概要
中国人民解放軍(簡体字中国語:中国人民解放军、英語:People's Liberation Army)は、中華人民共和国の事実上の国軍。国家中央軍事委員会の指揮に服する3つの軍事組織である中華人民共和国武装力量のうちの1つで、他の2つは中国人民武装警察と中国民兵である。唯一の正規軍で、国軍であると同時に党軍である。兵員は基本的に志願制で、志願者である兵士には各種の特権が付与される。中国は選抜徴兵制が実施されているが、志願兵のみで充足している。
軍の立場
中国に存在する唯一の正規軍だが、本来なら中国軍という表記は誤った呼称で、これはこの部隊が党の配下にある軍隊だったからである。この視点で見れば暴動を鎮圧するのも当然の任務である事は明らかで、つまり党を守る事も中国人民解放軍の任務なのである。ちなみに中国軍と表記されないのは、今も台湾島を実効支配している中華民国政府の軍と区別する為という側面もある。
しかし中国人民解放軍は鄧小平の軍事改革で国家中央軍事委員会の配下に編入され、以降は名実共に国家の軍隊となっている。ただし国家中央軍事委員会は党中央軍事委員会と構成員は同じなので、党の指導下にあるという状況は変わらない。
歴史
1927年8月に南昌起義という武装蜂起が発生した時に創設された後、各地にあった紅軍を纏めて第2次国共合作で中国国民革命軍第八路軍・国民革命軍新編第四軍となった後、1947年10月に中国人民解放軍に改称された。軍の徽章は赤と黄色の星に黄色の文字で八一・軍旗は赤地に黄色で星と八一の文字があり、この文字は空軍の曲技飛行隊・軍のスポーツチームなどに象徴的な名称として利用され、公式サイトのURL(www.81.cn/)も同様である。
機構
軍種 | 特徴 |
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中国人民解放軍陸軍 | 大陸国である中国に於ける主力軍種で、2020年12月までに陸軍全般の機械化を達成した。 |
中国人民解放軍海軍 | かつての沿岸防衛軍から脱却し、2040年までに西太平洋でアメリカ海軍と同等のプレゼンスを確保する事を目指している。 |
中国人民解放軍空軍 | 5200機以上の軍用機と大規模な空挺部隊を有する。 |
中国人民解放軍ロケット軍 | 2015年12月までは第2砲兵隊という名称であった。 |
中国人民解放軍戦略支援部隊 | 宇宙・サイバー空間などでの防衛任務を担う。 |
中国にはこの他の軍事組織として中国人民武装警察(武警、中国海警局を含む)、中国民兵(海上民兵を含む)があり、人民解放軍・武警・民兵の3つをまとめて武装力量と呼称している。
各軍の動向
陸海空ともカタログスペック上は西側・ロシアと遜色無い国産兵器を揃え、最新兵器の増備を続けている。現在ではアメリカ軍に次ぐ世界第2の勢力に成長していると考えられている。
陸軍
かつては「人海戦術」が基本戦術で400万人にものぼる現役兵員数を擁したが、近代化に伴い段階的に削減され、2020年の現役兵員数は97万5000人。第3世代主力戦車の99式戦車を1000両以上、第2.5世代主力戦車の96式戦車を2000両以上配備している。旧式の59式戦車・69式戦車・79式戦車も2019年時点でまだかなりの両数が存在するが、96式および99式の配備と並行して削減が進められている。
海軍
1998年3月にウクライナから空母「ヴァリャーグ」を取得し、2012年に「遼寧」として就役させた。以降、「山東」を皮切りに国産空母を矢継ぎ早に就役させ、外洋海軍への脱却を急ぐ。潜水艦は原子力潜水艦と非大気依存推進攻撃潜水艦の両方を並行して配備しており、他のどの国よりも多くの艦を建造している。さらに台湾の武力併合が可能となる実力を目指して揚陸艦の増備を急いでおり、主要3軍種の中で最も軍拡が著しい。
空軍
Su-27のコピー型であるJ-11シリーズは300機以上保有しており、これは日本・韓国の新鋭機であるF-15保有機数を凌駕している。空軍が用いる兵器(戦闘機など)の取り引きにおいては完成した機体を購入する時代は終わり、エンジン・レーダーなどのような装備単位で買う段階になったと言われており、その象徴がJ-10である。これは独自開発した機体であり、西側のコードネームであるヴィゴラス・ドラゴン、ハイ・ロー・ミックスに用いる低価格機で、F-16に当たる機体である。