“闇の帝王へ
あなたがこれを読むころには、私はとうに死んでいるでしょう。
しかし、私があなたの秘密を発見したことを知ってほしいのです。
本当の分霊箱は私が盗みました。
できるだけ早く破壊するつもりです。
死に直面する私が望むのは、あなたが手ごわい相手にまみえたそのときに、もう一度死ぬべき存在となることです。
R・A・B”
注意
- レギュラスのみのタグ付けの作品が多いが、特に拘りがないのであれば、レギュラス・ブラックとタグ付けするのが検索の利便上好ましい。またフルネームはレギュラス・アークタルス・ブラックだが、「レギュラス・ブラック」とタグ付けされることが多い。
- 本記事には、『ハリー・ポッターシリーズ』の終盤のネタバレが多く含まれる。
プロフィール
人物 | |
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Name | Regulus Arcturus Black
|
誕生 | 1961年……誕生日不明 |
死亡 | 1979年……命日不明(享年18歳) |
死因 | 分霊箱(スリザリンのロケット)が隠された洞窟で毒薬を飲み亡者(インフェリ)に湖に引き摺り込まれ溺死 |
種族 | 人間・魔法使い・白人・イギリス人 |
血統 | 純血・聖28一族・ブラック家 |
家族 |
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生家 | イギリス・イングランド、ロンドン、イズリントン地区、グリモールド・プレイス十二番地 |
婚姻 | 未婚 子供無し |
ペット | 不明 |
所属 | |
出身校・出身寮 | ホグワーツ魔法魔術学校 🟢スリザリン寮 |
在学中の地位など | |
組織 | 死喰い人→離反 |
魔法 | |
杖 | 詳細不明(ギャリック・オリバンダー製と思われる) |
守護霊 | 無し(原作者のコメントから判明→リンク(英語)) |
技能 | 詳細不明 兄シリウスに及ばないところがあるが非常に賢い |
容姿 | |
眼の色 | 不明(兄シリウスは灰) |
髪の色 | 黒 |
概要
『ウィザーディング・ワールド(魔法ワールド)』の人物。魔法使いの男性。
『ハリー・ポッターシリーズ』の本編開始前に死亡している。
フルネーム、レギュラス・アークタルス・ブラック(Regulus Arcturus Black)。
第5巻で「死喰い人に加わったが怖気つき、逃げ出して始末された」シリウスの弟として名前が初登場。第6巻ではホラス・スラグホーン教授の写真に写っていた。
その後、第7巻で謎の人物「R・A・B」の正体であること、そして真の死因は別にあることが明らかになる。
来歴・人物
小さな王様
1961年生まれ。
聖28一族であり、英国魔法界の王族を称する純血名家ブラック家の出身。異質な存在であった兄のシリウスと違い、家族に期待されていた。
ホグワーツ魔法魔術学校在学中は伝統通りスリザリン寮に所属し、スリザリンクィディッチチームのシーカーを務めた。またスラグホーンの口ぶりからスラグ・クラブのメンバーだと推定できる。
外見についてはシリウスと似ているが、兄の方が背も高くハンサムであるらしい。能力についてもシリウスの方が高かったようだ。
ブラック家の家風に漏れず純血主義者だが、虐げられていたハウスエルフのクリーチャーを家族として大切にし、決して見下さなかったことから、ブラック家や他の純血主義者、そうでない魔法使いとも一線を画した見識を有していたようだ。(ブラック家では、ハウスエルフが年老いてお盆を持つことが出来なくなると首を刎ねて飾る風習すらあった。また、そこまで行かなくとも多くの一般的な魔法族にとってハウスエルフは敬意を向ける対象ではない。)
少年時代からヴォルデモート卿の熱烈なファンだった。闇の帝王の活躍が新聞に掲載される度に記事をスクラップして収集していた。そして、まだ学生である16歳前後で死喰い人に加わる。レギュラスも両親も、それを栄誉なことだと考えていた。
この頃既に兄シリウスは家出し家族と絶縁済み。おじのアルファード・ブラックやポッター家の援助の元一人暮らしをしていた。次男であるレギュラスが実質的にブラック家の当主となったわけである。
最も暗い星
ある時、ヴォルデモートがレギュラスにハウスエルフのクリーチャーを借りたいと言い、レギュラスはそれを名誉ある事だとしてクリーチャーにヴォルデモートに従うように命令する。その時にクリーチャーに「必ず帰ってくるように」と命令していた。
そしてヴォルデモートはクリーチャーを洞窟に連れて行き、毒薬を飲ませて放置するという過酷な仕打ちを行う。ヴォルデモートはハウスエルフを見下し無関心であったため、彼らが杖無しで魔法を使う事も、ましてや魔法使いが姿現わしできない場所でもハウスエルフなら転移が可能であり、クリーチャーが逃げ出せることすら考慮せずそのまま死ぬと思い放置した。しかしクリーチャーは姿現わしによる空間移動魔法で命からがら逃げ出し、レギュラスに与えられた「必ず帰る」という命令を果たしたのだった。
クリーチャーから全てを聞いたレギュラスは忠誠を誓っていた主の本質に激しく失望し、裏切ることを決意。最後の抵抗としてヴォルデモートの分霊箱であるスリザリンのロケットペンダントを、ブラック家の家宝のロケットとすり替えるために動く。
案内のもと洞窟に辿り着き、分霊箱が沈められていた水盆の毒液を飲み干した。その後盆の底から取り出したペンダントをクリーチャーに託し、一人で帰る事とペンダントの破壊を命令する。そして毒により衰弱し幻影に苦しめられながら、インフェリ(魔法で操られた死屍)たちに襲われ、水中に引き摺り込まれて死亡した。
最後に、ブラック家の家宝のロケットの中に「RAB」のイニシャルと共にヴォルデモート宛てのメモを残す。(本記事の冒頭参照) ヴォルデモート卿が強敵と対決するその時に、もう一度死ぬべき存在になることを願い、人知れずレギュラスは水の中に消えた。
獅子座の心臓
レギュラスは自分の裏切りによって家族やクリーチャーに被害が及ばぬようにと事実を隠していた。
そのため、「闇の陣営にある程度まで入り込んだものの恐れをなして身を引こうとした。ヴォルデモートの命令を受けた他の死喰い人に始末された」という認識が一般的となった。故にリーマス・ルーピンからはその死を揶揄され、兄のシリウスは「愚かな弟」と述べた。
兄であるシリウスほどの魔法の才能はなかったと作中では再三に渡り評されている。
彼の死が死喰い人に手によるものとされているのも「弟はヴォルデモートが直接手を下すには小物過ぎた」という理由からである。
しかし、作者によればレギュラスは非常に賢い魔法使いであったという。
レギュラスはヴォルデモートが己が不死を確信している姿から、ヴォルデモートが魂を切り分けたという事実に独自に辿り着いていた。それによって洞窟に隠されていたものの正体を見破っていたのだという。単独でその事実に辿り着いていたのはアルバス・ダンブルドアとレギュラス・ブラック以外にはいなかった。
結局レギュラスのすり替えを知らなかったためにダンブルドアとハリーの洞窟での戦いは本来の目的を遂げられず終わったわけだが、紆余曲折を経てハリーたちは本物のロケットを発見し破壊することに成功した。レギュラスが残した偽のロケットは、形見としてクリーチャーに渡された。(破壊を命令されたのに破壊されていない理由は、単純にクリーチャーには破壊する手段が無かった為である。それ故に自分の果たせなかった最後の命令を代わりに果たしてくれ、肩身のロケットを渡してくれたハリーにはそれまでの態度を一変させ心を開いてくれる様になった。)
最終的に一連の真実を知ったハリーたちの手で名誉は回復されたようで、スリザリン出身の偉人として、その談話室にホラス・スラグホーンと並んで肖像画が設置された。(セブルス・スネイプの肖像画はハリー・ポッターの働きかけで校長室に設置される予定である)
レギュラスはセブルス・スネイプと並んだスリザリンの影の英雄であり、闇との戦いに殉じた。レギュラス(レグルス)には「獅子座の心臓」の意味がある。これは、レギュラスはスリザリン寮ではあったもののグリフィンドール寮に選ばれた兄のシリウスに負けない程に勇敢であったことを示している。レギュラスはグリフィンドールの方が相応しいという単純な話ではなく、獅子と蛇はまさしく表裏一体であるーー方向性や手段は異なるだけで、どちらも根底に愛や勇敢さを秘めているーー事実を示唆しているのだ。
作者曰く「彼の真実をシリウスが知ったなら、評価を改め、弟を誇りに思うだろう」とのこと。
名前
ブラック家の人物の大半は「天体や星座およびギリシア神話に由来する名前」という命名法則を持ち、彼のファーストネームとセカンドネームはそれぞれ星の名前に由来している。
レギュラスはしし座α星「レグルス (Regulus)」を指し、ラテン語で「小さな王」の意。
アークタルスはうしかい座α星「アークトゥルス(Arcturus)」に由来し、ギリシア語で「熊を護るもの」の意味。大熊のすぐ後を追いかける星である。
レギュラスは大叔父(父方の祖父の弟)であるレギュラス一世に、アークタルスは父方の祖父であるアークタルス三世に由来する。そのためレギュラスは家系図的にはレギュラス二世となる。
レギュラスの名前の由来である星を要する星座、しし座は勇敢さを連想させ、リチャード1世の異称である獅子心王(ライオンハート)からも連想できる通り「勇気」の象徴である。また、レグルスは最も暗い一等星である。そして、最も明るい一等星はシリウスである。
余談・裏話
類似した人物たち
「一族がスリザリンの家系」「実家は歴代純血魔法族で名家」「スリザリンのクィディッチチームのシーカー」「16の若さで死喰い人に加わる」等、経歴には従甥(従姉の息子)ドラコ・マルフォイとの類似点が多い。
また、「実家が歴代純血魔法族で名家」「家族に期待されていた」「しもべ妖精と関わりが深い」「クィディッチが好き」「若くして死喰い人になる」「最後は異形の化け物に襲われて生き絶える」等、バーテミウス・クラウチ・ジュニアとも類似点が多い。
(二人は死喰い人としての活動期間も被っていた、あるいは入れ替わりだった可能性がある)
そして、スリザリン出身でありながら死喰い人から離反し、勇気を見せた点でセブルス・スネイプと似ている。
二次創作と人気
物語開始の数年前に既に逝去しており、更に過去が語られたのも7巻(最終巻)であるため、作中の登場は皆無に等しい。本人の直接のセリフもない。
そのためシリウスとクリーチャーから語られるわずかな情報からその人物像を推測するしかないが、原作ファン、特に女性から高い人気を得た。海外でもReg(レグ)、Reggie(レジー)といった愛称で親しまれている。
8月23日はレギュラスの日とされ、彼を悼む作品が多く投稿される。
元々マルフォイ家やトム・リドルをはじめとしたスリザリンのファンは一定数存在したが、ヒール役としてのコアな人気にとどまっていた節がある。それが近年においてアンチヒーロー、ダークヒーローとしての蛇寮人気が一般にも広がった。これには最終巻におけるレギュラス(そしてスネイプ)の活躍が大きい。
日本における二次創作では、「やや長めの黒髪で前髪が長めで童顔の美少年(あるいは美青年)で、普段から敬語で話す」というキャラクターが二次設定として広く定着している。
兄シリウス・ブラックとの謎が多い関係(黒兄弟と二次創作界では呼ばれる)や、死喰い人の同胞だったセブルス・スネイプ、ルシウス・マルフォイ、バーテミウス・クラウチ・ジュニアとの関係が想像、創作されることが多い。
原作のわずかな記述からファンの間で共通のキャラクター性が生み出され愛されたことから、2023年には公式だと思ったらオタクの集団幻覚だった選手権のグランプリを受賞した。
映画版
映画版の演者はトム・ムアクロフト……なのだが、スラグホーンの写真のシーンでの一瞬だけの登場であり、ほとんど顔は写っていない。また、肝心の7巻のレギュラスの死の真相をクリーチャーが語るシーンも映画ではカットされている。
このように映像化には恵まれていないが、それがかえって前述の二次創作での人気に貢献しているようだ。