曖昧さ回避
- 文字通り密漁が起こっている海岸のこと。
- 漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の外伝作品『岸辺露伴は動かない』のエピソードの1つ。本項で解説。
概要
『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するキャラクター「岸辺露伴」を狂言回しとしたスピンオフ作品である『岸辺露伴は動かない』に収録されているエピソードの1つ。
週刊少年ジャンプの2013年46号に掲載され、1つ前のエピソードである『富豪村』は2012年45号に掲載された。
WJ読者にとっては第7部「スティール・ボール・ラン」1stステージ以来の久々のジョジョ関連作品だっただろう。
本作の舞台となる「ヒョウガラ列岩」は、第8部「ジョジョリオン」の杜王町においても存在が確認できる。また、本作の露伴の台詞の中で「東方一族」という言葉が出てくる等、本編との繋がりが示唆されているかのような描写もある。
あらすじ
杜王町でイタリア料理店を営む一流の料理人にしてスタンド使いのトニオ・トラサルディーは、不治の病に冒されている恋人のために、杜王町でしか獲れないクロアワビを使った料理を食べさせてあげたいと考えていた。だが、貴重なクロアワビを漁師は売ってくれない。もちろん盗むことは重罪である上、非常に困難だ。
そこでトニオは露伴にアワビ獲りの協力を依頼する。彼の心意気に胸打たれた(?)露伴は、トニオと共に夜の暗い海へと繰り出していく……。
実写版
2021年に実写版『岸辺露伴は動かない』の放送が終了した直後、同作のあまりの完成度の高さから、「海中でアワビと格闘する高橋一生が観たい」というファンが多数現れ、遂にはなぜか放送されなかった筈のこの「密漁海岸」がTwitterのトレンドに入るという珍事が起きた。
ドラマ版(および映画版)の監督を務める渡辺一貴氏は上記の反響に対して「いつかはトライしたいものではありますが(笑)」と発言していたが……。
NHKドラマにて密漁海岸が放送されることが2024年4月1日に発表された。
NHK総合では5月10日の午後10:00から、BSP4Kでは5月5日の午後1:00から放送された。
それに合わせる形で映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』及びドラマ第3期「ホットサマー・マーサ」「ジャンケン小僧」の2話がTV放送された(『ルーヴルへ行く』はTV初放送)。
原作の密漁海岸だけでなく、トニオの人物を紹介するために第4部の『イタリア料理を食べに行こう』の内容も組み込まれており、原作エピソードでの東方仗助と虹村億泰の役回りは露伴と京香双方に割り当てられている。
同年5月18日には、露伴とトニオが密漁に行っている間の京香のエピソード「もうひとつの密漁海岸」がAmazon primeで独占配信された。
余談
氏が『荒木飛呂彦の漫画術』内で語ったところによると、元々は食べ物で戦う話を構想していたところ、当時ブームになっていた『あまちゃん』の漁風景を視聴したことや、お参りした神社で熨斗として奉納されていた鮑を目撃したことで、「神さまの食べ物」である鮑と戦う話を思いついたらしい。
2021年の実写版放送時におけるトレンド入りの際には、海中での戦闘シーンというかなり難しい問題(さらに、予算も限られ、極力CGを使わない本作において人間に襲い掛かるアワビをどう表現するのかという問題も)に加え、そもそもNHKが密漁という違法行為を推奨するかのようなエピソードを扱えるのかという放送倫理上の問題もあったことから、実写化は難しいのではないかという指摘もあった。
だが、渡辺監督によれば2024年の実写ドラマ版制作にあたって、2021年時点では「まだ岸辺露伴を知らない人がいる中で描くにはハイブローなエピソード」だとして見送られ、『ルーヴル』後に「これまでのエピソードを積み重ねてきた結果、今ならできるのではという手応えがチーム全体に生まれた」のだという(ハイブローは一般に「教養がある」の意味だが、ここでは「岸辺露伴という常識を逸脱したキャラクターについて視聴者に理解されてきた」の意味か)。
上記の通り難しいのではと心配されていた水中シーンについては、記者会見にて監督が「ブルーバックで撮影したりということは一回もしていなくて、基本的には露伴先生の水中のシーンはリアルに水中でお芝居しているということになります」とほとんどCGを用いず撮影したことを明かしており、BS4Kでの先行放送直前に行われた露伴役の高橋一生のインタビューでも高橋は実際に自分が水中にもぐって演技をしたことを認めている。
また、「密漁を推奨するような内容になりかねないのではないか」という指摘についても、ラストの展開に手を加え、結果的に密漁を達成しなかったことにすることで、そうした懸念の声を払拭している。
また、露伴の体にクロアワビが取り付き溺れているシーンでは、能「阿漕(あこぎ)」が謡われている。この能は、密漁して溺れ死後も苦悩に苛まれる男の話であり、実によくマッチしている。また、『法華経』方便品も謡われており、露伴が助かるイメージからだそう。