概要
西武6000系電車は1992年(平成4年)に登場、第1・2編成が先行量産車(試作車)としてデビューした。1993年より量産車が登場し、製造は試作車から第17編成(6117F)までを東急車輛製造が製造。尚、西武鉄道のステンレス製車両は当番代のみで、1996年から日立製作所が製造を担当し、アルミ合金車体に材質を変更、6050番台として区分けされた(6000系50番台、あるいは6050系と通称される)。この時点では無塗装アルミ車体採用には踏み切れず、地色はライトグレー塗りとされており、無塗装車体採用までは次期通勤車である20000系まで待たなければならなかった。後の20000系、30000系、40000系はアルミ合金製(20000系と30000系は日立製作所製・40000系は川崎重工製)が採用されており、西武鉄道は関東私鉄の中では東京メトロに並んでステンレス製車両は少ない(その東京メトロも現在は営業車両のステンレス車は全廃済)。
登場当初の動向(1992年~)
1992年1月より6101F・6102Fが搬入され、乗務員訓練や試運転を経て同年6月よりデビューした。主に池袋線の準急や急行などの優等種別に充当され、1994年より新宿線系統においても運転を開始し、同年12月には西武有楽町線が練馬駅まで開通したことを契機に、練馬駅から営団有楽町線新木場駅間の相互直通運転を開始、運用範囲を広げた。その後、1998年の西武有楽町線の複線化や直通運転区間の拡大などに伴い池袋線と新宿線間で車両の転配が実施され、池袋線にはATCが搭載された6108F~6117Fと50番台車、新宿線にはATC非搭載の6101F~6107Fが配置され、2006年まで長らくこの配置で運用が実施されていた。
副都心線直通へ向けて(2006年頃~)
2008年度から予定されている副都心線への直通に備えるため、2006年度より(第1・2編成を除いた)全ての編成に対して直通対応改造が施行された。主な施行内容は、外観は前面FRP部分を保安上の問題(と、されているが…?)により、銀から白に塗色変更、正面・側面の種別・方向幕はフルカラーLED(行先部分のみ白色)に変更、新製時より準備工事に留まっていた車外スピーカーを本設、乗務員室扉と手すりを東急線内の建築限界に合わせたものに変更した。室内は非常通報装置を東京メトロ10000系電車と同等品に変更、乗務員室は運転台デスク部分を含めて大きく改修され、将来の東急東横線への乗り入れに向けて、マスコンハンドルをツーハンドル式から東芝製(らしい)のワンハンドル式へと変更した。モニタ装置は従来のコイト製ガイダンス表示器から三菱製TISモニタへと変更。表示灯類や放送、空調設備の操作を同モニタ装置へ集約した。このほか車掌スイッチの改良や、副都心線内でのワンマン運転時に使用されるATO装置、ITVモニタ装置等、元新宿線所属車両には新たにATC装置なども併せて設置された。2008年度より、6109Fを皮切りに客室ドア上部にスマイルビジョン(トレインビジョンと同等)と呼ばれるLCD案内装置やドア開閉表示灯を設置し、それに合わせてドアチャイムの改良も行った。
この白塗りにされた前面が、西武線沿線である東村山出身の、今は亡き日本を代表するコメディアンが扮する人物の容姿を思い浮かばせることからバカ殿や、これまた西武線沿線の杉並区上井萩にあるアニメスタジオが製作したロボットアニメの名作のメインロボからガンダムと呼ばれるなど、原型より大きく印象を変えたその姿からこれらのように揶揄されていた。
横浜方面への直通(2013年)
2013年3月16日の副都心線・東急東横線・みなとみらい線の直通運転開始を契機に、大きく運用範囲を広げ、埼玉県から東京都心部を経由し、40000系と共に神奈川県内を走行している車両となっている(40000系の神奈川県乗り入れは2017年から)。
直通先では東武9000系と並び古参に類する車両であるが、1993年に登場した6000系がLCD案内装置を搭載しており、設備面では決して劣らない。
なお、東横線においては2023年3月より開業した東急新横浜線を経由し、新横浜方面とその先の相鉄新横浜線、相鉄本線方面への直通運転を行っているが、西武鉄道は新横浜方面への直通運転を行わない方針としたため、当形式は東京メトロ車、東武車と同様に、従来通り渋谷~横浜、元町・中華街方面のみを運行範囲としている。ただし、東急新横浜線・新横浜までは試運転での入線は果たしており、開業から一貫して当形式による営業運転の実績は無いものの、「新横浜」の行先を掲げた当形式がイベント公開されていた点や、先述の試運転での入線実績を鑑みると、代走による入線は考慮されているものと思われる。
現在の動向
VVVFインバーター装置の更新(2015年~)
・2015年4月現在、6157F編成が従来の日立製GTO-VVVFインバーター制御から、PMSM対応の東芝製IGBT-VVVFインバーターへと機器更新された。同時に6156Fも三菱製フルSiC適用VVVFインバーターへと機器更新され、この車両の最大の特徴とも言える「あの音」がいよいよ聞けなくなりそうな予感。
・2021年現在、池袋線に所属する6000系は6157Fを除き全車両が三菱製フルSiC適用VVVFインバーターへと機器更新された。
・2023年現在、新宿線に所属する試作車の6102Fが池袋線所属車と同様の機器へと更新され、続けて6101Fも同年7月に更新されたため、これを以て当形式から原形車が消滅した。
池袋線から新宿線へ(2023年~)
6000系は2006年頃の副都心線直通に伴う車両転配に伴い、後述する試作車を除いた全編成が小手指車両基地(池袋線)所属となり、新宿線に残留する試作車は2編成とも玉川上水車両基地(拝島線)所属という配置(イベント・試運転・回送などでほんのたまに試作車が池袋線にくる)が長らく続いていたが、2023年に6103Fと6108Fが新宿線に転属したのを皮切りに、続く2023年7月15日頃には40161Fが池袋線で運行開始した為、新たに6104Fが転属した。この転属編成は外観はそのままだが、地下鉄線内で使用するワンマン運転用モニター装置(ITVモニタ装置)が撤去(映像を受信する「ミリ波受信装置」は存置)されているため、有楽町線・副都心線への直通が不可能になっている。その他の直通に関連する機器が撤去されたとの報は無く、新宿線での運行開始当初の40000系と同様にITVモニタのみ撤去して運用に就いていた点が類似しているほか、6108F(クハ6008)に至っては直通に必要なボタン類を残したまま運転台が新調されている為、今後の動きが注目される。2023年末には6108Fのパンタグラフが剛体架線非対応(地下鉄非対応)のシングルアーム式に換装されたため、事実上地下鉄への乗り入れが行えない状況となった。
なお、池袋線から転属した編成は前面の白塗装のほかに地下線の剛体架線の影響により屋上の汚損が激しいため、すぐに見分けがつく。
地下鉄乗り入れの終了?(2024年~)
前記の通り地下鉄直通対応車が新宿線へ異動するなど慌ただしい動きを見せてきた6000系だが、2024年に入ると地下鉄への乗り入れが明確に非対応となった編成が登場した。これらの編成は運転台に「地下鉄非対応車」と記したテプラや、非常扉に黄色いテープが貼付されており、地下鉄各線への乗り入れが行えないことが示唆されている。この非対応化編成は最終的に6103F~6108Fのステンレス車と50番台アルミ車全編成の陣容となり、ステンレス車のみ新宿線系統へ転属、50番台車は池袋線地上運用で使用されている。
2024年9月、地下鉄乗り入れを終了した6156Fが剛体架線対応(地下鉄対応)のシングルアームパンタグラフに交換され出場した。部品の共通化か、地下鉄乗り入れの復帰を睨んだものか真相は不明だが、今後の動向が注目される。
一連の地下鉄乗り入れ終了の措置に関連するかは不明だが、西武鉄道では無線式列車制御システム「CBTC」を導入する旨が告知されており、相互乗り入れ車両29編成が対象とされているため、現在池袋線に残る6109F~6117Fの9編成と40000系ロング車14編成、L/C車6編成を合わせると数が合う計算となる。6117Fを皮切りに「戸閉制御切替装置」の改修工事も順次行われており、今後も直通運転に使用されるものと見られる。また、6000系はステンレス車とアルミ車で制動方式が異なり、減速度特性に差があるため、乗り入れ先でATO、TASCを使用している関係上、乗り入れ対応車をステンレス車のみに統一する狙いがあるものと見られる。
直通の看板を外される恰好となった6000系だが、機器更新からおよそ10年と経過しておらず、今後の去就について当面は安泰であろうと思われるので動向を見守りたいところである。
※制動方式の差異はステンレス1車種、アルミ2車種に分類されている。ステンレス1次車~4次車、アルミ5次車→両抱き式踏面ブレーキ、アルミ6次車・7次車→片押し式踏面ブレーキ
※6000系のATO装置は、3種類の減速度特性に関わる制御データが全てインストールされており、TIS装置が編成に対応する適切なデータを読み込む方式を採っていた。
試作編成6101F・6102F
新宿・拝島線に所属する1次車は、地下鉄への直通を行わないため(ほぼ)原型のままとされている。先述したが6101・6102Fは試作要素が強い先行量産車であるため、改修工事の対象から除外された。6103Fからの量産車および50番台とは、ドア位置が若干違っているため……とよく言われているが、実際にはドア位置の関係などではなく、乗務員室内の機器が量産車と異なることや、床下機器の配置、配管の違いなど、諸々の理由でコストが掛かることがわかり、改造が見送られた(らしい)。また東武9000系9101Fも試作車ゆえに、ほぼ同じ理由で改造が行われていない(最終的に未修繕で廃車となった)が、副都心線開業後の有楽町線に乗り入れたイレギュラーな事例があった。
試作車とは言え、完全に地上用他系列と混用されており、現在は沿線で日常的に見かけることができる。30年近い車齢から更新時期及び廃車が心配されていたが、先述の通り2023年に6102Fを皮切りに6101Fと共に池袋線所属編成同様、VVVF装置を換装し更新出場。池袋線所属車と趣を異にするが、方向幕もフルカラーLEDに交換されたほか、運転台のガイダンス表示器が白単色からカラー表示化された。ただし副都心線対応改造は行われていないため、現在も登場当時と同じ銀色のフロントフェイスを維持している。
幻の編成
有楽町線との相互乗り入れが本格的に開始された1998年、スカートに黄色いSマ-クがついた編成がいた。これは当時、当該編成が有楽町線への乗り入れが不可であることを示していた。副都心線直通開始後も、改造待ちのため直通不可の編成が多く見られ、識別としてフロントガラス部に「Yマーク」を掲出していた。同様の例は、半蔵門線開通後の東急田園都市線における東武線非対応車両の「丸にKのステッカー」がある。
稀に、事故の影響で一時的にスカートが外された状態で営業に入ることがあるが、主に新宿線に所属している編成で見られた。
ラッピング
黄色い6000系
2015年3月に池袋線の前身となる武蔵野鉄道が開業から100周年を迎えることを記念し、従来の黄色い電車をイメージしたラッピングが6157Fに施工された。イメージ元は2000系と3000系。翌年4月を以て終了し、ラッピングは剥がされた。
西武有楽町線40周年記念車両
2023年10月に西武有楽町線初期開業から40周年を迎えることを記念し、初代車両である営団7000系の当時の姿(黄帯)をイメージした帯のラッピングが6117Fに施工された。11月には出発式で取り付けられたものを再現したヘッドマークが掲出された。翌年9月を以て終了したが、ヘッドマークが外されたのみで黄帯はその後も維持されている。
運行区間
新宿線系統所属車
池袋線系統所属車
- 池袋線:池袋~飯能
- 西武有楽町線:小竹向原~練馬
- 狭山線:西所沢~西武球場前
- 東京メトロ有楽町線:和光市~新木場
- 東京メトロ副都心線:和光市~渋谷
- 東急東横線:渋谷~横浜
- 横浜高速鉄道みなとみらい線:横浜~元町・中華街
イラスト
ちなみに、韓国には西武6000系と酷似した車両がいる。