり、彼の歪んだエリート教育が、息子の垓の人格形成に大きな影響を与える事となり、垓の独善主義と歪んだ人格を作ったことと、それによるアークに悪意をラーニングさせるきっかけとなった、ゼロワンにおける全ての諸悪の元凶となった人物といえる。
その反面、この手の毒親キャラなら、やりかねないような『垓に自らの主義思想を叩き込む為の見せしめとして、さうざーを無理やり取り上げて、破壊または捨ててしまう』といった強権的な行動などはとっておらず、垓を叱りつける際にも握りつぶしたテスト用紙を投げつける程度に留め直接手を上げるような事もしないなど、妙に親としての最低限の良識はある一面を見せていた。
これらの点についてメタ的な観点からして言えば、前者に関しては商標や肖像権、プロップ自体の希少さ故の事情からさうざーを破壊または粗雑に扱うといった乱暴な描写が出来なかった(さうざー役として用いられたアイボは、ソニーの発売したペットロボットである。しかもこの時撮影に使用された機体(第1世代型(ERS-111型)は正常に作動する状態のものは殆ど市場に出回っていない大変貴重な品で、わざわざアイボ開発スタッフの一人が大切に保管していたものを借り受けて使用されたとの事)と思われる。
また後者に関しても昨今のテレビ番組のコンプライアンスや、演者への風評被害(演じた加藤厚成氏は過去に、上記のキャラクターの一人を演じた際に劇中の言動が原因で視聴者から激烈なヘイトを買い、「ウルトラマンの疫病神」と忌み嫌われその後しばらく風評被害に悩まされた経験があった)を考慮したなどの影響もあると思われる。
それでも劇中で見せた言動や、その存在が劇中における諸悪の大元であった事から、本来であれば視聴者から更なるヘイトを買いかねないが、皮肉な事に息子が(一京登場回放送までの時点における)劇中で犯していた数々の暴挙によって視聴者の怒りを一挙に引き受ける避雷針になった形で、ヘイトの声は息子程、露骨に上がる事はなかった。
しかし、上述の「光の国のヴィラン」との紹介文には「疫病神のくせにウルトラマン代表を気取るな!」との批判が寄せられた。
妻(垓の母親)や両親(垓の祖父母)といった一京以外の天津家の家人についての描写はない。
また、一京自身の現在(本編時)の生死や動向についても劇中で触れられる事はなかったが、劇中における垓の性格や言動から察するに、さうざーを封印した後も、一京は息子の努力や才能を認めたり、褒めてあげるといった事は一切しなかった事が窺い知れる。
人間のクズ…と評する意見も多く、実際に息子を道具や駒のように扱っていたような様子からもお世辞にも情がある人物とはいえないが、前述したとおり(メタ的な事情込みとはいえ)親や人間としての最低限の良識は保っている事から、冷徹と評するのが正しいといえる。
檀正宗:プロデューサーと脚本家が同じ作品の教育虐待で息子の人格を歪ませた毒親。
初芝真の父親:息子を悪堕ちさせる要因となった毒親だが、こちらは反対に『息子が「完璧過ぎる」事が許せない』というより理不尽な理由である上に実際に暴力にも及んでいる。
鞍馬伊瑠美:脚本家が同じ作品のサブライダーの保護者で彼女は母親。尚、父親も登場しているが、そちらは伊瑠美よりは娘の意思を尊重している……が後に伊瑠美の毒親ぶりの裏に隠された悲惨な真実が明かされると同時に父親もまた一京とは異なる意味で”歪み”を抱えた人物である事が判明するも、最終的にその過去とトラウマや葛藤を超えて改心した伊瑠美そして鞍馬親子は本当の意味で家族になれた。