概要
「読む地獄」とは地獄のような鬱展開・胸糞展開が延々と続く作品に対する評価、ジャンルの俗称。語感としては「食べるラー油」などに近く、苦しい展開が続くがスルスルと読めてしまうという意味で「読める地獄」と呼ばれることもある。
「読む」という動詞が使われる書籍全般、例えば小説などにも適用可能な概念と思われるが、確認できる限りでは漫画を指すことがほとんどの模様。また、アニメやドラマなど映像作品に対する見る地獄などの表現もある。
よく言われる作品として、本記事のメイン画像の元ネタである『タコピーの原罪』をはじめ、『連ちゃんパパ』、『闇金ウシジマくん』などが挙げられる。
漫画家としては知るかバカうどん、山野一らがこの手の作品ばかりを描いていたことで知られる。また脚本家の虚淵玄もこの手のジャンルの代表格。
「登場人物が痛めつけられ苦しむ様子」自体を主題としている作品はもちろん、ギャグや熱血などの要素も多く含んでおり、最初から最後まで延々と鬱・胸糞展開なわけではない作品もあるが、逆にそれらの要素で救われた気になっていたら「とんでもない鬱展開」が来てむしろ落差で心が抉られることが多々あるため「読む地獄」として認められていると考えられる。
近年は一般人気の高い少年漫画・青年漫画にも増えているが、ガロ系と呼ばれるようなアングラ、サブカル色の強い作品で度々見られ、憂鬱で不条理な展開、ヒューマンドラマなどの共通点がある。
ラブコメディにもこの作風があるが、ラブコメディ自体が内容に関わらず胸糞と言われやすく(いわゆる「負けヒロイン」が発生するような場面、もしくは作中の薔薇色の恋愛模様に対し読者が自信の冴えない生活をネタにして言われることがある)、また「ある人の視点で描かれた内容と客観的な事実でズレが生じる」叙述トリックに近い手法を使った作品が多いため、一覧からは除外している。
ハートフルボッコとの違い
似た意味の言葉として「ハートフルボッコ」があるが、意味は若干異なる。
ハートフルボッコの方は「表向きはハートフル(また当たり障りのない、ソフトな)話のようだが、やがて不穏な展開になっていく(心がフルボッコにされる)」ストーリーを指す(作品全体の評価とは限らない)のに対し、読む地獄は「あからさまに陰鬱・露悪的」な作品(つまりスタートの時点で鬱展開)を指すことが多い。
なお、その観点から考えると一見明るいノリから始まった『タコピーの原罪』も「ハートフルボッコ」に該当するという意見があるが、同作は序盤を除いて1話からかなりセンセーショナルな展開であり、その後も延々と暗い話が続いている。
知られるようになった経緯
「読む地獄」という言い方は従来よりあったようだが、2022年3月初頭に『タコピーの原罪』の流行を受けて「最近読む地獄みたいな漫画増えたよな」という趣旨のツイートが約4500リツイート、3万いいねがつけられるなど非常に大きく注目されたことがきっかけで広まったと考えられる。
「読む地獄」が広まる以前は同様の特徴を持つ作品について「鬱漫画(また鬱アニメ・鬱ゲーなど)」「トラウマ漫画」と表現されており、現在でも「鬱/トラウマ」のほかに「胸糞」「悪趣味」といったジャンルに包括されることが多い。
代表的な作品
※類義語の見る地獄も含む。内容については各記事を参照
※☆マークは「ハートフルボッコ」にも含まれる作品
- 『タコピーの原罪』☆
- 『からくりサーカス』
- 『機動戦士ガンダムサンダーボルト』
- 『呪術廻戦(特に渋谷事変)』☆
- 『進撃の巨人』
- 『チェンソーマン』☆
- 『テラフォーマーズ』
- 『乃木若葉は勇者である』
- 『はたらく細胞BLACK』
- 『HUNTER×HUNTER(キメラアント編)』☆
- 『ハッピーシュガーライフ』☆
- 『HELLSING』
- 『宝石の国』☆
- 『6期鬼太郎』
- 『宮本から君へ』
- 『メイドインアビス』☆
- 『連ちゃんパパ』
- 『闇金ウシジマくん』
- 『FX戦士くるみちゃん』