曖昧さ回避
- 英語圏の、最初に誰が死ぬかを当てるゲーム。区別の為に「デッド・プール」と表記されることがある。
- そのゲームを主題としたクリント・イーストウッド主演の映画。邦題は『ダーティハリー5』。→Wikipedia
- MARVELコミックのキャラクター、デッドプールの英語表記。
- 彼を主役とした2016年公開のスーパーヒーロー・コメディ映画。本項で解説
概要
MARVELコミックのヒーローチーム「X-MEN」を中心とした実写シリーズのスピンオフ。
本国アメリカでは2016年2月12日、日本では同年6月1日に公開された。
異色のヒーロー:*デッドプールを主役に、己の復讐に突き進み、愛する女性との幸せを取り戻すべく大暴走を繰り広げるさまを、掟破りのパロディネタを織り交ぜつつ、過激なバイオレンス描写と下ネタジョーク満載に描くスーパーヒーロー・コメディ映画。
ゴア表現や性描写、強烈な下ネタなど、過激なシーンを多く含む作品であるため、一部の予告編では視聴に年齢制限が設けられている。また、映画そのものもR15+で公開というヒーロー映画としては異例の事態になっている(ちなみに日本でもPG-12指定のヒーロー映画が公開された前例はある)。
主演はライアン・レイノルズ。
彼の出世作であり、同時にその後のハリウッドのスーパーヒーロー映画にも少なからず影響を与えた問題作でもある。
特徴
20世紀フォックスによる『X-MEN』シリーズはコミック版からの大胆なアレンジや設定変更が多いが、本作および後述する続編ではデッドプールをはじめキャラクターの多くが比較的忠実もしくはそれに近いデザイン。
例えばコロッサスは、過去に登場した『ファイナルディシジョン』では比較的スリムで金属化の任意が可能だったのに対し、筋肉質の大男・常時金属の身体となっている。
ライアン・レイノルズは同じスピンオフの『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』から続投(というより本作を見越しての起用らしい)だが、ファンから黒歴史扱いされるほどコミックとの乖離が凄まじかった同作から一転、恰好はもちろん、どこか捻くれたユーモア溢れる性格や「第四の壁」を無視した中の人ネタやライバルといえるMCUを揶揄したネタが主のメタ発言など、忠実な描写がなされている。
(ただし精神異常者としては描かれておらず、性格は割とまとも。このあたりは社会的な情勢を考慮したものなのかもしれない)
なお『ZERO』の設定はなかったことになっている。
<どうしてそうなったかって?『フューチャー&パスト』見直そう。
制作
本来は2012年に撮影開始予定だったが、交渉がなかなかまとまらなかったため、製作開始が大幅に遅れることとなった。
当時は、MCUが軌道に乗り始め、マーベル映画でもアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーといった正統派のヒーローが人気を博していた。一方の『X-MEN』シリーズも、この頃既に大分苦しい状況にはなっていたものの、まだ新作を作るだけの余力は残されており、同時並行して新作の制作も進められていた。
対して、デッドプールは原作に忠実に描こうとするとどうしてもお下劣な下ネタや残虐描写が避けられず、R指定での公開は免れなかった。そんな映画を作ったところで到底ヒットするわけがないと当時のMARVELや配給元の20世紀フォックスはレイノルズの申し出を突っぱねたのである。
一時は企画がお流れになる危険性もあったらしいが、テスト映像がリークされてネット上に公開されてしまったたことがきっかけで、ファンの間で「遂にデッドプールの実写版が製作されるのか!?」と大きな話題となり、製作への機運は最高潮の状態に。
ここに来てようやく実写映画へ向けた動きが本格化することとなったのだった。
(…ちなみに、これに関してもレイノルズ若しくは彼に近しい人物がわざとネット上に動画を公開したのではないかという疑惑の声があったりするが。)
しかし、それでも与えられた製作費はたったの5800万ドル。数億ドル~数十億ドルかけて作られるのが当たり前のハリウッド映画ではとんでもない低予算であり、GOサインこそもらえたものの、相変わらずMARVELや配給元からの期待は非常に低かったことが伺える。
このため、レイノルズは殆どギャラを貰うことができず(数少ないギャラも脚本家のギャラを立て替えるのに使ってしまったとか)、低予算故に本来構想していたシーンもいくつか諦めざるをえなかった(たとえば、劇中で「持ってきた弾丸を車に忘れてきてしまった」というネタがあるが、これは予算がなかったので本来構想していた銃撃戦ができなくなったことをネタにしたものである)。
また、時間や制作費を無駄にしないよう、ライアン自らも実質的なプロデューサーとして脚本執筆や製作に積極的に関わる等して制作現場でのコミュニケーションの円滑化を図り、少ない予算でも効率的に動かせる指揮系統を作っていった(※)。
※ このような、「制作のトップがいくつかのポジションを兼任して指示を出すことでチーム内の無駄なコミュニケーションや制作工程をなくして時間や費用を節約する」という手法は『ゴジラ-1.0』で山崎貴監督の採った方法にも通じるものがある。ジャンルは違えど「低予算で少しでも良い作品を作るにはどうしたらよいか」という命題に対する共通した答えということなのだろう。
かくして、様々な創意工夫や試行錯誤の結果、何とか完成にこぎつけた本作であるが、試写会の評判は上々であり、いざ封切りになると初日だけでもR指定の映画としては過去最高額となる4700万ドルの売り上げを叩き込み大ヒットとなった。
最終的な売り上げも全世界で7億8千万ドルを記録。X-MENシリーズはもちろん、R指定映画の興行収入の歴代最高記録を更新した。
本作は「低予算」かつ「R指定」であっても、作り手の工夫次第では十分魅力的なヒーロー映画が作れるということを証明することとなった。
特にR指定で成功を収めた点は大きく、その後の『LOGAN』や『ジョーカー』といった作品の制作にも少なからず影響を与えたと考えられる。
ストーリー
タクシーに乗って目的地へ急ぐ、全身赤いコスチュームに身を包んだ男“デッドプール”。
到着したのはハイウェイの上。デッドプールは、そこで宿敵への復讐を果たそうとしていた……。
そこからさかのぼること2年前。
ウェイド・ウィルソンは、かつて特殊部隊の有能な傭兵だったが、第一線を引退。好き勝手に悪い奴をこらしめ、金を稼ぐという、ヒーロー気取りの生活をしていた。
そんなウェイドが一夜の相手として知り合ったのが、娼婦のヴァネッサ。最初のベッドインがあまりに“完璧”だったため、彼らは一年間の同居を経て、結婚を決意する。
しかしその矢先、末期ガンで余命わずかと診断されてしまう。
そこでウェイドはヴァネッサのために、ある男に紹介された怪しげな治療に最後の望みを託すが、
それは被験者を無敵の戦闘マシンに改造し、超人奴隷としてオークションで売り飛ばすことが目的の恐ろしい人体実験施設だった。
施設長であるエイジャックスは自らも痛覚の無い無敵の肉体を手に入れており、ウェイドにさまざまな実験を課して、彼を改造していく。実行された実験で不死身の肉体を手にしたウェイドだったが、その代償として全身の皮膚がただれた醜い姿となってしまう。そして怒りが収まらない彼は、エイジャックスと激しく戦った末に施設から逃亡する。
愛するヴァネッサに会うことも出来きず、マスクを被って“デッドプール”として生きることを余儀なくされたウェイド。元の肉体に戻してもらい、もう一度、ヴァネッサと幸せな生活を送りたい……。
こうして、自分を騙した組織とエイジャックスへの復讐に執念を燃やし、エイジャックスへの手がかりを見つけては、次々とその場で敵を倒していくのだった。
キャラクター
括弧内は俳優 / 日本語吹替版声優。
- ウェイド・ウィルソン / デッドプール(ライアン・レイノルズ / 加瀬康之)
主人公。醜い姿を治してもらう、そして殺すためフランシスを探す。
- ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン / 林真里花)
ウェイドの恋人。生涯添い遂げることを誓い合った仲。
バーの店主で、ウェイドの友人。
インド系のタクシーの運転手。
盲目の老婆。コカイン中毒者。
ウェポンXプログラムを指揮するマッドサイエンティスト。
- エンジェル・ダスト(ジーナ・カラーノ / 行成とあ)
フランシスの助手で、怪力などを発揮する女ミュータント。
X-MENのメンバー。頑強な身体を持つミュータント。
- ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド / 嶋村侑)
X-MEN訓練生の若いミュータント。
名前がクソカッコいいけど長いせいか、日本では「ネガソニ子」のニックネームが付いた。
ちなみに加瀬・行成両氏はMCUにおいてはヴィジョンとワンダ・マキシモフのカップル役で共演しており、2人がダブル主人公のドラマ『ワンダヴィジョン』で初登場したアガサ・ハークネスは林氏が担当している。
<おいおい、俺ちゃんの吹き替えが北欧のハンマー雷様だった事、忘れるなよ?
動画
予告編
予告編2
予告編3
続編
R指定映画としては異例の大ヒットを受け、早くも続編の製作が決定。
デッドプール2
2018年、アメリカでは5月に、日本では本作と同じ6月1日の公開。
デッドプール&ウルヴァリン
20世紀FOXがディズニーの傘下に入った事で、今回からマーベル・スタジオが製作するMCUの1作となるが、作風はそのままとのことで、予告編では下ネタや過激なスプラッター描写が確認できる。
主要キャストも続投予定で、『LOGAN』で一度物語の表舞台から退場したウルヴァリンが本格的にカムバックする作品になることでも大きな話題を呼んだ。
関連イラスト
外部リンク
※音量注意
なんとデッドプール本人がつぶやいているという設定になっており、映画の宣伝のみならず、ほぼ同時期に公開されていた日本の映画をパロった発言(通称:かるたプール)をしたり、吹き替えを担当している加瀬氏の中の人ネタを口にしたり、地上波放送された『アメイジング・スパイダーマン2』の実況をしたりと、彼らしいフリーダムなツイートを連発しており、映画公開前から多くのファンの腹筋を崩壊させた。
さらに同年5月に全米、日本では8月に公開された(俺ちゃんの映画の3倍の予算つぎ込んで、興行収入が半分だった)『X-MEN:アポカリプス』の予告にも登場し、「アポカリプスにプロフェッサーXがボコられる」「サイロックとは実は兄妹だった」などと言いたい放題なご様子(レイノルズは撮影期間中にサイロック役のオリヴィア・マンと合同演習を行っており、それを揶揄したネタと思われる)。
関連タグ
MARVEL アメコミ X-MEN デットプール アンチヒーロー
:アメリカの映画タイトル及び主人公の名前。事故で全身やけどに覆われた医学者が素顔隠すためにミイラ男のようになってしまった。その醜い姿に関しては俺ちゃんの大先輩
:実写版のピカチュウ役が俺ちゃんと同じ。なぜそんなことになったかというと、CGで作ったピカチュウにライアンの演じたデッドプールの台詞を言わせてみたら、喋り方や仕草に至るまで、あまりにも何から何までピッタリであったからだとか。ちなみに、同作にはドーピンダー役のカラン・ソーニもチョイ役で出演している他、同作でヒロインを務めたキャスリン・ニュートンは後にMCUでキャシー・ラングを演じている。
エンドロール後にも続きがあるので注意。