岸辺露伴は動かない
きしべろはんはうごかない
これからここに紹介するエピソードは
その時にこの岸辺露伴が偶然取材した不思議な話であり
『実際にこの耳で聞いた』恐怖の出来事なのだ
概要
第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場する漫画家、岸辺露伴が語り手となる外伝シリーズ。一話完結型で、それぞれ独立した短編のエピソードから成る。
原作を露伴が手がけ、作画を荒木飛呂彦が担当した、という設定になっている。
また本作のスピンオフ作品として、短編小説集『岸辺露伴は叫ばない』『岸辺露伴は戯れない』『岸辺露伴は倒れない』がある。
あくまで露伴は主人公ではなく「事件の目撃者」であり、解決に奔走することはあまりない。そのため、岸辺露伴は『動かない』話なのである。
ジョジョシリーズの外伝というよりは、作者が形にしてみたいアイディアを漫画にする際の便宜的な主人公(語り手)として岸辺露伴を採用しているだけの実験的な短編シリーズと言った趣が強い。また、エピソードのナンバリングは時間系列通りとは限らない。作品間の時系列やジョジョシリーズとの設定の整合性等には細かくこだわらず、あえて曖昧にしているようである。
例えば、第1話にあたるエピソード16『懺悔室』は第4部の裏で起こった話であることが示唆されていたが、その後のエピソードでは小林玉美と音石明そっくりな男にサインをねだられるシーンや、『東方一族の私有地だ』という台詞が出てきており、舞台が第8部の世界=第7部以降の世界であるとも、第4部とも第8部とも違う世界であるとも解釈できるようになっている。
玉美や音石の他にも第4部のキャラクターがゲスト的に登場するが、「リーゼントで学生服の男」はなぜか顔が映らない。露伴の周りにいるそんな格好の男と言えばまず東方仗助だが、はっきり彼であることが示唆されないあたり、第4部の世界そのものではないことを示唆しているとも解釈出来る。同時に連載中だった「ジョジョリオン」で東方定助、吉良吉影、空条仗世文らについてのミステリーが展開中という状況もあったからかもしれない。
沿革
長らく、1997年に第1話『懺悔室』が発表されたっきりの単発スピンオフとして知られていたが、それから実に11年の間を開けて2008年に『六壁坂』が発表され、ファンを歓喜させた。
そして2011年の『グッチへ行く』以降は発表ペースが飛躍的にアップし、ほぼ1年に1本の新作が掲載されるようになったほか、単行本やメディアミックスも展開されている。
2013年、それまで発表された作品をまとめた単行本が発売された。
2016年、OVAとして『富豪村』が初のアニメ化。第4部アニメのDVD・BD-BOXに特典として収録された。
2018年には単行本第2巻が発売。さらに『六壁坂』のOVAが特別版に同梱された。
2019年にはさらに、新作OVAとして『懺悔室』『ザ・ラン』が制作された。
これらのOVA4作は現在、NETFLIXが独占配信している。
2020年、後述の通りNHKによる実写ドラマ化が実現。2024年までに9話が放送されている他、2023年にはアスミック・エースによって『ルーヴルへ行く』が実写映画化された。なお、これ以前にワーナーブラザーズによって第4部の実写映画が制作されたが、こちらとの関連はない独立した実写化である。
エピソードリスト
一覧
単行本1巻収録
単行本2巻収録
「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」
漫画家としてデビューする前、露伴は2ヶ月間祖母が経営するアパートに厄介になる。
そこで共に暮らす藤倉奈々瀬から、彼女の故郷の地主の家からルーヴル美術館へと買い取られていった「この世で最も黒く、最も邪悪な絵」の話を聞かされる。
ルーヴル美術館のバンド・デシネプロジェクトの依頼により制作された。
単独で単行本化、フランス語版有り。
「エピソード#10 ホットサマー・マーサ」
2022年3月19日発売のJOJO magazine 2022 SPRINGに掲載。
とある神社のご神木を覗いた露伴は、帰宅後に3か月の時間が過ぎている事に気付く。
「エピソード#11 ドリッピング画法」
2022年4月19日、5月19日のウルトラジャンプに掲載。本シリーズでは初となる、前後編構成。
主婦の村瀬美月は浮気の後、娘を幼稚園に迎えに行くが、1台の車が執拗に後をつけてきて……。
OVA化
2020年に︎ジョジョ本編のTVアニメシリーズと同じくdavid productionがOVAアニメを制作した。「富豪村」「六壁坂」「懺悔室」「ザ・ラン」の四遍をアニメ化し、下記実写ドラマ第2期の放送に合わせてTV放送された。キャスト・スタッフは一部を除き続投。
詳細は【ジョジョの奇妙な冒険(アニメ)】を参照。
実写ドラマ化
2020年よりNHKが制作・放送。現在第3期まで放送。実写映画「ルーヴルへ行く」も公開済み。2024年5月10日にNHK総合にて第4期が放送予定。主演は高橋一生(岸辺露伴)、飯豊まりえ(泉京香)。
詳細は【岸辺露伴は動かない(実写版)】を参照。
余談
元々は『週刊少年ジャンプ』1997年30号の「ジャンプリーダーズカップ」に当時連載中のジャンプ作家10名がそれぞれ読切を描くこの企画で、当初担当編集から執筆の際に「スピンオフや外伝としての作品は禁止」とされていたので露伴がいないバージョンで描かれていたのだが、「狂言回し」としてのキャラクターが欲しくなり露伴を据えた『懺悔室』が掲載されたことでこのシリーズが誕生した。
荒木「ドジャーン。スピンオフが出来ちゃいました(笑)。」
pixivでは主にタグよりも露伴の作品タイトルになっている事が多い。
そのため、作品によっては「岸辺露伴は動かないシリーズ」に関係のない作品にも使われる。
また、応用の利きやすいタイトルのためか、「岸辺露伴は○○」 「○○は動かない」など様々なバリエーションが存在する。
公式の英語版タイトルは"Thus spoke Kishibe Rohan"。
これはドイツの有名な哲学者ニーチェの代表作『ツァラトゥストラはかく語りき』の英語版タイトルをもじったもので、上記の英題は『岸辺露伴はかく語りき』といった感じの意味になる。
「岸辺露伴はあくまで語り手であり、主人公ではない」という本作の基本ルールをよく表しているネーミングと言える。
青山剛昌は岸辺露伴を探偵として見ており、名探偵コナンの単行本カバーの折り返しに付属している青山剛昌の名探偵図鑑の101番目の人物として青山剛昌書き下ろしの岸辺露伴のイラストが描かれた。尚、青山剛昌のお気に入りエピソードは「富豪村」。
日テレ系バラエティ番組『ぐるナイ』の不定期コーナー「誰ダレ?コスプレショー」でしょこたんこと中川翔子が岸辺露伴のコスプレを披露。芸能界のオタク女王の超本気度高めなコスプレに両方のファンからは大絶賛を受けたが、当の本人はジョジョ立ちに気合いを入れすぎて決めゼリフの「だが断る」を言い忘れてしまったそうである。