名前のない兵器
この兵器には明確な正式名称はなく、単に自走砲と呼ばれていた。解説書などの書籍では便宜上海軍十二糎自走砲をこの兵器の名称としている場合が多い。
……のだが、キングチーハーのタグの方がつけられていた数が多かったため、こちらで解説する。キングチーハーという名前についても解説する。
キングチーハーとは、大日本帝国海軍が太平洋戦争末期に開発した自走砲を指す言葉である。(詳しくは後述)
正式名称がないために複数の名称揺れがあり、ほかに長十二糎自走砲という呼び名もある。この名前は、短十二糎自走砲という別の自走砲とわかりやすく区別するためにつけられた。長い方がこっちである。
ほかにも海軍長十二糎自走砲や海軍長十二糎砲、海軍十二糎砲(長)などの表記もある。
諸元
(判明しているものだけ)
車体全長:5.55 m
車体幅 :5.52 m
以上
まず、非常にロマンがある車両であり、知名度、人気とも、そこそこ高いこの車両にもかかわらず、資料が少なく謎が多い。
言ってしまえばチハの車体に四五口径十年式十二糎高角砲をポン付けした感じの車両。チハの車体の機銃は取り外されて無くなっている。砲塔(?)は一応全集砲塔であるため全方位に向けて射撃可能だが、横向きに撃つと車体がひっくり返ってしまう可能性があった。しかし、埋めれば横に向けて行っても大丈夫だと言われている。(自走砲とは?と言ってはいけない。)
防御力は紙どころではなく、文字通りない。一応爆風除けの鉄板が付いてはいるが、戦車砲はもちろん、敵歩兵の射撃すら防げそうにない。大和魂定期
搭乗員曰く、最高速度時速25Kmらしい。なぜこれほど遅いのかというと、馬力の変えてないチハの車体に8tの鉄の塊(砲)を乗っけたからである。(チハは車体のみでも13~14t程度の重量があり、8tの本砲を搭載したことにより、重量は20tを超えていたと推測される。)
そして、粗悪な燃料を使用したため、エンストが頻発に発生した。
さらに、本車両は重心が右に偏っていたらしく、右側に傾いており、右のサスペンションが折れたこともあった。
ちなみに航続距離に関しては不明である。理由は燃料を満載したことがなく、先述したようによくエンストを起こしていたことが原因である。
想定された運用方法
この車両は、対空射撃や、間接射撃(敵を直接見ずに撃つこと)のためではなく、内陸での大本土決戦用(防御戦用)に作られており、車体を防御陣地に隠しながら敵を待ち伏せ、固定砲台として射撃し、場合によって移動して、それから撃つ、と言った運用が想定されていた。
実際に敗戦間際に露天掩体の陣地に配置されており、車体を隠して移動可能な対戦車砲として運用される予定だったことがわかる。
実際
終戦に試作車が1輌完成しており、おそらく昭和20年頃に完成したとされている。(米軍が撮った写真が残ってる。ググったときに出てくる写真はコレ。)実際それで試験が行われている。
結果は射撃時の衝撃や、車体の問題から指揮官からは目的どうりの運用は難しいとされた。
実際に搭乗員からは「発射時の衝撃が大きく、再照準まで時間がかかった」との証言が残っている。
ただ、その後、(多少)改良された後行われた試験では命中率が1500mのあたりで良好だった。
そして、野戦重砲榴弾が敵戦車に当たった場合はほぼ確実に炎上するとされている。
砲弾に関して言えば、他の砲弾も流用できた可能性は大いにある。
戦果
鎌倉市内で走行実験をしている最中、砲身が民家の塀に当たって崩したという、考え方によってはえげつない戦果と言えない気がしないでもない戦果を残している。
ちなみに、その塀の所有者に後ほどウイスキーとケチャップを持って謝罪に行ったとのこと。
その他
車体前部左側の点検ハッチで目玉焼きを焼いたとの体験談も残っている。
ちなみに、本車が砲を何発発砲したかは不明ではあるが、試験の時に30発ほど発射したとされている。終戦時に残っていた砲弾数は5発程度である。
最終的に配置されていた陣地にて終戦を迎え、その後久里浜の通信学校へ移動、他の火砲などと合わせ自走砲もアメリカ第4海兵師団に引き渡されたとされる。
引き渡されたのちにどうなったのかは不明だが、他の武士達とともにスクラップ処分されたと思われる。
ネタ方面
ネタにならんはずがなかろう。
キングチーハー
この車両が初めて登場したゲームの名はBATTLEFIELD1942(BF1942)である。キングチーハーという名前(愛称)がつけられたのもこのゲームである。そのゲームにおいて、M4シャーマンを正面からブチ抜く、ドイツのパンター並の火力を有するため、ファンからそういった愛称がつけられた。キングティーガー(ティーガーⅡ)を文字ったものであると考えられる。
余談
2度目に登場したゲームはWarThunderで、こちらではType97 Chi-Ha Long gun(Chi-Ha LG、長十二糎自走砲)として実装されており、公式自らキングチーハーと呼称している。
ちなみに、このゲームのキングチーハーはなんとチハと速度が変わらないため、非常にスムーズに移動ができる。(わかるとは思うが、あくまで移動に困らない程度のスピードであり、機動戦を仕掛けられるほどではない)
しかし、装弾数が合計10発であり、装填が他の12cm砲クラスの車両よりも比較的早いからと言って無闇に打ち続けるのはNG。さらに、横に向かって撃つと車体が倒れることも考慮したのか、真横や真後ろを向けない限定旋回砲となっている。実際に使おうと思う人は気をつけて。
他にも車体がチハであるため装甲は無論信用できず、砲塔(といっていいのかもわからない)は諸元の項で先述したが砲発射時の爆風避けの盾しかないうえ、乗員5人のうち4人がむき出しになっているため非常にやられやすい。戦車や航空機の機銃にすらやられる。
ただ、12cmクラスの砲として貫通力はやや控えめだが、先述したとおり装填速度、砲旋回速度が優秀であり、取り回しも楽であるため、一度乗ってみてはどうだろうか。
乗員がむき出しと先述したが、変に薄い装甲で覆ったりしていないため、戦車砲に撃たれても乗員が気絶(死亡)したり、モジュールが壊れたりはするが、撃破されないことがある。ただ、何度も言うが機銃には気をつけて。なんなら機銃の方が脅威である。
このゲームで乗ってみたいと思っている方は↓も見ることをお勧めします。
BFシリーズであるBATTLEFIELD Vには残念ながら実装されていないが、このゲームに実装されている九七式中戦車GS(6連装ロケットをぶっ放してシャーマンを溶かすチハたん)には、この車両とドイツのシュトゥルムティーガーを文字ったシュトゥルムチーハーという愛称が(マイナーながら)つけられている。
詳しくは↓も。
有名な戦車ゲームであるWorld_of_Tanksには、日本がドイツからティーガーを輸入したという設定の戦車であるHeavy Tank No. VI(HT NO.VI、六号重戦車)が本車を文字ってインペリアルティーガーと呼ばれていることもあるとか。(シュトゥルムチーハー以上にマイナー。)
ちなみに、本車は”日本の虎”なので日虎(ヒトラー)と呼ばれることもある。
詳しくは↓も
他の使われ方
このキングチーハーという呼び名は、基本的には海軍十二糎自走砲を指すことは前述したが、ほかに魔改造されたチハや、とてつもなく強大かつ、絶大なインパクトを残す実在、および架空の大日本帝国戦車を指すこともある。