概要
初出は「小学六年生」1981年2月号。てんとう虫コミックス第43巻に収録。
あらすじ
だらけた生活を送るのび太に、パパは将来の目標に向けて歩き出すように諭す。「なんでもいいの。らくな仕事でかっこよくてお金さえもうかれば」というのび太の答えに呆れたパパは、のび太を書斎に連れ出して、有名な画家の画集を見せる。パパはその画家は昔自分の友達だったが、さらに「ひょっとしたら、ぼくがこうなっていたかもしれないんだよ」と言った。
そこでパパは、画家になることを目指していた20年前、本式に絵を勉強するための資金を出してやろうという人が現れたが、ぐずぐずしているうちにチャンスを逃したと語り、のび太の肩を抱いて「だから! のび太には自分の思いどおりの道に進ませてやりたいんだよ!!」と強い口調で言った。
そこでのび太とドラえもんは、パパがもし一流の画家になっていたら家ももっと豊かになっていたのにと考えて、タイムマシンで20年前に行き、パパに画家になるように決心させようとする。
のび太とドラえもんが20年前に着くと、絵の勉強をするための資金の援助を持ちかけた「金満」という富豪への回答の期限が迫っているにもかかわらず、優柔不断なのび太のパパは迷っていた。そこでドラえもんは「ヤリトゲ」という道具を出す。そのトゲを刺すと、思ったことを何でもやり遂げるようになるのだ。
ヤリトゲを刺されたパパは金満の家へと向かうことを決心して家を飛び出すが、その直後にパパの家を金満の娘の兼子が訪れ、パパは自分と結婚する覚悟がついたかと話した。金満は画家になりたかった若いころの夢を果たすために、画才のある若者を自分の娘婿にしようとしていたのだ。
そこでドラえもんは重大な事実に気がついた。パパが兼子と結婚したら、のび太は生まれないことになるのだ。そしてパパが兼子と婚約した瞬間、のび太も消滅する。あわててのび太とドラえもんはパパを止めようとするが、ヤリトゲの威力に取りつかれたパパを止めることはできない。
しかし金満の家で金満と兼子を前にしたパパは、のび太とドラえもんの予想に反して、金満の援助の申し出を断った。パパは「金をかければ画家になれるわけではないし、どんな仕事をしながらでも絵は描ける」と語り、兼子を傷つけると思って今まで断ることをためらっていたことを明かした。金満の家を追い出されて、「ぼくの人生はぼく自身の力できり開いていくのだ!!」と強がるパパを、ドラえもんは「無理してるみたいでなんだかかわいそう」と気の毒そうな目で見送った。
そこでパパは、勢い余ってセーラー服を着た女子学生と出合い頭にぶつかってしまう。彼女が落とした定期券には、「片岡玉子」という名前が書かれていた。その女子学生こそ、のび太のママの昔の姿であり、これがのび太の両親の出会いのきっかけだったのだ。それを見届けたドラえもんとのび太は、現代に帰ることにする。
現代に帰ったドラえもんとのび太は、「ひさしぶりにかいてみたくなってね」と絵筆を取るパパをそっと見守るのだった。
備考
- なお、このときの序列はのび助が金満の第一候補、世界的画家となった大家画伯が第二候補だったので、のび助の画才は本物だったのかも知れない。ちなみに、TC6巻「この絵600万円」で師事していた柿原先生も、世界的画家梅原龍三郎のパロディとみられる(柿原先生はTC16巻あらかじめアンテナでも登場)。
- のび太のパパが若い頃に画家を目指していたという設定は、TC6巻「この絵600万円」でも明かされるが、このエピソードはさらにそれを掘り下げたものになっている。ほかにもTC32巻「あとからアルバム」でも、小学生時に絵画コンクールで金賞を取ったことを告げたこともある。
- 本作にはTC14巻「夢まくらのおじいさん」に登場するのび太の祖父や、TC4巻「おばあちゃんのおもいで」などに登場するのび太の祖母も登場している。
- のび太のママの旧姓が「片岡」であることは、本作で初めて明かされている(片岡球子という日本画家がいるが、その名前と被らせたのかどうかは不明)。
アニメ
大山版では2度、水田版では1度映像化されている。
大山版に於けるサブタイトルは、1度目は「のび太が消えちゃう!?」であり2度目は「パパの夢をかなえよう!」となっている。
しかし2度目の映像化ではセル画からデジタル制作に切り替わって間もない時期のであり、更に言うと過剰演出とも取れるギャグ描写が幾つか存在している為賛否両論となっている。また、のび太が本当に消えかかってる描写もあり、パパが婚約を取りやめた瞬間に元に戻った。