「あの娘はもう大人だ。自分の身は自分で守れるさ」(第11話)
演:笠原紳司
変身する仮面ライダー
概要
『仮面ライダーギーツ』の登場人物。
デザイアグランプリの参加者である鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴの父で、鞍馬財閥の社長。
赤いワイシャツに黒いベストを着こなしている。
落ち着いた物腰の男性で、過去に娘の祢音を誘拐されたトラウマから娘の身を案じて過保護に走る妻・伊瑠美と違い、ある程度は祢音の活動を容認している模様。それ故、妻との夫婦仲もそれほど良くないと思われる。
同時に、鞍馬家で彼女に意見を言える立場での人間であり、有無を言わさぬ口調に伊瑠美も口を噤んでいた。
DGPの運営であるツムリを邸宅に招き入れていたりと、色々謎が多い人物だったが、後にその正体はデザイアグランプリのスポンサーの一人であることが判明した。
活躍
謀略編
- 第10話「謀略Ⅰ:新時代のビート」
前シーズン(邂逅編)のデザイアグランプリにてリタイア扱いになった結果理想の願いを失い、母親に従順な令嬢になってしまった袮音に「本当に望むものは他にあるんじゃないのかい?」と問いかけ、追加招集のため変身ツール一式を抱えて訪ねてきたツムリを引き合わせ、再エントリーするように仕向ける。
- 第11話「謀略Ⅱ:ジャマトの迷宮」
伊瑠美にツムリが届けたミッションボックスの事を問われるもはぐらかす。
ベンとジョンから「祢音がまた家出した」と報告を受け、「すぐ連れ戻しなさい!」と命令する伊瑠美に「放っておきなさい」と記事冒頭の言葉を言い放った。
- 第14話「謀略Ⅴ:怒りのグレア」
祢音の頼みを受けたベンとジョンが、彼の部屋を調査。
その結果、彼の部屋からはIDコアが発見され、更にライダーだった頃の記憶を取り戻したベンとジョンによって、彼がデザイアグランプリのスポンサーである事が祢音に伝えられた。
- 第16話「謀略IR:キツネ狩り」
自身がスポンサーである事を利用した祢音の頼みを受け、ギロリがゲームに不正介入を行っている事を告発するべく、祢音をニラムに会わせた。
ギロリ失脚後は、ニラムやサマスと共に英寿達が勝ち残ったところを見届け、次に開催されるデザイアグランプリに期待する様子を見せていた。
「これからも楽しませてもらうよ。次元を超越した君達が生み出す世界を」
その後は妻の伊瑠美にデザグラのことを教えたりするなど娘の活躍を観ていたが、ベロバ率いるジャマト一派により想定外のことが起こる。
慟哭編
- 第25話「慟哭Ⅰ:ジャマトグランプリ♡」
デザイアグランプリを乗っ取られたばかりかジャマトと仮面ライダーの存在が広まりつつある現状に頭を悩ませていたが、ニラムの無責任とも取れる発言に「祢音の理想が叶っていない」と詰め寄った。
しかし。
ニラム「ならば貴方ご自身が、愛娘に本当の愛を注いでは?…注げませんか?女神の力で手に入れた一人娘に…」
「黙れっ!!」
何やら意味深かつ不穏な言葉に対し、かつてないほどの感情を露にした。
そしてニラムには「ならばせめて信じてあげてください。仮面ライダー諸君の活躍を。ひいては、愛娘の幸せを…」と返されるのだった。
祢音の出生に創世の女神が関わっているであれば、彼はデザ神経験者ということなのだろうか…?
もしくは、スポンサー特権で女神の力による恩恵を受けたのだろうか?
以下、『仮面ライダーギーツ』のネタバレにつき注意
- 第29話「慟哭Ⅴ:サプライズ!闘牛ゲーム♡」
11年前、本物の一人娘であった鞍馬あかりが誘拐された挙句に殺害され、妻は娘の死を受け入れられず精神を病んでしまう。
誰もが理想とする恵まれていた家族のはずが、一転して不幸な家族になるというこの現実に憔悴してしまった彼はデザイアグランプリのスポンサーになることへの対価として願いを提示した。
それが「私が理想とする娘・祢音が生きている世界」であり、これによりあかりの代用品として生み出されたのが鞍馬祢音だったのである。
- 第30話「慟哭Ⅵ:手紙の中の王子様」
祢音の秘密が暴露され荒れている所にキューンの訪問を受け、こうなるに至った経緯を明かす。
あかりの蘇生、およびそれに関する自身の記憶消去を願うことは可能だったが、あかりの死と同時に父親としての愛も失い妻以上に狂ってしまっていたがために「鞍馬財閥にとっての理想の娘」として祢音という存在をデザインした。
つまり、彼にとっての祢音は政略のための道具であり、デザイアグランプリ参加を容認していた理由も「未来人とのより深いコネクションを築くため」という経営戦略でしかなかったのである。
だが、”更なる企業の発展”を目指すだけならば、彼にとって祢音の家出配信といった活動を許容する理由は無い為、祢音に向けた愛情が皆無である、という事も考えにくい。亡くなってしまった一人娘への親としての愛情や喪失感は勿論、大企業の長としての社会的影響のリカバリーの模索、病んでしまった妻のケア、祢音自身に対する”自分のエゴで生み出した存在である”という事実への罪悪感や後ろめたさ……そういった様々な要因によって、新しい一人娘である祢音へどう接すればいいか本人もどうすればいいのかわからない、という状態なのではないだろうか。
- 第36話「慕情Ⅲ:かりそめの共闘」
自身の元を訪れたニラムからグランドエンドを宣告され唖然とするものの、「結局お前ら未来人にとって我々の時代は使い捨てというわけか…!」「次の時代に行って、新しいシーズンが開幕して、人の幸せと不幸を弄んで!」と詰問した。しかし、ニラムからは「幸せとは何か?」を問われた後、「きっと存在するはずです。あなたにとっての本当の幸せも…。」と返答された。
創世編
- 第39話「創世Ⅰ:俺のデザグラ」
ジャマト出現のニュースを見たことで、マスメディアにジャマトに関する情報が漏洩していることに気づき、政府高官へ電話を通して圧力をかけたが、彼からは「もはやあなたに従う必要は無くなった。」とデザグラ消滅を理由に要求を拒否され、更にはジャマトとの関連を疑われ、東京地検特捜部の家宅捜索を受けることとなった。
また、同話にてこれまでジャマトの情報が統制されていた原因の一つが光聖による政府への圧力だったことが判明し、グランドエンドを機にかつて立場が下だった政府に裏切られる形となった。
- 第40話「創世Ⅱ:タイクーン覚醒」
前話の家宅捜索を受け、東京地検特捜部からの取り調べを受けていることがテレビで報道されていた。
- 第41話「創世Ⅲ:漆黒の将軍」
拘留中となっていたところに娘・祢音が面会したため、彼女に向かって「お前がデザ神となり、キューンと結婚してれば、財閥はもっと繁栄していたはずなのに…。」「財閥の人間は誰も面会に来ない…、私は総帥だぞ!」と自身の野望が叶わなかったこと、財閥の人間からも見放されたことへの苛立ちをぶつけるが、娘から「あなたにそうする価値がなかったからじゃないですか?」と一蹴された。
そして、唯一面会に来た娘に縋り、「今の俺にはお前しかいない…、俺をここから出せ!」と頼み込むが、その情けない姿を見た娘から「かわいそうな人…。」となじられた。
取り戻す娘への愛
- 第43話「創世Ⅴ:その名はギャーゴ!」
景和の願いにより世界が作り変えられた直後、仮面ライダーターボン率いるギャングライダーズが拘置所を襲撃したことで意図せず拘留を解かれたものの、保釈金を巻き上げようとしたターボンに暴行されそうになったところを駆け付けた祢音に助けられその場を逃れる。
その後、月命日の近いあかりに供える花を購入してから別れたが、その際に「あかりに関する記憶を消さなかったのは、父親としての愛が残っているから」と、自身の本心を看破された。
だが、あかりの誘拐殺人の犯人である沼袋一男から再び「誘拐した祢音の身代金3億円を持って、11年前の現場に来い」という脅迫状が届き、伊瑠美と共に自分たちと娘のこれまでを顧みることに。
動機こそ喪失感を埋めるためのエゴに満ちたものだったが、11年間育てた記憶の中に祢音を愛している想いもあったこと。本当の愛を与えるべきだった娘が「誰かを愛する心」を手に入れていたこと、あかりの代用品でも財閥の道具でもなく、もう一人の娘であったことを……。
そして、今のデザグラの運営責任者である英寿とコンタクト。「祢音の意志が正しいのなら、この私であろうと幸せになる権利はあるはずだ」と己の意志を示し、土下座をしてまで英寿に頼み、「理想の世界」のためにデザイアグランプリにエントリーする。
『ENTRY』
「祢音は……娘は私が守る!」
『SET』
「変身! ……うぉおおおおっ!!」
『FANTASY』
『READY FIGHT』
デザイアドライバーと専用IDコアを取得すると、沼袋のもとに殴り込み仮面ライダーギャーゴに変身、沼袋/仮面ライダーブラーリとベロバ/プレミアムベロバと交戦する。父親として二人目の娘を守るために一人目の娘を奪った相手に戦いを挑むその姿は紛れもなく真の父親にして仮面ライダーであった…。
- 第44話「創世Ⅵ:ネオン、かがやく」
祢音を守るために必死に戦い抜き、満身創痍になりながらも「ファンタジーストライク」でブラーリを撃破。娘の抱擁によりかつての娘・あかりとの思い出を懐かしみながら、ホッと一安心したかのように倒れ込み、気絶した。
その後、病院に搬送されて手術の末何とか一命を取り留め、病室にて娘にこれまでの言動に対する誠心誠意の謝罪を行い、彼女にギャーゴのコアIDを託した。これが英寿の「創世の力」でナーゴのコアIDへと変換されたことで、祢音にエントリー権を譲渡する形で脱落となった。
- 第48話「創世Ⅹ:ツムリの鎮魂歌」
祢音の要請により、自身も「DGP運営に加担してしまった罪を償う」ため、「自分の幸せを守る」ために彼女に賛同。状況の打開のため、2人で一部のVIPオーディエンスに対して「このままスエル側に着いていれば身の安全は保障できない」「未来に帰るならば我々鞍馬財閥が安全を保障する」と提案し、一部のVIPオーディエンスを未来に帰らせることに成功。仮面ライダーリガドΩの弱体化に貢献した。(景和の世界で拘置所から解放されたのだが、そのまま世界が戻った後の彼の扱いがどうなっているかは現状不明。拘留期間を終えて保釈された可能性もありうる。)
- 最終話「黎明Ⅰ:ここからがハイライトだ!」
光聖本人は未登場だが、英寿を祀った神社に彼と伊瑠美が書いたと思われる絵馬が吊るされており、そこには「娘の幸せ。夫婦円満。」と書かれていた。
本当の愛を取り戻した今、鞍馬家の幸せはこれからも長く続いていく事だろう。
新生デザグラにて、恐らくは英寿にコアIDを新造されたことでナーゴの助っ人としてギャーゴに変身して登場。ただしアームドシールドでの変身である。肩の荷が降りたからか子煩悩な場面やひまわりジャマトへの礼儀正しさを見せる場面など、本編よりもコミカルな様子が見受けられた。
余談
- 演者の笠原氏は『未来戦隊タイムレンジャー』にて滝沢直人/タイムファイヤーを演じており、仮面ライダーシリーズへの出演は『仮面ライダーアマゾンズ』の藤尾隊長役以来となる。また、第43話にてギャーゴに変身したため、約23年振りにヒーローへの変身を果たしたことになる。
- 変身ポーズも“腕を大きく広げる”というタイムファイヤーを想起させるポーズが取り入れられている。
- また直人が「自身の欲のために力を使った」のに対して、光聖は「娘のために力を使う」という対照的な形になっている。
- 目の動作が名前の由来になっているデザグラの関係者だが、
- 第29話で彼が事故現場に献花した白いチューリップの花言葉は『失われた愛』『新しい愛』の意味合いが込められており、第29話を担当した杉原輝昭監督のチョイスである。また本数が7本なのは恐らく当時のあかりの年齢に合わせたものだと思われる。
- 第41話での娘・祢音からの「かわいそうな人」発言は、同話監督の坂本浩一監督が以前メイン監督を担当したウルトラマンジードの第12話で、メインヴィランである伏井出ケイが主人公・朝倉リクから同じようになじられるシーンのセルフオマージュとなっている。ちなみにリクは祢音と同じように人工的に作られた存在だったという共通点がある。
- 第43話で英寿に語った願いの内容は、劇中では飛行機の音にかき消されていた(字幕でも「(飛行機の音)」表記)が、仮面ライダー図鑑にて「鞍馬祢音の幸せ」と言っていたことが明かされた。
関連タグ
神崎士郎:肉親が死んだ事を受け入れられず仮初めの命を与えた点が共通する。ただし、こちらは妹。
笛木奏:平成二期第4作目のメインヒロインの父親。娘を亡くした過去を持つ、娘を自らの手で蘇らせた、娘を守る為に魔法を使うライダーに変身する、俳優が別のライダー作品にゲスト出演している等の共通点がある。ただし、彼は黒幕で改心する事なく退場した。