概要
いわゆる「ミニカー」の一種。標準サイズで全長2.3m・全幅1.4mしかない。
オート三輪やスクーター、家電製品(…!?)などの製造を手がけていたイソ社が、四輪車業界への参入にあたって1953年に開発した。
下記の経緯によりすさまじいまでの個性的なスタイリングを誇るが、現在に至るまでミニカーの設計に少なからぬ影響を与え続けている名車でもある。
機構
四輪車製造のノウハウを持たなかったイソ社は、それまでに培った技術を極力流用する事を考えた。
すなわち、スクーターを2台並べてその間に冷蔵庫を置き、それを削って「クレイモデル(?)」を作ったというのである。
その結果として、ドアが前面に付き、ハンドルごと開くという謎の技術と画期的すぎる乗降方法が誕生してしまった。
イギリスの世界最小の車ですらドアぐらい普通に側面に付けていたのだが、英国面に喧嘩でも売りたかったのだろうか…
そのような構造を採ってしまったため、エンジンを車体前方に置く事ができず、300cc級の単気筒2スト式のものを後輪の直前に配置している(一応ミッドシップ…なのか?)。その後輪も、エンジンに直結させた関係で50cmという極端に狭い間隔で取り付けられた。
このあたりは製造コストを抑える意図もあったようだが、座席からの距離の短さもあって乗り心地が犠牲になる事となった。試乗したとある人物の感想では「連続してバックブリーカーを食らったような」有様だったという。
ただ、イタリア車らしく(?)座席の座り心地自体はそれなりに良かったとか。
車体はガラスに至るまで曲線を多用した、丸みの強いデザインとなっており、斬新かつ愛嬌があると非常に評価が高い。
もっとも、その代償として窓の開閉に難があり、屋根を可動式にして開口部を確保している。そんな理由でオープンカーになった車両もそう無いだろう。なお、時代が時代なので冷房は積んでいない。
余談
趣味性一辺倒な見た目に反して、商用車モデルも用意されていた。しかも、ピックアップ・ダンプ・消防車など圧巻のラインナップである。「鈴菌」マイティボーイも真っ青。
また、ドイツ・BMWでもライセンス生産されていた。生産台数はこちらのほうが遥かに多く、本家より知名度が高いほど。
250ccモデル、300ccモデルのほか、全体を大型化し排気量を600ccに拡大、車輪の配置も一般的な四輪車と同じにした「BMW600」というモデルも発売された。
さらに、同社がイギリス向けに製造した300ccモデルは、同国の税金事情を踏まえて、後輪を一輪にした三輪仕様となっていた。オート三輪への原点回帰と言うべきか、英国面の面目躍如と言うべきか…
2016年にはこのイセッタをEVとして復刻させたスイスにあるマイクロ・モビリティ・システム社の「マイクロリーノ」の予約が開始され、2018年12月からスイスから販売を開始する予定である。