※この記事には映画『LOGAN』および『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含みます。
概要
映画『X-MEN』シリーズの外伝作品。『キングスマン』『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』でおなじみのマーク・ミラー原作の『オールドマン・ローガン』(詳細は後述の外部リンクを参照)をベースとした近未来を舞台にした物語である。
配給は他の『X-MEN』シリーズと同様、20世紀フォックスが担当している。
老衰したローガンとそんな彼の元に転がり込んできた謎の少女:ローラの逃避行と心の触れ合いを中心とした物語が展開されており、これまでのシリーズと比べると戦闘シーンの比重はやや少なめ。戦闘シーンそのものも、これまでのシリーズのような、超能力を駆使したド派手なサイキックバトルではなく、血肉の飛び散るような(中には人の四肢や首が斬り落とされるというかなりショッキングなシーンもある)野生的で生々しい描写になっているのが特徴である。それゆえ、本作は前年に公開された『デッドプール』に続いて、R-15指定の映画となっている。
ストーリー自体も、これまでの『X-MEN』シリーズの作品のような王道的なヒーローものではなく、終始シリアスかつ陰鬱であり、ローガンに関わった人々が無常に死んでいく描写が多く、アメコミヒーロー映画というよりもアメコミの設定を借りたバイオレンスアクション映画といった方が近い。
公開に先立ち、第1作から一貫してローガン(=ウルヴァリン)を演じてきたヒュー・ジャックマンが、本作をもってローガン役を卒業することを予め公にしており、ファンの間では大きな衝撃が走っていた(そのせいであまり話題にならなかったが、パトリック・スチュワートも今作を最後にプロフェッサーX役を降板することを明かしていた。しかし…)。
インタビューによれば、卒業を決めたのは「演じても楽しくなくなった」と感じるようになったかららしく、撮影終了時もウルヴァリン役をやりきった達成感が強かったという。
この映画の公開の少し後に、20世紀フォックスがディズニーに買収され、MCU入りを期待されていることを問われた際にも、「そうなれば素晴らしいが、もう遅すぎる。自分とはまた別の人物が演じるウルヴァリンがMCUで活躍することを願う」といった発言をしていた。
本作はあくまで『ウルヴァリン』シリーズの最終作という扱いであり、『X-MEN』シリーズ自体は今後も継続していく(実際、2018年には『デッドプール』シリーズの2作目が公開されている)ようだが、同シリーズはこれまでウルヴァリンを中心とした物語が展開されてきただけに、ファンの間では今後のシリーズ展開がどのようなものになっていくかに、不安と期待の入り混じった大きな注目が集まっていたのだが…(後述)。
あらすじ
西暦2029年、ここ25年新たなミュータントは生まれておらず、彼らは絶滅の危機に瀕していた。
かつてX-MENの一員として活躍していた、ウルヴァリンことローガンも、現在ではアマダンチウムの中毒作用からくるヒーリングファクターの弱体化と、加齢により老衰が進行しその肉体は限界に近付いており、運転手をしながら日銭を稼ぎ、工場に隠したエグゼビア教授をキャリバンと共に介護しながら細々と生活していた。
そんなある日、彼の前にドナルド・ピアースという謎の男が現れ、半ば脅迫めいた形で人探しの協力を求められる。また、同じころ、彼に元看護師と名乗るガブリエラ・ロペスという女性から、ローラという名の11歳の少女をノースダコタ州にある「エデン」という場所まで送り届けて欲しいという依頼を受ける。
面倒ごとに巻き込まれたくないと一度は依頼を断ったローガンだったが、思い直して改めてガブリエラを訪ねると、彼女は既に何者かに殺害された後だった。殺害した犯人がピアースであると見抜いたローガンは、ローラを連れてエグゼビアを匿っている工場へと連れていくが、場所をピアースに突き止められて襲撃を受け、キャリバンも人質に取られてしまう。
やむを得ず、ローガンはローラとチャールズを連れて逃避行を開始。
ここに、彼の最後の壮絶なる戦いが幕を開けたのだった…。
登場人物
ミュータント
本作の主人公。
アマダンチウムの中毒作用によりヒーリングファクターが弱体化し、それによって加齢による老化が進み肉体は既に衰えており、戦闘力も全盛期と比べると著しく低下してしまっている。そのためなのか、体の至るところに生々しい傷跡がある。
リムジン運転手をして日銭を稼ぎ、エグゼビアの介護をしながら細々と隠遁生活を送っていたが、ローラとの出会いをきっかけに再び悪との戦いに否が応でも巻き込まれていくことになる。
かつて「恵まれし子らの学園」の校長を務めていたが、現在はミュータントの減少と共に学校を閉鎖、隠遁生活を送っている。
アルツハイマー病を患い、その影響で自らの力をうまく制御できなくなっており、そのことで度々一行を危機に陥れることになる。
ガブリエラの元に匿われていた謎のミュータント少女。
ウルヴァリンと同様、アマダンチウム性の爪を持つ(ただし、ウルヴァリンとは異なり、腕の鉤爪の本数は2本で、さらに両足からも爪を展開できる)。
普段は物静かで大人しい性格だが、自分に襲い掛かってくる敵に対しては激しい敵愾心と攻撃性をむき出しにする。
キャリバン
ウルヴァリンと同居しているミュータントの生き残り。
匂いを嗅ぐことで相手の居場所を特定する能力を持つ。
日の光を浴びると皮膚が爛れてしまうため、基本的に外出せず、料理などの家事を担当している。やむを得ず外出しなければならないときは全身を布などで覆って隠している。
中盤、住居を襲撃された際にピアースたちに捕らえられてしまい、彼らに強引に協力させられてしまうが…。
ヴィラン
ドナルド・ピアース
本作のメインヴィラン。
ローラ捜索の為に送り込まれた部隊「リーヴァーズ」の主任。
体の一部をサイボーグ化しており、身体能力を強化している。
ザンダー・ライス博士
遺伝子研究所で兵器用ミュータントの開発に携わっている科学者。
父親はかつて「ウェポンX計画」に携わって最終的にウルヴァリンに殺害されており、彼とは浅からぬ因縁がある。
冷酷なマッドサイエンティストだが、X-24にかけている愛情は本物であった。
X-24
中盤で登場したミュータント兵器。ウルヴァリンと瓜二つの姿をしているが…?
その他
ガブリエラ・ロペス
ローラをかくまっていた、看護師を名乗る謎の女性。
北の「エデン」と呼ばれる場所にローラを連れていくよう、必死にローガンに懇願していた。
最終的にピアース一味に殺害されてしまうものの、死の直前にローラ出生の真相とエデンの在処に関わる重大なメッセージを残していた。
ウィル・マンソン
オクラホマ州で農場を営んでいる黒人男性。妻のキャスリンと息子のネイトとの3人暮らし。
ひょんなことから逃亡中のローガン一行と知り合い、彼を自宅に招いて夕食と宿を提供するが、そのことが悲惨な事態を招いてしまう…。
キャスト
キャラクター | 演者 | 吹替 |
---|---|---|
ローガン/ウルヴァリン | ヒュー・ジャックマン | 山路和弘 |
チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX | パトリック・スチュワート | 麦人 |
ローラ | ダフネ・キーン | 鈴木梨央 |
キャリバン | スティーヴン・マーチャント | 川島得愛 |
ドナルド・ピアース | ボイド・ホルブルック | 小川輝晃 |
ザンダー・ライス博士 | リチャード・E・グラント | 水内清光 |
X―24 | ヒュー・ジャックマン(二役) | 山路和弘(二役) |
ガブリエラ・ロペス | エリザベス・ロドリゲス | 田野めぐみ |
ウィル・マンソン | エリク・ラ・サル | 天田益男 |
キャスリン・マンソン | エリゼ・ニール | |
ネイト・マンソン | クインシー・ホウス |
関連動画
予告編
関連イラスト
原作コミック
タイトル『オールドマン・ローガン』(Old Man Logan)、映画『ローガン』とは違い
近未来のアメリカはヒーローたちとヴィランズの大戦争が巻き起こり結果ヴィランズたちが
勝利を収めアメリカ合衆国は崩壊をしてしまった。
更に時は流れてウルヴァリンことローガンは旧・ロサンゼルス、カリフォルニア州で暮らしていた。そこは“ハルク”の息子達が支配する通称・ハルクランドだった。
オールドマン・ローガンはハルクの息子達に乱暴を受ける中抵抗はしなかった…?
『シビル・ウォー』でお馴染み
マーク・ミラー&スティーブ・マクニーブンのコンビが贈る衝撃のバイレンス巨編!
ホークアイをはじめその他キャラクターも登場してくれる。
続編『ウエストランダーズ』(WASTELANDERS)といった作品がある。
ややこしいが2016年のクロスオーバーイベント『シークレットウォーズ』により正史世界へお引越し?(死亡した)正史世界のウルヴァリンに代わって一時期Xメンのメンバーとして活躍した事がある。2018年、正史世界のウルヴァリン復活もあってオールドマンローガンは自分の元いた未来世界へ帰って行った。
ウルヴァリン、まさかの復活
ファンから散々心配されていたウルヴァリンの動向は、ヒュー・ジャックマンが7年後にウルヴァリン役で再びマーベル映画に戻ってくるという意外な形で決着をつけられることとなった。
なぜジャックマンは再びウルヴァリンを演じることを決めたのか。
理由は、姉妹作である『デッドプール』シリーズが世界中で大ヒットする様子を目の当たりにしたことで、彼の中で「デッドプールとのバディものをやってみたい」という意欲が次第に高まっていったためのようだ(実際、『Deadpool 2』では話の本筋に絡まないとはいえ、クライマックスでウルヴァリン役でゲスト出演していたりする)。
また、彼は以前にもデッドプール役のライアン・レイノルズとウルヴァリンの再演について話をしたことがあったという。
当然、彼の中では『LOGAN』で一度完結したウルヴァリンの存在を再び蒸し返して良いのかという葛藤もあったようだが、「脳に“(思考を)停止しろ”と命令」し、一時間ほどドライブに出かけて考えを整理した後、ウルヴァリン役での復帰を決意した。
また、『リアル・スティール』で一緒に仕事をしたショーン・レヴィが『デッドプール&ウルヴァリン』の監督に決まったことや、「これまでで一番ウルヴァリンを魅力的に描いた脚本であった」ことも復帰を決めた理由だったとか。
一方で、ジャックマンはMCUを統括していたケヴィン・ファイギ氏に無断でシリーズ復帰を決めてしまったため、「せっかく『LOGAN』で素晴らしい結末を迎えたのに、それをなかったことになんてするべきじゃない」と、苦言を呈されたという。
なお、製作陣は「『LOGAN』の結末をなかったことにするような内容には決してしない」と明言していたが、そのカラクリとは、別のアースからこれまでとは全く別のウルヴァリンを連れてくるという、ある意味ではマルチバース・サーガらしい方法であった。
一方で、映画の冒頭からいきなり『LOGAN』のラストシーンを盛大にネタにするシーンがあったりする(しかも、尊厳破壊というべきとんでもない方法で)。
確かに『LOGAN』の結末が変わることはなかったとはいえ、一部のファンから「あの感動的なラストシーンを台無しにされた」という批判の声もないわけではない。
もっとも、ただ弄り倒しているだけではなく、『LOGAN』で死亡したウルヴァリンが世界の存亡にかかわる非常に重要な存在であったことが明らかになる等、きちんとリスペクトも払われている。
これ以外では、中盤ではローラが重要な役回りで登場。しかも、演じたダフネ・キーン自身により『LOGAN』に登場したローラ本人であることが明言されている。
『LOGAN』はX-MENユニバースの属するアース10005とは別の世界であるアース17315で2029年に起きた出来事とされてきたが、『D&W』ではそれらの設定は事実上なかったことにされた(同作の舞台は2024年のアース10005であり、これに伴い『LOGAN』も2017年に起きた出来事へと変更されているとみられる。さらに、デッドプールをはじめ10005の世界の住人たちは、ウルヴァリンがローラを守って死んだことを知っており、これによりウルヴァリンはヒーローとして今尚尊敬を集める存在となっている)。
関連タグ
仮面ライダー1号 - 前年に公開された日本のヒーロー映画。「老衰した主人公が自身と関わりの深い少女を守るために戦う」という展開が本作と共通するが、こちらはずっと救いのある結末になっている。
デッドプール2 - 同じくR指定のされたX−MENユニバースのスピンオフ作品。冒頭でいきなり、本作におけるウルヴァリンの最期が盛大にネタにされており、主人公からも「ウルヴァリンの野郎、俺を真似してR指定の映画を作った挙句あんな死に方までしやがって」「ハードルを上げられるこっちの身にもなってくれ」とディスられている。だが、上述の通り、続編の『デッドプール&ウルヴァリン』では色んな意味でハードルをぶっ壊す行動を起こした。