従来型の砲での撃破が難しかったドイツ軍のティーガーやパンター対策となる55口径76.2mm砲、通称「17ポンド砲」を搭載する自走砲で、砲兵によって運用された。
搭載砲が車体の前進する方向と真逆、つまり後方に向けて据え付けられているという英国面満載の車輌だが、この方式のおかげで攻撃後に敵から逃げる際は進行方向を変える必要が無く、迅速に戦場から離脱できた。
開発
第二次世界大戦期、英軍が戦前に実用化していた2ポンド砲や6ポンド砲などの対戦車砲は、次第に重装甲化していくドイツ軍戦車に対して力不足となっていたため、新たに戦中に入ってから実用化した強力な17ポンド砲を搭載する車輌が求められていた。
そこで、英国では並列していくつかの17ポンド砲搭載車輌の計画が進められることとなる。
アーチャーは1942年7月から開始された既存のバレンタイン歩兵戦車の車体をベースとするというプランに基づいた自走砲で、1943年3月に試作車が試験を通過、800輌が発注され1944年3月に量産初号車が完成し、ノルマンディー上陸戦後の1944年10月から実戦に投入された。
運用
アーチャーは砲兵管轄下の兵器としては貴重な対戦車自走砲だったが、重要度は高くなかったため終戦に伴い665輌の生産に終わった。
それでも、戦後もしばらく使われ続け、運用は1950年代半ばまで続けられた。
なお、一部はエジプト軍に供与され、中東戦争に参戦している。
余談
- 古い資料には「本車には射撃時に後退した砲尾が操縦手を直撃するため、射撃時に操縦手の退避が必要」というものが多かったが、実際には砲尾が操縦席まで後座することはないため、デマである。
- アーチャーも含む 17ポンド砲搭載型車輌開発計画は 英国面 の一つの象徴として扱われることがある。この砲が積み込まれた車輌は
・「チャレンジャー巡航戦車」(1942年に原型完成も問題多発で量産は2年後)
・「アヴェンジャー対戦車自走砲」(チャレンジャーベースで重量軽減のためオープントップ。配備は戦後となった上、その時点で若干旧式化しており海外駐留部隊に押し付けられた)
・「ブラックプリンス歩兵戦車」(チャーチル歩兵戦車の発展型。機動力が低すぎたことが主因に試作のみに終わる)
・「センチュリオン重巡航戦車」(完成度は高かったが実用化は戦後となり、その後搭載砲は後に20ポンド砲へ変更)
など、あまり褒められたものでない場合が多いのだ。