概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。TC23巻収録。
基本的にはのび太が自分より劣等生が来たことでつい調子に乗ってしまうエピソードだが、人間は自分より劣る人物が傍にいるとつい優越感に浸ってしまいがちという日常的にもありそうなことを端的に示したエピソードでもある。
あらすじ
ある日、のび太が珍しく上機嫌で帰宅する。ドラえもんはのび太にどうして上機嫌なのかを尋ねると、のび太曰くクラスに転校生がやって来たという。その子は「多目」と言い、何をしても全然パッとしない子で、のび太がテストで5回に1回の割合(TC42巻収録「もぐれ!ハマグリパック」にて10回連続で点を取るようになるが)で0点を取るのに対し、その子は10回に3回の確率で0点を取るらしい。また、逆上がりや懸垂も出来ず、走る速さものび太より遅いとのことで、のび太は「何て素晴らしいことだろう!この世に僕よりダメな子がいたなんて!」と優越感に浸る。
すると野比家にその多目君がやって未た。のび太によると、彼と一緒に宿題をする約束をしていたという。早く宿題を片付けようと言うのび太に対し、多目君は「僕はパッパと出来ないよ」と言いながら勉強する。ドラえもんはその様子を見て「理由はどうであれ勉強するのは良いことだ」と言いながら微笑むが、多目君があまりに問題を解くのが遅かった為、のび太は「え?まだ出来てないの?」と言う。
ドラえもんは「人には人のペースがある」と言うが、のび太にとっては自分より能力が下の友達が出来たことが余程嬉しかったのか、その後ものび太は「違うよ、その答え。困るな~、こんな簡単な問題を間違えちゃ」と言うが、多目君は笑顔で宿題を続ける。
途中でのび太は自分と多目君のノートをママに見せに行き、どちらの答えが合っているかを聞く。そして自分の答えが正解だったことを知り、再び上機嫌で戻って来る。最終的にはのび太が宿題に飽きてしまい、多目君を連れてしずかの所へ遊びに行く。そこで彼女にかけっこの審判を頼み、のび太と多目君が勝負したのだが、やはりのび太が勝利する。
のび太はこのことをパパやママに嬉しそうに告げるのだが、その様子を見ていたドラえもんは白けた表情でのび太を眺めていた。
翌日、のび太と多目君は揃って廊下に立たされていた。のび太は多目君に「これからも一緒に0点取ったり、忘れ物して仲良くやろう」と言うが、多目君は「僕は出来れば100点を取りたいし、忘れ物したくない」と言う。それにのび太は「生意気だ!僕に逆らうなんて!」と怒り出す。
下校途中、のび太はジャイアンとスネ夫から野球に誘われる。のび太は参加したくなかったのだが、ジャイアン達がいつものように脅して来た為、咄嗟に多目君を推薦する。
帰宅したのび太は「どんなゲームになるやら、想像するだけで笑っちゃうよ」と言う。見かねたドラえもんは「配役いれかえビデオ」を取り出す。実はドラえもんは昨日から今日までののび太と多目君の様子を、この道具で録画していたのだ。早速この道具で録画映像を映し出すのだが、ドラえもんは映像内ののび太をスネ夫に、多目君をのび太に入れ替える。
そこには宿題が出来ないのび太をスネ夫が馬鹿にし、しずかの前でかけっこをしてのび太がスネ夫に負けてしまい、勝利したスネ夫は大喜びし、野球もジャイアンに脅されたスネ夫が咄嗟にのび太を推薦する様子が映し出された。
この映像を見たのび太は、自分が今まで多目君に対して酷いことをしてきたと自覚し、多目君が野球をやっているであろう場所へ急いで向かう。そしてのび太が先程予想していた通り、多目君は野球で失敗ばかりしてしまったらしく、ジャイアンとスネ夫から責められていた。
そこにのび太が駆け付け「多目君を推薦した僕の責任だ!殴るなら僕を殴れ!」と言い、のび太はそのままジャイアンとスネ夫に殴られてしまう。後に事情を知ったドラえもんは「偉い!よく殴られた!」と言いながら、のび太の行動を感心した。
数日後、多目君は再び転校することになってしまった。野比家まで別れの挨拶にやって来た多目君は、のび太に「今まで君ほど仲良くしてくれた友達はいなかった。勉強やスポーツを一緒にやってくれたり、時にはいじめっ子から庇ってくれたり…。君のことは忘れない」と告げる。
のび太は自分の行動を振り返り、「あんな風に言われると恥ずかしい。穴があったら入りたい」と言う。それを聞いたドラえもんは「そうかそうか」と言いながら「通りぬけフープ」あるいは「即席落とし穴」らしきひみつ道具を取り出し、のび太を穴の中に落とす。のび太は「本気にするやつがあるか!あげてくれえ!」と叫ぶのだった。